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神奈川県微生物検査情報


神奈川県衛生研究所

第172号

2007年 2月
( 平成 19年 6月 18日発行 )


話題

2007年の麻しん及び成人麻しんの流行について

1 患者発生動向

   本年は関東地方を中心に麻しん(はしか)が流行しています。麻しん(成人麻しんを除く)の流行状況は小児科定点(小児科診療を行っている指定届出医療機関)の報告から、成人麻しん( 15歳以上)の流行状況は基幹定点(内科と小児科を持つ300床以上の病院)の報告から把握しています。このように麻しんと成人麻しんは異なった定点から報告されます。また、全数報告の疾患ではありませんので、発生動向調査で患者数をすべて把握することはできません。

麻しん、成人麻しんの定点あたり報告数の推移
  神奈川県では、特に成人麻しんの定点あたり報告数が12週(3/19~)から増加しはじめ、15週(4/9~)で0.38人、16週(4/16~)で0.43人でした。また、20週(5/14~)は0.88人、21週(5/21~)は1.11人、22週(5/28~)では1.33人とさらに増加しています(図1)。

麻しん、成人麻しんの年齢別患者報告数( 1~22週累計 小児科定点、基幹定点報告より)

  神奈川県の 1週から22週までの麻しん及び成人麻しんを合算した年齢別患者報告数は、6か月~11か月にピークがあり、2歳で下がるものの年齢が上がるに従い増加し、10歳以上の報告数が114人(65.9%)と特に多くなっています。(図2)。
  神奈川県の基幹定点報告では、成人麻しん( 15歳以上)は51人で15歳から35歳未満では49人(96%)となっています。

全国及び近隣都県の週別患者報告数(小児科定点、基幹定点報告より)
  全国及び近隣都県(神奈川県、東京都、埼玉県、千葉県)の患者報告数は、全般的に 13週(3/26~)から増加し始め全国の麻しんは19週をピークとしてほぼ横ばいで推移しています。近隣都県とも麻しんの報告数が多く、千葉県の19週は56名が報告されています(図3)。成人麻しんは18週から増加の傾向を示しているが20週では全国報告68例中、近隣都県の報告が36例あり、全国の52.9%を占めました。報告数がピークとなっている21週では全国報告82例、近隣都県43例と報告数は増加したものの近隣都県の全国割合は52.5%とわずかに減少しました(図4)。

2 麻しん抗体保有状況および予防接種率

  当所で実施している麻しんの抗体保有調査の一部を示しました(表 1)。0-1歳では陽性率が約43%から76%であるの比して、2歳になると一部低い陽性率がみられるものの、ほぼ100%の陽性率となっています。しかし、2-5歳の間に100%の陽性率を示した抗体保有状況も10-14歳では約86~96%前後の値を示し、約15%~5%程度減少しています。


3 麻しんウイルス分離状況( IDSC資料より;国立感染研感染症情報センター)

  2007年2~6月に山形県、茨城県、千葉県、東京都、神奈川県、山梨県、大阪府、兵庫県、島根県、佐賀県、沖縄県から麻疹ウイルスの分離・検出が52件報告されており、このうち、遺伝子型別まで実施された29件ではすべてD5型が検出されています。
  2006年においてはD5型を中心にA型、H1型も報告されていました。

(企画情報部 折原直美)

  病原体検出  
表 1 病原体検出状況(保健所等別)―平成19年2月
<検出状況>
  • 2月の病原体検出数は合計 140 件、細菌 18 件、ウイルス 123 件であった。
  • 感染症および食中毒発生に伴う行政検査等では細菌が 14 件、ウイルスが 60 件検出された。
  • 病原体定点等の医療機関からの検査では、細菌が 3 件、ウイルスが 63 件検出された。細菌は小児科定点から、ウイルスは小児科定点およびインフルエンザ定点からの検出であった。
  • 保健所管内別の検出状況は表 1 のとおりである。



表 2 病原細菌検出状況(臨床診断別)―平成19年2月
<検出状況>
  • 赤痢菌( S.flexneri )が横須賀市保健所管内で届出患者から 1件検出された。これは国内散発事例であった。
  • ウエルシュ菌が 7件検出されたが、ノロウイルスを原因とする集団発生事例から同時検出されたものである。
  • カンピロバクター・ジェジュニが感染性胃腸炎患者から2件、食中毒及び有症苦情事例からそれぞれ 1件検出された。



表3 病原細菌検出状況(月別)―平成 19年2月
<検出状況>
  • 腸管出血性大腸菌は、 1 月に引き続き 2 月も検出されなかった。
  • カンピロバクター・ジェジュニが、 1 月に引き続き 2 月も 4 件検出された。





表4 ウイルス・リケッチア検出状況(臨床診断名別)―平成 19年2月
<検出状況>
  • 1月に引き続き、2月もノロウイルス感染による集団発生が多発し、ノロウイルスは、感染性胃腸炎から 32件、食中毒等から24件検出された。その他3件は他府県の関連調査によるもので推定伝播経路が不明であった。
  • 2月も インフルエンザが流行した。集団かぜが5集団あり,うちインフルエンザウイルス AH3型によるものが2集団,インフルエンザウイルスB型によるものが2集団、ウイルス不検出が1集団であった。検出数はインフルエンザウイルスAH3型が44株、インフルエンザウイルスB型が11株であった。
    今シーズンは AH3型とB型の同時流行であると考えられる。
  • 感染性胃腸炎患者から、ロタウイルスが2件、サポウイルスが 4 件検出された。


表5 ウイルス・リケッチャ検出状況(月別)―平成 19年2月
<検出状況>
  • 2月に入り発生動向調査ではインフルエンザの報告数が上昇し、インフルエンザウイルスの検出数も前月を上回った。
  • ノロウイルスは、2月は前月の検出数を下回ったが、 59 件検出された。
  • ロタウイルス、サポウイルスが 12 月から毎月検出されている。
  • 単純ヘルペスウイルス1型が昨年後期から検出され続けている。



表6 食品・環境由来の病原細菌検出状況―平成 19年2月

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