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神奈川県微生物検査情報


神奈川県衛生研究所

第178号

平成19年12月11日発行
病原体検出は平成19年8月分


特 集

 

2007/2008シーズンの インフルエンザウイルス検出情報

   県域(横浜市、川崎市を除く)では、2007年38週(9/17~23)からインフルエンザ患者報告があがるようになり、46週(11/12~18)の定点あたり報告数は1.50と過去5年間で最も早い立ち上がりとなっています。

1. 感染症発生動向調査

  病原体定点(横須賀市と相模原市を除く県域)からは、39週(9/24~30)~48週(11/26~12/1)の間に14検体が搬入され、MDCK細胞およびCaco-2細胞を用いてウイルス分離とインフルエンザウイルス遺伝子検出を実施しました。そのうち2検体からインフルエンザウイルスAソ連型(H1)が分離されました。初発患者は39週に、2例目は41週(10/8~14)に、同じ医療機関を受診していました。
  分離ウイルスは、国立感染症研究所から配布された2007/2008シーズンインフルエンザウイルス同定用キットおよび0.75%モルモット赤血球を用いて同定しました。その結果、2株ともに抗A/Solomon Islands/3/2006(ホモ価320)に対してHI価80、抗A/Hiroshima/52/2005(同640)、抗B/Malaysia/2506/2004(同640)、抗B/Shanghai/361/2002(同640)に対しては<10を示し、Aソ連型(H1)と同定されました。病原体定点からのインフルエンザウイルスの検出は、11月末現在、この2例のみでした。

 
2.  集団かぜ

   集団かぜは、 42週(10/15~21)に相模原市で発生したのが県域初発でした。以後、43週(10/22~28)に厚木地域、44週(10/29~11/4)に藤沢市と鎌倉地域、45週(11/5~11)に秦野地域、46週に茅ヶ崎地域と足柄上地域、48週に大和地域でそれぞれ発生報告があり、ほとんどが小学校低学年における発生でした。これら8集団37名のうがい液についてMDCK細胞およびCaco-2細胞を用いたウイルス分離とインフルエンザウイルス遺伝子検出を実施しました。その結果、全8集団の29名からインフルエンザウイルスAソ連型(H1)の遺伝子が検出されました。また、遺伝子が検出された29名中10名から同型のウイルスが分離されています。分離ウイルスは、抗 A/Solomon Islands/3/2006 (ホモ価320)に対してHI価80~160、抗A/Hiroshima/52/2005(同640)、抗B/Malaysia/2506/2004(同640)、抗B/Shanghai/361/2002(同640)に対しては<10を示しました。

  11月末現在、県域ではAソ連型(H1)のみが検出されていますが、近県(埼玉県および千葉県)ではA香港型(H3)が検出されたとの情報もあり、今後もインフルエンザの動向に注目する必要があります。

(エイズ・インフルエンザウイルスグループ  渡邉 寿美)
 
★流行時はインフルエンザ情報を毎週、神奈川県衛生研究所ホームページに掲載しています。

  病原体検出  
表 1 病原体検出状況(保健所等別)―平成19年8月

<検出状況>
  • 8月の病原体検出数は合計35件、細菌22件、ウイルス13件であった。
  • 感染症および食中毒発生に伴う行政検査等では細菌が18件、ウイルスが1件検出された。
  • 病原体定点等の医療機関からの検査では、小児科定点から細菌が4件、ウイルスが12件検出された。
  • 保健所管内別の病原体検出状況は表1のとおりである。



表2 病原細菌検出状況(臨床診断別)―平成19年8月
<検出状況>
  • 腸管出血性大腸菌O157(VT1&2保有)が届出患者の家族より1件、散発事例から1件、検出された。
  • サルモネラO4群が健常者より3件、検出された。
  • 腸炎ビブリオが集団食中毒事例より2件、検出された。
  • カンピロバクター・ジェジュニが食中毒等事例から3件、感染性胃腸炎患者から3件検出された。
  • 赤痢菌が、海外渡航者(タイ)より1件検出された。



表3 病原細菌検出状況(月別)―平成19年8月
<検出状況>
  • 腸管出血性大腸菌が7月に引き続き2件検出された。
  • カンピロバクター・ジェジュニが、7月に引き続き6件検出された。食中毒事例および病原体定点からの検出が、前年3月(12月を除く)から続いている。
表4 ウイルス・リケッチア検出状況(臨床診断名別)―平成19年8月
<検出状況>
  • 手足口病患者2検体から、コクサッキーウイルスA10型が2件検出された。感染症発生動向調査の8月の患者報告数はピークをすぎ、減少傾向を示した。
  • ヘルパンギーナ患者20検体から、コクサッキーウイルスA5型が2件、同A6型が1件、同A10型5件、同B5型1件、エコーウイルス6型が1件検出された。感染症発生動向調査では8月の患者報告数は減少傾向を示したが、取り扱い検査件数は7月とほぼ同数であった。
  • インフルエンザウイルスAH3型が、1件検出された。


表5 ウイルス・リケッチア検出状況(月別)―平成19年8月
<検出状況>
  • 7月に引き続き、コクサッキーウイルスA10型が7件、A5型が2件、B5型が1件検出された。
  • ノロウイルスは11か月振りに検出がなかった。



表6 食品・環境由来の病原細菌検出状況―平成19年8月

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