トップページ > 調査研究 > 室内空気汚染対策に関する研究
1990年以降、住宅の環境に起因する健康被害の発生が指摘されるようになり、シックハウス問題が明らかにされました。2002年までにホルムアルデヒド等13物質について室内濃度指針値が設定され、当所ではシックハウス対策として、分析法の確立、実態調査、シックハウス原因究明や低減化対策など長年にわたり研究を行ってきました。現在、室内濃度指針値の策定等により、ホルムアルデヒド等の室内濃度は低下しましたが、その一方で、それらの代替物質として多種の未規制物質が建材に、また多くの農薬成分等の準揮発性有機化合物(SVOC)が複合的に使用されている現状において、これらの毒性評価を検討するとともに低減化に向けた対策が必要です。
当所は室内空気汚染物質の調査および関連研究を行うことにより、快適で健康な生活環境の確保に努めています。
理化学部 生活化学・放射能グループ
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研究概要
竣工1か月未満の未入居集合住宅20件について、室内空気を汚染する化学物質の調査と室内空気汚染化学物質の低減化対策について検討した。
実施状況
ホルムアルデヒドの室内での揮散は温湿度に依存するので、夏季に竣工した住宅は高い濃度を示すとともに全ての住居で指針値を超えた。したがって、新築時や増改築時には、化学物質放散が少ない建材・施工材を選択することが健康被害を低減する上で有効であること、また、換気がホルムアルデヒドの除去に効果があることが示された。その他、試作した空気清浄機による揮発性有機化合物(volatile organic compounds、 以後VOC)除去効果やホルムアルデヒドの分析法の検討等の研究を行った。
また、2001年度から保健福祉事務所において住まいが原因と考えられる体調不良について県民からの相談に応じており、衛生研究所では2008年度まで、相談者への助言の一環として、必要に応じて住宅の室内化学物質濃度等の調査を実施した。
研究成果
1)森 康明:あなたの住まいは安全ですか −化学物質の発生源とその低減化対策−,衛研ニュース,94,3-4(2001)
2)森 泰明,辻 清美,長谷川一夫:住宅における揮発性有機化合物(VOCs)濃度の推移,神奈川衛研報告,31,109-111(2001)
3)森 康明,伏脇裕一,節田節子,後藤純雄,小野寺祐夫,松下秀鶴:酸化チタン光触媒空気清浄機による室内空気中の揮発性有機化合物」の除去効果,室内環境学会誌,3,13-21(2000)
4)森 康明, 辻 清美,長谷川一夫,節田節子:
O-(2,3,4,5,6 -pentafluorobenzyl)hydroxylamine含浸シリカゲル捕集-溶媒抽出ガスクロマトグラフ法による室内空気中のアルデヒド類の定量,衛生化学42,500-506(1996)
5)森 康明,辻 清美,節田節子,後藤純雄,小野寺祐夫,松下秀鶴:室内空気中アルデヒド類測定のためのPFBOA法の有用性,環境化学,7,515-520(1997)
6)森 康明,行谷義治,節田節子,後藤純雄,小野寺祐夫,松下秀鶴:Air Toxics管-ポンプ法およびCarbopack B管-拡散法による室内空気試料の採取と加熱脱着-GC/MSシステムによる揮発性有機化合物の測定,環境化学,7,851-857(1997)
研究概要
2001年度から2008年度において、神奈川県内で室内空気が原因と疑われる体調不良の発生した個人住宅および学校・事業所123カ所について室内汚染化学物質の調査を実施した。
実施状況
指針値を超過した事例はホルムアルデヒド11件、アセトアルデヒド12件、トルエン2件およびパラジクロロベンゼン10件で、ほぼ毎年指針値を超過した住宅があった。室内空気中の化学物質は新築・リフォームで使用された建材や内装材から発生するもの以外に、居住者が持ち込む生活用品等が発生源となるケースも多く、健康被害を防ぐために、その適切な使用方法を啓発することも重要である。また、指針値はないが、ナフタレン、トリクロロエチレンおよびテトラクロロエチレンのように高濃度に検出された物質もあった。室内空気中に発生する化学物質は多岐にわたり、未規制物質の調査も重要であることが示唆された。
