[2006.10.更新]


写真1   いわゆるケミカルドラッグ(麻薬や覚せい剤のような習慣性や死亡事故を含む健康被害が予想される。)

写真2    ニトライト( 循環器障害により重篤な障害や死亡事故などが報告されている。)

注:リンクは掲載当時のものです。リンクが切れた場合はリンク名のみ記載しています。

今、何故、脱法ドラッグか?

  “小・中学生で覚せい剤を使用し補導された”という事例の報告や“脱法ドラッグから覚せい剤に近い成分が検出された”という新聞記事が報道されています。今、これらの薬物に対する意識や考え方が変化し、薬物を使用することの罪悪感が鈍くなったことや、また、薬物の持つ有害性に対する科学的な理解の欠如も脱法ドラッグ使用の一因となっています。さらに、覚せい剤と同じような有害作用を持つ脱法ドラッグといわれる薬物が急速に増えています。ここではこの脱法ドラッグについて説明します。

    小・中学生 と薬物乱用に関するサイト
薬物乱用防止教育
        (文部科学省;http://www.hokenkai.or.jp/3/3-3/3-31/3-31-frame.html)   
薬物乱用の現状;「薬物乱用防止教育の必要性について」
        (文部科学省;http://www.hokenkai.or.jp/3/3-3/3-313/3-313-frame.html)
STOP!THE 少年非行
        (神奈川県警;http://www.police.pref.kanagawa.jp/mes/mesd1007.htm#no_6)


脱法ドラッグとは?

  麻薬や覚せい剤と同様の多幸感や快楽感などを高める目的で使用される化学物質や植物などです。 麻薬や覚せい剤と異なり、法律で所持や使用、譲渡等が禁止されていないため、“合法ドラッグ”とも呼ばれていますが、現在では「法の規制の間をすり抜けた薬物」ということで、“ 脱法ドラッグ ” と呼んでいます。 厳密には 各種の法律 に触れる場合もあります。 脱法ドラッグには様々なものがありますが、近年、研究用化学試薬と称して販売されるフォキシー(製品名;写真(下))のようなケミカルドラッグ、亜硝酸エステル類を含んだ芳香剤やクリーナーと称して販売されるニトライトによる健康被害や事故例が増えています。  また、海外ではダイエット等に使用されるエフェドラ(マオウ;写真(下))といわれるハーブ系の薬品の健康被害や事故例が増えています。
写真3    フォキシー 写真4    エフェドラ

脱法ドラッグはなぜ危険か?

  脱法ドラッグは、麻薬や覚せい剤などに到る“ゲートウェイドラッグ(入門薬)”と言われています。脱法ドラッグは麻薬や覚せい剤に類似した化学構造を持っており、麻薬や覚せい剤のような依存性や精神荒廃など脳に強いダメージを与える可能性があります。また、覚せい剤によって生じる精神錯乱、妄想や強迫観念から家族、友人や関わりのない人にまで危害を及ぼす可能性が高まります。このため、最近では覚せい剤などと同じように有害作用を有するマジックマッシュルームやBZPなどの脱法ドラッグが麻薬に指定されました。
なお、平成17年度に入って2品目が新たに指定されました。

脱法ドラッグの成分は?

  
"現在出回っているケミカルドラッグは化学構造によりピペラジン系トリプタミン系フェネチルアミン系(下表)に分類されます。ピペラジン系のケミカルドラッグには3CPPや4MPPがあり麻薬のBZPやTFMPPと同じような化学構造を持っています。トリプタミン系のケミカルドラッグにはDPTや5meo-DMTなどがあり、新たに麻薬に指定されたAMTやフォキシーなどがあり麻薬のDMTと同じような化学構造を持っています。フェネチルアミン系のケミカルドラッグには2C-7やTMA-2などがあり合成麻薬のMDMAと同じような化学構造を持っています。これらの薬物は法的には麻薬として取り扱われますが、その有害作用は覚せい剤のメタンフェタミン(フェネチルアミン系)と同じように、幻覚や依存性などによる精神障害や人格異常などを起こします。 ニトライトは亜硝酸エステルと言われる化合物で、その中には狭心症薬の亜硝酸アミルもあり、使い方によっては循環器障害を起こし、死亡する危険があります。


化学構造による脱法ドラッグ及び麻薬・覚せい剤の分類例             (平成17年4月改正)
化学構造分類 法規制 一般名(呼称) 化学名
ピペラジン系
脱法ドラッグ 3CPP 1-(3-CHLOROPHENYL)-PIPERAZINE, 1-(3-クロロフェニル)-ピペラジン
4MPP 1-(4-METHOXYPHENYL)-PIPERAZINE, 1-(4-メトオキシフェニル)-ピペラジン
麻薬指定成分 BZP 1-BENZYL-PIPERAZINE, 1-ベンジルピペラジン
TFMPP 1-(3-TRIFLUOROMETHYLPHENYL)-PIPERAZINE, 1-(3-トリフルオロメチルフェニル)-ピペラジン
トリプタミン系
脱法ドラッグ DPT N,N-DIISOPOPRPYLTRYPTAMINE, ジイソプロピルトリプタミン
5meo-DMT 5-METHOXY-N,N-DIMETYLTRYPTAMINE, 5-メトキシ-N,N-ジメチルトリプタミン
麻薬指定成分 AMT α-METYLTRYPTAMINE, α-メチルトリプタミン
5meo-DIPT(フォキシー) 5-METHOXY-N,N-DIISOPROPYLTRYPTAMINE, 5-メトキシ-N,N-ジイソプロピルトリプタミン
DMT DIMETYLTRYPTAMINE, ジメチルトリプタミン
フェネチルアミン系
脱法ドラッグ 2CT-7 2,5-DIMETHOXY-4-(n)-PROPYLTHIOPHENETHYLAMINE,
2,5-ジメトキシ-4-(n)-プロピルチオフェネチルアミン
TMA-2 2,4,5-TRIMETHOXYAMPHETAMINE, 2,4,5-トリメトキシアンフェタミン
覚せい剤 メタンフェタミン
麻薬指定成分 MDMA 3,4-METHYLENEDIOXY-N-METHYLAMPHETAMINE, 3,4-メチレンジオキシ-N-メチルアンフェタミン


脱法ドラッグによる事件や事故が!

