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更新日:2025年5月1日
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植生影響調査
丹沢山地では、1980年ごろから、シカの個体数密度増加に伴う食害の激化により、自然植生の衰退が問題となっていました。神奈川県では1997年から、これらの植生を守るための植生保護柵の設置を始めています。また、2003年から増えすぎたシカの個体数調整をするため、管理捕獲を始めています。
丹沢山地におけるニホンジカの生息状況等の変化と合わせて、植生衰退の状況、シカ食害の影響および植生保護柵の効果などを把握するため、植生の状態を継続的に調査するモニタリングを行っています。
植生保護柵の内外で林床植生を5年おきに調査して、シカの採食影響を把握し、シカ捕獲後の植生回復の程度を評価するために行っています。
管理計画では、丹沢全体を小さな流域に基づいて56のユニットに区分しています。そのユニットに1つの調査地(定点)を設ける方針で調査地点を設定しています。
各定点には柵を設置して、その内外での植生の変化を比較しています。林床植被率や出現種の被度、ササの高さ、高木性樹木稚樹を測定しています。()
毎年約11か所を調査して5年で一巡するようにしています。
捕獲地やその周辺では植被率が回復する傾向が見られています。しかし、柵の内外で比較すると、植被率および稚樹高の高まりは柵外では柵内と比較して小さいこともあり、かつてと比較してシカの個体数密度が減ってきた場所においても、未だにシカの影響を受けていることがわかります。
累積利用圧調査は、1990年代に丹沢大山総合調査が行われた際に使われた調査方法です。これは丹沢山地の主要尾根線(総延長584km)を踏査して(図)、シカの生活痕跡(糞の有無)や不嗜好性植物の繁茂状況、矮性低木や矮性ササの有無を4段階で記録して、植生劣化レベルと林床植被レベルを1kmメッシュで5段階評価したものです。
図Aは平成16、17年の2か年で調査したもの。図Bがその5年後、図Cが10年後に調査したものです。凡例は赤が一番劣化、青が比較的健全、黄色が真ん中というランクです。
計画当初では、主に高標高域、鳥獣保護区で高密度状態が継続した結果、植生劣化が進行していたことがわかります。
第2次から第3次計画の結果では、丹沢東部と南部で植被が増加したメッシュが多いのに対して丹沢主稜線と、世附エリアでは植被が減少したメッシュが目立ちました。植被度が悪化した要因の一つとしては、シカの採食影響が続いたことのほか、スズタケの一斉開花と枯死の影響があったことが考えられます
主な結果として、林床植被レベル(森林の下層植生が、どれくらい覆われているか調べたもの)をご紹介します。
図Aは平成16、17年の2か年で調査したもの。図Bがその5年後、図Cが10年後に調査したものです。凡例は20%ごとに区切っており、赤は林床植被が20%未満のところ、青は80%以上のところです。
第1次計画から第3期計画にかけては、真ん中付近、国定公園特別保護地区周辺と山梨との県境の稜線付近で植被が高いことがわかります。
特別保護地区の方は不嗜好性植物やシカの採食圧に強いミヤマクマザサが繁茂したことを受けて林床植被レベルが高くなっているのに対し、山梨との県境付近は当時はシカの密度が低い一方で健全なスズタケが繁茂していたことを表した結果です。
第3次計画の結果では、丹沢東部と南部で植被が増加したメッシュが多いのに対して、(おもに国定公園の特別保護地区の)丹沢主稜線と、世附エリアでは植被が減少したメッシュが目立ちました。植被度が悪化した要因の一つとしては、やはりスズタケの一斉開花と枯死の影響があったことが考えられます。
参考: ササの退行
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