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更新日:2024年3月29日

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第14回「黒岩知事との“対話の広場”Live神奈川」開催結果

平成27年7月21日(火曜)に開催された、第14回黒岩知事との“対話の広場”Live神奈川の実施結果についてご覧いただけます。

概要

第14回黒岩知事との“対話の広場”Live神奈川

テーマ

ともに支えあう社会づくりを目指して 第1弾:「生活困窮」の現状と課題

日時 平成27年7月21日(火曜) 18時30分から20時
会場 神奈川県庁 本庁舎3階大会議場
参加者数 80 名

実施結果(動画版)

当日の録画映像をご覧いただけます。

※参加者配布資料はこちら[PDFファイル/2.16MB]からダウンロードできます。





実施結果(テキスト版)

※参加者配布資料はこちら[PDFファイル/2.16MB]からダウンロードできます。

司会

皆さまこんばんは。本日はお忙しい中、お越しいただきありがとうございます。ただ今から、第14回「黒岩知事との“対話の広場”Live神奈川」を開催いたします。本日は、知事のあいさつ、ゲストのプレゼンテーションに続きまして、会場の皆さまとの意見交換を進めてまいります。

まずは、本日のゲストをご紹介いたします。

首都大学東京大学院 人文科学研究科 社会行動学専攻 教授でいらっしゃる、岡部 卓(おかべ たく)様。

一般社団法人インクルージョンネットかながわ 代表理事の鈴木 晶子(すずき あきこ)様。

お二人の略歴は、配布資料にございますので、どうぞご覧ください。本日はよろしくお願いいたします。

はじめに、黒岩知事からごあいさつを申し上げます。黒岩知事、よろしくお願いします。

知事

こんばんは、神奈川県知事の黒岩祐治です。このような暑い中、わざわざ県庁までお運びいただきまして、まことにありがとうございます。

私も、おかげさまで、2期目を迎えることができました。2期目を迎えて3ヶ月ちょっとが経ったところでありますけれども、その第1回目の“対話の広場”Live版ということになりました。第1期目から、県民の皆さまと直接対話をしながら県庁運営を進めていきたい、そんな思いでこういう対話の広場を定期的にずっと繰り返してやってきたわけであります。

今回選んだテーマが、生活困窮者の問題であります。どうしてこういうテーマを選んだのかといいますと、今度の選挙戦で、私は県内各地をずっと回ってまいりました。その時に、裸で皆さまのところへ飛び込んで行って、どんどん握手をしてまいりました。握手をしてる時に、その中でいろいろな声をかけられました。

例えば子宮頸がんワクチンの副反応で苦しんでいらっしゃる方がご家族を連れて来られて、なんとかしてくださいという切実な訴えかけを受けたこともありました。それは、知事2期目に当選した後すぐに実行いたしました。副反応事故は、本来ならば国がちゃんと認定しなければ補償は受けられない。でも、なかなか認定基準が厳しいということがあるので、それならば県独自でそういう人たちに対しての支援をしましょう、ということを約束して、もう実行いたしました。

選挙戦中に、生活困窮ということを訴えられる方が何人もいらっしゃいました。私はこういう問題について、基本的には、この2期目に何をやるのかという中で、経済のエンジン回していくんだと言ってきました。課題を乗り越えるプロセスによって経済のエンジンを回していきましょう、という話をしました。

そのうちの一番大きな課題というのが超高齢社会。圧倒的な超高齢社会がどんどん進んでくると。この課題をどう乗り越えていくのかという中で、最先端の医療技術の追求と未病を治すアプローチを融合させながら、健康な時間を長くしていきましょう、健康寿命を延ばしていきましょうといったものが最先端医療関連産業の創出と、未病産業の創出につながるという話をしてまいりました。

私は、こうやって経済のエンジンを回していくことによって、皆さまにその恩恵が隅々まで行き渡っていくということについては、今も疑いを持っていません。その政策は強力に進めなきゃいけないと思っています。

そんな中で、町で握手した方から「私は年金3万円しかないんです。これしかないんですよ、どうすればいいんですか。」と突然言われた時に、私は言葉を失いました。ほんの瞬間的な握手なんですけれども、そういう生の声をずばっと聞いてまいりました。

やはり大きな経済のエンジンを回すことは大事だけれども、そこからすぐに全部の皆さまに恩恵が行くわけではないだろうといった中で、もう一つの知恵が必要なんじゃないのかなというふうに、すごく強く思った次第でありました。

じゃあ、これをなんとかして形にしていきたいという中で、やはり直接皆さまとともに議論しながら生活困窮者の現状はどうなってるのか。どんな議論が行われてきたのか。いったい何が足りないのか、何が求められてるのか。今すぐできることは何かあるのか、ないのか。中・長期的には何をすればいいのか。そんなことを皆さまとともに議論しながら深めて行きたいなと思った次第でありまして、今回こういうテーマを選ばせていただきました。

この後、お2人の方からプレゼンテーションをしていただきます。これが話のきっかけの一つになりますが、その後のシナリオはまったく用意していません。対話の広場ですから、皆さまとの対話自体が進めていくシナリオを作ってまいります。何の作為もしていません。ですから、どんどん皆さまのご意見を言ってください。

今日は、Live版と言っているのは、この会場の模様がそのままインターネットで生中継されています。これを見ていらっしゃる方が、いろんな形でご意見を寄せてくださいます。ツイッターでご意見を寄せてくださいます。それもどんどん取り入れながら、私自身がお答えできることについては、ここでどんどんお答えしてまいります。専門家の先生にお答えいただきたいことについては、私から質問させていただきます。というような形で進めてまいりたいと思います。1時間半しっかりと議論していきたいと思いますので、どうぞご協力よろしくお願いします。

本日は本当にありがとうございます。

岡部 卓 氏(首都大学東京大学院人文科学研究科社会行動学専攻教授)

皆さま、こんばんは。首都大学東京の教員をしております、岡部といいます。

まず、私の方でお話ししたいことは、人は一人では生きられない、人は支え合って生きていくということです。今回のテーマ(※岡部氏の発表のテーマは「生活困窮者支援をどう考えるか つながりのある社会に向けて」)である“つながり”というのは、“支え合う、つながりを持つ”という意味でありますので、相互に支え合うこと。自分は一人でやっているように思うかもしれないけれど、人は支え合って、あるいは、支えている人がまた別な人に支えられて生きているんだということをお話しできればと考えております。

最初に、生活を支えるということはどういうことなのかを、少しお話ししたいと思います。

生活ってライフという英語に当たると思うんですけれども、「生命」であるとか、「生活」であるとか、人の「一生」を指します。この生活(ライフ)というところに込められています。生活を支えるとは、まずは生命というものを守るということ。それから社会的、文化的な生活を享受できるようにすること。そして、一生つつがなく自分らしく納得でき生きていけるということが、生活を支えるということです。

では、そこで最も根源的なものは「生命を支える」ということなんですけれども、生命であるとか生活というのは、その人が生きているということ(生命)を尊重するということですので、その尊重するということをいかに具体的に支えていくかということが大切になってきます。

生活を支える最も基本的なものは生計を支える。自分の生活を支えるというのは経済的生活を送れる。それから、社会的、文化的な生活を送れるということです。生活困窮図表

しかし、それだけではないというのがこの図です。人は、いろいろな関係性の中で生きているわけですから、それぞれの場の中でどういう生き方をしていて、その中でどういう困難があるのかということが問題になってきます。

私たちの社会というのは、経済であるとか、労働であるとか、家庭環境というのが大きく変わってきておりますので、その変化で、さまざまな生活の困難が生じてきます。

これは、家庭の場で、例えば家族関係の不調であるとか、児童虐待であるとか、あるいはDVということが起きてくることがあります。

また学校社会では、引きこもりであるとか、非行であるとか、不登校とか、ニートということがあります。

労働社会になってくると、代表的なものはワーキングプア。極めて過重な労働になると、例えば自殺ということだって起きてきます。

また、その現状からなんとか脱却したいという衝動・行動、例えばアルコール依存、薬物依存、多重債務ということも起きるかもしれません。

それが、もう少し先、例えば家庭・地域社会の中で言うと、孤立死という問題も起きてきます。

これは、ある意味では、私たちが程度の差こそあれ、さまざまな困難に直面している一つの表れとしてとらえることができると思います。

特に今日は、労働の不安定化とか所得の低位性というものが顕著に生じてきています。また、家族のつながりとか地域のつながりの希薄・喪失というのも、非常に広がってきているということがあります。

