2024年10月29日掲載
伝染性紅斑
ヒトパルボウイルスB19によるウイルス感染症で、頬(ほお)がリンゴのように赤くなることから別名「リンゴ病」ともいわれます。例年冬から初夏にかけて報告数が増加し、幼児期に多くみられますが、乳児や成人でもかかることがあります。感染症法では定点把握対象疾患5類感染症に分類されており、指定された小児科(定点医療機関)から保健所に1週間ごとに報告されています。
感染経路
ヒトパルボウイルスB19に感染した人の咳やくしゃみを吸い込むことによって感染する場合(飛沫感染)と、ウイルスのついた手を介して口や鼻などの粘膜から感染する場合(接触感染)があります。ウイルスの感染力はかぜ様症状が現れる時期(発疹の出現前)が最も強く、発疹が出現した時にはほぼなくなります。このウイルスは人にのみ感染します。
症状
ヒトパルボウイルスB19に感染して通常4-14日(21日程度になる場合もある)の潜伏期間の後、頬(ほお)に紅色の発疹が現れます。それから数日して、手足や体幹部に「網目状・レース状」などと表現される発疹がひろがり、1週間から10日程度の経過で消失します。発疹はかゆみを伴うことがあります。発疹が現れる数日前に、発熱、鼻水、頭痛などのかぜ様症状がみられますが、感染力は発疹出現前のこの頃に最も強くなります。加えて、成人では手首や足首、膝などの関節痛を伴うことがあります。
また、妊婦では胎児水腫や流産を、溶血性貧血の患者では汎血球減少をおこすことがあります。
診断について
伝染性紅斑に特徴的な、頬や手足・体幹の発疹から診断されます。成人では典型的な皮膚の症状が現れないことも多く、血液検査でヒトパルボウイルスB19に対する抗体の上昇を確認することで診断が行われる場合があります。
治療について
伝染性紅斑に対する特別な治療法はありません。発熱や関節痛、皮膚のかゆみなどへの対症療法が行われることがあります。
予防のために
発疹が現れた時には既に他人への感染力がなくなっているため、伝染性紅斑の患者との接触を避ける対策を事前に立てることは困難です。伝染性紅斑のワクチンはなく、外出後の手洗いやうがいが予防に大切です。