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結核菌遺伝子検査に関する研究

結核は過去の病気と思われがちですが、世界3大感染症として世界中で流行しています。特に、HIV感染者の多い発展途上国では、合併症としての結核も大きな問題となっています。わが国では、高齢者においては昔に感染した結核菌が再び活動性をもつケースがあり、また若い世代においては医療機関への受診が遅れるケースが増えており、結核患者の増加が懸念されています。当所では、結核の感染源となる患者の早期発見と早期治療による患者の減少に向けて、迅速で安価な検査法の検討や感染源の追究のための結核菌の遺伝子解析の導入など疫学調査の技術基盤の構築を図り、結核対策に努めています。

(細菌・環境生物グループ)

1.結核菌検査および疫学調査のための技術基盤の構築

  • ①

    結核菌の迅速検出法と感染源追跡に関する基礎的検討 (2003-2004年)

2.分子疫学的解析法の確立

  • ①

    VNTR法を利用した結核菌型別に関する基礎的研究 (2005年)

    ②

    VNTR法を利用した結核菌遺伝子型別に関する実際的活用法の検討 (2006年)

3.結核対策の効率化のための行政システムの検討

  • ①

    VNTR法およびQFTを取り入れた結核対策の新しい行政システムの検討 (2006年)

4.分子疫学調査の推進

  • ①

    VNTR法の結核分子疫学調査への応用に関する研究 (2007-2009年)

    ②

    結核菌の遺伝子型別法であるVNTR法における解析部位の検討 (2008年)

    ③

    VNTR法による結核分子疫学調査の基盤構築及び推進 (2010年)

    ④

    県域における結核分子疫学調査の推進 (2010-2011年)

    ⑤

    結核菌VNTR法のシーケンサを用いた結核分子疫学解析の試み及び感染経路解明による結核対策 (2012年)

5.学会発表

6.講演会・研修等

7.論文・解説等

1.結核菌検査および疫学調査のための技術基盤の構築

① 結核菌の迅速検出法と感染源追跡に関する基礎的検討 (2003-2004年)

研究概要

結核の早期発見と早期治療による患者の減少を目指し、新結核菌検査指針(2000年)に記載されている新たな検査法の導入を図った。同時に、それらを改良し、より安価で迅速な検査法を検討した。また、感染源の追跡に必要な結核菌の遺伝子解析法も検討した。

実施状況

喀痰塗抹検査において蛍光染色液の市販試薬と自家調製試薬を比較したところ、自家調製試薬がより鮮明な染色性を示した。
結核菌の迅速検出法として液体培地(MGIT)とPCR法を組み合わせることにより、高価な市販PCRキットを使用することなく、迅速且つ安価な結核菌検出が可能であった。
感染経路・感染源解明のための結核菌遺伝子型別法の検討は、従来の遺伝子型別法であるRFLP法(Restriction Fragment Length Polymorphism)と比較したところ、VNTR法(Variable Numbers of Tandem Repeats;繰り返し塩基配列数の多型を利用)の迅速・簡便性が確認された。

研究成果

 1) 結核菌の迅速検査法と遺伝子型別法に関する研究
 2) VNTR法による結核菌の遺伝子型別について
 3) 結核菌の新しい遺伝子型別法による感染源究明への応用PDFが別ウインドウで開きます
 4) 結核菌の新しい遺伝子型別法“VNTR法”PDFが別ウインドウで開きます

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2.分子疫学的解析法の確立

①

VNTR法を利用した結核菌型別に関する基礎的研究 (2005年)

研究概要

結核の制圧には感染源となっている患者の早期発見と治療が重要で、そのためには迅速な感染源の究明が必須である。従来法(RFLP法)とVNTR法の分子疫学的解析法について検討した。

実施状況

VNTR法のDNA抽出法、PCR条件、アガロース電気泳動条件等の基礎的検討を行った。VNTR法は使用機材がPCR増幅装置とアガロース電気泳動装置さえ揃っていれば実施可能で、従来法と比べ格段に迅速かつ簡便であることが分かった。

研究成果

 1) 結核菌のVNTR法による分子疫学的解析
 2) VNTR法を利用した結核菌の遺伝子型別PDFが別ウインドウで開きます

②

VNTR法を利用した結核菌遺伝子型別に関する実際的活用法の検討 (2006年)