このような状況に対して、私たちはどのようにしたらいいのかが課題となっています。そこではまず地域社会の中での支え合い、地域社会におけるセーフティネット、それぞれの生というものを肯定して保障していくということが大事になってきます。またその中では、いろいろな制度であるとか民間の資源を活用して、それを支えていくということが必要になってきます。

例えば、働くということを支援するとはどういうことなのか。働いて自分の生活を支えるという場合は、生計の手段として仕事というものを考えている。また、働くことによって物・サービスをつくり出すという市場への貢献もある。働くということが、自分が社会に貢献している、自分が社会の中で何らかの役割をしているという自己肯定感というものを生み出している。さらに、社会とのつながりということも出てくる。

学ぶということはどうなんだろう。私は日曜日に大学説明会で話をしているんですけれども、何のために大学に入るのかというと、卒業と資格を取るパスポート、これも大事なことで間違いではありません。もう一つは、学ぶことを通していろいろな知識人と出会い、また社会の中で自分がどう生きるのかということを突き詰めていく場・時間・空間であります。これは、ある意味では、人間としての発達であるとか、自分の居場所をつくって人と関わることにつながる。また、学力の向上というのも、個人あるいは社会に大きく貢献するということになると考えます。

では、今、社会でどういうことが起こっているのか。ここ20年、日本の社会では極めて貧富の格差というのが広がっています。もう一つは、人とのつながり、家族、地域、職場とのつながりが薄くなってきた、あるいはなくなってきたということです。それは家族の支え合い、地域の支え合い、企業での支え合い、そういうことが非常に弱くなってきたということを意味します。それが結果的に、生活困窮者が非常に増えてくる、あるいは貧困者の方が非常に増えてくる、あるいは生きづらさを抱えた子ども・若者が増えてくる事態となり、それが進行しているということです。

このことに対して、社会保障と税の一体改革という中で、生活困窮者対策の充実が謳われました。それを踏まえ、「生活困窮者自立支援法」という法律が制定されました。その法律というのは、地域で生活の困難な人を見つけて、相談につなげて、生活再建の道筋をつけていこうということを目指す法律です。

今、私たちがどのような時代に生きているのかというと、極めて厳しい生きづらさを抱えている。これを生活困窮というふうに言ってもいいかと思います。そこで、私たちは、家族とか、地域とか、職域のつながりということを具体的にどうしたらいいのか。地域住民である県民の方々あるいは社会福祉法人、NPO、あるいは企業と連携をして、多様な生活課題を抱える方に解決をもたらし、その人たちの生活再建に結びつける方向で進めていかなければいけません。

考えるに、私たちは何が一番幸せかというと、「他者の幸せを喜べる」ということではないでしょうか。ある意味では自分の幸せと他者の幸せというのをともにつくり出せる「社会の幸せ」というものが、私たちにとって一番幸せなことではないでしょうか。

そういうことの取組みに向けて、今年の4月、「生活困窮者自立支援法」が施行されています。これを契機ととらえ、県民の方々と企業と、あるいはNPO、社会福祉法人の非営利のところなどと行政がタッグを組んでやっていく。この連携というのが、別な言葉で言えば、“つながり”ということではないでしょうか。

どうもありがとうございました。

鈴木 晶子 氏(一般社団法人インクルージョンネットかながわ 代表理事)

皆さま、初めましての方が多いと思います。一般社団法人インクルージョンネットかながわの鈴木と申します。

私は、神奈川県内で、先ほど岡部先生のプレゼンテーションにもございました、4月から始まった生活困窮者自立支援制度に関わる事業(※「生活困窮者自立支援法」に基づくもの)を、鎌倉市と藤沢市から委託を受けまして、実際に現場で運営をしている者になります。今日はそういった取組みをご紹介したいと思います。

私どもは、実は生活困窮者を支えるという目的のために、5年ほど前から活動を始めた団体です。元々、生活困窮ということはいろいろな分野にまたがっているにもかかわらず、包括的に活動する団体というのはそう多くはなかったんですよね。例えば、野宿者だったら野宿者、若者だったら若者、あるいは女性だったら女性、子どもだったら子ども、それぞれの分野がばらばらに活動していたけれども、生活困窮には、非常に多様な人が多様な生活課題を寄せてくるということがありまして、そのために私どもは一つの団体として活動をスタートいたしました。

これまで横浜市、神奈川県、そして先ほど言いました鎌倉市、藤沢市と、生活困窮に関わる事業を運営をしてまいりました。

実際、新しく制度としてスタートいたしましたのは今年の4月からで、この3ヶ月の間にいったいどんな相談が寄せられているか、具体的にご紹介をしたいと思います。実際、本当に多様な生活課題を抱えてらっしゃいますので、その方に寄り添って、縦割ではなくいろいろなものを含めて、包括的に支援していくというのが、この法律の中の自立相談支援事業という、一番基本の相談支援の事業になります。

3ヶ月で、鎌倉市では60名の方をお受けいたしまして、うち30名はご本人が継続支援をご希望ということで、相談の申込みをしていただいております。残りの方は、例えばゴミ屋敷であるとか、近隣トラブルであるとか、さまざまな問題を抱えている方を、ご近所の方がなんとかならないだろうかとか、行政の窓口の方がなんとかならないだろうかということで、ご紹介いただいて、なんとか本人とつながれないだろうかという工夫をしていたり。あるいは、生活保護をはじめ、他のさまざまな制度が活用できるということで、ご紹介をしたりということで、やっております。

実際、どうやって相談にたどり着くかといいますと、関係機関や関係者の紹介というのが7割以上になるんです。看板を掲げて待っていても、生活困窮者とかその家族というのは、情報を手に入れることすらなかなか難しくて、支援にたどり着くということができません。ですので、こうやって中身を見ていきますと、どこから紹介されてくるかというと、本当に多種多様な、民生委員の方のような方から、市内の機関とか、さまざまな方がやっております。庁内連携とか地域の連携体制というものが、困ってる人、支援を必要としている人はどこにいるのかということを考えていく中で、非常に重要なことになってまいります。

性別はといいますと、男性52パーセント、女性48パーセント。例えば、派遣切りなどがあって生活に困ってる人がいるというときには、何となく男性のイメージが強く報道されていましたけれども、現場でいうとほとんど男女差はないかなと。まだ3ヶ月の中で、LGBT、いわゆるセクシュアル・マイノリティの方々というのは、私たちの把握している限り、60人の中にはいらっしゃらないのですが、今まで生活困窮の支援をしてきた中で言いますと、確実にこうしたマイノリティの問題を抱えている方もいらっしゃいますので、男性、女性というだけではなくて、セクシュアル・マイノリティの方にもセンシティブである必要があると思っています。

また、年齢で言いますと、後でもう少し若年層のお話をしたいと思うんですが、こういった形でキャッチをしていっても、30代までの若年層というのは、なかなか支援につながってきません。ところが、大きな統計などを見ますと、今、若い方の所得というのは決して高くなく、非正規雇用であったり、いわゆる引きこもりニートなどの課題を抱えている方がたくさんいらっしゃるはずだけれども、なかなか支援にはつながってこないというのが現状です。相談内容グラフ

ちょっと解説しながら行ければと思いますが、60人の中で一番多いのは当然生活困窮ですので、「収入・生活費のこと」です。残りの18人の方はというと、今すぐ困るわけではないけれども、このままの状態が続けば将来が不安だということで、生活困窮の相談にいらしております。

次に多いのが、実は「病気や健康、障害のこと」です。特に、この病気というのは非常に大きな問題だと思っておりますし、実際私たちが活動する鎌倉市や藤沢市というのは、決して所得階層が元々低かった地域ではないんですけれども、そうした地域の人たちでも、家族の中で一人大きな病気をしてしまったというようなことがあると、かなり困窮していくリスクが高まってくるというのが現実です。

