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更新日:2019年7月29日

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環境と共生する都市づくりを考えるフォーラムの開催結果(平成21年2月開催)

ツインシティの実現に向け、企業や団体の皆様と設立した「研究パートナー」の取組みについてのページです。

 
平成21年2月4日(水曜日)午後2時から4時まで、神奈川県庁本庁舎3階大会議場にて「低炭素社会に向けた都市づくりを考える」をテーマに「環境と共生する都市づくりを考えるフォーラム」を開催しました。

1 フォーラムの概要
テーマ 低炭素社会に向けた都市づくりを考える
日時 平成21年2月4日(水曜日) 
午後2時から4時まで
(開場は午後1時30分)
場所 神奈川県庁本庁舎3階大会議場
主催 ツインシティ研究パートナー連絡会
神奈川県
会場の様子
 
 
2  内容
あいさつ
  神奈川県環境共生都市整備担当部長 池守典行   財団法人神奈川県公園協会事務局長 石川 実 氏
  神奈川県 池守   公園協会 石川氏
 

基調講演(60分)

テーマ 環境と共生する都市づくりを考える 
低炭素・生態系をキーワードとして
講演者 横浜国立大学大学院環境情報研究院
教授 佐土原 聡 氏
基調講演概要
1 はじめに
低炭素・生態系保全
2 自然環境・生態系の視点から
生態系と生態系サービス
水循環・風の道
3 都市基盤づくりの視点から(エネルギーを中心に)
面的エネルギー利用:地域冷暖房・建物間連携
再生可能エネルギー等の利用
4 まとめ
横浜国大大学院 佐土原教授
  基調講演内容(PDF:189KB)
   
   
パネルディスカッション(60分)
パネリスト発表(30分)
1 「低炭素社会に向けた高齢者住施設の環境への
配慮、取り組みについて」
発表者 株式会社 福祉開発研究所
取締役 加藤信次 氏
概要
水や電気を通常よりも多く利用する福祉施設の現状と、福祉施設が低炭素社会に向けて取り組む省エネルギー化や周辺生態系の自然環境保全・改善を目指す個別の取組みについて
福祉開発研究所 加藤氏
  当日配布資料(PDF:8,596KB)
   
   
2 「都市部におけるみどりの必要性と確保」
発表者 財団法人神奈川県公園協会
自然公園課長 坂本政美 氏
概要
都市部でのみどりの減少に対応するとともに、ヒートアイランド現象を緩和し、周辺の生態系にとって快適な地域環境を維持していくための都市部におけるみどりの必要性と緑化の取組みについて
公園協会 坂本氏
  当日配布資料(PDF:2,390KB)
   
   
3 「環境共生型まちづくりとエリアマネジメント」
発表者 三菱地所株式会社 都市計画事業室
副室長 井上 成 氏
概要
「大・丸・有地区再開発におけるまち全体での環境共生策の推進」と持続可能な都市開発を支えるエリアマネジメントの取り組みについて
三菱地所 井上氏
  当日配布資料(PDF:4,335KB)
   
   
ディスカッション(30分)
コーディネーター 神奈川県環境共生都市整備担当課長 市川喜久男
パネリスト 佐土原教授、加藤氏、坂本氏、井上氏
  会場風景1 会場風景2
  概要(●:コーディネーター、○:パネリスト)
    パネリスト発表に続いてディスカッションを行います。
早速ですが、佐土原先生、先程のパネリスト発表についてのご感想等、少しお話しをお願いします。
(佐土原教授)
皆様のお話を伺い、1つ共通しているという風に思いましたのは、これからの低炭素社会に向けた建築とか都市づくりを具体化することによって将来のあり方をメッセージとして発信するという、そのような場が提供されているのではないかなと感じております。
そのような意味で、このツインシティの整備構想というのは非常にメッセージ性を持ったもので、これからの低炭素社会に社会が変わっていく中での先駆的なメッセージを込めていくということは非常に重要なことではないかなと思っています。
あと、それぞれのお話を伺いまして、加藤さんの福祉の観点からは、老人ホーム等の色々な施設は、立地の面でいうと非常に自然が豊かなエリアが、意外にゆったりしたスペースで自然環境が豊かなところが多いものですから、そういうものと建築とが一体感を持った生活のあり方というのにつながってくるのかなと、あるいは生協のネットワークとも組んでやっていくということは波及効果の面からもライフスタイルの目で色々と影響を与えていく可能性をお持ちなのだということを認識いたしました。それから周辺に農地が豊かな中でということもありましたので、地産地消を先取りした形で実現しているのは非常に素晴らしいことだと思っています。
それから、坂本さんのお話を伺いまして、やはり、これからの建築物というのは、あるいは、都市の色々な空間というのは、本当にコンクリートやアスファルトのままにされているところというのが本当に許されない状況で、いかにして自然環境の特性をもった都市の表面の被覆を作り上げていって、それが生理的な、あるいは精神的な面、それから自然環境の循環とかそういう気候調整とか色々な多面的機能をもった地表面をどう連続して作っていくのか、そういうところにこれからの緑化というのが非常に重要な役割を果たしていくことが期待されているということを認識しました。
それから、井上さんの大・丸・有のお話は、私も色々なビジョンづくりで議論に参加させていただきまして、これまでの色々な推進体制、ソフトとハードが合わさって進められてきていると認識しています。しかも、それが最も日本の顔になる、皇居の前の、東京駅の前のエリア、広いエリアですので、そういうところでのトップランナーといいますか、日本を引っ張っていくこれからのエリアのマネジメントあるいは具体的なエリアの将来像をつくっていくという非常に重要な役割を担っている場所だと思います。そこでのソフト面、ハード面での取組みから得られた貴重な成果を沢山お持ちだと思いますので、そういうものを他の地域でも活用できる形で普及させていくというか活かしていただく、そういうことが非常にこれから期待されるのではないかと思いました。