研究概要

感染経路解明のための分子疫学的手法の一つであるVNTR法の精度と再現性を検討し、結核対策における実用化を図った。再現性を伴う精度の高いVNTR法を確立した上で、結核事例への適用を試みた。

実施状況

増幅部位、解析方法に関しては、より精度の高いVNTR法の確立を検討した結果、RFLP法とほぼ同等の感度にまで改善することができた。

研究成果

 1) 結核分離株のVNTR法による遺伝子型別の検討
 2) 結核分離株のVNTR法による遺伝子型別
 3) VNTR法による結核菌の遺伝子型別について

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3.結核対策の効率化のための行政システムの検討

①

VNTR法およびQFTを取り入れた結核対策の新しい行政システムの検討 (2006年)

研究概要

VNTR法およびQFTを利用した地域における結核対策の効率化を図るため、両方法の技術的検討と同時に結核対策に携わる衛生研究所と保健所の連携システムの検討を試みた。

実施状況

VNTR法による遺伝子解析が有用であることを明らかにし、当所における調査体制を確立した。しかし、菌株の確保に課題が残った。
QFTを接触者検診に導入するシステムは確立されつつあるものの、検査費用が高く行政検査としての要望に十分には対応しきれていない。

研究成果

 1) 神奈川県域の結核接触者健康診断におけるQFT検査について
 2) 神奈川県衛生研究所における結核検査の取り組み
 3) 神奈川県衛生研究所の結核に関わる検査
 4) VNTR法およびQFTを取り入れた結核対策の新しい行政システムの検討
 5) 過去の病気なの?“結核”PDFが別ウインドウで開きます
 6) 結核接触者健診に用いたQFT-2GとQFT Goldの比較
 7) 結核集団事例におけるクォンティフェロン®TB-2Gと結核分離菌株の遺伝子型別PDFが別ウインドウで開きます
 8) 神奈川県域の結核接触者健康診断におけるQFT検査を用いた結核感染診断(平成17~21年度)PDFが別ウインドウで開きます

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4.分子疫学調査の推進

①

VNTR法の結核分子疫学調査への応用に関する研究 (2007-2009年)

研究概要

ここまでの研究成果を踏まえ、薬剤耐性結核菌と感受性菌のVNTRパターンの比較、他機関との方法の統一化および結果のデータベース化、喀痰から直接VNTR型別を実施し迅速化を図る方法について、検討した。

実施状況

多剤耐性結核菌のVNTRパターンを分析することにより迅速な治療薬選択への可能性を模索した。また、他機関とのVNTR法の統一化および結果のデータベース化を進め、情報の共用化を図った。

研究成果

 1) 結核の感染経路を追う
 2) 結核菌遺伝子型別におけるVNTR法とRFLP法の型別精度
 3) 結核の現状と衛生研究所の対応
 4) 結核の分子疫学におけるVNTR法とRFLP法の比較
 5) 結核集団感染事例におけるQFT検査と分離結核菌株の遺伝子型別
 6) 結核集団感染事例における分離株の遺伝子型別とQFT
 7) 結核をめぐる問題

②

結核菌の遺伝子型別法であるVNTR法における解析部位の検討 (2008年)

研究概要

VNTR法における新たな解析領域として取り組んできたQUBおよびMtub領域は、国外では高い多変性を示す反面、変異し易く不安定性であるとの報告がある。そこで、型別結果の再現性を検討し、RFLP法と比較しながら、より精度の高いVNTR法を確立した。

実施状況

解析部位として有効性の高いQUBおよびMtub領域の一部において、良好な結果が得られず再試験を要することがあった。 従って、国内分離株を用いて各解析部位の安定性を調べると同時に、菌株によるバラツキの解消を図った。その上で、RFLP法と比較しながらより精度の高いVNTR法の確立、VNTR法の標準化、県内の結核菌型別データベース化を進める。

研究成果

 1) 結核菌のVNTR解析におけるQUBおよびMtub領域の利用

③

VNTR法による結核分子疫学調査の基盤構築及び推進 (2010年)

