RSウイルス感染症

RS(respiratory syncytial)ウイルスによる感染症です。例年秋から冬にかけて主に乳幼児で流行する感染症で、2歳以下に多くの報告がみられます。症状としては軽い風邪のような感冒様症状から重症の細気管支炎・肺炎まで、様々な呼吸器の症状を起こします。特に乳児期早期(生後数週間から数ヶ月間)にRSウイルスに初感染した場合は重症化しやすいとされています。感染症法では定点把握疾患5類感染症に定められていて、指定された小児科から保健所に報告数が届けられます。

感染経路

RSウイルスに感染した人の咳やくしゃみを吸い込んだり(飛まつ感染)、ウイルスの付いた手や物(手すりやおもちゃなど)を触ったりなめたりすること(接触感染)で感染します。感染後、3~8日程度は他人へ感染させる恐れがあります。一度RSウイルス感染症にかかった場合でも、再度感染することがあります。

症状

RSウイルスに感染して4~6日後に鼻汁・食欲の低下、続いて咳やくしゃみ、発熱などの風邪症状が現れます。多くは軽症で済み、ほとんどが1~2週間で症状が改善します。重くなる場合は咳が続き、呼吸が苦しくなるなどの症状が現れ、細気管支炎や肺炎へ進展します。低出生体重児、心臓や肺、神経や筋に生まれつきの病気がある場合、また免疫不全がある場合には重症化する危険性が高くなります。
新生児や生後2~3カ月未満の乳児では典型的な症状が現れにくく、無呼吸発作などの重篤な症状を起こすことがあり注意が必要です。大人で感染した場合は、通常鼻汁やのどの痛み、咳といった風邪症状が現れます。

診断について

鼻やのどの分泌液からRSウイルスを分離する方法、迅速診断キットでRSウイルス抗原を検出する方法、また血清で抗体の上昇を確認する方法があります。

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治療について

RSウイルス感染症に対する特別な治療はありません。症状を和らげるための治療を行います。呼吸症状が重度の場合は入院の上、酸素投与や痰の吸引、呼吸の管理が必要な場合があります。入院が必要となるのはほとんどが6カ月未満の乳児です。

予防のために

RSウイルス感染症は0歳、1歳児に多くみられるため、咳などの呼吸器症状のある場合は可能な限りこれらの患児との接触を避けることが発症予防につながります。また、マスク着用による飛まつ感染の予防、手洗いによる接触感染の予防が大切です。子どもが日常的に触れるおもちゃや手すりなどをこまめに消毒することも大切です。
現在、RSウイルスのワクチンはありません。RSウイルスに対するモノクローナル製剤であるパリビズマブ(商品名:シナジス)があり、接種条件を満たす早産児、肺や心臓の病気をもつ小児、免疫が低下した状態の小児に対して流行時期に月1回の注射を行うことで重症化を予防することが期待できます。ただし、感染自体を予防する効果や病気を治す効果はありません。

※パリビズマブの接種条件

参考リンク

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