ホーム > 健康・福祉・子育て > 福祉 > 地域福祉・助け合い > 手話言語の普及推進 > 平成27年度第1回手話言語普及推進協議会(審議結果)

更新日:2023年4月13日

ここから本文です。

平成27年度第1回手話言語普及推進協議会(審議結果)

第1回神奈川県手話言語普及推進協議会の結果です

審議(会議)結果

次の審議会等を下記のとおり開催した。

審議会等名称

平成27年度第1回神奈川県手話言語普及推進協議会

開催日時

平成27年5月20日(水曜日)18時00分から20時10分まで

開催場所

神奈川県庁本庁舎3階大会議場

出席者【会長・副会長等】

秋本委員、飯島委員、石渡委員【会長】、小川委員【副会長】、影山委員、金井委員、河原委員、小海委員、田畑委員、田村委員、戸井田委員、土佐委員、萩原委員、二見委員、本田委員、山本委員、吉本委員(敬称略、50音順)

次回開催予定日

平成27年8月頃

所属名、担当者名

地域福祉課調整グループ

電話番号045-210-4804(ダイヤルイン)

ファックス045-210-8874

このページの先頭へもどる

掲載形式

議事録全文

審議(会議)経過

事務局から、神奈川県手話言語普及推進協議会構成員の紹介をした後、委員の互選により会長を決定し、会長の指名により副会長を決定した。その後、事務局から配布した資料に基づき説明を行った。

