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衛研ニュース     No.140       
「えび・かに」のアレルギーを
起こさないために、しっかり選択!

2010年10月発行
神奈川県衛生研究所

日本人は「えび・かに」が大好きです。しかし、近年これらに対するアレルギーを持つ人が増加していることから、加工食品の「えび・かに」については表示が必須となりました。表示の見分け方のポイントを知って、食品をしっかり選択しましょう!

「えび・かに」の表示が必要となりました!

         

  食物アレルギー患者さんの誤食によるアレルギー発症の防止と加工食品の利用を目的に、これまでは別表のように、5品目について表示が義務付けられていましたが、現在「えび・かに」が加わり7品目について、必ず表示しなければならないことになりました。
  なお、18品目については、表示が奨励されています。


「えび・かに」の加工食品の表示はどのようになったか?

 
   アレルギー物質の表示制度における表示の方法は2種類あります。原材料として使用する場合は、「原材料表示」として流通段階のすべてにおいて表示が義務づけられ、最終製品までトレースし表示されています。
  もう一つは、「注意喚起表示」で、流通や製造段階においてコンタミネーション(混入)がある場合の表示で、原材料表示の欄外に表示されています。
  しかし、今回の「えび・かに」表示の義務化により、他の5品目とは異なる表示のケースも出てきました。それは、食物連鎖、混獲、共生による混入についての表示です。「えび・かに」はみなさんご存じのとおり、水系生物の食物連鎖における底辺に属しています。そのため、魚介類を原材料として使用した場合に「えび・かに」の混入が起こるケースも想定されます。そこで、注意喚起例として、捕食、混獲、共生を挙げ、魚介類を原材料とする加工食品については、最終製品への混入の頻度や量により、「えび・かに」の注意喚起表示が必要となりました。
  さらに「えび・かに」の表示については、これらに加え「例外規定表示」もあります。網で無分別に捕獲したものをそのまま原材料として用いるため、どの種類の魚介類が入っているか把握できない以下の5種類の原材料については、「たん白加水分解物(魚介類)」「魚醤(魚介類)」「魚肉すり身(魚介類)」「魚油(魚介類)」「魚介類エキス(魚介類)」と表示することが許されています。これらの表示がある場合は、「えび・かに」の混入の可能性もあることになりますので、特に注意が必要です。

 

正しく表示されているか、検査によって確認しています

 
  表示が必要な7品目については、加工食品の表示に違反がないか、製品中の原材料の検査を実施しています。「えび・かに」については、まず甲殻類共通の筋肉タンパク質であるトロポミオシンをELISA法で定量し、10μg/g以上含有した場合は表示義務の可能性が高くなるため、併せて製造所における製造の記録等を調べます。次に、表示の対象となっていない甲殻類(しゃこ、あみ、おきあみ類など)と区別するため、「えび・かに」の遺伝子の有無をPCR法により検査します。その後、検査結果と製造所の記録とを併せて、原材料に使用した場合あるいは混入等について的確に表示されているかどうかを判断し、表示の欠落や混入への対応などの行政指導を行います。このように加工食品の誤食によるアレルギー発症が起こらないよう、定期的に監視を行っています。
   

魚介類加工食品への「えび・かに」のコンタミネーション(混入)を調べました!

  最近、加工食品の注意喚起表示が目につくようになりました。食物アレルギー症状の誘発は、ごく微量であっても起こる可能性があるため、注意喚起表示は設定されたのですが、過度の表示によって、反って食品選択の幅を狭くすることは、避けなければなりません。また、表示の欠落にも注意が必要です。そこで、魚介類加工食品にどの程度混入があるのか、神奈川県では平成21年度に調査を行いました。
  これらの結果、魚介類加工食品20製品中11製品でトロポミオシンが検出され、遺伝子の検査によってこの内7製品(混入率35%:赤字)で「えび」混入の可能性が残り、さらにこの内4製品(青の行)で「えび」の混入が確認されました。これらはいずれも、かたくちいわしの捕食によると考えられました。残りの3製品(黄色の行)は、「えび」の混入か、表示の対象としていない甲殻類か、区別ができず、行政検査における課題があることも明らかとなりました。



   この他、安達らの報告では、1)ちくわ、はんぺん、かまぼこ等で「えび・かに」の混入が認められ、酒井らは2)海苔製品で「えび・かに」の混入の可能性を報告しています。
  このように魚介類加工食品の「えび・かに」の混入頻度は比較的高いことから、今後も製品の表示方法の妥当性を、注意深く監視することが必要と思われます。そして、こうした監視を的確に行うためには、まず検査法の問題点を解決することが重要です。県衛生研究所では、県民の皆さんの食の安全に向けて、引き続きアレルギーの調査・研究等に取り組んでまいります。
  加工食品は、「えび・かに」に限らず、製品によっては原材料が変更される場合があります。たとえば、いつもは卵が使用されていないため利用していた製品であっても、原材料の変更で卵が追加される場合もあります。こうした状況に適切に対応するためには、日頃から表示の確認が大切です。また、注意喚起表示には量規制がないことや、「乳」、「小麦」の例で表示義務濃度(10μg/g)以下であっても、1食分摂取した場合にアレルギー症状を発症した例もあります3)
  健康で安全な食生活のために、アレルギー表示を日頃からよく確認し、患者さんの食物アレルギーの病態や体調を踏まえながら食品を利用していきましょう。

 
 
(理化学部 渡邊裕子)
文献: 1) 第46回全国衛生化学技術協議会年会 要旨集 p96-97 (2008).
2) 日本食品化学学会誌, 15 , 12-17 (2008).
3) アレルギーの臨床 ,26,41-44(2006) .
参考: 消費者庁ホームページ https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/#m02外部サイトを別ウィンドウで開きます
 
   
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