皆さんからのお話を伺いまして、いくつか共通して出てきた項目がありました。
先ず、エネルギーの融通、平準化というお話で、三菱地所の井上さん、先程、佐土原先生からエネルギー像についてのお話がありました。大・丸・有でも非常に規模の大きなものだと思いますが、地域冷暖房の取組みを進められています。このようなエネルギー融通の面について、どのような感想をお持ちになられましたか。
(井上氏)
私どもの考え、方針としては、ビル単位でトップランナー的に省CO2を追及するというのが大きなベースにありますが、それに加えて、特に地域冷暖房というのを導入しているので、その特性をフルに発揮するために、老朽化したプラントを改変して、省CO2化を図っていくといったことを進めています。
熱融通というのは、ブロック毎でやっていた地域冷暖房のマネジメントをブロック間でやるという意味で、さらに一歩進んだ取組みになります。省CO2のことを考えるとそのような新しい取組みをハード、ソフト両方やっていかないとできないなというのが感想です。
ハード的には熱融通を実現化するために、ブロック間にパイプを通して蒸気をやりくりします。閑散期には、片方のブロックのプラントを止めて、もう片方から配給するというようなハードづくりをようやく終えたというところです。やはり、マネジメントという視点から言うと、融通する最適なタイミングを捉えて、供給量を含めどうやると一番効率的な融通ができるのか、まさにハードではなく、ソフト的なマネジメントもうまくやらないと熱融通は最大限の効果を発揮できないようです。その辺について、私どももようやくとば口に立ったところで、まだまだ改善していくべきことが色々あるという状態でござます。

次に、先程ヒートアイランド対策に関するお話が井上さんの方からありました。坂本さんの方でも皇居のみどりのお話がでていましたが、このような都市の、建物の冷却について、公園協会の坂本さんにご感想などを伺いたいと思います。
(坂本氏)
大気の冷却とみどりの量との関係は体感しにくい。皇居ぐらい大きくないと効果が出にくいと思います。セントラルパークとかハイドパークは、都市の真ん中に、みどりがどかんとあるわけで、あのような量であれば感じとることはできます。
私は、都市の冷却については二つ考え方があって、大気そのものを冷やすというのは確かにみどりがあれば若干下がりますが、残念ながら利用者は感じ取ることが難しいと思います。
もうひとつ、感じとることができる冷気というのがあると思います。例えば、公園の中で日向から木陰へふっと入ったときに、ちょっと涼しい感じがしますよね。私はむしろふっと入ったときに感じるさわやかな風、これが感じとることのできる冷気だと思っています。むしろこれを都市の中にちりばめる形が実は大事なのかなと、そんな風に思っています。
佐土原先生、先程、先生の講演の中でも斜面緑地のお話がありましたが、やはりそういったみどりというのは大切なものですよね。
今、「ふっ」と感じられるような冷気というお話がありましたが、私たちあそこの場所を測定するときに、温度計を設置させていただくのに、斜面の下に庭を所有している方の家に訪問してお願いしたりしたのですが、そこでは、もうほとんど冷房を使わないそうです。ですから、わりときめ細かく色々なところにみどりはありますので、そのような風を活かすのもひとつのアプローチだと思っています。

もうひとつ、人のつながりや環境教育という面で加藤さんからお話がありました。坂本さんからも憩いや癒しというソフトのお話もありましたが、加藤さんどのような感想をお持ちになられましたか。
(加藤氏)
環境教育というものにちょっと触れたということもありますが、実際、福祉と環境がどのようにかみ合うのかなと考えてしまうのです。おそらく福祉は、人を守ったり、大事にするとか、配慮するとかそのような考え方なのですが、環境を考えるというのは、直接人ではないですが、福祉と非常に似ているところがあるので、馴染むというか、福祉的なところの考えの延長上に環境を守っていこうということは、感情的に入り易いと感じています。
先程も申し上げましたが、既に、そのような福祉の場に子供たちが来たりして、授業を行っています。バリヤフリーデザインとかお年寄りの話を聞くとか、そのような中の延長で環境の話もしていくことは十分やれるのではないのかなと思いますし、やってほしいと思います。
もうひとつ、実は私どもで提案という形でやったことですが、東京の、小学校に隣接する老人ホームの提案で、その中の交流スペースを活用して環境教育をやろうと。たまたま、老人ホームの事業者さんが実はハウスメーカーさんが母体で、それなりに環境的な技術を持っていまして、屋上緑化や太陽光発電とか、あるいはペットボトルを再生したものをいろいろ使うとか、そのようなものをその場で展示するとか、あるいはワークショップを開くとか、このようなことをやろうという計画でした。そのようなことを子供達に福祉の延長でやるということは、非常にわかりやすいのかな、そういう風には感じております。