   今年7月(2004年)、東京都杉並区で発生した殺人事件は、数種類の脱法ドラッグを飲んだ男性が理由もなく起こした事件と言われています。  ニトライトによる事故例は毎年、報告されています。例えば、ニトライトの容器に日本語で使用法の説明がないため、誤って飲んでしまい、死亡した事故がありました。 ケミカルドラッグによる事故例では、フォキシーによる中毒事故が各地の病院で報告されています。

覚せい剤が原因となった事件・事故の状況  (平成13年)
  罪種別/区分 総数(人) 薬理作用によるもの 取引・入手目的によるもの
事  件   総   数 147 128 19
刑 法 犯 127 117 10
殺   人 1 0 1
殺人未遂 2 2 0
放   火 3 3 0
強   盗 3 2 1
暴行・障害 14 14 0
窃盗・その他 104 96 8
特別法犯 20 11 9
銃 刀 法 13 5 8
そ の 他 7 6 1
事 故 総   数 67    
乱 用 死 26
自   殺 6
交通事故 33
自   傷 2
                                                                       (警察庁発表資料)

脱法ドラッグの対策は!

  神奈川県では、健康被害の可能性があり麻薬、覚せい剤やシンナーなどへの“ゲートウェイドラッグ”となる脱法ドラッグの分析を行い、脱法ドラッグの実態を明らかにしています。 厚生労働省では、危険性が確認できた成分や植物を迅速に麻薬に指定し取り扱い、輸入、製造等の規制をかけています。さらに、今年度から本格的に実態や健康被害の可能性を詳しく調査することにしています。また、東京都では独自の条例をつくる方針を固め、健康被害が明らかになった脱法ドラッグの商品名公表や販売自粛の指導など条例規制しようとしています。このように、厚生労働省や神奈川県をはじめとする都道府県では脱法ドラッグが麻薬、覚せい剤やシンナーなどと同じく危険であることを示し、脱法ドラッグの規制を強化するよう努めています。

神奈川県における脱法ドラッグの報告!

   脱法ドラッグの持つ問題点を広く知っていただくため、その危険性を科学的に明らかにしてきました。今後も、脱法ドラッグの健康被害や身体への影響を含め、調査や研究を続けます。  

  神奈川県衛生研究所における脱法ドラッグの調査研究
脱法ドラッグ論文等
・論文リンク:   中毒研究(PDF)、 医薬品成分に関する検討(PDF)

薬物乱用の関連サイト

 脱法ドラッグを含めた未規制薬物や規制薬物に関する精神や身体に及ぼす影響及び防止対応などについて掲載。

    薬物乱用に関する関連サイト
 

注:リンクは掲載当時のものです。リンクが切れた場合はリンク名のみ記載しています。

○ 赤城高原ホスピタル(http://www2.gunmanet.or.jp/Akagi-kohgen-HP/)
○ 神奈川県の薬物乱用防止・危険ドラッグ対策(神奈川県健康医療局生活衛生部薬務課:https://www.pref.kanagawa.jp/docs/n3x/yakumu/yakutai/yakutai.html
○ 「ダメ・ゼッタイ」(麻薬覚せい剤防止センター:http://www.dapc.or.jp/
○ 薬物乱用防止について(神奈川県警:http://www.police.pref.kanagawa.jp/mes/mesd3001.htm)
○ 薬物の根絶をめざして(神奈川県警:http://www.police.pref.kanagawa.jp/mes/mesd3002.htm)
○ 少年の薬物乱用を防止するために (神奈川県警:http://www.police.pref.kanagawa.jp/mes/mesd1025.htm)
○ STOP!THE少年非行 -少年の薬物乱用―
     (神奈川県警:http://www.police.pref.kanagawa.jp/mes/mesd1007.htm#no_6)
○ 喫煙・飲酒・薬物乱用防止教育指導資料(神奈川県教育局 指導部保健体育課:
    https://www.pref.kanagawa.jp/docs/cy3/hka/yakuran-sdsry.html
○ 薬物乱用防止教育 (文部科学省:http://www.hokenkai.or.jp/3/3-3/3-31/3-31-frame.html)



"脱法ドラッグ"から"麻薬"へ

  これまで述べてきたように、脱法ドラッグは麻薬や覚せい剤と構造的に類似するとともに健康に及ぼす影響も類似すると考えられています。
平成17年4月17日から、ケミカルドラッグであったAMTと5meo-DIPTが麻薬に指定されました。様々な報告や事故事例などから麻薬や覚せい剤と同様に毒性作用や生命の危険性が明らかになったからです。 今後、使用のみならず所持等も法的に違反となります。また、東京都では独自条例により、2C-I、MBDB及び5meo-MIPTを知事指定薬物として使用や所持を規制しています。
  これら以外のいわゆるケミカルドラッグも同様の作用や危険性が考えられるため、法律などで規制されなくとも生命を守るために使用はやめましょう。

http://www.mhlw.go.jp/houdou/2004/12/h1202-2.html (厚生労働省)


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