戻る
印刷用はこちら(PDFダウンロード形式)pdf

神奈川県微生物検査情報


神奈川県衛生研究所

第176号

平成19年11月5日発行
病原体検出は平成19年6月分

話題

 

 

今シーズンの腸管出血性大腸菌感染症の動向(2)

1 患者発生動向

  今シーズン(4月~8月)の腸管出血性大腸菌感染症の患者発生報告は、神奈川県では124例報告されました。前年の同シーズンに比べ22件増加していますが、藤沢市及び県域では2007年の同シーズンの発生数は前年に比べ少なくなっています。


2 分子疫学解析(パルスフィールドゲル電気泳動(PFGE)解析)

   今シーズンの県域の患者発生報告数は18件でしたが、医療機関の協力により13件の患者分離菌株が収集され、分子疫学解析(PFGE)を実施しました。下図に示したPFGEパターンによるとレーン2と3は一致、また、レーン8と9はラインが1本異なるがほぼ一致の結果が得られました。その他はすべて、異なったパターンを示しました。
PFGEパターン

これら一致したパターンを持つ2事例については、共通食の有無の調査を行いましたが関連性の特定はできませんでした。このように、医療機関からの届け出による散発事例の分離菌株のPFGE解析を行い早期の感染拡大防止に活用しています。
一方、食中毒等の事例から得られた患者分離菌株及び食品由来株について、 PFGE 解析を実施し、その由来の同一性を確認し、感染源の推定に役立てています。
                                   (企画情報部 折原直美)

 

  病原体検出  
表 1 病原体検出状況(保健所等別)― 平成 19年6月

<検出状況>
  • 6月の病原体検出数は合計57件、細菌23件、ウイルス34件であった。
  • 感染症および食中毒発生に伴う行政検査等では細菌が22件、ウイルスが16件検出された。
    5月に比べて検出が細菌は29件から57件と、ウイルスは9件から34件と増加した。
  • 病原体定点等の医療機関からの検査では、小児科定点から細菌が1件、ウイルスが18件検出された。
  • 保健所管内別の病原体検出状況は表1のとおりである。



表 2 病原細菌検出状況(臨床診断別)―平成19年6月
<検出状況>
  • カンピロバクター・ジェジュニが食中毒等事例から12件、感染性胃腸炎患者から1件検出された。
  • サルモネラO7群の1件は無症状病原体保有者からの検出であった。
  • 腸管出血性大腸菌O157(VT1&2保有)が届出患者の家族より検出された。



表3 病原細菌検出状況(月別)―平成 19年6月
<検出状況>
  • カンピロバクター・ジェジュニが、5月に引き続き12件検出された。

表4 ウイルス・リケッチア検出状況(臨床診断名別)―平成 19年6月
<検出状況>
  • 食中毒様事例から、サポウイルスが1件検出された。また、ノロウイルスが他府県関連の食中毒様事例およびその他から15件、小児科定点から3件、計18件検出された。
  • 小児科定点の感染性胃腸炎患者から、ロタウイルスが1件、ノロウイルスが3件、サポウイルスが2件、アストロウイルスが1件検出された。ノロウイルス2件を除き、乳幼児からの検出であった。
  • 手足口病患者7検体からポリオウイルス1が1件、コクサッキーウイルスA10型1件、エンテロウイルス71型が4件検出された。感染症発生動向調査による6月の患者報告数については増加傾向を示している。
  • 麻しんウイルスが2件、乳幼児から検出された。



表5 ウイルス・リケッチャ検出状況(月別)―平成 19年6月
<検出状況>
  • ロタウイルスが、昨年 12月から毎月検出されている。
  • ノロウイルスが、昨年10月から毎月検出されている。
  • サポウイルスは4月をのぞき、昨年12月から検出されている。
  • 麻しんウイルスが5月、6月と連続して検出された。



表6 食品・環境由来の病原細菌検出状況―平成 19年6月

戻る