(河原委員)
貴重な時間を使わせていただきまして、ありがとうございます。こちらの資料について、
まとめて説明させてもらいます。まず、ろう者を取り巻く現状です。大きく二つに分かれています。
1点目が、手話のわかる方が少ないという点についてです。以前に比べれば多くなっていると思いますが、まだまだです。
2点目が、ろう者に対する理解がまだまだ不足しているということです。他の障害の方、例えば目の見えない方、足の悪い方の場合には、どういうところに困っているのかということが想像できると思います。しかし、聞こえないということは、見ただけではわかりません。
どういうところに困るのかということも想像が難しいので、なかなか理解されないという現状がまずあります。
その現状によって、こちらに書いてあるとおり、様々なことが起きてきます。
まず、地域で生活をする場合は、たとえば隣近所の方とおつき合いがあると思うのですが、そういうことが難しいという問題があります。
 コミュニケーションができませんので、近所の方々と話をすることができません。挨拶するぐらいで終わってしまうということが多いです。
 また、深くコミュニケーションができないために誤解を生じるということも多くあります。ちょっとした誤解の積み重ねが大きなトラブルに繋がるということもあります。ろう者、手話に対する理解がないということから起きる問題です。
 また、災害の時ですけれども、災害が起きたときにとても大事なことは、情報です。たとえば、地震の場合はゆれていることからわかりますが、放射能漏れ、ガス漏れとか、そういったものは、目で見ても状況がわからないので、情報が大事です。そういった面で困ります。
東日本大震災の時には、津波警報が聞こえなかったために、津波にさらわれて亡くなってしまったろう者がいます。また避難所生活では、周りの方々とのコミュニケーションが上手くいかない、情報が入らなかったために、トラブルが起きてしまったというケースもあります。
被災した人に対する支援、制度はあるのですが、その支援についての情報がまず入ってこない、また、手話での説明がないという状況です。文章だけでは、やはりわかりにくいため、十分な支援を受けられなかったという方も沢山いらっしゃいます。
 そして日常生活についてですが、駅とか、お店でのコミュニケーションが難しいです。駅で切符を買う時に、当然駅員のほとんどは手話ができないと思います。そうすると、筆談とかいろいろな方法になると思いますが、筆談では説明がわからなかったというケースが沢山あります。お店で何か物を買う際にいろいろ細かく聞きたいと思っても、相手が手話をできないので、細かな説明を受けることができないということが多々あります。書いて欲しいとお願いをしても、お店の方も、やはり筆談は時間がかかるし、面倒くさいという受けとめ方をされる方も多いです。私も筆談ではなかなか言いたいことは伝えられません。ひどい時には聞こえる人と一緒に来てくださいと言われることもあります。
また、旅行会社のツアーに聞こえない方がご夫婦で申し込みをした際、「聞こえない方だけでは困る、聞こえる人も一緒に参加して欲しい」と言われて、そのツアーの参加は諦めたという例もあります。お店で分割払いをする時に、電話で本人であるという確認が必要な場合がありますが、手話通訳を通して電話を受けたいといっても、向こうの方が本人ではないとだめだというふうに言われ、分割払いを断られたという例もあります。
 手話通訳の派遣は、以前に比べて、市町村の手話通訳の制度が進み、いろいろなところへ派遣してもらえるようになりましたが、まだ十分ではありません。先日も交通事故の時、事故の処理に来た警察の方に手話通訳を呼んで欲しいと話をしたが、呼ぶ必要がないと警察の方に言われて手話通訳を呼んでもらえなかったという例がありました。
病院では手話通訳が絶対必要なのですが、派遣依頼をして一緒に行ったところ、医者がプライバシーに関わるので手話通訳の方は席を外して欲しいと言われ、手話通訳はコミュニケーションのために必要であること説明しても、納得してもらえず、結局手話通訳がつかないまま、診察を受けたという例もあります。
ろう者がけがをして、救急車を呼んだときに、手話通訳が必要なので手話通訳の派遣をお願いしたい旨救急隊員にお願いしたけれども、隊員が手話通訳の派遣制度があるということを全く知らなかったという例もあります。
聞こえる皆さんの場合、突然、お腹や頭が痛くなったときには、すぐ病院に行って診察を受けることができると思いますが、私たちろう者の場合は、行く前にまず手話通訳の派遣依頼をしなければならず、すぐ行くという事ができないという現状があります。
 市役所の場合、手話通訳を設置しているところが増えていますが、設置している曜日や時間が限られており、その時間外にいっても、手話で対応できる職員がいないため、曜日、時間を選んでいかなければいけないということがあります。
たまたま今日時間が空いたたから、市役所に用事を済ませに行こうと思っても手話通訳がいないから諦め、結局用事を済ますのが延び延びになってしまうということもあります。
 講演会、研修会も、講演を聞きたい、研修会に参加したいと思って、主催者の方へ手話通訳の準備をお願いしたいと連絡したが、予算がないということで断られ、諦めざるを得なかったということもあります。
 また、市町村に手話通訳の派遣依頼をしても、派遣の対象外ということで断られてしまい、結局は諦めざるを得ないということもたびたびあります。
 最近大きな問題になっていますが、聴覚障害者が高齢になり、65歳以上になって介護保険のサービスを利用するようになった場合に、介護保険の事業者で、手話での対応ができ、聴覚障害者のことをきちんと理解できているところはほとんどないと言えます。高齢の聴覚障害者には、同じ人間なのに、介護保険のサービスを十分に受けられないままに生活をしている方が沢山います。
 教育も昔は口話法で、手話は禁止されていましたが、今では手話を使う学校が増えてはいます。
しかし先生が十分にろうの子どもに手話で教育できているか、手話を教えられるかというと、それができる先生はまだまだ少ないのが現状です。ろう学校に初めて赴任する先生は手話がわかりませんし、聴覚障害についてもほとんど理解がありません。手話や聴覚障害についての研修がほとんどないことにも問題があります。
また、学校の中で、手話を生徒やろうの先生に学び、経験を積んでろう教育の専門性を身につけても、すぐ別のところに異動してしまいます。そのため、ろう学校に聴覚障害またはろうについての専門性を身に付けた教師がなかなか増えないという問題があります。
 聞こえる子どもの学校の場合は、国語が国語の時間という形できちんと授業の中に取り組まれています。しかしろう学校の場合は、国語の時間はありますが、ろう者の言語である手話を学ぶ時間はありません。それはやはりおかしなことだと思います。ろうの子どももきちんと手話を学ぶ時間があって欲しいと思っています。
 手話通訳者の数もまだまだ足りない現状にあります。その理由としては、手話通訳者の身分がまだまだ十分ではないということが大きいと思います。手話通訳者はほとんど主婦の方です。派遣を受けて出向いていけるという時間があるという方がほとんどで、手話通訳という仕事として生活ができるという方はほとんどいません。
 京都府や大阪府の場合は、市町村で正職員の手話通訳者を雇用している自治体もありますが、神奈川県の中には、正職員として手話通訳者を雇用している自治体はありません。ほとんどの方が市町村に登録して、派遣の依頼を受けて、手話通訳の仕事をしていますが、手話通訳の業務が労働として認められていないという問題があります。
そのため、依頼を沢山受けて体を壊してしまっても、労災として認められないのです。そういった現状があるために、手話通訳者になろうと思っても、現状を見て諦める方が多いので、手話通訳者の身分保障をきちんとすることも大事ではないかと考えています。また、手話通訳者を育てる講師も少ないという現状があります。現在、手話の講師を養成する制度はありません。講師になろうと思う方の自己負担と我々の団体の負担で講師を育てているのが現状です。そのため、なかなか手話通訳を育てるための講師もなかなか増えない。だから手話通訳者も増えないという悪循環に陥っているのです。
そして困っているのは、県立校の教職員で手話通訳の資格を取った方が、手話通訳の派遣の依頼を受けようと思っても、県の教育委員会が認めないことです。これはおかしいのではないかと考えます。何のために手話通訳の資格を取ったのかわかりません。時間外、休日の場合の派遣の依頼を受けることが認められるよう、改善をしていただきたいと思います。
手話の普及などについての企画案がいろいろ書いてありますけれども、ぜひ実施していただきたいのは、授業の中で手話や聴覚障害者のことについて教育を行うということです。理解を広めるためには、小さい時から、いろいろなことを知ってもらうということが大事だと思います。子どもの方が、頭が柔らかく、いろいろと吸収することができますので、小・中・高校で手話や聴覚障害者についての理解を深める時間をぜひ設けて欲しいと思っています。
条例の中に県民の理解を広めるということが書いてあります。
 神奈川県の将来を担う県民である子どもたちに対してきちんと手話や聴覚障害者の理解を広めていただきたいと思います。
また、聞こえる子どもが国語の勉強するのと同じようにろう学校の子どもが手話を勉強する時間を作っていただきたいと思います。
終わりに、手話普及推進協議会への要望です。先程1年間に4回とおっしゃいましたが、4回ではやっぱり足りないと、私個人では思っております。
というのは、私どもは個人的に出席している訳ではなく、ろう団体また手話通訳者団体、各団体の代表として出席しており、いろいろな仲間の意見をまとめて提出する責務がありますので、ここで出された問題を持ち帰って話し合ってまとめてまた出す必要があるのです。ですから、4回ではとても足りないので、もっと増やしていただきたいと考えております。
 それから最後に、ろう者の人権を守るためには、ろう者の言語である手話が必要であるということを理解していただきたいと思います。よく手話の代わりに筆談また文書でやれば良いではないかというふうに言われますけれども、正直言って筆談、文章は、日本語であり、手話と全く違う言語なのです。たいていの聞こえる方は外国語で話しかけられても困ると思いますが、それと同じで、ろう者の多くは筆談とか文章でと言われても困ってしまうのです。ろう者の人権を守るためには、ろう者の言語である手話が必要なのです。
 来年の4月1日に障害者差別解消法が施行されます。この法律では、合理的配慮を提供しなければならないと定められています。合理的配慮の提供というのは、私どもとしては、いつでもどこでも手話を利用でき、手話で何でもできるという環境を作ることではないかと考えております。皆様方におかれましては、ろう者の置かれている存在と私どもにとっての手話というものの大切さを是非ご理解いただき、この協議会で私どもがいつもどこでも手話を使うことができ、手話で何でもできる社会を作る計画を策定するために、ご協力をお願いしたいと思っております。
それから、このリーフレットは、手話言語条例を作ることを目指したきっかけである、私どもの上部団体の全日本ろうあ連盟の手話言語法の制定を目指す運動の目的、内容などを一般の方にもわかりやすくまとめたリーフレットです。ぜひ、読んでいただきたいと思います。
 手話を言語として認める、手話をいつでもどこでも自由に使って生活できる社会を作ること、そして、ろうの子どもが手話をきちんと学んで、手話で勉強できる、そういう学校を作ること、手話言語法はそういったことを目的にしております。
 手話言語法を作るためにはやはり全国的に手話が言語であるということの理解、普及を進めることが必要です。そのために、全国各地で手話言語条例を作る取り組みが進められ、神奈川県では、議員の方々及び多くの方々のご理解、ご支援のおかげで条例を作ることができた訳です。
資料の最後のページは、県民の福祉タイムズに寄稿した文章です。
手話言語条例ができたきっかけ、流れ、これからについて簡単にまとめてありますので、読んでいただければ幸いです。時間が長くなりましたが、御静聴ありがとうございました。

