2023年11月28日掲載

侵襲性肺炎球菌感染症

感染経路

国内の調査では、1歳児の30~50%、高齢者の3%程度が症状を伴わずに鼻腔に保菌しており1)、肺炎球菌感染症の患者や保菌者等から接触感染や飛沫感染で伝播します。


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肺炎球菌感染症について

菌血症(血液の中に菌が存在する状態)を伴わない肺炎や中耳炎など、侵襲性感染症には至らずに治癒することも多く、市中肺炎の2割から3割2)が肺炎球菌性肺炎です。一方、髄膜炎や敗血症、菌血症を伴う肺炎など、重症の侵襲性肺炎球菌感染症を発症することがあります。


2)

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症状

小児では、高熱とともに不機嫌など感染巣のはっきりしない菌血症が多くみられます。髄膜炎を起こすと、意識障害や痙攣の他、大泉門膨隆や嘔吐なども観察されます。小児では肺炎球菌性中耳炎から髄膜炎に進展する症例もあります。
成人では、60%が菌血症を伴う肺炎、15%が髄膜炎とされます3)。髄膜炎は高熱や頭痛とともに意識障害や痙攣を伴います。敗血症は高熱の他、血圧低下などのショック症状・意識障害を伴う場合があります。


3)

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診断と届出について

肺炎や中耳炎など侵襲性ではない肺炎球菌感染症は保健所への届出対象ではありません。ただし、ペニシリン系の抗菌薬に耐性の肺炎球菌感染症については、全国約500の基幹定点医療機関から患者数が保健所に報告されています(定点報告)。
一方、髄液や血液、関節液や腹水など、本来無菌であるべき部位から肺炎球菌が検出された場合を侵襲性肺炎球菌感染症と定義しています。侵襲性肺炎球菌感染症を診断した医師は全例を保健所へ届出していただく必要があります。髄液を検体とする場合は病原体抗原の検出のみでも届出可能です(全数報告)。

治療について

通常、肺炎球菌性肺炎ではペニシリン系の抗菌薬がよく使用されますが、ペニシリン系の抗菌薬に耐性の肺炎球菌も多く、侵襲性肺炎球菌感染症のうち髄液検体4)の3割がペニシリン耐性5)と報告されています。判定基準が変更された髄液以外に由来する検体でのペニシリン耐性率は3%です。侵襲性感染症を発症した場合にはセフェム系の抗菌薬であるセフトリアキソンや、カルバペネム系の抗菌薬が使用される場合も多いですが、カルバペネム系の抗菌薬であるイミペネムでは痙攣の副作用に注意が必要です。さらにペニシリン系やセフェム系の抗菌薬に耐性の肺炎球菌感染症には、バンコマイシンが使用されることもあります。


4)
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予防のために

小児:我が国では沈降7価肺炎球菌結合型ワクチン(PCV7)の公費助成が2010年から始まり、2013年4月から小児の定期接種に導入されました。また、同年11月から沈降13価肺炎球菌結合型ワクチン(PCV13)に切り替わりました。 定期接種導入後、PCV13に含まれる血清型の侵襲性肺炎球菌感染症は97%減少しました。しかし、他の血清型の肺炎球菌への置き換わりがあり、小児人口10万人あたりの罹患率は2010年には約25例であったところ、2019年は約11例と半減に留まっています(菅班)。2023年には、PCV15が国内でも製造販売承認され、さらに海外では、血清型の対象を広げたPCV20の臨床開発も進められています。

高齢者:23価肺炎球菌莢膜ポリサッカライドワクチン(PPSV23)は我が国では1988年から承認されていましたが、脾摘後など限られた症例でのみ接種されていました。
2014年から65歳以上および60~64歳で基礎疾患がある高齢者に1回の定期接種が開始されました。
ワクチンに含まれる23の血清型に対する侵襲性肺炎球菌感染症の発症予防効果は45%とされています。このうち65歳以上に限ると予防効果は39%でした(大石班6))。

また年齢に関係なく、肺炎球菌感染症に罹患するリスクが高いと考えられる者に対して、PCV13が任意接種として接種可能となりました。

新型コロナウイルス感染症の流行前後である2019年と2020年を人口10万人当たりの届出数で比較すると、乳幼児で11.05例から6.00例、成人で5.59例から2.75例と、いずれもほぼ半減しました。新型コロナウイルス感染症の流行により、マスクや手指消毒といった感染対策が徹底された影響が考えられます。予防には基本的な感染対策が重要です。


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参考リンク


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