研究概要

神奈川県域における結核患者から分離された結核菌の遺伝子型別についてVNTR法を用いて行った。

実施状況

本研究で条件を付加して収集した6株中1株を除いては、当時の流行を捕らえることができた。特に担当保健福祉事務所が異なる3株について、疫学上の共通点が見られなかったにもかかわらず完全一致を示した。
本研究を実施したことで、保健福祉事務所との連携が強化され、菌株搬送システムが確立された。

研究成果

 1) VNTR法による結核分子疫学調査の基盤構築及び推進
 2) 県域における結核分子疫学調査の推進

④

県域における結核分子疫学調査の推進 (2010-2011年)

研究概要

県域において結核患者から分離された結核菌を、VNTR法を使用して型別を行った。その解析結果のデータベース化を試み、感染経路・感染源の早期発見と感染拡大の防止に利用した。さらに、県域周辺地域とも解析結果の共有を試み広域データベース化を図り、本県の結核予防対策に役立てた。

実施状況

4.③で確立した搬送システムを活用し、菌株収集を行った。
その結果、結核菌の菌株間の類似度からMinimum spanning trees(MST)を作成し、当時のJATA12領域における遺伝子型を把握することができた。
本研究を実施したことにより、結核菌の分子疫学調査について保健福祉事務所との連携が強化され、解析結果を保健福祉事務所に還元することができた。

研究成果

 1) 遺伝子による結核の疫学調査について
 2) 神奈川県域において分離された結核菌のVNTR法による遺伝子型別について(2008-2011)
 3) 結核菌遺伝子型別解析結果報告会
 4) 遺伝子解析による結核菌の一致について
 5) QFT検査結果および遺伝型別結果について
 6) 神奈川県域において分離された結核菌のVNTR法による遺伝子型別について(2008-2011)PDFが別ウインドウで開きます
 7) 県域における結核分子疫学調査の推進
 8) 結核集団感染事例にみる分子疫学調査の必要性PDFが別ウインドウで開きます

⑤

結核菌VNTR法のシーケンサを用いた結核分子疫学解析の試み及び感染経路解明による結核対策 (2012年)

研究概要

シーケンサを用いて結核分子疫学解析の正確性・再現性について検討した。また、12領域および24領域の二つの解析領域数について比較検討した。

実施状況

疫学的な関連が見られた8事例のうち4事例ではどの方法を用いても同じ解析パターン結果を示したが、他はアガロースよりシーケンサを用いた解析法が高い識別能力を示し、12領域より24領域のシーケンサでさらに詳細に識別された。
今後は、さらに解析領域等についての検討を進めながら、県域内全株の地域分子疫学研究を進めて行く予定である。

研究成果

 1) 結核菌VNTR法のシーケンサを用いた結核分子疫学解析の試み及び感染経路解明による結核対策

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5.学会発表

演題名  発表者 学会名
VNTR法による結核菌の遺伝子型別について 高橋 智恵子 第57回神奈川県感染症医学会 (2004)
結核菌の迅速検査法と遺伝子型別法に関する研究 高橋 智恵子 所内発表 (2005)
結核菌のVNTR法による分子疫学的解析 高橋 智恵子 神奈川県公衆衛生学会(2005)
結核分離株のVNTR法による遺伝子型別の検討 高橋 智恵子 感染症学会(2006)
結核分離株のVNTR法による遺伝子型別 高橋 智恵子 結核病学会(2006)
結核菌のVNTR解析におけるQUBおよびMtub領域の利用 高橋 智恵子 結核病学会(2007)
結核の感染経路を追う 高橋 智恵子 所内発表 (2008)
結核菌遺伝子型別におけるVNTR法とRFLP法の型別精度 高橋 智恵子 分子疫学研究会(2008)
結核の現状と衛生研究所の対応 高橋 智恵子 実務者研修(2008)
結核の分子疫学におけるVNTR法とRFLP法の比較 高橋 智恵子 感染症学会(2008)
結核集団感染事例におけるQFT検査と分離結核菌株の遺伝子型別 高橋 智恵子 神奈川県公衆衛生学会(2008)
結核集団感染事例における分離株の遺伝子型別とQFT 高橋 智恵子 関東甲信静(2009)
神奈川県域の結核接触者健康診断におけるQFT検査について 高橋 智恵子 神奈川県公衆衛生学会(2010)
遺伝子による結核の疫学調査について 高橋 智恵子 研究発表会(2011)
神奈川県域において分離された結核菌のVNTR法による遺伝子型別について(2008-2011) 高橋 智恵子 神奈川県公衆衛生学会(2011)
結核接触者健診に用いたQFT-2GとQFT Goldの比較 高橋 智恵子 神奈川県公衆衛生学会(2012)
結核菌VNTR法のシーケンサを用いた結核分子疫学解析の試み及び感染経路解明による結核対策 古川 一郎 神奈川県公衆衛生学会(2013)