(石渡会長)
はい、河原委員、丁寧なご説明ありがとうございました。手話通訳の方が入っている会議に出席しているときは、1時間くらい経ったらちょっと休憩をというやり方をしていることが多いですが、ちょっと休憩をとった方がよろしいでしょうか。

(河原委員)
手話通訳者も疲れていると思いますので、ぜひお願いしたいと思います。

(石渡会長)
はい、それでは、今から10分後に再開する形でお願いしたいと思います。

(石渡会長)
はい、石渡です。それでは、10分厳守でみなさんお集まりくださいましたので、再開したいと思います。河原委員からとても丁寧にご説明いただいて、私も聞こえないお立場での生活、よく理解できました。これからは委員の皆さんにそれぞれの立場からのご意見をぜひお聞きしたいと思います。その前に、今の河原委員のご説明について、このことを確認しておきたいという委員の方いらっしゃいますか。

(各委員)
(意見なし)

(石渡会長)
それでは、それぞれの委員のお立場でのご意見と関連して何かございましたら、お願いいたします。残り約1時間弱ですので、この条例を具体的に神奈川で進めていくにあたってぜひ、というご意見をいただきたいと思います。今おふたり手を挙げてくださいましたで、まず、田畑委員お願いします。

(田畑委員)
私は神奈川盲ろう者ゆりの会という団体の代表として参りました。
この条例の中に、ろう者とは「手話を言語として日常生活または社会生活を営む者をいう」と記載があります。
私の仲間である盲ろう者には手話を使う者が沢山おります。盲ろう者が使う手話には、その盲ろう者の視力に合わせて、2通りの方法があります。全く目が見えない盲ろう者は直接手話を触る触手話という方法でコミュニケーションを取ります。少し視力が残っている弱視の盲ろう者の場合には、弱視手話、接近手話と言って、極めて近い距離で手話を表出するような形となります。
また、今日皆様にご紹介したいのですが、山手に横浜訓盲学院という盲学校があり、先天性盲ろうの子どもたちが複数在籍しております。生まれつき盲ろうという障害を負った子どもたちが言語を獲得するのは非常に大変なことです。その時に、手話が非常に役立ちます。
学院長の中澤惠江先生のご許可をいただいて、ご紹介をしているのですけれども、学院だよりに「盲学校と手話」というタイトルで、中澤先生が原稿を書かれておられます。
盲学校で手話をというと、不思議な感じもしますが、盲ろうの子どもたちが言語獲得をするにあたり、手話が非常に有効なためにこの盲学校では、教員が手話研修を受けているそうです。
私が申し上げたいのは、手話を必要とする者が、盲ろう者の中に沢山いるということです。盲ろうの子ども達や大人にとっても手話はとても大事な言語ということを皆さんの心に留めていただきながら、この推進計画をお考えいただければ、とてもありがたいです。以上です。

(石渡会長)
田畑委員ありがとうございました。私も最近、東京大学の福島智先生たちと盲ろうの方の支援を検討する機会に参加させていただいています。本当に1人1人支援の形が違う中で手話がとても大きな意味を持っているということを学ばせていただきました。それでは、
お隣にいらっしゃる田村委員、挙手してくださいましたので、お願いいたします。

(田村委員)
帝京大学の田村と申します。実は私、昔、平塚ろう学校の校長だった者です。ただ、2年間しかいなかったものですから、手話は十分ではないのですけれども、申し上げたいことの一つは、10年前と今、河原委員にお話いただいた現状、あまり変わっていないのかなとちょっとがっかりしたということがあります。
10年前、校長として初めてろう学校に赴任して、これと同じことを感じ、何ができるかという本当に考えたときでした。
ちょうどろう学校が、聴覚口話法から、私の学校ではトータルコミュニケーション、あらゆる手段で、子どもがわかりやすい状況を作っていこうというように切り替えたところで、全国でも、うちの学校が異端視された時代でした。
そういった中で、学校教育も随分変わりまして、少しずつ手話については、当たり前のように使われるようになったと思います。ただ、採用される教員については、ご指摘の通り、教員の研修、あるいは、聴覚障害についての知識はみな同じ条件で入ってくる訳ではありません。
それらについて、今大学の人間ですので、大学教育でも取り組まなければならないと考え、教員採用の中で必ずこういったこと取り上げる必要があるというのは、今私の学校でも主張しているところです。
それと、実際研修の場が少ないということがあります。これは校内の研修では時間的に難しいということがあって、私がいた10数年前のことなのですが、その頃街の手話教室に通っている先生は沢山いました。予算的な問題や時間の保証、これが現時点でも十分ではないということを今これで知りました。大きな課題だと思います。
それから次いで、なかなか手話がろう学校で十分教えられなかった背景なのですが、一つには、日本の学校は基本的に国語によって日本の文化を教えるということが公的教育の基本なのです。
したがって、日本語で日本の文化を教えるのが、公立の学校の使命なのですね。
ですから、今までは、手話は、日本語の補助手段と思われていたために、なかなか、学校の中で正面きって取り組めなかったという時代がありました。
ただ、今回このような形で、手話が言語であるというふうに明確になったことにより、大きく変わるのではないかと思って期待をしています。
その点でこの条例の意味が大変大きいと思います。
ただし、いただいたご指摘の中で、教員の異動の問題は、色んな学校経験する人も必要ではあると思います。
一方、私の頃は、ろう学校に最大44年いたという先生がおりました。
18歳で代用教員になって定年してからも、専門職として勤め合計44年ろう学校にいたという方もいらっしゃいました。それはそれで意味のあることです。ただ、若い人が、他の障害種別やいろいろなことの知識を持ってまた戻ってきて、よりレベルの高いろう教育をやってくれることの方が期待できるのではないかと、今思っています。これから色んな議論があると思いますが、一緒に考えて参りたいと思います。

(石渡会長)
田村委員ありがとうございます。田畑委員からは盲ろうという障害がある方にとっての手話の意味、それから、田村委員からは、教育の中での手話の意義をお話いただきました。
先ほど河原委員から国語での日本の教育ということについて指摘がございました。手話は言語であるという条例ができたことが教育を大きく変えるきっかけにもなる、ろう学校の先生方にはいろいろな子どもたちの教育多様性ということの理解も、大事だというご指摘をいただいたところです。
ぜひ、これからの協議会でそうした考えを深めていけたらと思います。他に何か意見はありますか。では、戸井田委員、次に萩原委員にお願いします。

