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2025年4月9日更新

百日咳

グラム陰性桿菌である百日咳菌(Bordetella pertussis)という細菌が原因の感染症です。一部はパラ百日咳菌(Bordetella parapertussis)も原因となりますが、感染症発生動向調査で届出が義務づけられているのは、百日咳菌による百日咳だけです。名前の通り、長い間激しい咳が続くのが主な症状です。学校や幼稚園・保育所での集団感染や、地域において流行が発生することがあります。感染症法では2017年までは5類感染症定点把握対象疾患でしたが、2018年から5類感染症全数把握対象疾患となりました。また、学校保健安全法では第2種学校感染症に指定されており、百日咳と診断された場合は「特有の咳が消失するまで、または5日間の適正な抗菌薬療法が終了するまで」は出席停止の扱いになります。

感染経路 症状 診断
治療 予防 参考リンク

感染経路

百日咳菌に感染した人の鼻咽頭や気道からの分泌物による飛まつ感染、および接触感染によって人から人へ感染します。

症状

百日咳菌に感染してから5~21日(主に7~10日)後に、症状が現れます。初期はかぜ症状に似た鼻水、咳、発熱などが現れますが、1~2週間かけて次第に咳が激しくなります。顔を真っ赤にしてコンコンと激しく咳をする「スタッカート」や、咳をした後にヒューっと音を立てて大きく息を吸う「ウープ」を伴う咳が特徴的です。咳の症状は数週間かけて少しずつ改善していきますが、回復までに数か月かかることもあります。乳児では咳の症状が目立たず、嘔吐や無呼吸によって生命が脅かされることもあります。また、合併症として、肺炎や稀に脳症を伴うことがあります。

診断について

2週間以上の長引く咳や、特徴的な咳(スタッカート、ウープ)の症状などから診断されます。検査としては菌の培養や遺伝子検査、抗原検査、抗体検査がありますが、大人では鼻や咽頭のぬぐい液から百日咳菌を分離・培養するのは難しく、PCR法やLAMP法といった遺伝子検査が有力な検査法として期待されています。小児では、抗菌薬投与前に百日咳を疑っていることを検査室に伝えたうえで、菌の分離・培養検査の実施が望まれます。最近、鼻咽頭ぬぐい液からイムノクロマト法で抗原を検出する方法が検査診断に用いられています。

治療について

百日咳菌に有効な抗菌薬の投与や、それぞれの症状に対する対症療法が行われます。抗菌薬は主に、エリスロマイシン、クラリスロマイシン、アジスロマイシンといったマクロライド系といわれる抗菌薬が用いられます。通常、菌の排出は咳の症状が現れた時期から約3週間持続しますが適切な治療が行われた場合は治療開始から5日後には菌の排出が抑えられます。近年、マクロライド系抗菌薬に耐性の百日咳菌が海外で増加し、問題になっています。

予防のために

新生児・乳児は百日咳に罹患すると重症化しやすいため、呼吸器症状のある年長児や大人はマスクをつけるなど、咳エチケットを心がけ、百日咳含有ワクチン未接種あるいはまだ1回しか受けていない乳児との接触を可能な限り避けるなど、感染予防が大切です。
予防には、百日咳含有ワクチンが有効です。百日咳含有ワクチンは、日本では、2025年現在、5種混合ワクチン、4種混合ワクチン、3種混合ワクチンの3種類があり、生後2か月から5種混合ワクチン(百日咳・ジフテリア・破傷風・ポリオ・ヒブ(インフルエンザ菌b型)の混合ワクチン:初回3回、追加1回の計4回接種)が小児の定期接種に用いられています。日本小児科学会では、定期接種に加えて就学前にも任意接種として、百日咳含有ワクチン(DPTワクチン)の接種が推奨されています。詳しくは、日本小児科学会が推奨する予防接種スケジュール外部サイトのPDFが別ウインドウで開きますをご参照ください。

参考リンク

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