研究成果
1)仲野富美、上村 仁、辻 清美、伏脇裕一、長谷川一夫:室内空気汚染化学物質濃度調査について(平成13-20年度)、神奈川衛研報告、39、18-22(2009)
研究概要
日常的に多くの化学物質が使用されている美容所の室内空気の実態調査を行った。また、室内空気からアルデヒド類が検出されたため、スプレー剤の影響等発生源の検討を行った。
実施状況
神奈川県内の美容所、夏期(2003年9月)8施設、冬期(2004年2-3月)8施設について、アルデヒド類11物質およびVOC43物質を測定したところ、夏期および冬期調査ともにホルムアルデヒド、トルエン、キシレン、パラジクロロベンゼン、エチルベンゼン、スチレンおよびテトラデカンはすべて室内濃度指針値(厚生労働省)以下であった。しかし、アセトアルデヒドは夏期に12-110 μg/m3の範囲で検出され、8施設中2施設が室内濃度指針値を超えて検出された。冬期には11-294 μg/m3の範囲で検出され、8施設中3施設が室内濃度指針値を超えた。アセトアルデヒドの発生源を検討したところ、ヘアスプレー中に不純物として含有していたと考えられた。換気が不十分で、密閉された室内での大量のヘアスプレーやパーマ剤等化学物質の使用による健康への影響が懸念され、室内空気環境の改善には連続的な換気が必要であることが明らかとなった。
研究成果
1)相原康子,辻 清美:美容所における室内空気環境の実態調査について,神奈川県公衆衛生学会誌,50,59(2004)
研究概要
防虫剤や防腐剤を使用していた住宅の室内空気汚染物質や濃度推移を調査した。さらに、VOC測定用のパッシブサンプラーのフィールド試験による評価を行った。
実施状況
防虫剤のパラジクロロベンゼンが室内空気中で高濃度(3800μg/m3)検出された木造住宅において、2002年11月から2006年1月まで室内空気中のパラジクロロベンゼン濃度の推移を調査した。防虫剤除去後、徐々に減少したが、1年後も指針値付近の値を示し、不検出とはならなかった。この原因は、パラジクロロベンゼンは吸着しやすいため、衣類へ吸着し、衣類から空気中へ再放散したためと推定された。
防腐剤としてクレオソートを使用していた集合住宅の調査では、クレオソートの主成分7物質が検出された。また、細胞増殖阻害が室内空気について認められた。室内空気汚染化学物質の評価には、バイオアッセイ法を併用することにより、より詳細に評価できることが分かった。
VOC測定用のパッシブサンプラー(パッシブ法)を用いたフィールド試験で、標準法であるアクティブ法と比較検討した。パッシブ法は、試料採取にポンプや電源を必要とせず、より小型軽量で簡便な測定法であり、パラジクロロベンゼンを含むVOC 5種類については、その実用性が認められ、使用可能であることが明らかとなった。
研究成果
1)長谷川一夫,仲野富美,辻 清美,伏脇裕一:木造住宅室内空気中におけるパラジクロロベンゼン濃度の推移,神奈川衛研報告,36,30-32(2006)
2)伏脇裕一,森 康明,中島大介,後藤純雄,小野寺祐夫:防腐剤クレオソートによる室内空気汚染と毒性評価,環境化学,14,135-139(2004)
3)辻 清美,長谷川一夫,伏脇裕一:室内空気中のVOC測定用パッシブサンプラーのフィールド試験による評価,神奈川衛研報告,35,23-26(2005)
4)辻 清美,長谷川一夫,伏脇裕一,森 康明,後藤純雄,小野寺祐夫:パッシブサンプラーによる室内空気中のVOCの測定,室内環境学会誌,5,106-107(2002)
(政策推進住宅研究事業)(2003-2005)
研究概要
室内空気中のホルムアルデヒド測定の標準法は、分析が複雑で、時間がかかることから現場でも短時間で測定できる簡易測定法が求められていた。そこで、現場での濃度測定を簡便に行うことができる簡易法の開発を、大学や民間企業と共同で行った。さらに、開発した簡易測定法(検知紙法およびFP-30法)の有用性を評価するために、住宅等でフィールド試験を行い、標準法と比較検討した。
実施状況