(戸井田委員)
河原委員からいただいた資料の中に、講演会や研修会に参加したいと思って、手話通訳さんをお願いしたところ、予算の都合があると断られたという記載がありますが、例えば私達みたいな肢体障害者の協会の中にろうの方もいます。そして、主催者側に手話通訳さ
んの派遣をお願いしますという話をしますと、個人的にろうの人が、手話通訳さんを申請してくれないといけないと言われます。そうしますと、たとえば講演会に参加したいろうの人が5人いた場合に、その人たちがそれぞれ申請して手話通訳の方を連れていったとしたらどうなるのですかと申し上げると、お言葉を濁されます。
団体のところからろうの人が参加してくるなと分かったときに、団体から手話通訳さんを派遣することができることになって欲しいと思うのです。
個人的に手話通訳者を連れて来いとなったら皆さん、それぞれ行かないのですよね。行ったとしても今言ったように3人参加する人が手話通訳者を3人呼んできてしまうということになります。その場合、手話通訳者は2人が必要ですので、そういうことも条例にうたいこんでいただきたいです。行政の方には本当に申し訳ないのですけど、行政側としてもわかってないと困ります。予算がかかる、何がかかると断られてしまうということがありますので、もう少し深く考えて欲しいなと常日頃から私は思っています。ろうの方は手話通訳さんがいないと深く理解できない意味もあります。だから、きちっと手話で細かく説明してあげることの必要性を考えて欲しいなということを意見として言わせていただいています。よろしくお願いします。

(石渡会長)
戸井田委員、ありがとうございました。
今、講演会には手話通訳の方をきちんと配置してほしいというお話がありました。先ほども河原委員からもお話がありました。障害者差別解消法が施行されたならば、行政であれ、事業者であれ、どういう団体が講演会を開催するにしても、手話通訳者については当然配置が求められることにはなると思います。ご意見ありがとうございました。

(戸井田委員)
しっかりと明記していただかないと、結局何ができてもうやむやになってしまいますので、その点はよろしく皆さんで検討していただきたいと思います。

(石渡会長)
はい、力強いお言葉ありがとうございます。それでは、萩原委員よろしいでしょうか。

(萩原委員)
公募委員の萩原です。日本語も話せますけれども、日本語と手話は文法も違いますし、一緒に使うことが難しいので、ここでは手話でお話をしたいと思います。よろしくお願いします。
まず、公募をした理由は二つあります。
一つが、自分の経験です。例えば、病院の初診ですね、初診はすごく緊張しますが、思い切って問い合わせをしたとき、聞こえない、と言ったとたんに、「ろう者の受診は受け入れられない」と断られたことがあります。病院なのに…と大変失意の思いでした。また、私は演劇が好きなのですが、健聴の俳優さんたちの交わされる台詞はなかなか読み取ることができない。皆さんと一緒に楽しむことができない。そこで、例えば手話通訳の配置や、事前に台本の閲覧ができないか、とお願いしますが、これもなかなか受け入れてもらえない。非常に残念なのですが、配慮を断られた劇場のひとつは、神奈川県の有名な劇場です。
本来、医療とアートという分野では、こうした差別はあってはならないものと思います。人生に関わる大切な分野で差別を受けるということは、残念なことです。ろう者や、手話への理解がもっともっと深まって欲しいです。
もう一つは、手話を身につけた経験です。私は、聞こえる世界の中で育ってきました。日本語を学んで、口話で、口話中心で暮らしてきました。手話を身につけたのは大学の時です。手話に出会って、世界が一変しました。それまで友達とおしゃべりしても、つまらなかったり、先生の話を聞いても全然わからなかったのですが、手話を学ぶことで、どんどん世界が開けていきました。私にとって、手話は非常に大切な言葉です。この二つの経験から、この公募委員に応募しました。
一つだけ、河原委員のお話の中で、ご配慮いただきたいことがあります。私は健聴者の世界の中で生きていますが、運良く手話に出会い、手話を身につけることができました。一方で、手話に出会う機会がなかったろう者も多くいらっしゃいます。ろう者としては、同じです。
手話と、手話を母語とするろう者の理解を深める。それは大事なことです。しかし、手話だけにこだわるのではなく、手話がわからない聞こえない方も存在すること、こうした方々も非常に困っていることに思いを馳せて、ご配慮いただければ幸いです。
しかし、繰り返しになりますが手話という言葉は大事です。
先ほど田村委員もおっしゃいましたけれども、「文化」に触れること、「文化」を知ることは、非常に大切なことです。日本文化を日本語だけで教えられてきたということですが、これからは、手話が様々な人や文化の架け橋になることが必要だと感じています。
ろうの子どもたちには、「桃太郎」の話を知らないという子どもが沢山います。なぜかというと、本を読んでも日本語がわからないということ、そして先生が話していることも聞こえないのでわからないのです。「桃太郎」って何って聞かれます。手話で昔々おじいさんとおばあさんが…」と昔話をお話してくれれば、多くのろうの子どもたちにもわかるんです。
こんなふうに、日本の伝統や、文化を知らないまま育つということは非常にもったいないことだと思います。
さて、公募委員に選任していただいてから、手話が普及するよい方法はないだろうか、といろいろ考えてきました。特に子どもたちが、聞こえる、聞こえないに関係なく、手話を楽しく覚えていくにはどのようにしたらよいのか。
一つ、ご提案があります。ニュージーランドでやっている「手話週間」というものがあります。ここに資料がありますが、「手話週間」は、行政と、地元のろう協会が一緒になってやっています。1週間、ニュージーランドの各市、地域で例えば、美術館で手話通訳つきのツアーがあるとか、劇場でも手話通訳の配置があるとか、お店の中でも、お買い物に行っても手話通訳がいる。コマーシャルも放送されています。ホームページを通じて、1週間、一日ひとつ、七つの手話を覚えられる仕組みもあります。このようにいろいろと催し物があります。こうしたイベントがあると、教育や経済、いろいろな業界の方が一緒になって手話を発信するという視点に立つことができ、大人も子どもも楽しみながら手話を学ぶことができる機会を作ることができると思います。これを神奈川県で、行ったらよいのではないか、と思っています。
私からの話は以上です。

(石渡会長)
萩原委員、ありがとうございました。
病院で初診を断られたというお話から始まって、本当にインパクトのあるというか、とても心に残るお話を沢山聞かせていただきました。やはり、手話と日本語とそれぞれのすばらしさを、架け橋という言葉を使われて、この条例への期待を語ってくださいました。それから最後のニュージーランドの手話週間のようなことが神奈川でもできると大きな力になりますね。皆さんそれぞれのお立場で、さらにご意見をいただければと思いますが、はい、土佐委員、お願いいたします。

