平成28年度 神奈川県感染症発生動向調査解析委員会報告
平成29年2月14日(火)開催
[出席委員] | |
委員長 | 森 雅亮(東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科生涯免疫難病学講座 教授) |
委員 | 今川 智之 (神奈川県立こども医療センター感染免疫科部長) |
委員 | 岡部 信彦 (川崎市健康福祉局健康安全研究所長) |
委員 | 片山 文彦 (小児科内科落合医院長) |
委員 | 木村 博和 (横浜市健康福祉局健康安全部医務担当部長) |
委員 | 近藤 真規子(神奈川県衛生研究所微生物部専門研究員) |
委員 | 笹生 正人 (笹生循環器クリニック院長 神奈川県医師会理事) |
委員 | 横田 俊一郎(横田小児科医院長 神奈川小児科医会長) |
[オブザーバー] | |
中井 信也(神奈川県厚木保健福祉事務所大和センター長) | |
高崎 智彦(神奈川県衛生研究所長) |
議題: | (1)平成28年の感染症発生動向調査(全数疾患、定点疾患)について |
(2)平成28年に話題となった感染症について
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(1) 平成28年の感染症発生動向調査(全数疾患、定点疾患)について
(全数疾患)
- 結核の報告数は減少傾向にある。肺結核が840件、無症状病原体保有者が498件であった。
- 腸管出血性大腸菌感染症が前年にくらべて増加した。
- 前年より調査対象となったジカウイルス感染症は、輸入感染4件が報告された。
- デング熱の報告数は減少し、すべて輸入感染であった。
- 急性脳炎は増加し、病型はインフルエンザウイルスが最多であった。
- 侵襲性肺炎球菌感染症は増加し、70歳以上が約半数を占めた。
- 梅毒の報告数は285件であり、前年161件と比べて著しく増加した。
(定点疾患)
- インフルエンザは、先シーズンは第1週より流行開始レベル、第4週に警報レベルを超え、第5週がピークであった。今シーズンは第46週と昨シーズンより早く流行開始レベルを超えた。
- RSウイルスは、前年より早く31週より増加しはじめ、前年より多く報告された。
- 感染性胃腸炎は、第48週に3シーズンぶりに警報レベルを超えた。
- ヘルパンギーナは前年より多く、24週より報告が増えはじめ、28週に警報レベルを超えた。
- 流行性耳下腺炎は1年を通じて、前年より多く報告がみられた。
- 流行性角結膜炎は、前年より多く、全国と比べても県内で多く報告された。
(2)平成28年に話題となった感染症について
○麻疹発生状況
- 麻しんの発生届出数は年々減少している。今年は、関西空港や羽田空港、コンサート会場に来ていた方の感染がありました。2015年に比べて多少増加しています(平成27年は7件、平成28年は8件)。
- 麻しん患者における麻しんワクチンを受けているかどうかを、年齢別に分けたところ報告があった件数の中で25~29歳代は、接種していたにもかかわらず、り患した方がいたという状況が分かっています。
- 週数別患者数ですが33週に患者が発生して、関係機関に情報提供をさせていただきました。
- 遺伝子型は、関西方面はH1で、関東はD8が多かったです。
○腸管出血性大腸菌O157の食中毒事件について
- 神奈川県の腸管出血性大腸菌感染症の届け出は 年々増加しています。昨年と今年の週数別届出数推移を比べるとやはり今年は(平成28年)は冷凍メンチかつ事件が起きましたのでかなりの数が増えている状況です(平成27年223件、平成28年270件)。
- 食中毒事件については、当初は感染症か食中毒かわからなかったので、当感染症情報センターが担当しました。調査と検査の結果、「メンチ喫食による食中毒」ということが判明してからは県庁生活衛生課が中心に担当しました。関係機関と連絡を取りながら連携・調整を図り、すみやかな対応を行いました。
○ウイルス検出状況について
- インフルエンザですが、流行シーズンからインフルエンザの場合は、9月~8月が1年という事になっています。2015/2016年シーズンと2016/2017年シーズンの途中までという事でご報告させていただきます。2015/2016年シーズンは、一番多かったのが2009年のパンデミックが、223件、香港型が52件、B型は、毎年春にかけて増えてきて138件検出されています。2016/2017年シーズンは、先ほども話にありましたが、例年より一か月早く流行がはじまり今警報レベルになっています。さらに1月2月で100件以上検査しているのですが、ほとんどが香港型H3が検出されております。
- 手足口病ウイルスの検出状況ですが、通常夏がピークになることが多いのですが、2016年は若干ピークがずれて秋にウイルス、検体依頼が多かったという事です。コクサッキーA6型が一番多くて29件取れております。A6型による手足口病は数年前から起こっておりましてこのような状況になっております。
- パレコウイルスについて注目してみますと、その下の流行性筋痛症患者、ウイルス性筋炎患者についてですが、小さな小流行が2回ありまして、6月これは、同じ学校の小学生でクラスはバラバラだったのですが、パレコウイルス3型がとれております。10月 これは、同じ職場で医療機関職員ですが、その中で3例罹ってしまったという状況です。パレコウイルスは、乳児では無菌性髄膜炎、成人するとこのような筋痛症が時々報告されております。
○梅毒の発生状況について
- 梅毒は、年々患者数が増えております(平成27年161件、平成28年285件)。男女別でみると、どこの年代でも届出数で上がっています。
- 今後注目が必要な感染症の一つである。