今日は4名の方から色々と貴重なお話を伺いましたが、大変重要と思われること、それからポイントとして大事だというところを佐土原先生から順にお願いします。
(佐土原教授)
今日、私は、生態系の話と低炭素の話を合わせて、あと防災的な観点からも、非常にこの地域は拠点としての役割が求められるというお話をしました。今日のテーマは低炭素ですが、低炭素ということがもたらす私たちにとっての意味というのは、単にCO2をいかに減らすかというところにものすごくエネルギーを注ぐということではなくて、むしろ私たちの生活全体をどのように変えていくのかということについての非常に重要な視点を提供してくれているのではないかと思います。
これまで、私たちの生活の大きな変化から考えると、エネルギーをたくさん使ったり、情報の技術が発展してきたりしていますが、今の時代に非常に大きな転換、地球の容量が限界に達してしまったと。ですから、今までとは全く違った形で私たちの生活が見直されなければいけないということにつながることだと思います。
今朝の日経新聞の中の京都大学の環境経済の植田先生のお話の中でも、やはり低炭素型の社会にどう変えていくかということの機会を提供してくれているというお話がありました。私も同感でありまして、単に低炭素を目標にそこを評価軸に置くということではなくて、総合的に私たちの生活を見直して、新しい環境と共生した時代の社会、生活に変えていくということが非常に重要だと思います。
(加藤氏)
先程、先生より生協のネットワークの例がございまして、ライフスタイルを変えていくということができるのではないか、そのようなお話がありましたが、福祉施設は先程の大・丸・有地区のようなビル街とかビジネス街みたいなところに立地することはあまり無いので、そのような中ではなかなか関与ができません。どちらかというと住宅街の中に立地し、皆さんの中に入っていくということがあります。そういった中で、ソフト的なところだと思いますが、住民の方の中に入っていってそういった環境的な考え方とか方向とかそのようなところを、福祉教育と言いますか、それと一緒に伝えていく、そのようなところが果たせる役割なのかなという風に考えています。
(坂本氏)
何もない原っぱのようなところに、突然、都市づくりということでプロジェクトがドンと乗り込んでくる。まあ、極端な例ですが入ってくるとします。きっとそこにはなんらかの自然がある。いくら都市づくりだからといっていきなりそこにドカンと入ってくるのは無茶かなと思います。そっと忍び込むというか、溶け込むというのか、その自然とうまくマッチしてくような心配りが必要です。そのためには、そこの自然を理解するということが非常に大事だと思います。例えば、そこにはこういう鳥がいた。その鳥はこういう実を食べている。じゃあ緑化するときには彼らのためにこういう木を植えればよい。というもちつもたれつという、こういう精神が非常に大事だと思います。「自然はわれらを、われらは自然を」という環境省のキャッチコピーを思い出しました。
(井上氏)
今日の大きな命題として、ツインシティをどうするのかということがあるとすれば、私のやってきている経験からひとつ申し上げたいのは、まちづくりの主体が誰なのかということを常に念頭におく必要があると思います。その主体がいてそれをサポートする、もしくはそれをリードする様々なステークホルダーがいて、それぞれがそれぞれの役割を果たしながらまちというのはきっとつくられていくのだと思うのです。実際には、自主的に、能動的にまちづくりを進めていこうという人たちが中心となって活動が盛り上がり、それに協調する人がどんどん増えていくのが理想的です。人々が十分に意見を出し合い、目標を共有化し、後から入ってきた人がそれを補強していく中で、主体というものを明確なり、それを色々な形でサポートしていくのが、まちづくりの上で大事だなと思っています。
その中で低炭素というのが最近、本当にこうテーマとして大きく浮上していますが、まちづくりは低炭素だけではないので、まちとしてどこに力点を置くのかを参加する人たちが合議しながら決めていくべきです。
私どもはあれだけ業務が集積しているところなので、そこでCO2を減らせといってもなかなか無理な話なのですが、いかに効率的に使って、そういった使い方をひとつのモデルとして世界に発信していこうと議論しています。
大事なのは、その土地土地の特性を活かすことです。それぞれ方向性は100個のまちがあれば100個違うものがあると思うので、そこをやはりいかにまとめていくかというのがマネジメントなのだと思います。
私としては、そのようなマネジメントというものがつくづく重要だなと思っているところです。

今日は貴重なお話を聞かせてもらいまして本当にありがとうございます。さらに、この低炭素社会において都市づくりを進めていくためには、県民、企業、大学、行政、それぞれ力を合わせて環境ビジョンというものをしっかり持ちながら協力し合って進めていくということが大切なのではないかということを改めて認識させていただきました。

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