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神奈川県微生物検査情報


神奈川県衛生研究所

第175号

平成19年10月9日発行
病原体検出は平成19年5月分

話題

 

 

今シーズンの腸管出血性大腸菌感染症の動向(1)

1 患者発生動向

  今シーズン(4月~8月)の腸管出血性大腸菌感染症の患者発生報告は、神奈川県では124例でした。前年の同シーズンに比べ22件増加しています(2006年の同シーズンは102例)。横浜市及び川崎市から多く報告があり、全体の件数が多くなっています。図1の23週のピークは他県の集団発生の影響によるもので、今シーズンは昨年よりも早い6月初めから増加しましたが、30週からは前年とほぼ同様の報告数となっています。
図1 週別患者報告数

2 年次別発生状況

  2004年以降3年間の全国及び神奈川県の年間報告数では、全国及び神奈川県でも2005年に減少しましたが、2006年には増加しています。また、各年1~35週までの累計報告数は、全国では2005年に減少し2年続けて増加しました。神奈川県では2005年に大幅に増加しましたが2006年には減少し、2007年は2005年を上回りました。

図2 腸管出血性大腸菌感染症報告数年次別比較

3 患者発生報告における腸管出血性大腸菌検出状況

 神奈川県域(横浜市、川崎市を除く)では1~35週の患者報告数は38件でした。内1件はHUSによる報告であり、各血清型及び毒素型の検出状況は表1のとおりです。O157による腸管出血性大腸菌感染症は75.7%でした。

表1 血清型別の毒素型検出状況(神奈川県域)
   

  病原体検出  
表 1 病原体検出状況(保健所等別)― 平成19年5月

<検出状況>
  • 5月の病原体検出数は合計58件、細菌34件、ウイルス24件であった。
  • 感染症および食中毒発生に伴う行政検査等では細菌が29件、ウイルスが9件検出された。
    4月に比べて検出が細菌は32件から29件と横ばいであり、ウイルスは31件から9件と減少した。
  • 病原体定点等の医療機関からの検査では、細菌が5件、ウイルスが15件検出された。細菌は小児科定点からの検出であり、ウイルスは小児科、眼科及び基幹定点からの検出であった。
  • 保健所管内別の検出状況は表1のとおりである。



表 2 病原細菌検出状況(臨床診断別)―平成19年5月
<検出状況>
  • カンピロバクター・ジェジュニが食中毒等事例から8件、感染性胃腸炎患者から1件検出された。
  • ウエルシュ菌は、16件すべて厚木保健所管内の食中毒事例からの検出であった。
  • サルモネラO7群が2件検出され、1件は無症状病原体保有者であり、他の1件はカンピロバクター食中毒事例から同時検出されたものであった。
  • 黄色ブドウ球菌が食中毒事例から2件検出された。



表3 病原細菌検出状況(月別)―平成19年5月
<検出状況>
  • カンピロバクター・ジェジュニが、4月に引き続き9件検出された。

表4 ウイルス・リケッチア検出状況(臨床診断名別)―平成19年5月
<検出状況>
  • ロタウイルスによる感染性胃腸炎の集団発生があり、C群ロタウイルスが4件検出された
  • 小児科定点及び基幹定点の感染性胃腸炎患者から、ノロウイルスが1件、サポウイルスが4件、アストロウイルスが1件、ロタウイルスが1件検出された。すべて乳幼児からの検出であった。
  • 手足口病患者9件のうち6件の咽頭拭い液からコクサッキーウイルスA16型1件、エンテロウイルス71型が5件検出されたが、感染症発生動向調査による5月の患者報告数はまだ増加はみられていない。


表5 ウイルス・リケッチャ検出状況(月別)―平成19年5月
<検出状況>
  • 麻しんウイルスが成人麻しん患者から検出された。
  • ロタウイルスが12月から毎月検出されている。
  • サポウイルスは4月は検出されなかったが、12月から検出されている。



表6 食品・環境由来の病原細菌検出状況―平成19年5月

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