開発した検知紙法では検知紙の発色の程度により(+)、(-)、(±)と判定され、(+)は0.08 ppm以上、(-)は0-0.04 ppm、(±)は0.04~0.08 ppmと示されているが、標準法の値もその範囲に入り、値が良く一致し、検知紙法は定性的かつ簡易な定量方法として実用性が認められた。また、簡易測定器(FP-30法)と標準法は良好な相関が得られ、測定値も一致したことから実用性が認められた。開発した簡易測定法は現場での濃度測定には有用な方法であることが確認された。
研究成果
1)伏脇裕一,辻 清美,仲野富美,長谷川一夫,森 康明,鈴木孝治:室内環境中のホルムアルデヒド簡易測定法の信頼性評価,環境化学,15(4), 871-877(2005)
研究概要
車室内も居住空間の一部と考えると、車室内空気中のVOC濃度の把握は曝露評価の一環として極めて重要である。そこで、2005年~2006年の夏期に、乗用車37台を対象に指針値が設定されている8物質を含む44物質に関する自動車室内のVOC調査を行った。
実施状況
自動車の室内は、塗料や接着剤等の化学物質が一部使用されており、機密性も高くなっていることから、シックハウスの原因の一つといわれているVOCが発生する可能性が考えられる。
トルエンは車の使用期間が長くなると濃度が減少する傾向が見られたが、ホルムアルデヒドは長期にわたり発生が見られた。ホルムアルデヒドは室温が高いと多く発生する傾向が見られ、気温の高い昼間は車の内装に使用されている接着剤やシート内の部材等から種々の化学物質が放散され、一時的に非常に高濃度となることが明らかとなり夏期の気温の高い昼間は特に換気に留意する必要があることが判明した。現在、自動車そのものは「自動車工業会のVOC低減化に対する自主取り組み」*)により室内環境に配慮した製品に置き換わりつつあるが、車内に持ち込む製品についても配慮が必要である。
*)日本自動車工業会:車室内VOC(揮発性有機化合物)低減化に対する自主取り組み
研究成果
1) 神奈川県ホームページ:自動車におけるシックハウス予防調査
2) 辻 清美,上村 仁,伏脇裕一,長谷川一夫:自動車室内空気中の揮発性有機化合物の測定,室内環境学会誌,9(2),90-91(2006)
研究概要
指針値は定められていないが、シックハウス原因物質となることが危惧される防蟻剤や家庭用殺虫剤等に使用されている農薬成分に注目し、室内空気中からの捕集方法や一斉分析法を確立し、その汚染実態、さらにモデル実験による室内空気への放散量や挙動の把握、最終的にはシックハウス症候群原因物質の低減化対策について検討した。
実施状況
2006~2007年、夏12軒および冬4軒を調査した結果、対象25物質のうち、アレスリン、トランスフルトリン、プラレトリン、フェニトロチオン、エンペントリン、ディートおよびS421が0.003~1.05 μg/m3の範囲で検出された。ピレスロイド系殺虫剤を中心に多種類の化合物が検出され、比較的低毒性といわれているものでも、同時に多種類の化合物が使用された場合、健康への影響が懸念される。家庭においても農薬成分を含む殺虫剤等の過剰な使用は控えることが必要である。
研究成果
1)Tsuji, K., Fusiwaki, Y., Mori, Y., Arashidani ,K., Nakajima, D., Fujimaki, H. and Goto, S.: Simultaneous analysis of termiticides in indoor air by using gas Chromatography Mass Spectrometry, J UOEH, 27(2), 151-160(2005)
2)辻 清美,長谷川一夫, 上村 仁,海野一彦:室内空気中のシロアリ駆除剤等の農薬成分濃度調査について,神奈川県公衆衛生学会誌,54,45(2008)
実施状況
エトフェンプロックスでシロアリ駆除処理した中古住宅では、室内や床下でわずかに検出され、温度の上昇による再放散も認められた。イミダクロプリドでシロアリ駆除処理した新築住宅では室内、床下ともに不検出であった。クロルフェナピルでシロアリ駆除処理した事務所からクロルフェナピルとフェニトロチオンが検出された。フェニトロチオンはシロアリ駆除直前に実施した害虫防除の薬剤成分であり、散布18日後でも高濃度を示したことから、その使用には注意を要することが示唆された。
