未病を知ろう!~病気になってしまう前に~

健康 未病 病気 生活習慣病など

健康な状態と病気の間には「未病」という段階が存在します。病気になってしまう前に、本講座で「未病」を賢く理解して、より健康な状態に近づけましょう。

1. 神奈川県を取り巻く現状

神奈川県は高齢者人口が急激に増加しています。平成32年には4人に1人が高齢者になると推計されており、高齢者増加率は沖縄県に次いで全国2位です1)。また、後期高齢者の医療費は全国4位と非常に高いことが分かっていますし2)、要支援・要介護認定者も10年後(平成37年度)には、平成26年度比で約1.6倍に達することが予測されます3)。一方、現役世代の健康意識は非常に低く、特定保健指導*1実施率は、大阪府の次に低い結果となっています4)。また、全国と比較して30代、40代男性の肥満の割合が多く、運動に対する意識も低いので5)、将来生活習慣病患者が増加する可能性があります。つまりどの世代においても問題点が存在するということです。このままですと近い将来、医療や介護をはじめとした社会システムが崩壊する危険性があります!

そこで!健康寿命*2を延ばし、高齢になっても誰もが健康・幸せに暮らし、長生きできるような社会を少しでも早く実現する必要があります!

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2.「未病」とは?~未病を治すかながわ宣言~

人の健康状態は、ここまでは「健康」、ここからは「病気」というように明確に分けることはできません。健康と病気の間で連続的に変化している状態を「未病」といいます。
その未病も、機能性食品などの摂取により健康な状態に戻すことが出来る第一段階と、血圧を下げる薬などが必要な第二段階に分けられます。
未病は人によって様々な症状や程度を示すことから、未病の診断・治療には、あらゆる角度からの検討や対応が必要です。

さらに、加齢に伴い、複数の未病が絡み合ってきます。この未病のコントロールの仕方で老化の個人差が生じ、それが寿命の相違につながってきます!

未病を治すかながわ宣言 全国有数の速さで超高齢社会が進展する神奈川。このままだと医療や介護など社会システムは崩壊してしまいます。そのため神奈川県は、特定の疾患の予防・治療だけでなく、心身の状態を整え改善する「未病を治す」取組みを進めます。これは、食、運動、社会参加を通して、人々の健康を維持し、よりよい状態にしていこうとするものです。

「未病を治す」とは、特定の病気になってから治療を開始するのではなく、普段の生活において「心身の状態を整えて、より健康な状態に少しでも近づける」ことを言います。

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3.私たちが目指す参加型医療

未病の第一段階、もしくは初期の第二段階の方

  • 「健康」とまではいかないけれど、好きなものを食べることが出来るし、身体を動かすことが出来る方
  • 医師から処方された薬を飲んでいるけれど、好きなものを食べることが出来るし、身体を動かすことが出来る方

運動不足や過食など不適切な生活習慣は、その積み重ねの中で次第に病に近づいていくことから、「未病」の最たるものです。生活習慣を改善できれば、生活習慣病や、それに続く脳卒中や心筋梗塞などの重篤な病気の発症を未然に防ぐことができ、「未病を治す」ことにつながります。

神奈川県では参加型医療を目指して、多くの取組みを行っています。具体例は「出前講座」でお話ししています!

未病の第二段階の方

  • 何らかの病気になり、手術や薬剤投与により回復傾向にあるけれど、運動や食事が不自由な方
  • 定期的に医師から薬を処方されており、運動や食事が不自由な方

最近では、手術後の食欲不振や、低下した体力・抵抗力を補う目的等で、漢方薬が処方されることが多くなってきました。もともと漢方薬は、一人ひとりの体質や症状、健康状態に合わせてオーダーメイドで対応できるので、個人差が大きいと言われる未病や高齢者に向いています!

西洋薬と漢方薬、互いの長所を生かし、個々の症状に合わせて上手に使い分けることが大切ですね!

未病や病気を治すためには、どんなに強力な薬を使ったとしても、最終的に自分で治そうとする力、「自己治癒力」も欠かせません。

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4.神奈川県衛生研究所の取組み

衛生研究所では、「未病を治すかながわ宣言」に基づき、未病を改善する取組みを支える仕組み作りの一環として、未病研究事業を開始しています。自覚症状のない未病の診断は大変難しいことから、未病診断のカギになるような因子を見つけようとする研究を行っています。

近年、肥満や糖尿病、動脈硬化性疾患に共通する病態として、非常に低レベルの慢性炎症が注目されています。炎症状態の持続が、動脈硬化症や糖尿病などの生活習慣病の発症の原因になることが分かってきています。

慢性炎症は生活習慣病の原因

肥満も炎症が原因だった!

具体的には、長寿ホルモンである「アディポネクチン」量を遺伝子操作で減らしたマウス(遺伝子改変マウス)を使って解析しています。

今までの研究成果について、理化学部 秋山晴代主任研究員が日本薬学会第136年会(横浜)(2016/3/26-29) 6)で「易炎症性マウスを用いた未病に関与する診断ターゲットの探索」を発表しました!!

発表内容はこちら (PDF 228KB)

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5.まとめ

1) 神奈川県 「神奈川県高齢者居住安定確保計画」(平成27年3月31日)
2) 神奈川県「神奈川県医療費適正化に関するデータ分析」(平成26年度の分析における神奈川県の特徴)
3) 神奈川県「かながわ高齢者保健福祉計画」(平成27年度~平成29年度)
4) 厚生労働省 特定健康診査・特定保健指導の実施状況に関するデータ」(平成25年度)
5) 神奈川県「平成22年度 県民健康・栄養調査結果の概要」
6) 日本薬学会第136年会(横浜)

*1: メタボリックシンドロームの予防・解消に重点をおいた、生活習慣病予防のための健診・保健指導(40歳以上を対象に実施)
*2: 健康上の問題がなく日常生活を普通に送ることができる状態

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