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留学生活を経験してひろがった未来
~失敗するかもしれないが、まずトライしてみることが大切~

大西修平さんプロフィール写真
 

大西 修平 (おおにし しゅうへい) さん


1986年生まれ。現在35歳。ウェブサービスの提供及び留学サポートエージェント事業を行う「インウェブアウト」の代表。小学校一年生の時、デュシェンヌ型筋ジストロフィーを発症。

「ハワイの大学で留学・勉強したい!」という夢を叶えるため、メイク・ア・ウィッシュ・オブ・ジャパンの協力のもと、公立高校在学中に一時渡米。高校卒業後、ハワイはホノルルに留学し、語学学校に入学、その後は、ハワイ大学のカピオラニコミュニティカレッジ(KCC)で学び、リベラルアーツ専攻で準学士を授与されて卒業。帰国後、ウェブ制作の勉強をし、2016年、フリーランスでウェブ制作事業「インウェブアウト」を立ち上げる。2019年ハワイと繋がれる仕事をしたいという思いがあり、「インウェブアウト留学センター」を立ち上げる。

大西さんはなぜ留学をしようと思われたのでしょうか。

留学した動機・理由は2つあります。1つ目は高校時代、日本だけに限らず、もっといろんな人と話したい、英語を話せるようになれば世界中の人と会話ができると思ったことです。2つ目は英語の勉強が楽しかったことです。

留学を志した時はあまり病気のことを考えていなかったので、病気のことは意識しないで飛び込みました。留学に向けてどうやって問題解決ができるか考えていました。

高校時代の大西さんの写真

留学に向けてどのように問題を解決し、どのようなサポートを受けましたか?

留学中の身の回りのサポートはすべて自分で手配しました。私は寝返りも自分でできないため、最初は日本からハワイに一緒に行って介助してくれる人を探すところから始めました。

現地についてからは一緒に住んでくれる人を探しました。また、現地で様々な場面でサポートしてくれる人を探すため、ホノルル中の掲示板等に「サポート依頼」の掲示を貼り出したり、障害者団体等に相談したりと様々な手段を使ってサポートが必要な場面で助けてもらいながら過ごしました。

病気を抱えながらの留学生活はものすごく大変でした。アメリカ社会は「自己責任」という考え方が根付いているため、病気を患った状態で留学して何か困ったことが起きても、「留学したのは自身の責任」ということになります。

そのため、他の人に自分の置かれている状況を理解してもらうために説明すること、「セルフアドボケイト」が必要でした。

カピオラコミュニティカレッジでの大西さんの写真

「セルフアドボケイト」は具体的にどのようなことをされたのでしょうか。

私は筋ジストロフィーという病気により身体を自由に動かすことが困難で、お風呂やトイレ等を自分で行うことができないため、誰かのサポートを受けなければなりません。留学するまでは家族に介助してもらっていたので、家族以外の人から介助してもらうことに慣れるのはとても大事なことでした。またそれを英語で伝えなければならなかったので、容易ではありませんでした。

例えば、私が一人で街に出かけていて、急にトイレに行きたくなり、周りにいた見ず知らずの人に「助けてください」と声をかけたことがあります。私の場合、大人二人に介助してもらわなくてはならないため、二人の人に介助をお願いし、助けてもらいました。恥ずかしさもありましたが、遠慮していられる状況ではなかったため、助けを求めざるを得ませんでした。

その時に自身の状況(障害の程度、何ができて何ができないか等)や自分が相手に助けてもらいたいことをきちんと具体的に説明できなければならないと思いました。セルフアドボケイトをするためには、「自分は何ができて何ができないか」を見極めることが大事だと思います。病気の症状は人によって異なるため、自分に必要なサポートは自分自身にしか分かりません。

留学生活を通しての印象的な体験とご自身の変化について教えてください。

留学生活はとても苦労が多くて、大変な思いもしましたが、二度と味わえない素晴らしい経験ができたと思っています。病気は関係なく、睡眠や食事の時間さえ惜しんでたくさん勉強しました。また、勉強の合間を縫って、できる限りボランティア活動(沖縄フェスティバルのお手伝い、日本語チューター、チャリティ基金の募集、ビーチの掃除、地元の病院の高齢者との交流等)を行ったり、現地の出雲大社のお祭りや、パーティーに積極的に参加したりして人脈を広げました。

海外に出たからこそ見えたもの、気づけたことがあると思います。多感な時期に海外で生活し、学んだことは私にとって、今にも繋がる財産になりました。

留学から帰国後、アメリカと日本の文化の違いに直面する場面があり、様々な方にお世話になりながら日常生活を行う上で、日本の社会についてもっと勉強しなければならないと感じたため、今も勉強しています。