(土佐委員)
こんばんは、高浜高等学校の土佐と申します。
河原委員、萩原委員、お話ありがとうございました。
このような言い方をすると失礼になってしまうかもしれませんが、お2人のお話を聞いて、改めて、ろう者の方のご苦労を痛感したところでございます。
さて、意見ということではございませんが、本校、神奈川県立高浜高等学校の手話に対する取り組みを少し、ご承知かもしれませんが、ご紹介させていただきます。本校は県下で、福祉コースとか福祉科がある6校のうちの一つです。6クラスのうち、1クラスが福祉コースということで設置しております。その福祉コースの授業の中で、コミュニケーション技術というものがございまして、そこで手話や点字を学んでいます。
福祉コースの生徒に限らず、6クラスのうちの5クラス、一般コースですけれども、一般コースの生徒にも総合的な学習の時間の中で手話を学ぶ機会を設けています。
まだまだ社会に貢献するというところまでの技術が身につきませんし、手話に親しむとか学ぶというレベルではありますが、学校を挙げて取り組んできております。
夏休みには、希望する生徒を対象に、手話講座を設けており、多くの生徒がその講座を受講しています。
部活動においても、先ほど石渡委員が部活動の顧問をされているということでしたが、本校でも手話コミュニケーション部という部活動がございまして、本校での入学式、卒業式、いろいろな説明会の手話通訳を部活動の生徒が行っております。
あるいは、平塚市の障がい者の音楽祭「YES,愛DO!」という行事においても、ボランティアとして運営に参加をしております。
また、神奈川県の総合文化祭の開会式等でも手話通訳をさせていただいております。その他には神奈川県で推進しております、あいさつ運動において手話の取り組みをしております。
毎朝、校門のところで挨拶をする際、私も「おはようございます」しかできないですけれども、今年は「おはようございます」という手話をつけてやろうというような取り組みを始めています。
今年度手話言語条例が施行されまして、本校でもそれに向けて何かやろうということは考えています。なかなか具体的には、進んでおりませんが、小さなことから、今申し上げた朝の挨拶運動においても手話をつけよう、各クラスのホームルームの挨拶でも、ちょっとした手話をつけようというような取り組みはしていきたいと思っております。
まだまだ手話通訳者というところまではいきませんけれども、やはり1人でも多くの生徒に手話に親しんで欲しい、手話を学んで欲しいということにおいて、精一杯やっていきたいと思っております。以上でございます。

(石渡会長)
土佐委員、ありがとうございました。
先程の河原委員のお話の中でも、若い高校生の頃に手話に接してもらえたらとの話がありましたし、今の土佐委員のお話を聞いていると、難しいことではなくて、福祉コースとかでなくても、どこの高校でも取り組めることでもあるかなというような印象を受けました。高浜高等学校の実践が他の高校にも広がるようなチャレンジをしていただけたらと思いました。貴重なお話をありがとうございます。他に、何か意見はありますか。

(金井委員)
労働組合の連合というところから来ました金井と申します。どちらかというと、普段、手話とかろう者の方と、あまり関係がない人間だと思っていただければよいのかなと思います。
ですから今日いろいろと皆さんの話を聞いていて、すごく新鮮な感じを受けています。純粋に感じたことをお話させていただければと思います。
連合という労働者の団体で仕事につきまして1年半ぐらい経ちます。今日も午後に障害者に関する神奈川県の会議に出席しましたが、障害者が働くにあたって、どのような課題があるのか、また障害者の雇用を推進するにあたってどのようなことをしたらよいのかというようなことを経営者の方たちと一緒に話をしてきました。
まあ、それだけではないのかと思いますけれども、友達にろう者の方が二人いますが、今まで、食事会を数回したことあるのですけども、最近は筆談もスマートフォンにアプリがあって簡単にできます。
それで、私もその方々と、スマートフォンのアプリを通じてコミュニケーションをしていますが、今までの話を聞いて、ろう者の人は、日本語を外国語のように感じていると。ある意味、失礼だったのかなということが今初めて分かったような気がします。
健常者の方からするとなかなかその辺のギャップが分からず、ろう者の方から話を聞いて初めて分かった世界なので、そこから進んでいかないと広がりが出ていかないのかなっていうのが素直な感想であります。
資料に記載のある「聴覚障害者のコミュニケーション手段の状況」ですが、手話・手話通訳をコミュニケーション手段とする割合が20%を切っているという数字ですけれども、この数字が多いのか少ないのか、ちょっと判断しかねるところです。
中々手話を覚える機会がないからこういう状況なのか、周りの状況はこうだからこういう状況なのかとかいろいろその辺の課題があろうかと思います。
まとまりはないですが、純粋に今日皆さんの話を聞いて、私たち健常者からすると、知らないことがちょっと多すぎるということが、素直な感想です。

(石渡会長)
率直なご意見をいただきましてありがとうございます。
先ほど萩原委員も手話を学んで世界が広がったとおっしゃっていました。私も、ずっと口話でやってきて、大学に来て手話を学んだという学生に何人かお会いしました。その学生さんたちも、世界がものすごく広がったと言っておりました。ですから、今、金井委員がおっしゃった、ちょっとしたきっかけがあれば、そういう経験がなかった方たちの世界が広がるし、まさに県民の理解を広げていくということについて、大事なヒントをいただけたと思います。