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6.講習会・研修等

演題名  発表者 講習・研修対象
VNTR法による結核菌の遺伝子型別について 高橋 智恵子 川崎市職員研修会 (2005)
神奈川県衛生研究所における結核検査の取り組み 高橋 智恵子 神奈川県公衆衛生学会シンポジウム (2007)
結核を忘れていませんか 高橋 智恵子 特別養護老人ホーム職員 (2008)
最近の結核情勢と予防対策 高橋 智恵子 秦野市理美容所従業者 (2008)
神奈川県衛生研究所の結核に関わる検査 高橋 智恵子 地域保健活動報告会 (2009)
結核を忘れていませんか 高橋 智恵子 川崎協同病院職員 (2009)
結核の院内感染・結核の現状・問題点・対策について 高橋 智恵子 神奈川県保険医協会川崎支部研究会 (2009)
結核を忘れていませんか 高橋 智恵子 神奈川県有害生物防除研修会(2009)
結核の現状・問題点・感染対策 高橋 智恵子 介護老人保健施設職員研修会(2011)
結核菌遺伝子型別解析結果報告会 高橋 智恵子 地域保健推進事業振興会助成金による結果報告会(2011)
遺伝子解析による結核菌の一致について 高橋 智恵子 結核集団感染事例に伴う検討会(第1回)(2012)
QFT検査結果および遺伝型別結果について 高橋 智恵子 結核集団感染事例に伴う検討会(第2回)(2013)

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7.論文・解説等

論題名  著者名 雑誌名
結核菌の新しい遺伝子型別法による感染源究明への応用PDFが別ウインドウで開きます 高橋 智恵子 神奈川県微生物検査情報 143 (2004)
結核菌の新しい遺伝子型別法“VNTR法”PDFが別ウインドウで開きます 高橋 智恵子 衛研ニュース 110 (2005)
VNTR法を利用した結核菌の遺伝子型別PDFが別ウインドウで開きます 高橋 智恵子 神奈川県衛生研究所研究報告 36 4-7(2006)
VNTR法およびQFTを取り入れた結核対策の新しい行政システムの検討 高橋 智恵子 平成17年度第12回地域保健福祉研究助成報告集 63-68(2006)
日本の地方衛生研究所、保健所、結核病床保有病院における結核菌の保管と輸送等の設備と技術 共著(高橋 智恵子) 結核 83 591-598(2008)
結核をめぐる問題 高橋 智恵子 予防医学 50 49-55(2008)
過去の病気なの?“結核”PDFが別ウインドウで開きます 高橋 智恵子 衛研ニュース 132 (2009)
結核集団事例におけるクォンティフェロン®TB-2Gと結核分離菌株の遺伝子型別PDFが別ウインドウで開きます 高橋 智恵子 神奈川県衛生研究所研究報告 39 1-3(2009)
神奈川県域の結核接触者健康診断におけるQFT検査を用いた結核感染診断(平成17~21年度)PDFが別ウインドウで開きます 高橋 智恵子 神奈川県衛生研究所研究報告 40 33-35(2010)
VNTR法による結核分子疫学調査の基盤構築及び推進 高橋 智恵子 平成22年度公衆衛生振興会特別助成実施報告書(2011)
県域における結核分子疫学調査の推進 高橋 智恵子 平成22年度地域保健推進特別事業実施報告書(2011)
神奈川県域において分離された結核菌のVNTR法による遺伝子型別について(2008-2011)PDFが別ウインドウで開きます 高橋 智恵子 神奈川県衛生研究所研究報告 41 16-19(2011)
県域における結核分子疫学調査の推進 高橋 智恵子 平成23年度地域保健推進特別事業実施報告書(2012)
結核集団感染事例にみる分子疫学調査の必要性PDFが別ウインドウで開きます 高橋 智恵子 神奈川県衛生研究所研究報告 46 1-7(2016)

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