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神奈川県微生物検査情報

神奈川県衛生研究所

第181号

平成20年3月11日発行
病原体検出は平成19年11月分


話 題

ノロウイルス感染集団発生

― 2007/2008シーズン ―
  ノロウイルス感染集団発生状況について、横須賀市健康安全科学センター、相模原市衛生試験所、藤沢市保健所衛生検査課の協力のもとに、神奈川県衛生研究所において収集した1月末現在における「ノロウイルス感染集団発生(2007/2008シーズン)」の情報を紹介します。
 

1 ノロウイルス感染集団発生の動向

  2007/2008年シーズン(2007年10月~2008年1月末現在)は、ノロウイルスによる集団発生事例の報告は例年通り11月から始まった。今季の神奈川県(横浜市、川崎市を除く)の発生は、昨年の同期に54事例であったのに比べ、22事例と半数以下であった。
  月別発生状況をみると、2007年11月から感染性胃腸炎患者報告数(感染症発生動向調査による)の上昇とともにノロウイルス感染集団事例が発生し、11月、12月で22事例中20事例と大半を占めた(図1、表1)。
  22事例を診断名別にみると、「感染性胃腸炎」が12事例(54.5%)、「食中毒」が3事例(13.6%)、「有症苦情」が7事例(31.8%)であった(表1)。
  横須賀市及び相模原市ではともに「感染性胃腸炎(横須賀市;4事例、相模原市;1事例)」の集団発生のみであった。藤沢市及び神奈川県域では「感染性胃腸炎」の集団発生がそれぞれ4事例及び3事例あり、「食中毒及び有症苦情」の集団発生がそれぞれ2事例及び8事例であった。
2007/2008年シーズンに発生した22事例の集団発生のうち、人-人感染が疑われるものが3事例、食品媒介が疑われるものが2事例、感染経路不明が17事例であり、いずれの診断名についても感染経路不明のものが多い(表2)。

2 ノロウイルス感染集団発生におけるノロウイルスゲノグループ別の動向

  ノロウイルスのゲノグループは大きくⅠ及びⅡに分けられており、2007/2008年シーズン(2007年10月~2008年1月末現在)では、集団発生22事例中19事例がノロウイルス ゲノグループⅡ(GⅡ)によるものであった。GⅡが主流であることは昨年同期と同様の傾向であるが、昨年はGⅠ+GⅡの事例が1件であるのに比べ今季はGⅠの事例が1件、GⅠ+GⅡの事例が2件あり、GⅡの事例の発生割合が98%から86%と減少している。
   ノロウイルスゲノグループⅠ+Ⅱ (GⅠ+GⅡ)による集団発生は食中毒及び有症苦情によるものであった(図2、表3)。

3 ノロウイルスゲノグループ別の検出

  2007/2008年シーズンの22事例の集団発生事例から、表4に示すようにノロウイルスが138件検出され、そのうちノロウイルスGⅠは4件のみの検出であった。
(企画情報部 折原直美)

  病原体検出  
表 1 病原体検出状況(保健所等別)―平成19年11月
<検出状況>
  • 11月の病原体検出数は合計103件、細菌9件、ウイルス94件であった。
    前月に比べて検出数が細菌は37件から9件と減少した。ウイルスは41件から94件と大幅に増加したが、これは、インフルエンザウイルス及びノロウイルスの検出が増加したためである。
  • 感染症および食中毒発生に伴う行政検査等では細菌が6件、ウイルスが70件検出された。
  • 病原体定点等の医療機関からの検査では、小児科定点から細菌が2件、ウイルスが15件、インフルエンザ定点からウイルスが1件、基幹定点から細菌が1件、ウイルスが2件検出された。
  • その他の医療機関からの検査で、ウイルスが5件検出された。
  • 保健所管内別の病原体検出状況は表1のとおりである。



表2 病原細菌検出状況(臨床診断別)平成19年11月
<検出状況>
  • 黄色ブドウ球菌が同一施設内の感染性胃腸炎患者より2件、有症苦情事例から1件検出された。
  • ヘモフィルス・インフルエンザが細菌性髄膜炎患者より検出された。
    (IASR誌から引用)
    発生動向調査(1991年4月~2001年12月)によると、細菌性髄膜炎患者の年齢は0歳が29%、1~4歳が29%を占め、いずれの年齢も男性が多い。そのうち病原菌名が記載されていたものではインフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)が最も多く、肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)がこれに次いだ。また、H.influenzaeは4歳以下の乳幼児からの検出がほとんどであるのに対し、S.pneumoniaeは小児と30歳以上から検出された(協力医療機関から感染症情報センター(IDSC)に報告された個別情報の1995~2001年集計より)。
    ○ 細菌性髄膜炎参考資料(国立感染症研究所感染症情報センター)
    細菌性髄膜炎2001年現在:http://idsc.nih.go.jp/iasr/23/264/tpc264-j.html
    インフルエンザ菌性髄膜炎における起炎菌の急速な耐性化とその特徴:http://idsc.nih.go.jp/iasr/23/264/dj2643.html
    細菌性髄膜炎が疑われた患者から検出された病原体:http://idsc.nih.go.jp/iasr/23/264/dj2645.html



表3 病原細菌検出状況(月別)―平成19年11月
<検出状況>
  • カンピロバクター・ジェジュニが、10月に引き続き2件検出された。11月は、病原体定点、食中毒事例からの検出であった。
  • ウエルシュ菌が、年間を通じて散発的に検出されている。
  • マイコプラズマ・ニューモニエは1月以来の検出であった。


表4 ウイルス・リケッチア検出状況(臨床診断名別)―平成19年11月
<検出状況>
  • インフルエンザウイルスAH1型が23件検出された。集団発生は5事例あり、23名のインフルエンザ様患者のうち16名から、また、病原体定点(小児科及びインフルエンザ)の患者から2件、医療機関受診の患者から5件検出された。
  • インフルエンザウイルスAH3型は1件、小児科定点の患者から検出された。
  • ノロウイルスが45件検出された。その内訳は感染性胃腸炎の集団発生事例から10件、有症苦情(食中毒様)の集団事例から21件、小児科定点の感染性胃腸炎患者から4件、医療機関受診の感染性胃腸炎患者から3件、他自治体で発生した集団事例の関連調査から4件の検出であった。また、かぜ症候群と診断された患者から3件検出された。
  • 感染性胃腸炎患者からのノロウイルス以外のウイルス検出は、アデノウイルス40/41型が2件、サポウイルスが1件であった。
  • コクサッキーウイルスB5型が無菌性髄膜炎患者から1件、エコーウイルス9型が急性脳炎患者から1件検出された。
  • オリエンチア ツツガムシが、つつが虫病患者から13件検出された。
  • コクサッキーウイルスA16型が4件、エンテロウイルス71型が2件、手足口病患者から検出された。


表5 ウイルス・リケッチア検出状況(月別)―平成19年11月
<検出状況>
  • 10月に引き続き、インフルエンザウイルスAH1が23件、コクサッキーウイルスA16型が4件検出された。昨シーズン(2006/07年)のインフルエンザウイルスの検出は1月からであったが、今シーズン(2007/08年)のインフルエンザウイルスの検出の出足は速かった。
  • また10月に引き続き、ノロウイルスが45件、サポウイルスが1件、オリエンチア ツツガムシが13件検出された。本年11月のノロウイルスの検出は昨年の同月に比し82%減であった。



表6 食品・環境由来の病原細菌検出状況―平成19年11月

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