(小海委員)
ろう文化にしたがって、立ってお話をしたいと思います。社会福祉法人神奈川聴覚障害者総合福祉協会の小海と申します。
ろう者が会議をするとき、誰が発言しているかがわかるように立って話をすることがあります。先程事務局から説明があったのですが、ここにいるろう者委員の3人とも、事務局が説明をしたとき、どこで誰が説明をしているか見えなくてわかりませんでした。そのため、まずお願いしたいことは、発言をするときは、特に事務局の方、誰が発言をしているのかをわかるようにしていただきたいと思います。
私は事業者という立場ですけれども、そういった立場で呼ばれたと思っています。
先程金井委員から話を聞いて思ったことがあります。
会社で働いている聴覚障害者が多数います。難聴者も含めればさらに多くなると思いますが、ただ、ろう者の場合は、気楽に話ができるというのはやはり手話です。職場で、手話が十分できるというところは、本当に微々たるものです。ほとんどの会社では、ろう者が努力をしています。
筆談でやりとりをして何とか通じる範囲で狭いコミュニケーションをしているというのが現状です。
ですので、会社で聞こえない人が聞こえる人と一緒になって働いている際によい環境を作っていく必要がありますので、この協議会で話し合っていかなければと思っています。
そしてもう一つ、資料の方ですけども、資料4、「聴覚障害者のコミュニケーション手段の状況」です。事務局の方からの説明があったように、重複回答ということですね。これはちょっと誤解されてしまうような表現になっていると思います。私は補聴器を使わないけれども筆談もするし、手話もします。口話もします。そのため、ちょっとこの表では誤解される可能性があるかなというふうに感じます。そして(2)、県内市町村の動き取り組みのその他のところで、障害者総合支援法の中では、意思疎通支援事業があり、市町村についてはろう者個人に対して手話通訳者を派遣するということが義務として、必須事業化されています。厚木市、茅ヶ崎市の例がこちらに書いてありますけれども、事業者の立場としては、県から聴覚障害者情報施設ということで事業を受託していまして、手話通訳者の養成事業も行っています。
手話通訳者の養成事業は市町村の手話奉仕員養成課程を修了した方が、県の養成事業の方に申し込みますが、市町村における手話奉仕員養成課程を修了される人の裾野が広がらないと、それに続く手話通訳者養成課程に応募する人の数が十分確保できないのではないかと心配しています。
また、手話通訳者の高齢化という問題があります。長い間手話通訳活動をされた方が高齢になり引退する時期がそろそろ来ています。また、2020年東京オリンピック、パラリンピックも含めまして、盛り上がってくるだろうと思っています。黒岩知事も、オリンピックの支援をしていこうということを表明されていますので、手話通訳者の数が十分に確保できるかどうかという危惧があります。そのことをまずお伝えしたいと思っていますので、皆さんの意見をいただきながら、私ども事業者としての立場でいろいろ話をしていきたいというふうに思っています。

(石渡会長)
小海委員、ありがとうございました。
最後に、オリンピック、パラリンピックにも触れられました。先程萩原委員から、神奈川県が作っている劇場でも手話通訳者が配置されていなくて、せっかくの劇が楽しめなかったという話がありました。この後、日本でオリンピックが開かれるというのは、ずいぶん先になると思いますので、こういう貴重な機会をチャンスにして、手話通訳の数を増やすことができたらと、今のお話をお聞きしていて思いました。ありがとうございます。他に何か意見はありますか。山本委員、お願いいたします。

(山本委員)
私は、神奈川県の中で手話通訳派遣という業務を担当しております。
先程河原委員、小海委員から、手話通訳者は大切であるけれども、その人数については将来のことを考えると、先細り、大変だという話がありました。
皆さんは手話通訳の業務をしているところを見たことはありますか。
最近ではテレビとかの丸いワイプの中に手話通訳者が入っていたり、あとは、行政が主催する講演会とかに手話通訳がついたりしているかと思います。確かにそういう仕事も担っておりますが、実際のところは聞こえない方と一対一で生活全般に関わる手話通訳を担当する場面がとても多いです。
例えば医療場面、教育場面、それから、仕事・就労ですね、そういった生活に関する密着した通訳が多いです。
私たちの仕事は、耳の聞こえる手話のわからない方々とろう者をつなぐ、そして、福祉の向上、生活の向上を図っていきたいという気持ちで業務にあたっています。手話通訳の立場から、私が仕事をした16年間の間にいろいろなろう者の方とめぐり合ってきました。
その中で、いまだに思うことは、ろう者の方々が、1市民1県民になりきれてない部分が多々あるなというところです。やはり、音声情報が多い中、どうしても、依然として聞こえない方々が閉ざされている部分というのは大きいと思います。
少しずつ、行政や企業の中で手話通訳を使う場面も増えてきていますけれども、いまだに耳が聞こえないということで、就労の場面でもですね、履歴書を受け取ってもらえないとか、なかなか面接までこぎつけないということがあります。
また、面接になっても電話を取れないのであれば、雇用はできませんという形で断られることもいまだにあります。
耳が聞こえないということで仕事に就けないというのは、人として生きていく中で仕事はとても大きいウエイトを占めていると思いますので、大きい問題だと思っています。
また、手話が広まっていくことが大事だと思っています。
私たち手話通訳はあらゆる場面で、手話通訳として動いていますけれども、ろうの方々が、どこにでも、いつでも手話通訳がつくような制度が欲しいとおっしゃっています。
現状手話通訳者がつく場面が足りないので、そういうことを希望されるのは当たり前なのですね。
ただ、手話通訳の私の立場としては、手話通訳の有無によって、ろう者の生活が左右されるものではないと思うのです。
県民皆さんが、片言でもよい。
手話を覚えて、そして、少しでもろう者に対する正しい理解を広げていければ、とても皆さんと共生しやすい豊かな社会になっていくのではないかと思っています。そういう、社会になればよいと私も待ち望んでいます。
それと先ほど河原委員の方から、手話通訳者の処遇、身分についてというお話がありました。私も手話通訳者になるまで、何年もかかって手話通訳士の資格に合格しました。
ところが、実際に仕事に入ってみますと、この仕事をどんなに沢山受けても、自分の収入で生活するっていうことはとてもではないですが無理です。
聞こえない方がいらっしゃる前でこういうことを言うのは、ちょっと苦しんですけれども、手話通訳者の身分、また業務内容、処遇等ですね。制度的な位置付けというのがほとんど整理されていない状態です。
せっかく気持ちがあって、努力して手話通訳の資格を取ってもなかなか定着しにくいのですね、今はどうしてもこういう景気ですので、家計を助けるために、手話とは全く関係のない仕事に就いてしまう方も沢山おられます。
やはり、手話通訳制度の向上はイコール、ろう者の権利の保証につながると思います。これが確固としたものになっていかなければ、豊かな十分な情報コミュニケーションというのは、これからは担いきれないと思っています。
先程も言いましたけれども、本当に手話通訳の数が増えていきません。私は入って15、6年になるのですが、若い方がほとんど入ってきません。引退される方ばかりなのです。
そこのところも制度としてきちっと確立していかないといけないかなと思います。
県民に手話を普及すること、ろう者への理解を普及すること、そして聞こえない方々の権利としての手話通訳の確立というものを、ぜひ皆さんと一緒に考えていけたらなと思っております。よろしくお願いいたします。