研究成果
1)辻 清美,長谷川一夫, 上村 仁,海野一彦:室内空気中のシロアリ駆除剤等の農薬成分濃度調査について,神奈川県公衆衛生学会誌,54,45(2008)
2)Goto, S., Asada,S., Fujimaki, H., Mori, Y., Tanaka, N. and Nakajima, D. et al: Tumor-promotion activity and mutagenicity of 5 termiticide compounds, J UOEH, 26(4), 423-430(2004)
実施状況
シラフルオフェンとS421(共力剤)を成分に含む市販のシロアリ駆除剤にエトフェンプロックス、フェニトロチオン、イミダクロプリドをそれぞれ添加し、20Lの小型チャンバー*)に入れ、放散試験を行った。シラフルオフェンとエトフェンプロックスは空気中へわずかしか放散されなかったのに対して、フェニトロチオンとS421は空気中への放散量が多いことが判明した。イミダクロプリドは空気中へは放散されなかった。また、イミダクロプリドによりシロアリ駆除処理した新築住宅からも検出されておらず、空気中へはほとんど放散されないことが推定された。シロアリ駆除剤としては、低放散性のものを使用することが重要である。
*)日本規格協会:建築材料の揮発性有機化合物(VOC),ホルムアルデヒド及び他のカルボニル化合物放散測定方法-小型チャンバー法,JISA1901(2003)
研究概要
現在までプラスチック等に大量に使用されてきた臭素系難燃剤がその毒性や残留性のため使用が減少し、代替として、有機リン系難燃剤が増加してきている。室内では難燃剤がテレビ、掃除機、カーテンやOA機器などに多く使用されているが、これらの中には、発ガン性を有するものや接触性アレルギーの原因物質も含まれ健康影響が危惧される。そこで、一般住宅および自動車の室内空気汚染物質の実態調査を行った。
実施状況
一般住宅6軒において、夏および冬期に実態調査を行った。室内空気からリン酸トリエステル類7物質が検出された。また、ハウスダストからも7物質が検出された。リン酸トリス(2-エチルヘキシル)(TEHP)やリン酸トリクレシル(TCP)は室内空気からは検出されなかったが、ハウスダストからは検出された。ワックスなどに添加されているリン酸トリス(ブトキシエチル)(TBEP)は室内空気では夏にわずかしか検出されなかったが、ハウスダストから高濃度で検出された。さらに、今までほとんど調査が行われていない自動車(30台)の室内空気の実態調査を行ったところ、リン酸トリエステル類9物質が検出された。自動車室内空気のリン酸トリス2-クロロエチル(TCEP)濃度は年式により異なり、2008年式以降の自動車室内からは検出されないことが確認された。
研究成果
1)杉嵜佑樹,上村 仁,辻 清美,中島大介,兼島公香,後藤純雄:一般家庭内の有機リン系難燃剤の測定,平成22年度室内環境学会学術大会講演要旨集,134-135(2010)
2)杉嵜佑樹,上村 仁,辻 清美,中島大介,兼島公香,後藤純雄:自動車室内空気中の有機リン系難燃剤の測定,平成24年度室内環境学会学術大会講演要旨集,64-65(2012)
研究概要
受動喫煙に関する科学的根拠を実証するため、飲食店を中心とした施設において、室内環境中のニコチン、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド等有害化学物質の調査を行い、禁煙、分煙による受動喫煙防止対策の効果を検討した。
実施状況
ニコチン濃度は不完全分煙では、禁煙室が喫煙室のたばこの影響をうけたが、完全分煙では、その影響はわずかだった。たばこの分煙効果の判定には、たばこ由来の特異的な指標であるニコチン濃度の測定が有効であることが実証できた。同一空間で喫煙と禁煙を分けるだけでは分煙対策として不十分であり、壁等で仕切られていることが必要であることが明らかとなり、本県が全国で初めて制定した「神奈川県公共的施設における受動喫煙防止条例」(2010年4月施行)の科学的根拠の一つとなった。
研究成果
1)辻 清美,上村 仁,長谷川一夫,斎藤邦彦:受動喫煙防止に向けて-受動喫煙に関する調査結果から-,第23回公衆衛生情報研究協議会研究会抄録集,22-23(2010)
