第十二節 肝疾患

掲載日:2020年5月7日

1 認定基準

 
障害の程度 障害の状態
一級 身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が前各号と同程度以上と認められる状態であって、日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のもの
二級 身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が前各号と同程度以上と認められる状態であって、日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの

肝疾患による障害の程度は、自覚症状、他覚所見、検査成績、一般状態、治療及び病状の経過、具体的な日常生活状況等により、総合的に認定するものとし、当該疾病の認定の時期以後少なくても1年以上の療養を必要とするものであって、長期にわたる安静を必要とする病状が、日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のものを1級に、日常生活が著しい制限を受けるか又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のものを2級に該当するものと認定する。

2 認定要領

(1)肝疾患による障害の認定の対象は、慢性肝炎と、慢性かつびまん性の肝疾患の結果生じた肝硬変症及びそれに付随する病態(食道・胃などの静脈瘤、特発性細菌性腹膜炎、肝がんを含む。)である。
肝硬変では、一般に肝は萎縮し肝全体が高度の線維化のため硬化してくる。
肝硬変の原因として、B型肝炎ウイルスあるいはC型肝炎ウイルスによるウイルス性慢性肝炎やその他自己免疫性肝炎による肝硬変、先天性胆道閉鎖症及びその手術後が原因となった胆汁うっ滞型肝硬変、代謝性肝硬変(ウイルソン病、ヘモクロマトーシス)等がある。

(2)肝疾患の主要症状としては、易疲労感、全身倦怠感、腹部膨満感、発熱、食欲不振、悪心、嘔吐、皮膚そう痒感、吐血、下血、有痛性筋痙攣等の自覚症状、肝萎縮、脾腫大、浮腫、腹水、黄疸、腹壁静脈怒張、食道・胃静脈瘤、肝性脳症、出血傾向等の他覚所見がある。

(3)検査としては、まず、血球算定検査、血液生化学検査が行われるが、さらに、血液凝固系検査、免疫学的検査、超音波検査、CT・MRI検査、腹腔鏡検査、肝生検、上部消化管内視鏡検査等が行われる。

(4)肝疾患での重症度判定の検査項目及び臨床所見並びに異常値の一部を示すと次のとおりである。

 
検査項目/臨床所見 基準値 中等度の異常 高度異常
血清ブリルビン(mg/dℓ) 0.3から1.2 2.0以上3.0以下

3.0超

血清アルブミン(g/dℓ)

(BCG法)

4.2から5.1 3.0以上3.5以下 3.0未満
血小板数(万/μl) 13から35 5以上10未満 5未満

プロトロンビン時間

(PT) (%)

70超から130 40以上70以下 40未満
腹水 腹水あり 難治性腹水あり
脳症(表1) 1度 2度以上

表1 昏睡度分類

 
昏睡度 一般状態 参考事項
1 睡眠ー覚醒リズムの逆転。多幸気分ときに抑うつ状態。だらしなく、気にとめない態度。 あとで振り返ってみて判定できる。
2 指南力(時、場所)障害、物をとり違える(confusion)。
異常行動
ときに傾睡状態(普通のよびかけで開眼し会話できる)無礼な言動があったりするが、他人の指示に従う態度を見せる。
興奮状態がない。
尿便失禁がない。
羽ばたき振戦あり。
3 しばしば興奮状態またはせん妄状態を伴い、反抗的な態度を見せる。
嗜眠状態(ほどんど眠っている)外的刺激で開眼しうるが、他人の指示に従わない、又は従えない(簡単な命令には応じえる)
羽ばたき振戦あり。(患者の協力が得られる場合)
指南力は高度に障害
4 昏睡(完全な意識の消失)痛み刺激に反応する 刺激に対して、払いのける動作、顔をしかめるなどがみられる。
5 深昏睡。
痛み刺激にも全く反応しない。
 

(5)肝疾患による障害の程度を一般状態区分表で示すと次のとおりである。

 
区分 一般状態
歩行や身のまわりのことはできるが、特に少し介助のいることもあり、軽い運動はできるが、日中の50%以上は起居しているもの
身のまわりのある程度のことはできるが、しばしば介助が必要で、日中の50%以上は就床しており、自力では屋外への外出等がほぼ不可能となったもの
身のまわりのこともできず、常に介助を必要とし、終日就床を強いられ、活動の範囲がおおむねべッド周辺に限られるもの

(6)等級に相当すると認められるものを一部例示すると次のとおりである。

 
障害の程度 障害の状態
一級 前期(4)の検査成績及び臨床所見のうち高度異常を3つ以上示すもの又は高度異常を2つ及び中等度の異常を2つ以上示すもので、かつ、一般状態区分表のウに該当するもの
二級 前期(4)の検査成績及び臨床所見のうち中等度又は高度の異常を3つ以上示すもので、かつ、一般状態区分表のイ又はアに該当するもの
   

なお、障害の程度の判断に当たっては、前期(4)の検査成績及び臨床所見によるほか、他覚所見他の一般検査及び特殊検査の検査成績、治療及び病状の経過等も参考とし、認定時の具体的な日常生活状況等を把握して、総合的に認定する。

(7)検査成績は、その性質上変動しやすいので、肝疾患の経過中において最も適切に病状をあらわしていると思われる検査成績に基づいて認定を行うものとする。

(8)食道・胃などの静脈瘤については、吐血・下血の既往、治療歴の有無及びその頻度、治療効果を参考とし、(4)に掲げる検査項目及び臨床所見の異常に加えて、総合的に認定する。特発性細菌性腹膜炎についても、同様とする。

(9)肝がんについては、(4)に掲げる検査項目及び臨床所見の異常に加えて肝がんによる障害を考慮し、本節及び「第15節/悪性新生物」の認定要領により認定する。ただし、(4)に掲げる検査項目及び臨床所見の異常がない場合は、第15節の認定要領により認定する。

(10)肝臓移植の取扱い

肝臓移植を受けたものに係る障害認定に当たっては、術後の症状、治療経過、検査成績及び予後等を十分に考慮して総合的に認定する。

特別児童扶養手当を支給されていた児童が、肝臓移植を受けた場合は、臓器が生着し、安定的に機能するまでの間を考慮して術後1年間は従前の等級とする。

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