(石渡会長)
山本委員、ありがとうございました。手話通訳者の置かれている立場とその必要性について整理してお話いただきありがとうございました。
今、飯島委員が手を挙げられました。お願いいたします。

(飯島委員)
神奈川県社会福祉協議会の飯島と申します。私どもの業務の中に、当事者活動の支援という業務がございます。
事務所の前に、活動のためのフリースペースがあり、そこで、たまたま手話をお使いの方がいらっしゃいまして、「手話の普及」というキーワードで少しお話をいただいたということと、また、ある地域で、おそらくもう40年近く活動をしている手話サークルの会長さんにも同じようにお話を聞かせていただきましたので、そのお話をさせていただければと思います。
まず手話通訳者の関係についてのお話です。
手話通訳者の人数が少ないということについて、いわゆる、数値目標みたいなものを立てて、合格者を何人養成するといった取り組みをぜひ行ってもらいたいと言うことです。
これがうまくいけば、誰でもどこでも必要な時にすぐ頼めるような形になるのではないかということで、いろいろ課題はあるかと思いますけれども、やはり数値目標を立てることによって、そこに向かっていこうという取り組みをもっていただくと嬉しいなというようなお話がございました。
次に、小中学校のカリキュラムです。高校の授業などの事例についてお話をいただいたところですが、それとは違い、地域での手話の講習会などは、比較的短い期間で実施されているようです。しかしながら、それはその場ではよろしいのですが、願わくはやはり継続性が必要だと言うことです。
手話技術の習得に継続した時間を設けていただくと、それが広く良い方向になっていくのかなというお話です。
また、世の中には手話を使って、生活をなさっている方がいるというような日常が存在することを教えていくことも、子どもたちには必要じゃないかというお話もいただいたところでございます。
ろう者の方の中には、多少ならずとも口話ができるような方がいることも事実だと思います。そのような方は、聴覚に障害があることを説明してもわかってもらえない、ちょっと聞こえ方が悪いと思われてしまい、そのような方とコミュニケーションが難しくなると、耳のそばで大きな声で話されるという状況があるので、それは多分当事者の方においては、ちょっと辛さを感じてしまうという話もいただいたところでございます。
また、環境整備についてですが、例えば、車椅子の方への配慮ということで、対応のための呼び出しボタンが見られるところでございますけれども、ろう者の方に関しても整備してもらうことができれば、ということです。
たまたま、ある携帯大手会社の一部の事業所だと思いますが、ろうあ者の方が顧客としていった時に、オペレーター通信システムみたいなものがおあり、手話通訳の方が、画面に表示されるとのことです。
通訳者の課題もありますけれども、手話を普及させていくことももちろん必要なことではありますが、一方で、当事者の方が、より暮らしやすくなるためには、一例ですがモニターによるオペレーター対応といった環境整備も考えてもらうと嬉しいです、といった話をいただいたところでございます。

(石渡会長)
はい、貴重な声を沢山集めてくださってありがとうございます。今の飯島委員の話を聞いても、最初河原委員がおっしゃっていた、聞こえないということの理解を聞こえる方にしていただく難しさを、改めて感じました。それでは次に小川委員お願いいたします。

(小川副会長)
私の肩書きは神奈川工科大学教授となっているので、この場にいることについて皆さん不思議に思われているかと思います。この大学はエンジニアを育てる大学で、私自身は、障害者福祉が専門なんですけれども、うちの大学にはろう学校を卒業されて入学されてい
る方、一般校で学んで来られた聴覚障害者の方が数名学んでいらっしゃいます。
十分な情報保障ができていないというところ、ちょっと心苦しさがあるんですけれども、今はろう学生の方が大学に入って学ぶという時代です。それから身近な学生さんには、ろうの親御さんがいて、現在手話の学習機器を開発したいということで、いろいろと取り組んでいる学生も私の側におります。
大学の中にも、そういう学生さんが来て学ぶので、学びやすい環境を作っていくっていうことがすごく必要だと思っています。
この協議会の中でいろいろなお話を聞きながら、自分の足元で、改善はしていければよいかなと思っております。
私は一委員のつもりでいたのですけれども、副会長になっておりますので、少し進め方について意見を述べたいと思います。
計画を立てるということは、現状があって、それを把握して初めて計画が立つ訳だと思います。
どのように現状、実情を把握するかというと、必ずしも数値のデータだけではなく、エピソードを幾つか集めることが、とても重要だと思います。
ですから河原委員が神奈川県聴覚障害者連盟のまとめをしてくださいましたけれども、県下には様々な当事者団体があります。様々な当事者の方々のエピソードをしっかりと押さえる。
今飯島委員から、県の社会福祉協議会で当事者支援をしているのでそこで声を聞いてくれたということがありますけども、そういったエピソードを共有することで、どのような計画にするかということが見えてくるのではないかと思います。
数値データで何人いてどこにどういう人がいるというような数字も必要だと思いますけれども、むしろ、一つ一つのエピソードがものすごく、我々の委員のパワーになっていくのではないかなというふうに思います。この手話言語普及推進協議会について、事務局から示された回数は4回です。
ですけれどもその間を埋めるような形で、ヒアリング、あるいはそれぞれの団体にお願いをして、エピソードをそろえるということもしてみたらいかがかなと思います。
それを全員で共有していくということが必要かというふうに感じました。
また、手話通訳の方からの養成とか、手話通訳の方の身分ということについての課題が出ていました。
少ない人数であるという現状へのいろいろな課題など、手話通訳の養成あるいは手話通訳者の業務についても、さらに専門性と安定した仕事にするために、対策を考えていかなければいけない。
つまり普及とは、市民レベルの普及ということもありますけれども、手話通訳の専門性とその身分保障ということ。市民レベルのアプローチと専門職のアプローチが必要かなと思っております。
その課題を整理して、どう取り組むかを検討していく必要があるかなというように思いました。
それともう一つは、普及に果たす役割でろう者自身の役割というものがものすごく大きいと思うんですね。手話を普及するっていうことは、聴覚障害者の生活を豊かにすることにつながると言えますけれども、そこに聴覚障害者自身がどういう役割を果たしていくことで、社会を変えていけるのかということです。
そういう意味で、ろう者自身の役割はとても重要になると思います。今まで、行政はどうすべきか、企業はどうすべきか、教育はどうすべきという話が出ておりますけれども、それとともに、ろう者自身の役割をもっと明確にして共生、協働していく。そういうことが必要なのかなというふうに思いました。それで、これから後3回の計画となっておりますけれども、ぜひ事務局にはその間を埋めるような、そして速やかな委員さんへの情報提供をお願いしたいです。普段のコミュニケーションといいますか、そういうことができるような対策をしていただけたら、この協議会も生きてくるかなというふうに思いました。以上です。