研究概要
室内濃度指針値策定等により、ホルムアルデヒド等の室内濃度は低下したが、多種類の未規制物質が代替品として建材に使用されるようになった。また、農薬成分などの多種類の準揮発性有機化合物(semi-volatile organic compounds、 SVOC)が複合的に使用されていることから、曝露評価による健康影響評価が重要となってきている。そこで、曝露評価手法の開発や多経路曝露評価に関する共同研究を行っている。
実施状況
曝露シュミレーションモデルの開発のために、チャンバーを用いて、防虫剤中の活性成分の放散速度や換気回数について検討した。放散試験はJIS A 1901の建築材料の揮発性有機化合物放散測定方法-小型チャンバー法に準拠して行い、各換気回数における放散速度を求めた。放散速度は換気回数に比例して増加し、換気回数に依存することが判明した。
曝露シュミレーションモデルの開発において、防虫剤等の製品から放散する化学物質の濃度を推定する上で放散速度を求めることは重要であり、小型チャンバー法は有用な評価系であると考えられる。
研究成果
1)辻 清美:空気質中のピレスロイド系殺虫剤の分析法の検討と放散試験試料及び再放出試料の分析,厚生労働科学研究費補助金,化学リスク研究事業,化学物質,特に家庭内の化学物質の曝露評価手法の開発に関する研究,平成18年度総括・分担研究報告書,15-23(2007)
2)辻 清美:空気質中のピレスロイド系殺虫剤の分析法の検討と放散試験試料及び再放出試料の分析2,厚生労働科学研究費補助金,化学リスク研究事業,化学物質,特に家庭内の化学物質の曝露評価手法の開発に関する研究,平成19年度総括・分担研究報告書,29-42 (2008)
3)辻 清美,長谷川一夫, 伏脇裕一,上村 仁:一般住宅の室内空気中濃度調査および201チャンバーを用いた防虫剤の放散に関する研究,厚生労働科学研究費補助金,化学リスク研究事業,化学物質,特に家庭内の化学物質の曝露評価手法の開発に関する研究,平成20年度総括・分担研究報告書,45-61(2009)
4) Sugino, M。, Toda, H。, Suzuki, T。, Nakada, K。, Tsuji, K。, Tokunaga, H。, Jinno, H。, Sugibayashi, K。: safety prediction of topically exposed biocides using permeability coefficients and the desquamation rate at the atratum cormeum, The Journal of Toxcological Sciences, 39(3), 475-485(2014)
実施状況
SVOCと総称される比較的高沸点(bp 約250~400℃)の化合物についても室内環境中の曝露媒体が重要な役割を担うことが最近の研究で明らかにされつつある。SVOCはガス状のみではなく、その多くが浮遊粒子状物質(SPM)やハウスダストに吸着した状態で存在し、存在形態により異なる経路(経気道、経口、経皮)で生体に取り込まれる。しかし、各媒体中のSVOCの存在に関する情報は極めて限られている。本研究では、室内環境中に存在する可能性のあるSVOCの中で、可塑剤、難燃剤、防蟻剤および殺虫剤に的を絞り、存在形態ごとの分別定量法の確立と全国規模の濃度情報の収集を行っている。この成果は今後予定される室内濃度指針値の新設や改定のための基礎データとなるとともに、これまで原因が特定できなったシックハウス症候群の事例について、原因究明に役立つことが期待されている。
研究成果
1)上村 仁:防蟻剤・殺虫剤による室内環境汚染と曝露評価,厚生労働科学研究費補助金,化学リスク研究事業,室内環境における準揮発性有機化合物の多経路曝露評価に関する研究,平成24年度総括・分担研究報告書,73-93(2013)
2)上村 仁:防蟻剤・殺虫剤による室内環境汚染と曝露評価,厚生労働科学研究費補助金,化学リスク研究事業,室内環境における準揮発性有機化合物の多経路曝露評価に関する研究,平成25年度総括・分担研究報告書,74-93(2014)