次に多いのが下から2番目、17人の方が困っていらっしゃるのが「住まい」の問題になります。この住まいの問題というのも非常に大きくて、鎌倉市というところは非常に人気のある街なので、家賃相場も高いんですけれども、年齢が行ってある程度収入が落ちてきて年金だけになったといったときに、そこで家を、住まいを維持していくのは非常に難しいという事態が発生しています。

次に多いのが真ん中の16人で、「仕事探し、就職について」になります。

具体的にどんな方がいらっしゃっているかと言いますと、上から多い順に行きますと、「収入・生活費」に関しては、やはり失業、あとは先ほど知事の話の中にもありました、やはり年金の額が少ないという高齢者の方がかなりいらっしゃっています。また、病気で長期失業中とか、引きこもりとか、いろんな課題で収入が足りないと。もちろん、非正規雇用の方々もいらっしゃいます。

次に「病気・健康・障害」なんですけれども、病気を患っている、障害を持っている、結果として働けない。もう一つ大きいのは医療費の問題になってまいります。

次が「住まい」なんですけれども、家賃が高額であるとか、住んでいた賃貸物件から立ち退きを迫られている。老朽化したアパートなどで今取り壊しが進んでいるという中で、次に建て替えると家賃が上がったり、きれいな新しいものを建てるので、今いる方々は退去ということになってしまって、行く場所がなくなってしまう高齢者などもいます。また、失業と同時に住まいを失ったけれども、行き先がないというような方もいらっしゃいます。

「仕事探し」は、いろいろな事情のある方が、自分に合った仕事、自分に無理なく働ける仕事というのを探すのがなかなか難しくて、子育て、介護、病気、障害、その他いろいろな無理な状況があるなどの事情がございます。

その他に、地域での孤立から、ゴミ屋敷、近隣トラブル、長期引きこもり、離婚問題まで、本当に多種多様な問題が寄せられる現場になっています。

実際の就職・就労状況はといいますと、相談申込みをした30名の方のうち65歳以上が7名で、残る23名のうち、昨月までで3名の方が就職いたしました。今月も2人ほど就職が決まっていかれました。中には生活保護につながる方もいるのですが、今のところ、相談に来ていただいて、生活保護につながる方よりも、就労していく方の方が人数が多いという状況になっております。

就職のための基盤づくりということで、安心して仕事に行ける状況、介護とか、子育てとか、病気の家族を置いて安心して就労しに行けるかと言われると、それは難しいのではないか。また、仕事を続けられる健康状態の維持、仕事のストレスを支える地域の居場所の確保も難しい。朝起きてどこかに行くとか、いろいろなことの初歩的な訓練の積み重ねも必要。そして、さまざまな事情を抱える方を受け入れる地域の就労先があるか、ないか。ここが非常に重要なところになります。

実際、生活困窮者自立支援制度では、自立相談支援という相談事業の他に、就労準備支援事業というのと、就労訓練事業という訓練に該当する事業を持っておりますので、実は私たちは藤沢市でこの就労準備支援事業というものを受託してやっております。20代から50代までの稼働年齢層が利用されていて、多種多様な方がいらっしゃいます。

ここで一つお伝えしたいのは、そうは言っても、実は、来ている方を見ると、児童養護施設の退所者であったりとか、生活保護世帯で育った方とか、長期引きこもりだった方とか、いろいろな方がいらっしゃるんですけれども、中卒とか高校中退とか、実は問題がかなり早期に顕在化していたはずなのに、40代、50代まで来てしまったという方がけっこういらっしゃるんですね。若年層はなかなか相談に来ないんだけれども、実は問題はかなり早期から見えていたはずであるという方がかなり多いです。

ですので、そうした方を手厚く支援していくということが必要なんですけれども、受け入れてくださっている地域のNPO、社会福祉法人さん、企業さんなどからは、そういう方を受け入れるととても大変そうな気がすると言われますが、実際に受け入れてみると、少しずつ成長していって、受け入れてよかったな、うちに来てもらってよかったなということがたくさんあります。

まとめになりますけれども、庁内連携などさまざまな連携、そして時間はかかるけれども手厚い支援、就労支援というものが必要になってきます。高齢者の問題として暮らし、健康、医療、住まい。そしてやはり子どもに、なるべく早いうちから支援の手を差し伸べていくということが非常に重要になってきますし、こうした人たちが貴重な地域の人材になっていくんだということをお伝えして、私からのプレゼンテーションは終わりにしたいと思います。

どうもありがとうございました。

知事

岡部先生、鈴木先生、どうもありがとうございました。

生活困窮者という問題は、こうやって聞けば聞くほど非常に幅が広くて、すごく大きな問題だなと。ここを一つ解決すればすべてが解決するというような、そういう簡単なものではないなということは感じるわけであります。しかし、それを手をこまねいて眺めているわけにはいかない。できるところから手をつけていくべきだろうということがあります。そんな中で今、キーワードとして、連携とかつながりとか、ヒントになるような言葉がいっぱい出てまいりました。

ここからは、先ほどお約束しましたとおり、皆さまと対話しながら進めてまいります。私が、元キャスターとして司会進行も務めます。司会進行も務めますけども、知事としての役割も果たしますので、どんどん行きたいと思います。こんな現状があるんだ、こういうことを聞いてほしいということがあってもけっこうですし、私はこんなことをやっていて、そんな中でこんな人たちがいるんだとか、こういう問題に目を向けてほしいとか。陳情でも何でもけっこうです。

それでは行きましょう。

参加者1

皆さま、こんにちは。川崎市多摩区からまいりました、タカハシミオと申します。

2002年からDVや虐待などのファミリー・バイオレンスの問題に取り組む中で、そういった被害に遭われた方たちが生活困窮に遭われるということを痛感いたしまして、2013年から、神奈川県唯一であるフードバンク川崎を立ち上げまして、今、神奈川中で対応しておりますので、フードバンク神奈川の設立準備会の代表というか、その準備を行っております。

その中から見えてくるものということでお話しさせていただきたいんですが、まず簡単にフードバンクという言葉を耳にされたこともない方が多いと思いますので、一言だけ説明します。食品ロスですね、まだ食べられる食品なのに捨てられてしまうものなどを、生活に困ってる方に無償で差し上げるという活動で、フードバンク川崎およびフードバンク神奈川では、世帯に向けて行っていく。一人暮らし世帯が周りとのつながりがないので、そこに向けて行っております。

今日も来たいという方は多くいらっしゃいました。現在200名近くご支援させていただいております。ですが、皆さまお金がなくて、ここに来ることはできませんでした。私自身障害を抱えておりますので、他の方に連れてきていただくことで、参加することが可能になりました。

まず、神奈川県というのが、貧困ではけっこう特化している部分がありまして、2011年度に餓死者が120人出ています。そして、その人数を大幅に上回る自殺者、貧困理由の自殺者というのが出ていると思うんです。全国3位です。まず、この自殺者がいる、餓死者がいるというところを重く考えておりまして、川崎から、そして神奈川から餓死を出さないためにということが、まずうちのキャッチフレーズの一つになります。

本当にさまざまな理由で皆さま生活困窮に陥っています。先ほどご報告もありましたとおり、DV、虐待の被害などから、突然の病気、障害、また交通事故、あとは犯罪に巻き込まれた、痴漢などのえん罪に遭った、そういったところから、皆さまいきなり困窮に陥ります。だから、自己責任や、親や家族の責任ではない。それを支えるのは社会全体の責任だと私は考えてます。身近なところから、そういった悲しい事件は起こしたくありません。

その中の問題の一つで、生活保護というのがありますが、これは今“入りにくくて出にくい”という制度になっています。また、神奈川県内を回っておりましても、すべてが申請主義で、本人が申し立てないと受け付けてもらえないというところから、制度としてはあっても利用されていない、例えば病院に行く交通費が出ていないというような市区町村も非常に多く見られます。なので、そういったところを知らせていく。本人がなかなか、やはり情報の貧困というのがあり、社会とのつながりの貧困というのがあるので、そこを知らせていく。

具体的に私が考えているのは、生活保護は8扶助あります。住宅扶助であったり、生活資金の扶助であったり、医療扶助などもですね。それを全部ばらばらにして、“入りやすく出やすい”生活保護の仕組みづくりはいかがかなと考えています。