(石渡会長)
はい、今、小川委員から、これから進めていくにあたって、大事な点を4点挙げていただきました。ぜひその辺りは事務局としても具体化していただければと思います。
すみませんそろそろ終了しなくてはいけない時間に近づいていますが、どなたか意見はありますか。

(戸井田委員)
河原委員提供の資料で、地域での生活におけるろう者の現状が出ていますが、聴覚障害者の方も高齢化しています。
地域の中で支えあっていくということが一番大切だと思いますので、できれば、地域の中で本当に簡単な手話でおはようございますとか、こんばんはなどの簡単な手話でもよいから少しずつ普及して行くことにつなげてきちっとしていっていただきたいなと思います。
難しいことばかりが条例ではなくて、まず地域の高齢者のろうの方のことも考えて欲しいなと思っておりますので、その点これからの協議会の中で、皆さんとの意見の交換で良い案が出て作られていけば良いなと思います。地域でのコミュニケーションが防災にも繋がっていく大切なことだと思いますので、そこをよろしくお願いいたします。この協議会を進めて良い条例ができてくれればと思っています。

(石渡会長)
戸井田委員、大事なご指摘をありがとうございます。
このことをぜひという委員の方いらっしゃいますか。はい、萩原委員、お願いいたします。

(萩原委員)
先程手話通訳の問題が出されました。小川委員からろう者自身でできることも大事なのではないかという意見が出まして、あわせて考えていただきたいということがひとつあります。
ろう者も手話通訳ができる、そのことを忘れないでいただきたいと思います。確かに、ろう者はサポートを必要とする場面があります。しかし、サポートしていただくことだけを考えるのではなく、ろう者自身が逆にサポートする側に立つことを考えることも必要だと思います。
手話通訳の方がだんだん少なくなって行っていることは周知の課題です。
ろう者自身が手話通訳を行うことで、それをフォローできるのではないか、と考えます。ろう者の手話通訳が活用できる場面も沢山あり、日本語を獲得し、意味を理解し、手話に翻訳することのできるろう者も沢山います。ろう者の手話通訳を育てるということも大事かなと思っています。
通訳に関して、健聴者の通訳者養成だけにこだわるのではなくて、ろう者自身が手話通訳として育つ可能性を広げていくということも考える必要があるのではないかと個人的に思いました。

(石渡会長)
萩原委員、新しいアイデアをありがとうございます。
私も学校の中で、聞こえない方が通訳をやっていただいている場面を経験していますので、本当にそういうことが地域で当たり前に広がっていくと、大きく社会がかわると思いました。

(吉本委員)
実は今萩原委員がおっしゃったことと近いことを感じていたので1点だけ。
手話を学ぶことは大切だと思うのですが、今日の話を聞かせていただき、健常者には知らないことがありすぎると感じたんですね。
手話を覚える時に、ろう者の方と一緒になって接しながら学ぶことが重要だと感じました。耳の聞こえない方が何に困っているかとか、心理的に何を感じているかとか、そういうことも一緒になって学ばないと言葉として入ってこないと思うので、ろう者の方と一緒になって手話を学ぶことが必要だと思います。
萩原委員からろう者も手話通訳者として活躍できるという話がありましたように、健常者が手話を学ぶ際に、まさしくろう者の方が通訳になって橋渡しをしてくださるとかがすごく重要なので、推進計画にはそういう視点を入れていただきたいなと感じました。

(石渡会長)
小川委員がろう者の役割というようなことをおっしゃいました。この条例をどう具体化することについての萩原委員、吉本委員のご意見等をいただいたところで、また新しい計画の視点がでてきたのではないかと感じましたが。

(田畑委員)
一言だけ、通訳の処遇ということが話題になったので、ぜひご紹介をしたいのですけれども、いただいた資料4の中に小海委員がいらっしゃる障害者福祉センターの業務内容が書かれていますが、この中に盲ろう通訳介助員制度に則った派遣事業もあります。
盲ろう者の通訳介助員という職業がありまして、手話だけではなく、より高いスキルを要する通訳介助の皆さんが日々活動されておられます。
その通訳介助の皆さんの処遇についても、ともに考えていただきたいと思っております。以上です。

(石渡会長)
はい、大事なご指摘ありがとうございました。他に何か意見はありますか。

(各委員)
(意見なし)

(石渡会長)
それでは、これから計画を作るにあたって本日は委員の皆さまから大事なご指摘を沢山いただきましたので、事務局に整理してもらったものを早めに委員の皆さまに送付していただければと思います。
また小川副会長がおっしゃられておりましたが、次の協議会までにこの協議会とは別に、条例を確実に生かすため、いろいろな活動を広げていただければと思います。それでは、進行を事務局に返します。

(事務局)
それでは、最後に事務局から御案内をいたします。先ほど小海委員から指摘を受けまして、知らないことが沢山あると痛感いたしました。ありがとうございました。
協議会の進め方につきましては、準備の時間も含め、かなり時間的な制約もございますので、事務局としては先ほどお話した全4回でお願いしたいと考えておりますが、小川副会長からのご提案の内容を踏まえ、会長とご相談させていただいたうえで進めさせていただければと思います。
また次回の協議会につきましては、8月頃を予定しております。会場の都合等もございますので、明日以降早い段階で日程の調整をさせていただきますのでご承知置きいただければと思います。
また議事の内容につきましては、骨子案の協議を予定しておりますが、内容につきましても会長とご調整のうえ皆さまにご報告いたします。本日の協議会の内容につきましては、一度各委員の皆さまそれぞれに御確認いただきまして、改めて今回の議事録全てをフィードバックさせていただくように考えております。事務局からは以上でございます。
それでは、本日の協議会につきましては、これで閉会といたします。本日はお忙しい中お集まりいただき、どうもありがとうございました。

 

会議資料

次第[PDFファイル/5KB]構成員名簿[PDFファイル/41KB]協議会設置要綱[PDFファイル/7KB]協議会傍聴要領[PDFファイル/6KB]手話言語条例[PDFファイル/7KB]

資料1[PDFファイル/20KB]資料2[PDFファイル/120KB]

資料3[PDFファイル/21KB]資料4[PDFファイル/38KB]

 

このページに関するお問い合わせ先

このページの所管所属は福祉子どもみらい局 福祉部地域福祉課です。