Work
特集 Work vol.5
どんぐり使って就労支援!?
幸せを繋ぐ 挑戦と行動
株式会社まちふく
どんぐり使って就労支援!?
幸せを繋ぐ 挑戦と行動
「どんぐり」というと、絵を描いたり、独楽にしたり、ペットボトルに入れてマラカスにしたりと小さい頃に拾い集めて遊んだという人も多いのではないでしょうか。しかし、今から1万年以上前の縄文時代、日本人の主食は「どんぐり」だったそうです。ここに目を付けた「株式会社まちふく」(田中博士代表)は、試行錯誤を重ねながら、「どんぐり食品」を開発。今回は開発までのストーリーと製造の裏側をご紹介します。
どんぐりって食べられるの?
遊ぶおもちゃにはなるけれど、どんぐりが食べられるものだとは考えにくいものです。しかし、どんぐりの実には日本人に必須とされるミネラルやカルシウムが豊富で、レモン以上のビタミンC、ブルーベリー以上のポリフェノールなど、さまざまな成分が含まれています。老化防止やリラックス効果、デトックス(ダイエット)効果が認められ、「体にやさしく、栄養価の高い食材」であることが証明されています。
どんぐり源さんと出会い、そして事業展開へ
どんぐりの魅力を知り、パンや麺類、ケーキなど、食用化への挑戦を続ける姿から、江戸時代の発明家・平賀源内を由来に〝どんぐり源さん〟の愛称で親しまれている平賀国雄さん。町のノーベル賞と呼ばれる「東久邇宮記念賞」を受賞したどんぐり源さんと、「障がい者のために何かできる仕事はないか」という田中さんが知人を通じて出会い、「どんぐりを通して社会(障がい者)に貢献したい」と意気投合。8年前に、全国でも類を見ない〝どんぐり食品の製造・販売を主軸〟とした就労支援事業所障害福祉サービス事業所「どんぐりビレッジ」が立ち上がりました。
どんぐり食品ができるまで
商品化第1号となった「どんぐり煎餅」を皮切りに、麺やドーナツ、ジャーキーなど、数々のヒット商品を連発。どんぐりは粉末状にすると小麦粉の代用となることから、多岐にわたる商品づくりに活用できますが、商品化されるまでには地道な作業がありました。
商品製造には、利用者がすべての工程に携わります。どんぐりの収穫期間は秋の約3か月。この間、商品を作るのに必要な1年分のどんぐり1.2~1.3tほどを収穫します。これを天日干しした後、洗って選別作業を行います。そして、選ばれたどんぐりを再度干して乾燥させます。その後、焙煎により殺菌・保存効果を高め、一粒一粒、殻から実を取り出します。取り出した実を粉末状にして、加工前のスタートラインにやっと立つことに。ここまでの工程のほとんどが手作業で行われるという、手間のかかる仕事になっています。
現在、商品販売しているのは10種類。煎餅をはじめ、クッキーやワッフル、かりんとうとドーナツを掛け合わせた新食感食品「カリンドー」、ポリフェノールたっぷりでアンチエイジング効果が期待できるカフェインレスコーヒーなどがあります。中でもイチオシとしているのが「どんぐり茶」で、ほんのり甘い香りと香ばしい味わいを楽しむことができます。
また、最新商品としては、アメリカOTCOオーガニック認定機関認定品の「どんぐりのオートミール」を開発しています。
ECサイト「organic donguri どんぐりの木」をオープン
製造された「どんぐり食品」は、提携するオーガニック店などに卸されるほか、自社チラシでの通販やイベント出店などを主な販促経路としています。これに加え、インターネットから簡単に商品購入ができるECサイト「organic donguri どんぐりの木」をオープンしました。
どんぐりを通じて、幸せを届ける
商品製造から販売までの随所に利用者が携わる〝どんぐり食品〟は、多くの人の健康に寄与しています。また、これまで廃棄されていたどんぐりを利活用することから、地球環境にも優しい商品になっています。「幸せの形は十人十色であるけれど、体の健康と自然を感じることは万人の幸せになると考えています。大きなことは出来ないけれど、一歩ずつ目の前の人を幸せにできるよう、『まちふく一同』心を込めて作業しています。ぜひ自然を体感できる〝どんぐり食品〟をご賞味ください」と田中さんは話していました。
- 取材先:株式会社まちふく
- 横浜市瀬谷区で、街の福祉屋こと「株式会社まちふく」は、就労継続支援B型事業所「どんぐりビレッジ」を運営しています。現在、事業所には知的障がいがある利用者19人が従事しており、栄養価の高い「どんぐり」を利用した食品の製造・販売事業を主軸に展開しています。利用者は、自然への感謝と送る先の人の幸せを願いながら、純粋に今日も汗を流して取り組んでいます。