貧困は、軽ければ軽いほど早く抜け出すことができますので、早目の手当を皆さまで考えていってください。

よろしくお願いいたします。

知事

どうもありがとうございました。

この神奈川県内で年間120人も餓死者がいるんですか。いや、本当にそういう現実を見るだけでぞっとする思いでありますけどね。確かにその“入りやすくて出やすい”生活保護のあり方はちょっと研究してみたいと思います。

参加者2

こんばんは。私は相模原市南区に住んでおります。週末は創価学会の集団ストーカーということで、渋谷で街宣活動なんかさせていただいている者です。

生活困窮ということで、イコール生活保護者ということかなと思います。一応精神病患者というのは、WHO(世界保健機構)では、世界の精神病院の病床数の3分の1は日本にあるということで。

イタリアなんかでは、もう精神病はないという扱いです。建設的に、精神病と認定しないで一般人の方とフォローし合って、患者としてではなくて労働者として一般の方と労働して賃金を得るということで、うまい具合に世界の方は、先進国はやっておられる国もございます。

こういった精神病患者の病床数が世界の3分の1あるということは、それだけ利権があるという裏返しでもございます。私、ちょっと話がそれてしまいますが、創価学会の集団ストーカーということで、利権、公明党、創価学会。先ほど黒岩知事もおっしゃってたように、子宮頸がん、これもつくったのが公明党、創価学会でございます。そういった利権を、創価学会の一部、大宗教でございますけれども、これらのものが利権を使って精神病患者、例えば集団ストーカーというのがあるんですが、日本全国津々浦々でやられてることなんで、なかなか顕在化しない、こういった犯罪なんですが、精神病患者を増やすと。被害妄想だとか、精神病患者、あとは自殺にまで追い込む。自殺というのも日本では年間で3万人出ております。その裏付けでもあるのかなと。そういったカルトビジネスがまかり通っている。

知事はご存じないと思うんですけれど、私なんかパトカーのつきまといということで、例えば私は危険人物ということに認定して、警察がですよ、パトカーをつきまとわせて、国から捜査費を得たり裏金をつくったり。あと救急車、消防車が、まじめに患者を搬送しながらも、片手間で集団ストーカー被害者にまとわりついてる。結局、被害妄想だとか、精神病患者に追い込んで、その利権で私腹を肥やすという、うまい具合なカルトビジネスというのがあって、日本全国でたくさん被害者がおられます。

一度ですね、そういった集団ストーカーという切り口で生活困窮者、実際社会に出ても、そういったいやがらせとかをされるわけですので、そういった方もおられるということをちょっとご承知おきいただければと思います。

知事

ありがとうございます。

精神障害者の問題はまた非常に大きな問題でありまして、県も今、障害者雇用を積極的に進めるという意味で、いろいろな企業にお願いをして回っているんですけれども。実際、この間も私もあるIT系の企業を見に行きましたけれども、精神障害の方もしっかり雇用されていて、実に見事に皆さまが働いていらっしゃる姿を見て、本当に大きな戦力になっているんだということをお伺いしました。

こういったものをどんどん発信していくということが、やはり非常に重要な政策だなと思って、さらに強力に進めたいと思っています。

参加者3

厚木の王子からまいりました、ウメヤマといいます。今日は、私自身のことで、ちょっとお話ししたいと思いますので。

現在私は生活保護を受けいてる立場にあります。そして、今年の4月から1万円ほど減額されたんですよ。これがね、非常にちょっと納得のいかないところなんですが。でも、いろいろ保護手帳などを見ますとね、それなりの理由で計算は当然合っているわけですけれども。しかし、その保護基準という金額がどこから出てきたのかということで、その金額自体がこれではちょっとはっきり言って生活できませんよということを、強くここで申し上げたいんです。

それで、贅沢しなければ、その金額でできないことはないんですけれども、例えば電気製品、クーラーは自分の家にはありませんけれども、この暑いときにクーラーがないということはもう死活問題です、はっきり申し上げましてね。それでしかも、冷蔵庫が急に故障しちゃったんですよ。この暑さで部屋の中はもう33℃ですよ。で、冷蔵庫もクーラーもありませんからね、これでどうやってこの夏を過ごしていったらいいのかということを本当に申し上げたいですよね。

ですから、はっきり言って、クーラーとかそういうものを買いたいわけなんですけれども、緊急特別支援相談とかなんとかあって、そういうところから貸し出しっていうんですかね、そういうのができないかどうかね、ちょっと考えていただきたいんですよ。

知事

これはちょっと聞きたいんですけど、誰か担当者が答えられるかな。

昔はクーラーをつけたら生活保護は認定されないとか言っていましたよね。今はどうなんですか。

岡部 卓 氏(首都大学東京大学院人文科学研究科社会行動学専攻教授)

生活保護制度の中では、資産の保有で、生活用品を認めていまね。ご指摘のありました保有するクーラーも認められています。購入に対する新たな扶助ということは認められていません。

知事

そういうクーラーをレンタルするとかいうことはあるんですかね。皆さま、ご存じの方はいらっしゃいますか。そういう制度は特にないですか。こういう場合はどういうふうにしたらいいか、何かいい知恵はありますか。

参加者4

社会福祉協議会のカナヤマと申します。

貸付になってしまうんですけれども、生活福祉資金という制度がございまして、福祉事務所に相談をしていただく必要はあるんですが、貸付の中でエアコンですとか冷蔵庫については、対応ができる場合があります。

参加者1

ちょっと補わせていただきます。

生活保護の中では、家電が壊れた場合、新たな購入については、生活保護費の中から貯金をして買えという制度なんですね。つまり、家電が壊れた場合にはどこからも補ってはもらえない。その分家計が圧迫される。そして本当に死活問題になってしまうんです。

で、クーラーですとか冷蔵庫は捨てる方も多くいらっしゃいます。なので、私はよく“あげます/ください”ということで、呼びかけをしています。だから、捨てる方のものをどこかに貯蓄なり何なりしておいて、生活困窮の方に貸し出せるような制度をぜひ提案したいと思います。

知事

なるほどね。それは非常に建設的なお話ですね。確かにそうですよね。古いクーラーはもういらないよ、新しくどんどん買い換えるからと言って、外す人がいる。冷蔵庫もどんどん新しいのが出てくるから、いらないよと捨てちゃう人もいる。

その捨てられたものを流通できるようにしておけば、別に新品でなくてもいいわけですからね。そういう仕組みは今ありますか。

鈴木 晶子 氏(一般社団法人インクルージョンネットかながわ 代表理事)

例えば鎌倉市であれば、市の方がそういったリサイクルのシステムを持っているんですけれども、おそらくお住まいの厚木にはないということかもしれませんので、これはやはり住んでいる市町村によって差が出てしまってはいけないので、ぜひ県の方がやっていただけるといいんではないかなというふうに思います。

知事

県の保健福祉局長いますか。今のこういうことは、市町村によってやっているところとやっていないところがあるのですかね。

保健福祉局長

生活保護の基本は法律で決まっていますから、基本の部分はみんな同じだと思うんですけれども、そこに付加する部分、今のお話のクーラーですとか、そういったところは自治体によってたぶん違うんだと思います。

だから、会場の方からもお話があったように、食事をこれだけ余らせて一方の人に配るというのと同じように、捨てられて置いてあるクーラーをつなげるような仕組みというものは、あってしかるべきだと思いますので、やっている団体を私どもでちゃんと調べたうえで、他の団体にもそういった仕組みがつくれるようなご紹介はしていった方がいいと思ってます。

参加者5

今の件に関して言えば、私どものNPOでは、藤沢市で市の社会福祉協議会と協働して、あちこちのそういった不要なもの、洗濯機ですとか、冷蔵庫ですとか、クーラーですとか、そういうものの情報を集めて、私どもとか社協の方で集めたものを社協でストックしてもらって、必要に応じてそれを分配するというのを始めたところです。

知事

それは社会福祉協議会でやってらっしゃる。

参加者5

そうです。社会福祉協議会と私どものNPOで提案してやっています。

知事

なるほどね。これは非常にいいご提案だったし、やっているところもあるんだということだったら、県としては、今、保健福祉局長が約束しましたから、全県のことを調べてみて、どこがやっていて、どこがやっていないのかという情報を明らかにして、やっていないところには、やるようにこちらから働きかけますので。お約束をいたします。