学位授与式での大西さんの写真

帰国後、留学支援事業を始めたそうですが、どのようなきっかけだったのでしょうか。

帰国後10年くらい、何かしたいと思いながらも何もできないで過ごしていましたが、自分のできることを検討した結果、ウェブサイト制作が得意だったので、2016年からホームページを作りたいという方向けにウェブ制作事業「インウェブアウト」を立ち上げました。ウェブ上で何でもできるようにしたいという思いがあり、ウェブにインして、最終的にはみなさんにアウトプットしたいという思いで、「インウェブアウト」という造語を社名にしました。

また、障害を持った方向けの留学「相談」事業も始めました。2018年秋、休暇でハワイに行く機会があり、せっかくなので母校(KCC)を訪れたいと思いハワイ大学に連絡してみたところ、恩師や留学センターのオフィスの方が集まってくれて、ウェルカムバックパーティーを開いてくれました。その時、大学側から現在の自身の近況を聞かれた際、「もしよかったら大学と一緒に何か仕事をしてみないか」というご提案をいただきました。これが本格的な留学支援事業の始まりでした。

世界各国を旅する大西さんの写真

留学支援事業ではどのようなサポートを行っていらっしゃいますか?

留学支援事業の概要は、日本からハワイに留学したいという学生さんを募り、大学に入学するまでのサポートです。学生さんから具体的にどのような留学をしたいか意向を伺い、学校の紹介から、留学手続き、現地でのホームステイ先やアパートメント探しのお手伝い等、一通りのサポートを行っています。

また、自分の経験を生かした、障害のある方向けの留学支援も行っています。これは、語学学校と提携し、障害のある学生さんに具体的、現実的に行ける方法をご提案します。

留学支援のご相談をいただく学生さんは、高校卒業後に留学を希望する方が多いです。私も高校卒業後に留学した経験があることから、そのような学生さんの気持ちは分かるので、心境等の面でも自身の経験を生かした支援ができると思います。

留学支援事業を始めてから改めて現地の友人や知り合いに連絡を取る等して、様々なサービスを提供できるような体制を整えることができました。また、留学していた頃からだいぶ時間が経ちましたが、一事業者として母校KCCの先生や留学生オフィスのスタッフの方々がバックアップしてくださったので、様々な留学支援ができるようになりました。自分自身にとっても学びが多かったです。

また現地の語学学校との契約は私自身が現地を訪れた際に、飛び込み営業を行ったところもあります。

私自身は好奇心が旺盛なので、「とりあえずトライしてみよう」という精神で、自分で切り開いていけた面があると思います。しかしそれよりも周りの方々にバックアップしてもらい、切り開かせてもらったという部分の方が多いので、「自分がやった」という感じよりは、「たまたまできた」ということが多いです。もしかしたら、自身が知らないところでたくさん助けてもらったのだと思います。特に、母校(KCC)の先生や、留学支援センターのオフィスの方々には留学していた頃も事業を始めてからも本当に良くしてもらっているので、そこは人徳によるところだと思います。

ご自身で行われている留学支援事業の中に医療的なサポート等はありますか?

病気や障害のある方に対し、ハワイ大学への留学支援を行うにあたっては、大学側が留学保険(医療保険)への加入を必須としています。これにより、医療機関や医師によっても対応は異なりますが、アメリカ食品医薬品局(FDA)が承認している薬品で、基礎疾患を持っている場合や病気の症状があり、薬品を必要としている場合は、日本で認可されている薬品と同等の薬品を保険の適用内で手配できる可能性があります。

また、日本の留学保険は健康医療保険だけではなく、盗難や損害にも対応しているため、留学を希望する学生に対しては、日本の留学保険に加入することをお勧めしています。

私の場合、留学中に車いすが壊れた際は、現地の筋ジストロフィー協会に相談し、見積をしてもらい、本来現地の人しか加入できない協会に特別に加入させてもらい、協会の寄付金で対応してもらいました。

障害者の支援は、日本では行政が行ってくれますが、アメリカでは寄付を受けたNPO法人が行っています。アメリカでは「できる人ができることを」という精神が根付いているので、手厚い行政の支援がないからこそ、「セルフアドボケイト」のような考え方が生まれるのではないかと思います。

ハワイ大学マノア校での大西さんの写真

まずトライしてみることが大切
~大西修平さんからの応援メッセージ~

重い病気や重度の障害のある人は生きにくい世の中です。でも、できないことを考える前に、どうやったらできるかを考え、色々な人にお話や意見を聞くとよいと思います。失敗するかもしれないですが、まずトライしてみることが大切だと思います。やってみると案外できそうな時もあります。それでもどうしてもできないこと、は個人的にはあきらめてもいいと思います。

人生を楽しみましょう。今を楽しみましょう。

公開:2021年12月
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