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[2023.2.27 掲載]

地域調査部の業務紹介

小田原分室における食品添加物検査の紹介

1.はじめに

衛生研究所には、管理課、企画情報部、微生物部、理化学部、地域調査部の1課4部があります。地域調査部は、小田原分室、細菌検査グループ、化学検査グループの1分室2グループからなり、小田原分室は小田原市内の県合同庁舎内にあります。

小田原分室内の食品化学検査室及び分析機器室の写真

小田原分室内の食品化学検査室及び分析機器室

地域調査部では、衛生研究所が担う役割のうち試験検査を主な業務とし、さまざまな行政検査や一般依頼検査を担当しています。行政検査では、三類感染症や食中毒による病原性細菌検査、食品や環境に関する細菌検査、残留農薬や食品添加物等の理化学検査、食品中の有害金属検査などを実施しています。また一般依頼検査では、給食従事者等の保菌者検索として赤痢菌・腸管出血性大腸菌O-157のふん便検査、飲料水検査及びプール水検査を実施しています。今回、これらの検査のうち、小田原分室で行っている食品添加物の検査を紹介します。

2.食品添加物検査の目的

食品添加物は、保存料、甘味料、着色料、発色剤、漂白剤など、食品の製造過程や食品の加工・保存の目的で使用されます。これらの食品添加物には、使用可能な食品の種類や量についての基準が定められており、この基準に適合しているか確認することを目的として、検査を実施しています。検査の対象は、神奈川県内の製造所で作られている食品や県内の店舗で実際に販売されている食品です。また、添加物に関する食品の表示が正しいことを確認するためにも、検査を実施しています。

表:小田原分室で実施している食品添加物検査の項目例

保存料 安息香酸、ソルビン酸、デヒドロ酢酸、パラオキシ安息香酸エステル類
甘味料 サッカリン、アセスルファムカリウム
着色料 酸性タール色素(指定着色料12種類及び指定外着色料6種類)
発色剤 亜硝酸ナトリウム(亜硝酸根)
漂白剤 二酸化硫黄及び亜硫酸塩類

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3.食品添加物検査の流れ

検査は、(1)食品の受け取り、(2)検査用試料の採取、(3)試料からの食品添加物抽出、(4)機器による測定及びデータの解析、という工程で行います。例えば、甘味料であるサッカリンの検査は以下のような流れです。

(1)食品の受け取り
保健福祉事務所などの食品衛生監視員が製造所や店舗から検査のために抜き取りした食品を受け取ります。このとき、食品の搬送方法や状態に問題が無いことを確認します。

(2)検査用試料の採取
受け取った食品は、細かくして検査用試料とします。食品添加物は食品中に均一に含まれているとは限らないため、食品全体を細かくしてからよく混和することで、サッカリンの含まれている量をできるだけ均一にします。固形の食品はフードプロセッサーで細切する、飲み物等の液状の食品はよく転倒混和する、乾物はハサミで小さく切った後フードプロセッサーで細切する、粘りが強くフードプロセッサーが使えないものは包丁で細切する、飴など固いものはミルで砕く、といったように食品の形態によって均一化の方法を変えています。均一化の後、検査に必要な量を秤取ります。

フードプロセッサーや包丁を使い、細切均一化する作業の写真。

均一化の様子

(3)試料からの食品添加物抽出
秤取った試料から、食品添加物だけを取り出します。この取り出す作業が抽出です。サッカリンの場合は、透析という方法により抽出します。試料と酸性の溶液を混ぜて半透膜の袋に封入し、水の入った試験管に入れます。半透膜は、低分子物質やイオンを透過するため、低分子物質であるサッカリンは袋の内側から、膜を透過して外側へ水に溶け込んでいきます。18~24時間、時々攪拌しながら置いておくと、袋の内側にあったサッカリンは外側の水へ透過されます。この外側の水を試験溶液として、次の工程に進みます。 

透析によりサッカリンを抽出する作業の写真
透析によりサッカリンを抽出

補足:サッカリン以外の食品添加物では、蒸留やホモジナイズなどの方法で抽出しています。

水蒸気蒸留により安息香酸、ソルビン酸、デヒドロ酢酸、パラオキシ安息香酸エステル類を抽出する作業の写真
水蒸気蒸留により安息香酸、ソルビン酸、デヒドロ酢酸、パラオキシ安息香酸エステル類を抽出

蒸留により二酸化硫黄及び亜硫酸塩類を抽出する作業の写真
蒸留により二酸化硫黄及び亜硫酸塩類を抽出

ホモジナイズにより亜硝酸ナトリウム抽出する作業の写真
ホモジナイズにより亜硝酸ナトリウムを抽出

抽出方法によっては、抽出液に固形物が残る、機器分析を妨害する成分が多く含まれるなど、そのままでは測定できないものがあります。この場合、ろ過して固形物を除く、液液抽出により添加物を水から有機溶媒に移し、水に溶けやすい妨害成分を除く、などの操作をさらに行います。

固形物をろ過して除く作業の写真
固形物をろ過して除く

液液抽出で水(下)から有機溶媒(上)に添加物を抽出して妨害成分を減らす作業の写真
液液抽出で水(下)から有機溶媒(上)
に添加物を抽出して妨害成分を減らす

(4)機器による測定及びデータの解析 

高速液体クロマトグラフで測定する様子の写真
高速液体クロマトグラフで測定する様子

出来上がった試験溶液を高速液体クロマトグラフで測定します。測定して得られたデータを解析し、出力された数値から食品中に含まれているサッカリンの濃度を算出します。

補足:高速液体クロマトグラフの他にガスクロマトグラフ、分光光度計などを使う検査もあります。

ガスクロマトグラフの写真
ガスクロマトグラフ

分光光度計で測定する様子
分光光度計で測定する様子

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4.検査結果の取扱い

食品添加物検査の流れに沿って実施した作業に関して、実施した日や作業者、使用した試薬や機器、機器から出力されたデータ、計算過程など、作業内容について、記録をしています。この記録や計算に誤りがないか、作業内容に問題が無いか、複数名で確認をとります。問題がないと判断されたところで検査結果をとりまとめ、成績書を作成します。成績書の内容に問題がないか再度確認したのち、依頼者である食品衛生監視員に検査結果を回答します。

5.これまでの検査結果

衛生研究所で実施した詳しい検査の内容は毎年度取りまとめ、公開しています。
ホームページ内で閲覧可能ですので、ぜひご覧ください。

(地域調査部)

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