参加者6

戸塚区川上町、県営川上第2団地に住んでおります、キムラと申します。

発言の内容の前に、私が自治会長をやっていたときには、自治会員に余った冷蔵庫を出してほしいと広報して、集会所に仮置きさせてもらって、自治会でほしい方に配ったという経緯があります。そのように地域単位でも運用が利くんではないかと思います。

さて、私が今日発言したいと思いますのは、生活困窮の状況についてであります。

夫が76歳、妻が79歳、40を過ぎた独身の娘さん、この3人家族です。ある日、妻が脳梗塞になりまして、車椅子生活になりました。築7、80年の借家でして、そこで車椅子生活はできないということで、グループホームに入れさせていただきました。ところが、10万円を超えるお金がかかりまして、だんだん貯蓄がなくなってきまして、やむを得ずグループホームから自宅に引き取りました。娘さんは非正規の労働で収入が少ないんですけれども、収入の状況は、40代独身の非正規雇用の娘さんが面倒を見て、そして妻も夫も国民年金ですから、先ほど知事がおっしゃった3万円くらいの年金ですよね。それで、県営住宅や市営住宅を申し込んだんですけども、3回もはずれたと。

私は今朝、私の住んでいる川上第2団地の空き家を調べましたところ、郵便受けを数えましたら、444軒のうち、89軒が空き家なんですよね。これは3、4年前から空き家が増えてきて、現在89軒、2割を超えるところが空いているんですよ。それなのに、こういう生活に困窮してる方が公営住宅に申し込んでも当たらないという状況にあります。やはり住まいの問題は非常に大きなことだと思いますので、ぜひこの89軒の空き家について、これからどういうおつもりで県の住宅管理の方はお考えになるか、それからこういう困窮者にぜひ陽の光を当てていただきたい。以上です。

知事

ありがとうございました。

確かに空き家がたくさんあるのに、住宅に申し込んでも抽選ではずれてしまうのは、おかしな話ですね。こういった相談は鈴木さん、よくありますか。そういう方にどういうふうにお答えされますか。

鈴木 晶子 氏(一般社団法人インクルージョンネットかながわ 代表理事)

公営住宅の場合には、就労ですとか、生活を考えて、比較的利便性の高いところは埋まって、倍率が高い。逆に非常に不便な場所にあったり、高齢の方とか障害の方が住みにくいところは空いているというような現状があるのかなと思います。

やはり今後困窮した方々が、生活がしやすい場所にどうやって住まいを確保していくかということもご検討いただけるといいのかなと思います。

ですので、その方が申し込んだ住宅がいっぱいだったということではないかなと思うんですけれども、私は申し込む方の側なので、ちょっとその辺は担当ではないのです。

知事

岡部先生、今みたいなテーマに何かいい解決策はありますか。

岡部 卓 氏(首都大学東京大学院人文科学研究科社会行動学専攻教授)

今、ご意見に対し明確な答えができませんが、基本的に言うと、今おっしゃったのは、その方の希望する物件と住宅がマッチングしていないと解釈します。県営住宅の場がないということなので、それをどう調整するかということになってくるかと思います。

住宅というのは生活の一番の場ですので、先ほどお話ししたように、申し込みされる方と提供する側がどのように話し合いをして、どこで妥協するかというところにもつながってくるのではないかと思います。良い答えではなくて申し訳ありません。

知事

今の問題は非常に具体的な話だったですよね。こういう場合はどこに誰に相談に行けばいいんでしょうか。普通は誰に、どこに。

鈴木 晶子 氏(一般社団法人インクルージョンネットかながわ 代表理事)

もちろん県営住宅ですとか市営住宅は、やはり行政の担当の方に、現状どこに空きがあるかとか、そういったことをご相談しながら決めていかれるのがいいかなというふうに思いますので、もし今日県の方でも担当課さんがいらっしゃるようなら、お答えいただければ。

参加者7

保土ケ谷区のイトイと申します。いつもお世話になっております。

今、公営住宅のあり方そのものには、いろいろと問題がある。その問題というのは、県行政そのものが公営住宅法という条例をつくっているのは、神奈川県はもう明治の時代から、最初からこういう条例をつくっている。これを平成23年に見直した。見直した県営住宅条例の裏には規則もある。規則と2本立てである。

にもかかわらず、神奈川県土地建物保全協会という協会がその中に入って、外部に任せているのが、住宅営繕事務所の所長である小川所長(※平成27年5月まで)と、久保寺会長との間でお互いの年度協約を交す。これにこの平成27年度には約43億円というお金が出ます。この43億円のことを知事はご存じですか。

要するに、このお金をそこまで払ってまでも協定を結ばなきゃいけないのか。何のための協定なのか。

ですから、こういう問題が今後いくらでも出てきます。私のところにも空き家があります。空き家はあるけれど、それは必死になって行政と戦う。戦うものは何か。地方公務員のあり方をもう一度問いたいと思います。

知事

ありがとうございます。

今のこういった問題について、誰か県庁の担当から答えますか。ああいう具体的な問題があったら、どこに相談に行って、それでそれをどうやって解決するのか、誰か窓口があれば。

吉川副知事

今のお話の中で、何点かご議論があろうかと思うんですけれども、最初にお話のあった、県営住宅そのものが空いているという状況は、実は事情をきちんと把握しなければいけないんですけれども、単に空いているというのではなくて、老朽化等の関係で、これから集約化したり、建て直ししたりということで、我々が言うところの多世代近居、やはり年を取った方と若い人が一緒に住めるような、新しいあり方の団地づくりをしなければいけないのであえて空けてある場合もあります。

そういうために空いている場合と、それから単純に空いている場合もあります。その場合は、おそらく中での移動という話でいけば、それは県の方の住宅ですので、相談していただければ、何らかの対応はできると思っています。

それからもう一つ、さっき言われた土地建物保全協会の話につきまして、これはいわゆる修繕ですとか、そういったことを指定管理でお願いしているものですから、絶対に必要な事業だと思っています。今は個別のお名前が出ていましたけれども、それはちょっと別としても、やはり施設を維持する上では必要な事業ですから、いずれにしても土地建物保全協会にせよ、何らかの形でやっていかなければいけない必要なことだと思っています。

ただ、やはり県営住宅は、皆さまのための、ある意味で言えば所得が厳しい方に対しての提供施設ですから、これは皆さまの要望をきちんと受けとめて展開していかなければいけないと思っていますので、今のお話は承りましたから、早速そうした窓口については、県営住宅の担当課がありますから、そこにきちんと私の方で話をしてつなげていきたいと思います。

知事

県営住宅の担当課というだけではなくて、今みたいな話というのを身近な行政に行って相談すると、あっちに行ってください、こっちに行ってくださいと言われて、よくたらい回しみたいな状態になるのが行政の一番いけないところです。だから、こういう問題があるんですよと言ってどこかに行けば、ワンストップで聞いてもらえて、そこからじゃあこうやってみますよという窓口って、やはり必要かもしれないですね。それはちょっと検討させていただきます。

参加者8

横浜の南区から来ましたスズキと言います。私は年金で生活する高齢者の団体で働いています。県内に10,600人の組合員がいまして、その平均年齢は73歳、女性が60パーセントです。

実はその中で、2013年に生活実態アンケートを取りました。約3,000人の方からいただきました。年金で暮らしている、生活保護よりも非常に厳しい生活実態が浮かび上がってきました。

先ほど県知事がおっしゃった3万円で生活する年金生活者は、おそらく生活保護は受けていないですね。そういう方がまだいっぱいいるんです。その中から、お2人の方のコメントを紹介したいと思います。

「私は37歳のとき、39歳の主人を胃ガンで亡くし、翌月から働きました。子どもは9歳と7歳でした。63歳まで働き、厚生年金を25年かけましたが、年金を受け取るときは、遺族年金か自分の年金か選択しなければなりません。遺族年金の方が少し多かったので、遺族年金月75,000円。自分のかけた年金はもらえず、生活できる年金にはならず、生活保護の方がよっぽどよいと思う毎日です」と。

