最近、薬局・薬店に置かれていた一部の医薬品が、コンビニエンスストアーなどでも販売されるようになりました。これは、平成15年6月に閣議決定された「経済財政運営と構造改革に関する基本指針2003」に医薬品販売体制の拡充が盛り込まれ、「検討の結果安全上特に問題がないとの結論に至った医薬品すべてについて、薬局・薬店に限らず販売できるようにする」とされたことが契機となっています。厚生労働省はこの決定を受け、すべての一般用医薬品を対象に「安全上特に問題がないもの」について選定を行う専門の検討会を設置しました。その検討会では、使用上の注意に薬剤師が直接説明すべき情報が含まれていないか、配合されている主成分の薬理作用・副作用などの観点から安全性に問題がないかの2つの視点に着目し、選定作業が行われました。その結果、選定された医薬品は、コンビニエンスストアーなどの一般小売店での販売が可能となりました。しかし、今回の場合、一般小売店における医薬品の販売自体が認められたのではありません。検討会で選定された「医薬品」は「医薬部外品」に移行することにより販売が可能となったのです。では、医薬品と医薬部外品の違いはどこにあるのでしょうか。
私たちが身体のために効能効果などを期待して使用する製品には、薬事法上、「医薬品」、「医薬部外品」などがあります。これらは人体等への作用の強さ、使用目的などによって分類され、外箱等にそれぞれ表示がされています。この中で「医薬品」は、薬事法では①日本薬局方に収載されているもの、②疾病の診断、治療又は予防への使用を目的とするもの、③体の構造又は機能に影響を及ぼすことを目的とするものであり、機械器具ではないものと定義されています。例えば、処方箋により調剤される薬、薬局などで販売されている鼻炎用カプセル、風邪薬などが該当します。これらの製品は人体への直接的な作用が強いことから、その開発、製造から販売に至るまで様々な規制が設けられており、また、薬局・薬店以外では原則として販売することが出来ません。それに対して「医薬部外品」は、薬事法では①人体に対する作用が緩和なものであり機械器具ではないもの、②これらに準ずる物で厚生労働大臣の指定するものと定義され、使用目的などが限定されています。例えば、一部のドリンク剤、頭髪の染色に用いる染毛剤、ソフトコンタクトレンズ用消毒剤などが該当します。また、製造等には医薬品に準じた規制がありますが、販売については医薬品と異なり規制はありません。そのため、これらの製品は多くの一般小売店でもよく見かけられると思います。
下表に、今回新たに医薬部外品に移行した15製品群の一覧を示します。過去に医薬部外品に指定されていた製品は「滋養強壮、虚弱体質の改善及び栄養補給が目的とされている物(ビタミン含有保健剤)」、「胃の不快感を改善することが目的とされている物(健胃清涼剤)」など、「薬」という直接的な名称ではなく、効能効果が緩和である感じがありましたが、今回移行した製品群は、「いびき防止薬」、「瀉下薬」などの様にに、全て「薬」のまま移行されています。新たに医薬部外品に移行したものは配合成分及び配合量に制限があり、また、人体に対する作用が穏やかであるものとされていますが、今までは一般用医薬品として販売されていたことから、使用には注意が必要です。従って、厚生労働省では消費者の安全確保のために一般小売店、製造業者等に対して留意すべき事項を併せて示しています。一般小売店に対しては、消費者の誤解や誤用を防止するため、他の商品との識別及び品質の維持管理が可能である方法で陳列すること、販売時に外箱の表示情報について消費者に確認すること、使用に伴う健康被害の相談・苦情等の申し出に対して相談窓口に関する情報を提供するとともに、その情報を製造業者等に的確に伝達すること、また、不良品発生時に迅速に対応するため、製造業者等との連絡体制を整備することなどが示されています。一方、製造業者等に対しては、消費者が使用前に知っておく必要がある情報を、外箱等に見やすく且つ理解しやすく表示すること、消費者の副作用情報、相談・苦情については的確に対応すること、不良品発生時に迅速に対応するため、一般小売店との連絡体制を整備することなどが示されています。
しかしながら、どのような対策を講じたとしても誤用や乱用等による有害な作用が発生する可能性が考えられます。また、適切な使用であっても副作用が発生する可能性も否定できません。万が一、副作用の可能性が考えられた場合には、添付文書の使用上の注意を参照するとともに、速やかに医師または薬剤師に相談することも重要でしょう。手軽に購入できることにより消費者の利便性は高まりましたが、それに伴い消費者に任される責任も大きくなったとも考えられます。消費者も、購入の際は症状に合わせて正しく製品を選択すること、使用上の注意を十分理解して適切な使用を心がける事が重要だと考えられます。
(理化学部)