Work
特集 Work vol.1
テレワークへの挑戦と意外な発見
NPO法人ぷかぷか(横浜市)
テレワークへの挑戦と意外な発見
新型コロナウイルス感染症が拡大する中、地域作業所も通所や対面販売、地域とのふれあいを減らさなくてはならない状況が続いています。横浜市霧が丘にある地域作業所「ぷかぷか」(高崎明理事長)もそのひとつです。そんな中、ぷかぷかではテレワークに挑戦中。自宅でも仕事に取り組み、その保護者からは「子どもの成長を感じることが出来た」と喜びの声も届いています。
一緒にいると こころ ぷかぷか
ぷかぷかは横浜市霧が丘の霧が丘団地に拠点を置くNPO法人です。障がいのある人が社会で楽しく、ともに生きていくために地域住民等との交流の場を積極的に設けています。現在、約50人の障がいのあるメンバーが在籍し、「おかし工房にじいろ」や「おひさまの台所」「ぷかぷかのうえん」「アート屋わんど」などの部門で商品を販売するなどして活躍しています。「ベーカリーぷかぷか」では、国産小麦と天然酵母を用いたパンを販売しており、この味を求めて通う人がいるほど近隣住民からも人気を博しています。
朝と夕の2回の電話
新型コロナウイルス感染症を受け4月7日に発令された緊急事態宣言。人々は外出自粛に協力し、多くの企業は在宅勤務やテレワークを導入しました。
朝10時、施設に鳴り響く電話。ぷかぷかの魚住佐恵さんは目の前に話し相手がいるかのように「おはようございます、熱は何度でしたか? 今日はどんな作業に取り組んでくれるの?」と優しく語り掛けます。手元のボードにメンバーの名前と体温などを記入すると、「じゃあ今日も頑張っていこうね」と呼び掛けて電話を切りました。
ぷかぷかでも、感染症の拡大を防ぐためにアート屋わんどを除く施設を人との接触頻度が多いため休所し、4月15日からテレワークを導入。仕事が始まる午前中と、終業の夕方にメンバーが施設に電話をすることで、体調や仕事の状況を共有しながら仕事を進めています。
5月からはメンバーを5チームに分け、人と人との距離を保つソーシャルディスタンスをはかって「三密」を回避し通所を再開しています。
お客さんにお渡しすることを意識して丁寧に
テレワークでは、メンバー自身が今日行う仕事を選んで、午前10時から午後2時まで「白い袋の絵入れ」「お弁当の帯」「その他のお仕事」「ありがとうカードの作成」「家の手伝い」の5種類に取り組んでいます。
あるメンバーは、白い袋に描く架空の絵日記が得意。キュウリや人物などにまつわるエピソードを詩人・谷川俊太郎などが書いた設定の絵日記は、思わずクスリとしてしまうエピソードも。「こうした発想を見るのが楽しいし、お客さんの中にはこれを集めるために通って下さる方もいます。ついつい虜になってしまうんでしょうね」と魚住さん。
仕事にあたって、魚住さんは必ずあることを伝えています。それは、「お客さんにお渡しすることを意識して丁寧に描いてください」ということ。メンバーによって作品の数に差はありますが、そのどれもが作品を通して作者の個性を感じられる出来となっています。
好調、オンラインショップ
昨年、ぷかぷかは10周年を記念してオンラインショップをオープン。Webサイトページには、これら個性豊かな商品が並んでいます。オンラインショップの開設前は施設に直接問い合わせがあれば個別発送していましたが、オンラインショップのオープンをきっかけに全国から注文が届くなど、徐々に反響も出ているといい、画面には「SOLD OUT」(売り切れ)の文字もチラホラ。魚住さんは「新型コロナウイルス感染症の影響を受けない分、このオンラインショップも新たな収入源となっています。なにより、全国のみなさまにぷかぷかの作品を届けることが出来てうれしいです」と喜んでいます。
テレワークで気付いたこと
テレワークになってから意外な発見もありました。それはメンバーの保護者からの「成長を感じました」との声。テレワークになってからは勤務時間中に時間を決めて、仕事のひとつにある「家の手伝い」に取り組んでいるそうです。
また、5月から再開した最小限の人数による通所では、「チャレンジ」を合言葉にさまざまな部門に挑戦しています。例えばある女性のメンバーは、これまで陶芸に取り組んできましたが、ある日なんの前触れもなく「畑をやってみたい」と宣言し、スタッフを驚かせました。魚住さんは「テレワーク中に彼女の中でいろいろ考えて、畑とつながったのでしょう。ほかのメンバーもお菓子作りや陶芸、作品作りなどプラスに作用しています」とにっこり。
6月1日から感染症拡大防止に配慮しながら施設は再開予定。テレワークをきっかけに生まれた新たな一面が、再開によってまた新たな発展を見せるかもしれません。
- 取材先:NPO法人ぷかぷか
- 「障がいのある人たちといっしょに生きていく」「健康な命を未来に引き継ぐ」を理念に2010年に設立。障がいの程度や状態にかかわらず、気持ちよく暮らせる社会を目指し、パンや惣菜、菓子などを販売し地域と交流の場を設けている。