もう一人の方は、「私は15から54歳まで働きましたが、年金はがっかりするほどの少なさです。40年近く働いて、月額10万円くらいです。今は夫と2人でもらっていますが、もしお互いに一人になったらどうなるか心配です。」と。

このように、病気になったらどうする、一人になったらどうする、あるいは介護が必要なときに介護施設に入れるか、このような不安を抱えて毎日暮らしている人が大勢います。また、このような不安がありながら、アンケートの中では多くの方たちが、低年金者の方の2割近くの方が、社会的交際ができない。要するに葬儀にも行けない。また、親しい友人ができない。要するに飲みに行くお金がない。遊びに行くお金がない。これで不安を抱えていながら、相談する相手もいない。これが浮び上がってきています。

私たちは、こういった人たちと一緒に一人暮らしの方とのお食事会や、おしゃべり会をやったり、あるいは誕生を祝う集いなどをやっています。70歳になって初めて誕生日を祝ってもらったという方がいるんです。

そしてまたサークル、今私たちは県内に400のいろいろなサークルがあります。小物づくりだとか、絵手紙、あるいはカラオケだとかという楽しいものから、年金相談も私たちで受けています。

本当に高齢者が手をつなぎ合って、一人ぼっちではなく生きていける社会ができることを非常に望んでいます。

そういう中で、実はお一人の方から手紙をいただきました。これは県の話なもので、県にとっても大変いいことだと思います。病気の娘さんと2人で県営住宅に住む女性からいただきました。県営住宅に入って、高齢者の県営住宅家賃の減免の取扱いを受けたそうです。月20,400円安くなったと言って大変喜んでおられました。娘さんは病気で働けないそうです。お2人で暮らして大変苦しい中に、こういった減免の取扱いを受けて大変助かってるという喜びの手紙をいただきました。

低年金で入れる公営住宅というのは非常に切実なんですね。しかも、その住宅の家賃は、本当にこういう人たちにとってみれば、安くなってほしいというのが大きな願いです。ぜひそのことをこれからの中でも充実させていただきたいというふうに思います。

そして、もう一つは、先ほどの相談できる相手がいないという話。やはり絆をつくっていくことが大変なので、私たちは、先ほど言いましたように、400のサークルでいろんなことをやっています。こういう団体は他にもあると思います。それらに対して、県の協働、あるいは支援をぜひやって、またこのような懇談の場をつくりながら、広げていっていただきたいなというふうに思っています。

よろしくお願いします。

知事

ありがとうございます。

素晴らしい活動をなさっているんですね。何というグループですか。

参加者8

年金者組合といいます。

知事

こういうふうに、地道にしっかりとニーズを受けとめて活動されてる方がいらっしゃるんですね。

年金の問題は確かにありますね。私が街頭でいきなり受けたのも年金の話でしたから。このあたりは、先ほどの問題等も含めて、岡部先生からお話があるということで、一言どうぞ。

岡部 卓 氏(首都大学東京大学院人文科学研究科社会行動学専攻教授)

先ほどワンストップサービスがあった方が良いという話がありました。今回「生活困窮者自立支援法」の中で、自立支援相談事業がそのワンストップサービスを受けることになりました。まずそこに情報を上げていただくことになります。県民の方々から相談を上げていただいて、そこで住宅の問題は住宅につなぐ、あるいは公共料金の問題は公共料金のところにつなぐ。あるいは、経済的に生活困窮しているという場合は、生活保護の方につないでいただくということになります。4月より「生活困窮者自立支援法」の自立支援相談事業が施行されました。積極的に活用していただきたいと考えます。

知事

皆さまはどこに行けばいいんですか。

岡部 卓 氏(首都大学東京大学院人文科学研究科社会行動学専攻教授)

これは、福祉事務所を設置している自治体は、必ず自立支援相談事業をやらなければいけない必須の事業となっていますので、例えば横浜だと区の福祉事務所に行くし、厚木の方だったら厚木市のところに行く。町村の場合ですと県の委託を受けた神奈川県社会福祉協議会の方に行っていただくということになると思います。

知事

では、ワンストップサービスの形は法律的にはできていると。

岡部 卓 氏(首都大学東京大学院人文科学研究科社会行動学専攻教授)

できています。ただ、これは始まったばかりで、形ができたということですから、中身はこれからしっかりと具体化して埋めていくことになると思います。

参加者1

まず、どこの自治体のどこに生活困窮者自立支援の窓口があるかが、その自治体のホームページにすら載せられてない現状があります。なので、まず神奈川県として、ホームページに全自治体の一覧表くらいは載せていただきたいです。

あと、生活困窮の方は情報を得ることが非常に難しいので、この「生活困窮者自立支援法」という法律ができたことすら皆さまご存じない。あと、ワンストップサービスなのですが、就労支援に結びつけることがほとんどなので、結局就労できない人には何の解決にもなってないというのが現状です。

さまざまなメニューがあって、それは自治体が選択できるので、ぜひ神奈川県はナンバーワンと言われるような「生活困窮者自立支援法」をつくってください。

お願いいたします。

知事

はい。保健福祉局長、一言。どう答えますか。

保健福祉局長

今までの話の中で、社会的交際ができない、相談する場所が分からない、つながりがないということが非常に大きな問題だと私は考えています。そして生活困窮者というのは情報弱者なんですね。あるいは障害者の方々なんかもそうだと思うんです。

情報がその方に届くような仕組みを地域社会の中でつくっていくということが、最終的には重要だと思っておりますが、それがすぐできるわけでもない。

その中で、どこに窓口があるのだというようなことは、基本的には市町村がやっていくことではありますけれども、県としても全体がどうなっているのか、先ほど会場からご提案があったような、一覧にするような形でホームページに紹介することは早速できると思いますので、取り組んでまいりたいと思っています。

知事

これはもうお約束します。これをやらないと、そういう法律ができているんですよと言っても、みんな知らないですからね。それを一目見て分かるようにしていくということは、我々でちょっと知恵を絞らなければいけないですね。

いろいろないい課題をたくさんいただいておりますが、今日は現役の高校生も大勢来てくれましたけれど、どうですか、せっかくですから。

いつもこの対話の広場の嬉しいのは、現役の高校生が来てくれるんですよ。本当に嬉しいですね。

参加者9

こんばんは。横浜南陵高校2年のミウラと申します。

先ほどからお話を聞いていて、私は、今の社会からリインテグレーションの社会を目指すべきではないかと思いました。今は、少数派のマイノリティに当たる専門分野の方と支援を受ける方たちだけが努力をして、多数派のマジョリティに合わせる、生活困窮からの自立を目指すという、ノーマライゼーションの社会だと思っています。それに対してはたくさんの制度があるんですけれども、いくら政府の方がそういう制度を用意しても、知られていなければ意味がなくなってしまいますよね。そこで周りが、自分が生活に困っていないから関係ないという考え方を捨てて、生活困窮者にも目を向けて、お互いが変わって混ざり合うリインテグレーションの考え方を持っていくべきだと。

この生活困窮というのは、個人ではなく社会の問題だと思うんですよね。なので、自分たちの社会は自分たちで何とかしようという意識を持って、社会として制度に参加して困窮者に寄り添うことが大事ではないかなと思いました。

知事

すごいですね。リインテグレーションというと、皆さまきょとんと聞いていらっしゃったけれども、もう一回分かりやすく説明してもらえますか。

参加者9

今とても主流となって回っているのが、少数派の人たちだけが努力をして大多数の方に合わせるというノーマライゼーションという考え方。でも、リインテグレーションというのは、お互いが変わり合って、変わり合った後に混ざり合うという考え方なんです。

知事

なるほどね。皆さまが連携とか、つながりとか言ってた言葉につながるようだね。そういう考え方ですね。

よく勉強してますね。いや、素晴らしい。他にありますか、高校生の皆さん。今の発言のために一生懸命勉強してきたのですね。

参加者10

横浜市港北区のキタガタです。

テーマに関するということで、大学院博士課程修了者、ドクターコースの就職の問題、これがまず第1点。

もう一つあるんですけど、自民党の政権や内閣は企業の倒産が減っていると言っていますけれども、例えば港北区界隈でも、コンビニや本屋さん、そして電気量販店などのお店が、この2年くらいでもだいぶ閉めているところがあるんですよ。

