図3(a)食中毒事例-1は、8月下旬に2家族が関連するバーベキューによる感染事例(O157で毒素VT1,2)と、同時期にこの事例とは関連がないと考えられた4名から分離した菌株(O157で毒素VT1,2)のPFGEパターンを示したものです。4名を含む関係者全員のパターンがほぼ同一でした。
1のレーンでは他のレーンと異なってバンドの欠落が認められます(矢印)が、聞き取り調査によりバーベキューに参加していたことが確認され、同一の原因による感染であることが示唆されました。
3、4のレーンは関連のないと考えられた4名の菌株のうちの2株を示したもので、PFGEパターンがまったく同じでした。限定された地域での事例でしたが、保健所による聞き取り調査では、原因食品は特定できませんでした。
この事例は、聞き取りによる疫学調査とPFGE解析を用いた分子疫学調査の両面から感染状況を検討した貴重な一例です。また、この事例では、隣接する横浜市、川崎市、相模原市にPFGE結果を電送し、同じパターンを示す菌株の検出状況を問い合わせ、川崎市で類似したパターンを示す菌株が1株認められましたが、この事例との関連は確認できていません。
図3(b)に、10月に藤沢市内の焼肉店において発生した食中毒事例から分離された菌株の一部4株のPFGEパターンを示しました。XbaⅠとBlnⅠの2種類の制限酵素で比較したもので、それぞれの制限酵素で同じパターンを示し、同一の感染源である可能性が示唆されました。
この事例では、横浜市および東京都でも患者が発生しており、各衛生研究所にPFGEパターンを送付して、各所のPFGEパターンも同じであることを確認しました。また、調理従事者からも同一のパターンを示す菌が分離されています。
図3(c)に、同一時期に発生したEHEC(O157で毒素VT1,2)の散発事例6株のPFGEパターンを示しました。レーン9、10は類似していますが、聞き取り調査では関連性がなく、11~14レーンは異なったパターンを示していることから、これらはそれぞれ、異なった感染源であると考えられました。