私たちは、日ごろから動物たちを家族の一員のペットとして、生活の補助的な役割を担ってくれる信頼できるパートナーとして仲良く暮らしています。近年は、コンパニオンアニマル(伴侶動物)として、人との関係はますます密接になってきました。
こうしたなかで、動物とのふれあいができる展示施設の増加や、外来種に代表されるエキゾチックアニマルの飼育の増加など、人と動物の関係も多様化が進んでいます。
しかし、動物は、それぞれ固有の生態系のなかでさまざまな病原体を保有しており、それらに人が集団で感染する事例も発生するなど、国内外で報告されている動物に由来する感染症、いわゆる動物由来感染症の発生が、いま公衆衛生上の重要な問題の一つとなっています。 |
人と動物に共通する感染症を、人の側から見て「動物由来感染症」と言いますが、ほかに「人獣(人畜)共通感染症」、「ズーノーシス(Zoonoses)」と呼ぶこともあります。 |
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これらは、ウイルス、細菌、原虫、寄生虫等が原因となるもので、現在、世界で200以上の「動物由来感染症」があるといわれています。日本国内では、そのうちの約60が発生しているか、あるいは発生する恐れがあり、「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」(感染症法)にも、その対応策が盛り込まれています。 |
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動物が病原体を保有しているからといって、人にすぐに感染するものではありません。病原体を保有した動物と、直接あるいは間接的に接触することによって人に感染する危険性が高くなります。動物の種類や飼育環境、あるいは人と動物の接し方などによって病原体の感染の仕方は異なりますが、多くの場合、動物から排泄あるいは分泌されたものの中に病原体が含まれており、それらを人が何らかのかたちで口や鼻から取り込んだり、動物に咬まれたりひっかかれたりすることによって感染します。また、動物の種類によって気をつけるべき疾患は異なっています(表2)。 |
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ふれあい動物施設等での集団発生では、人が腸管出血性大腸菌を保有するウシに直接接触したか、又は二次的に人や食品を介して感染した事例、あるいは展示動物から排泄または分泌されたオウム病クラミジアが来園者や施設の従業員に感染した事例、などが報告されています。 |
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感染した場合、症状の程度は人によって異なりますが、健康な人よりも、妊婦、乳幼児、免疫機能が低下した人、高齢者などが感染した場合の方が、重症化しやすいので、動物とのふれあいには、特に注意が必要です。 |
病原体の多くは人の口や鼻あるいは創傷部位から感染しますが、動物の糞便に含まれる病原体が何らかのかたちで人の口から感染する例が最も多くなっていますので、動物に触れた後は、良く手を洗うことが最も効果的な予防方法です。そして、動物にひっかかれたり咬まれたりしてできた傷口は、必ず洗浄と消毒をし、重度の疾患が考えられる場合には、できるだけ早く医療機関に相談することが大切です。
また、動物に直接触れていなくても病原体に汚染されたものを口にしたり、動物に触れた人と接触したりすることにより結果的に感染することも考えられるので、日ごろから帰宅時や食事前の手洗いに心がけましょう。
いっぽう、動物を飼育している場合は、常に人の衛生管理とともに動物の健康管理にも気を配ることが大切です。飼育動物が病原体を保有しているかどうかも重要ですが、動物は健康状態が悪くなると病原体の排出が促される場合もあります。動物の健康を守ることは、人への感染症の危険性を低減させ、人の健康を守ることにもつながります。 |
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感染症に対して抵抗力が弱い高齢者の増加や、コンパニオンアニマルとしての動物との接触機会が増加しているなかで、動物由来感染症の危険性は、今後さらに増大する傾向にあると思われます。
いっぽう、動物の中でも特に家畜や家禽が関与する食品媒介性の感染症も大きな問題になっており、サルモネラ、カンピロバクターあるいは腸管出血性大腸菌などの病原菌が、毎年、世界で数百万人にも下痢、腹痛、発熱等の症状を引き起こしているといわれています。
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国内で発生が見られる感染症については、動物における病原体の保有状況を把握し監視すること、そして、今後発生する可能性がある感染症については、海外での発生状況や関連する動物などについて可能な限り情報を収集し、危機管理の体制を整えていくことが重要です。 |
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また、動物由来感染症については、国内で発生がなくても海外で流行している感染症が数多くあります。海外に渡航する際は、国によって発生している感染症が異なりますので、動物との接触が考えられる場合には、国内あるいは現地でワクチン接種を受けるなど、正しい知識で対応する必要があります。
私たちが、動物と健康で仲良く暮らしていくためにも、動物由来感染症について正しく理解しましょう。 |
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神奈川県の取り組み 神奈川県では、動物愛護管理推進計画を策定し、その中で「人と動物の共通感染症への取り組み」を掲げ、動物由来感染症の発生および発生時の拡大防止を図ることを目標として、県内関係諸機関と連携強化を進めています。 |
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厚生労働省、動物由来感染症に関するリンク先
http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou18/index.html |
(微生物部 古川 一郎) |
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発行所
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神奈川県衛生研究所(企画情報部) |
〒253-0087 茅ヶ崎市下町屋1-3-1 |
電話(0467)83-4400 FAX(0467)83-4457 |
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