例えばコンビニのフランチャイズ、チェーン店1店がやめたとき、それは例えばコンビニの本社の閉鎖でない限り、倒産とは普通言わないです。系列店1店がやめたときを倒産と呼ばない限り、実際にやめている会社やお店の数を見落とすことになるんですよ。だから、今言ったとおり、近年やめるお店が増えているから、それによって失業した人が出ているので、それこそが今の困窮増加の背景だと思うんです。

もう一つ、今日非正規労働者の問題がだいぶ取り上げられているんですけれども、1985年の昭和60年から、2010年までの25年で、日本の非正規雇用者、労働者が1,000万人も増加してるんですよ。これもけっこう見落とすとまずい問題だと思います。

知事

ありがとうございました。

企業倒産というのも、景気がいいとは言いながらも、やはりまだまだある。その中でやはり生活困窮に陥ってしまう人も出てくるわけですからね。そういったところにもやはり目を配っていかなければならないですね。

参加者5

私どもは、2002年から、生活困窮者に対する支援事業としてNPO法人を立ち上げています。最初は、主にホームレスの方々が中心だったんですけれど、今から8年ほど前、2006年だったかな、神奈川県との協働事業ということで、生活困窮者に対する相談および居のない人たちのためのシェルター事業というものを始めました。そこで最初意図したところは、ホームレスの人たちがアパートに早く移れるようにということだったんですけれども、実際に始めてみるとそこに来る困窮者はもう種々雑多で、1年後には半分以上が女性と家族連れでした。DVに遭ったりとか、それからアパートから追い出されたとか、そういったような方々が増えてきます。

それから、そういう事業をずっと続けてきまして、ただ居を提供するだけではなくて、その後の生活の支援、それこそ仕事の探し方から、仕事を探せない人に対しては生活保護、そして新しい居の設定とか、そしてその後アパートに移った後もずっと継続して支援をしていきます。今までそこを通して支援させていただいた方はもう800人を超えています。

これらは全部、神奈川県との協働事業を5年、その後生活援護課からの委託事業として3年やらせていただきました。

そして、そこのシェルターは今12室あるんですけれども、始まってから今まで空いたことがないです。常に満室です。そういうような状況で、他にも無料・低額施設なんかもやっていますけれども。そういうことで、私たちが支援してきた人はもう千数百人になると思います。

そういう中で、実はこの生活困窮者自立支援法というものができたおかげで、私たちも、それの関係の学習支援事業ですとか、それから家計相談支援事業とか、やらせてはいただいているんですけれど、同時にその相談室、シェルター事業という、神奈川県からの委託事業が切られてしまいました。これは予算がつかないからということです。

今は仕方がないので、私たち独自でやっているんですけれども、ここの運営のために年間でやはり1,000万円以上のお金がかかります。これを民間のNPOだけで、寄付だけに頼ってやるとなると、とてもでないけれど、何年持つかわかりません。ただ、私たちは今までやってきた中で、神奈川県全域からさまざまな困窮者を受け入れ、そしてそれをその後もずっと支援している、そのために社会福祉士さんも数人雇用するというような中で、この事業をこのまま廃止してしまうには忍びない思いがあります。

ですから、県も予算が厳しいことは分かっていますけれども、ただいろいろな形で、例えば家賃分だけでも、例えば人件費だけでも、なんとかそういうような形で続けさせていただければ、これからもずっと私たちも努力をした上で、貢献していけるというような気がしています。

そして、その中でまた、先ほどのフードバンクの方とか、先ほど言いましたような社協の方とか、それから行政の方とか、生活困窮者自立支援法の問題は、一つの市町村としかできないんですね。それではなくて、もっと市町村を越えて、必要な人たちに支援をしていく、そういったような活動を続けていきたいので、ぜひ、予算厳しい折ではありましょうけれども、そういうこともちょっと考えて、また委託の一部を考えていただけたらなと思って、提案させていただきます。

知事

ありがとうございました。

こういったNPOの活動と県が一体となってやっているというのは、やはり非常にいい形だと私は思うんですよね。その一方で、県の財政が本当についこの間まで、今も実はそうなんですけど、かなり厳しくて、このまま行ったら本当に破綻するぞというような、大変危機感持った中で、かなりいろいろなものを見直したことは事実でありました。

今お話があった件についての詳細は、私は把握していませんでしたけれども、もう一回改めて調査してみて、これからどんな形のあり方ができるかということ、それもしっかり検討していきたいと思います。

参加者11

横浜の金沢区からまいりましたカトウと申します。

先ほど岡部先生が、学ぶことを支援する、そして人間としての全面発達、学力向上ということをお話しになられました。

それから、鈴木さんの方からは、いわゆる中卒や高校中退者が多く、問題はかなり早期に顕在化している、それが放置されてきたという指摘がありました。

私は元教員、中学で教師やっておりました。進路指導を長いことやっておりました。知事さんにもいろいろ、教育委員会を通してお願いをしてまいりました。

神奈川のこの今の生活困窮者予備軍とも言えるような大量の子どもたちが、毎年2,000人、3,000人と生み出されている実態について、ちょっとだけお話ししまして、ぜひその改善がたをお願いしたいということです。

例えば、中学を卒業して、自分の進路、つまり進学も、仕事も決まらないまま、卒業する子が1,000人前後、毎年出ております。それから、通信制高校や定時制高校に入って、途中でやめられる方。これが、普通・全日制を含めまして、2,000人くらい、毎年出ております。これらを合わせますと3,000人くらいの子どもたちが、もう既に15歳、17歳でドロップアウトしていると。まさに私は、これは生活困窮者予備軍と。これを構造的に作り出してしまっているという、この神奈川の実態をなんとかして改善していただきたいということですね。

まさに教育、米百俵の、この精神で、今子どもたちに生活できる力を、学校教育の中できちんとつけていけば、何年か後には、これは財産として県の財政に返ってくるであろうと、私はそう信じております。

ですから、義務教育の中で、学力格差が拡大している実態をなくし、落ちこぼしのない教育をなんとかがんばっていただきたいと。また、高校を希望する子どもには、全日制高校を希望する子は全日制高校、定時制を希望する子は定時制に行けるようにと。これを保障するだけの大きな転換を図っていただきたいと。

ところが今、県の方が、高校再編計画として、逆の方向で、全日制高校なんかを減らそうとする動きが出ている。今でさえも、毎年2,000人以上の子どもたちが、全日制高校にも入れないで大変な思いをしている。これを、高校再編の名の下に、さらに普通高校あるいは全日制高校の間口を狭くするという、これだけは絶対にやめていただきたい。これは知事に本当にお願いしたいんです。

まさに子どもたちに豊かな教育、全面的な発達を保障して、それで社会生活に送り出していくだけの学校教育をなんとか条件整備していただきたいということをお願いします。

知事

ありがとうございます。

確かに教育の問題というのはベースにあって、やはり早期に、教育のレベルから、将来そういう生活困窮に陥らない人たちを増やしていくということ、これは非常に大事なことでありますね。これはやはり重大な課題として受け止めていきたいと思っています。

参加者12

小田原市からまいりました、オカザキと申します。

先ほど地域福祉の大切さのことについてお話があったと思うんですけれど、神奈川県は高齢化が進んでいくので、地域福祉の担い手自体もどんどん減ってゆくと思います。地域福祉のニーズは高まっているのに、その担い手が減っていくこの現状に対して県はどうしていったらいいと思いますか。

知事

地域福祉の担い手が減っていくということですね。

大きく言えば、今神奈川県の進めてることというのは、要するに超高齢社会をどう乗り越えるかという問題に全面的に取り組んでるわけです。それで、今この問題は日本中全体の大きな問題でもありますね。

今、政府から出てきている話というのは、首都圏はまさにその人材が特に不足するということで、首都圏に住んでいる高齢者の皆さまは、地方にはまだまだ余力があるから、地方に移住してくださいと言っている。

これに対しては、私は、ちょっと待ってくれと思っていますけれども。要するに、確かに医療・介護の人材が不足しているということは間違いないんですよ。でも、超高齢社会の進み方がもっともっと激しくなってくるんですね。そのままの状態を放置しておくと、医療・介護人材をどんなに増やしても足りないですよね。若い人がみんなそちらの人材にならなければいけなくなっても、なお足りないかもしれないくらい、超高齢社会への進み方が速い。

