2023年11月28日掲載
主な感染経路は飛沫感染です1)。健常者の鼻咽頭から、成人では5%程度、15歳未満の小児では17%でインフルエンザ菌が検出されたという報告があります2)。
侵襲性でないインフルエンザ菌感染症の症状には、中耳炎や副鼻腔炎、気管支炎などがあります。
侵襲性インフルエンザ菌感染症の症状はより重篤で、頭痛、嘔吐、意識障害などを起こした場合は髄膜炎を、高熱やショックを起こした場合は敗血症を疑います。
Haemophilus influenzae による侵襲性感染症として、本菌が髄液又は血液などの無菌部位から検出された感染症としています。
細胞壁合成酵素の変異(BLNAR注1)、抗菌薬を分解する酵素を出す(BLPAR注2)、クラブラン酸にも耐性をもつ(BLPACR注3)など、インフルエンザ菌は抗菌薬が効きにくくなっています。
敗血症や髄膜炎といった重篤な病態ではカルバペネム系の抗菌薬を基礎に、セフトリアキソンまたはバンコマイシンを併用することを考慮します。4ヵ月未満の乳児においてはアンピシリンとセフトリアキソンを併用します。その後感受性が判明次第、抗菌薬を変更します。
注1 BLNAR:β-lactamase nonproducing ampicillin resistant H.influenzae=β-ラクタマーゼ非産生アンピシリン耐性菌
注2 BLPAR:β-lactamase producing ampicillin resistant H.influenzae=β-ラクタマーゼ産生アンピシリン耐性菌
注3 BLPACR:β-lactamase producing Amoxicillin/clavulanate resistance H.influenzae=β-ラクタマーゼ産生アモキシシリン・クラブラン酸耐性菌
生後2か月から5歳未満の小児については、Hibワクチンは定期接種として接種できます。インフルエンザ菌のうち莢膜のある血清型b(Hib)に関しては、我が国では2008年に任意接種が開始され、2013年4月の予防接種法の改正に伴いHibワクチンは定期接種に組み込まれました。
2008~2010年までの3年間の5歳未満人口10万人当たりのHib髄膜炎罹患率は、7.1~ 8.3(平均7.7)でした3)。公費負担開始後5年間の調査では2014年以降Hibによる侵襲性インフルエンザ菌感染症は見られず、症例は以前の93%減となりました4)。2018年の人口10万人当たりの侵襲性インフルエンザ菌感染症は5歳未満0.97、65歳以上1.00と報告されています。Hib以外のインフルエンザ菌に関してはワクチンの予防効果はありません。
新型コロナウイルス感染症の流行により、手指消毒やマスクなどの基本的な感染対策が徹底され、侵襲性インフルエンザ菌感染症の届出は2020年第15週の緊急事態宣言前52週間の484件から、宣言後52週間の183件と、約4割に減少しました1)。このことから、咳エチケット、手洗い等の基本的な感染対策を徹底することが、予防のために重要です。
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