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神奈川県衛生研究所

衛研ニュース
No.207

RSウイルス感染症を知っていますか?

2021年11月発行

2021年の春から夏にかけて全国的にRSウイルス感染症の大きな流行がありました。RSウイルス感染症は、一般にはあまり馴染みのない感染症ですが、乳幼児に多く見られる急性呼吸器感染症です。今回は、このRSウイルス感染症についてお話しします。

RSウイルス感染症はどんな病気?

RSウイルス感染症は、RSウイルス(respiratory syncytial virus)を原因とする急性呼吸器感染症です。感染経路は、インフルエンザや新型コロナウイルス感染症と同様に、RSウイルスに感染している人が咳やくしゃみ、会話等をしたときにウイルスを含んだ飛沫(唾液)が口から飛び出し、これを近くの人が吸い込む「飛沫感染」、ウイルスが付着した物(ドアノブ、手すり、おもちゃ等)を触り、その手指で口や鼻などを触ったことによっておこる「接触感染」があります。
潜伏期間は2~8日で、発熱、鼻汁等の症状が数日続きます。多くの場合は軽症ですが、細気管支炎や肺炎など重症化する場合もあります。特に、生後6か月未満の乳児や心肺に基礎疾患を有する小児などでは、呼吸困難になるなど入院が必要になる場合もあります。RSウイルス感染症に罹っても抗体は長く保有できないため、何度も感染を繰り返しますが、徐々に症状は軽くなります。2歳以上で再感染した場合は、軽い咳や鼻汁程度の症状で済むことが多く、年長の子供や周りの大人達が気づかぬうちに乳児に感染させてしまうこともあります。また、免疫不全の方や高齢者も肺炎など重症化する場合があるので、注意が必要です。

神奈川県内の流行状況

RSウイルス感染症は、「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(感染症法)」の規定により、五類感染症(定点把握疾患)として定点医療機関(小児科定点)から週に一度、保健所に患者数が報告されます。神奈川県内のRSウイルス感染症の流行状況は、神奈川県の感染症情報(週報)で知ることができます。
2017年から2021年の神奈川県の定点あたりの患者報告数*)を図に示しました。2017年から2019年までは、30週から40週に患者数が増加していましたが、2020年は、患者報告がほとんどありませんでした。2021年は、20週頃より患者数の増加がみられ、28週(7月中旬)をピークに減少に転じました。また、2017年から2019年のピーク時の患者数は2~3人程度であったのに対し、2021年は7人を超えており、近年では最も大きな流行となりました。

*)定点あたり患者報告数:1週間における指定された医療機関あたり(定点あたり)の患者報告数を表す数値で、この数値によって感染症の流行が把握できます。

2021年の流行が大きかった理由は何でしょうか。前年の2020年は、新型コロナウイルス感染症の流行により保育所や幼稚園が休園となり、感染機会が減少したことに加え、マスク、手指消毒等の感染症対策のための衛生行動が浸透したことにより、RSウイルス感染症の流行が起きなかったと思われます。そのため、例年であればRSウイルスに感染していたであろう乳幼児や小児が、感染機会のないままに過ごしました。その結果、RSウイルスに対して免疫のない人の数が例年よりも多く、それらの人たちの間で感染が広がったため、2021年は流行が大きかったと考えられます。

感染の予防

RSウイルス感染症に対する定期接種のワクチンはまだありません。重篤な下気道炎の発症を抑制するためにシナジス(一般名パリビズマブ:Palivizumab)というモノクローナル抗体製剤を投与する方法がありますが、投与対象患者が早産児や基礎疾患を持つ乳幼児に限定されているので、一般的ではありません。感染を予防するには、ウイルスに接触する機会をできるだけ減らす必要があります。マスクをする、手洗いや手指消毒をこまめに行うなど、インフルエンザや新型コロナウイルス感染症と同じ感染症対策が有効です。また、多くの人が触る場所や物などを定期的に消毒することも有効です。乳幼児や高齢者の場合は、本人が感染症対策を実行することが難しい場合が多いので、家族や介護する人など、周囲の人が感染症対策を行い、ウイルスに接触する機会をできるだけ減らすことが重要です

神奈川県衛生研究所では、介護施設や学校等において呼吸器感染症が集団発生した際には、保健所と連携して、インフルエンザウイルス、RSウイルス、パラインフルエンザウイルス等の遺伝子検査を実施し、その原因究明を行っています。また、感染症情報センターで患者発生情報の収集と広報を行っていますので、感染症対策にご活用ください。

(微生物部 渡邉寿美)

   
衛研ニュース No.207 令和3年11月発行
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