だから、神奈川県としては、未病を治すと言って、病気にならなくしていく方針なのだと。そのために「食」であり、「運動習慣」であり、「社会参加」でありというようなことを皆さまでやっていきましょう。これをもっと科学的にやっていきましょう。そういうことをやる中で、地域の絆も取り戻していきましょうと。そういったことによって、超高齢社会になっても、介護が必要ないような元気なお年寄りをつくっていって、なんとかこういう問題を乗り越えていこうとしてるというのが基本でありましてね。

そんな中で、この介護人材の問題はなんとか乗り越えていきたいと思っている。挑戦ですね、これは。

参加者13

相模原市のサトウと申します。

最初に、このような機会を設けていただいて大変敬意を表します。ぜひ続けていただきたいと思います。

現在、貧富の格差が進んでいるというふうに言われておりますけれども、その原因はやはり政府が進めている、新自由主義的な政策の行き着く先かなというように思っています。社会保障がどんどん縮小され、逆に先ほどもありましたが、非正規職員が増えて、労働者の賃金が全然上がらないという状況があって、この状況がもたらされているかなと思います。政府の政策ですから、神奈川県として法律を変えるわけにいかないと思うんですが、政府のそういう新自由主義的政策の防波堤としての役割を自治体が果たすべきかなというように思っています。住民の福祉の向上が、地方自治法にも則って書いてありますので、その本旨に則った施策をぜひ進めていただきたいというふうに思います。

先ほど知事の挨拶で、経済のエンジンを回すというふうなことで、第1期目の頃からおっしゃっておりましたけれども、やはりここは私は、ちょっとそれでは、貧困層はますます拡大していくだけかなというように思います。知事もすぐには全員に行き渡らないというようなことをおっしゃっていましたけども、経済のエンジンを回す、つまり大企業が儲かっていくという政策ですよね、知事のご政策は。インベスト神奈川を引き継いでいますし、ライフイノベーション特区を設けたりということで、まず大企業を潤せば、労働者の賃金に回り、下々の者まで行き渡るということですけれども、それはトリクルダウン理論と言うそうですけども、トリクルダウン理論というのは機能しないんだということを、去年OECDが報告しましたよね。

ですから、これは世界的に認められている考え方なので、そうではなくて、労働者や生活者の使えるお金を増やすことが経済を回すことになるというようなことをいろいろな方が言っていますので、そのために自治体ができることとしては、よく言われています官製ワーキングプアをなくすことだと思います、まずは。本当に、公務の場で、非正規の方たちが最低賃金に近い形で働かされている。私は教員でもありますが、教員でも、非常勤で働きながら、生活保護を受けているという方もいます。ですから、公務の場で官製ワーキングプアをなくすということがとても重要で、労働者の賃金を上げて、賃金が上がればお金を使いますので、その使っているお金のフローがないから、経済がこれだけ縮小して、格差が広がって、経済が回っていないわけですよね。

それから、新自由主義の影響で、社会福祉がどんどん削られて、医療費も上がり、年金も下がりということであると、使うお金もどんどん減るわけですよ。ですから、そういうことではなくて、新自由主義政策の防波堤として、自治体としての役割をぜひ果たしていただくような施策をやっていただきたいと思います。

知事

ありがとうございました。

ちょっと誤解があると思うのですが、私は大企業を優先して、大企業さえ儲かればみんなに恩恵が行くだろうなんてことは全然思っていません。

例えば、今神奈川県が進めている中で、「さがみロボット産業特区」というのがありますけれども。これは神奈川県の県央部、厚木とか相模原とか藤沢とか。ここをロボット産業の拠点にしたいと思って、今進めています。いろいろな規制緩和を取りました。これはどこから発想しているかというと、あの県央地域のところにあるのは中小企業です。たくさんの素晴らしい技術を持った、キラキラ光るような中小企業があるわけです。この中小企業をどうやったら元気にできるかという中で、大きな旗を掲げたらいいだろうと考えた。この旗というのが、要するにさっき冒頭で言いましたけれども、今存在する課題を克服していく。だから例えば、超高齢社会を乗り越えるためにこの素晴らしい中小企業の技術をどの方に持っていけばいいのかというときに、生活支援ロボットとか介護ロボットだとかいったことに結集してくださいという話をしたのであって、元々大企業を助けるために考えたことではまったくありません。

そういった中で、そうした大きな旗を持って掲げていると、その中小企業一つ一つの個別の素晴らしい技術が寄り合ってくるんですね。そうすると、それらの技術が擦り合いをすると、まさにイノベーションが起きてくると。それを目指しているので、大企業優先ということとは私は違うと思っているんです。

さあ、長いこと議論をしてまいりまして、時間がもう来てしまいました。最後にお一言ずつ、今日の感想をお願いしたいと思いますが。

鈴木 晶子 氏(一般社団法人インクルージョンネットかながわ 代表理事)

たくさんの方から手が挙がっていたので、もっとたくさんお聞きしたいような気がしながら、私も10分お話をさせていただいた後、本当に皆さまのご意見で見識が広がったなと思いますし、いろいろな方の声を聞いて、これから神奈川県での取組みがより広がっていく、そういうスタートになるといいなというふうに思っております。

皆さま、今日はありがとうございました。

岡部 卓 氏(首都大学東京大学院人文科学研究科社会行動学専攻教授)

非常に刺激を受けました。しっかりと大学で学生を教育しなきゃいけないと思いました。

少し確認をさせていただきます。生活困窮者というのは、生活保護以上の、近い隣接した低所得者を主に指しています。

それと、先ほどお話が出ました、生活保護が“入りにくく出にくい”制度になっているということです。ですから、“入りやすく出やすい”制度にしていただくことを行政の方にお願いします。「生活困窮者自立支援法」は生活保護の手前の方たちに生活再建の道をつくっていく大事な制度でもあります。そういう意味では、しっかりとした情報提供を行う。ワンストップ相談で様々な相談を受け、いろいろな制度を紹介・活用する。場合によっては、生活保護制度につなげるのも大事なことです。事業を活用するということも大事です。いろいろな制度がありますので、その制度を周知・活用していただければと思っております。

私が一番最初に“支え合い”ということをちょっとお話ししましたけれど、これらの制度資源と併せて、地域の中にはたくさん社会資源があります。一番身近なものですと、例えば民生委員・児童委員の方々がいらっしゃいます。町内会・自治会の方もいらっしゃいますし、学校の先生の目もありますし、いろんなところでこういうことが課題だよと挙げていただき、一緒に考えてくださればと思います。また制度が必要であれば、つくっていく動きをしていただければと考えております。

本当に今日はいい時間を過ごさせていただきました。ありがとうございました。

知事

ありがとうございました。本当に皆さま、ありがとうございました。まだまだご発言されたい方がいらっしゃったと思いますけれども、こういう会はまた続けてやっていきたいと思っています。

この生活困窮者の問題は、今日もいろいろな話が出ましたけれども、一つ一つもっと掘り下げなければいけないような課題がたくさんあったと思います。今日この場で皆さまにお約束したこともいくつかありました。それは必ず実行いたします。

そのとき改めて思ったのは、県として今すぐできることは何かと言えば、さっき情報弱者という話がありましたね。実は、今日ここでやっている“対話の広場”はいつもに比べたら人が少ないんですよ。いつもはもっとたくさん参加者がいらっしゃるんですよ。今回は少ない。本当に生活困窮になっていらっしゃる方まで情報が届いていないのかもしれない。先ほどお話しされたように、ここに来る電車賃がやはりもったいないのかもしれない。

そういう現状はやはりあるんだなということも踏まえながら、我々県としては、まず情報を皆さまのところに行き渡らせていくということはすぐできる話。「生活困窮者自立支援法」でせっかく枠組もできたのだから、これをこんなふうに活用してくださいということをまずはやると。そこから始めながら、また新たな問題に対して、皆さまとの意見交換をしながらしっかりと解決に向かって進めていきたい。そう思います。

今日はご協力どうもありがとうございました。

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