染色法
(微生物部)
1.グラム染色法
(1)グラム染色法(Hucker変法など)
- 細菌を色素によって染め分ける方法の一つで、細菌分類学の基礎になる重要な染色法である。
- デンマークの学者ハンス・グラム(Hans G.j.Gram)によって1884年に考案された。
① 原理
- 細菌はグラム染色によって2種類に大別できる。
グラム陽性 : ゲンチアナ紫やクリスタル紫で染色され、媒染剤(ルゴール等)によりレーキを形成し、これはアルコール等の脱色液でも脱色されない。 グラム陰性 : グラム陽性物質がないため、アルコール等で色が抜け落ちて顕微鏡で確認できないことから、サフラニンやフクシン等の赤い色素で染めた(後染色、対比染色)もの。 - 染色性の違いは細胞壁の構造の違いによる。
グラム陽性菌と陰性菌の間に見られる細胞壁の大きな違いはこの両者が生物学的に大きく違うことを反映している。
② 劉(Ryu・台湾)の方法
- 3%KOHを用いたグラム鑑別
- スライドグラス上に少量の3%KOHをとり、被検菌を混和し、変化がなければグラム陽性、糸を引けば陰性(新鮮な試薬と新鮮培養菌を使用)である。
(2)細菌の形態と染色性
① 形態
② 染色性
<代表的な細菌の染色例>
グラム陽性球菌
グラム陰性桿菌
染色手順―ハッカー変法
*染色に使用する菌は、新鮮培養菌を用いる。
グラム陽性菌は至適培養時間を経過すると、徐々に陰性の色調を呈するので注意する。
(バシラス属、クロストリジウム属は 培養後、数時間から陰性の色調になる場合がある)
<グラム染色と形態>
2.その他の染色法
(1)単染色 一種類の染色液で染める方法
- レフレルのアルカリ性メチレンブルー(薄いブルー)
一般に細菌細胞と細胞の核を濃く染めるが、細胞質は薄く染める。膿や喀痰からの細菌検出に用いられることが多い。 - パイフェル液(赤色)
チールの石炭酸フクシン液を5-10倍に薄めた液である。
細胞質も濃く染めるため菌の形を見るのに適している。グラム染色で染まりにくいレジオネラやカンピロバクターの形を観察するにはパイフェル液が適している。(チールの石炭酸フクシン液は、結核菌の染色に用いられる)
(2)鞭毛染色 特殊染色法
- 運動性の器官である鞭毛は、その位置や数が分類に重要な場合がある。
- 鞭毛は非常に細い器官であり、本来は電子顕微鏡で観察する。特殊な方法で鞭毛を太くして染め出し、光学顕微鏡で観察が可能になる。
- 鞭毛にタンニン酸を付着して太くし、それを染めることで、光学顕微鏡で観察することが可能になった。
- 染色液の取り扱いや染色手技が難しく、また鞭毛の発育状態も大きく影響する。
レイフソン法が有名であるが、このほかに、劉(Ryu)の方法があり、より取り扱いが容易になっている。