神奈川県衛生研究所

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[2009.11.4掲載]

研究ノート

ヒスタミン検査の移り変わり

ヒスタミン様物質とは
 
  毎年、6月から7月にかけて魚介類やその加工品のヒスタミンによるじんま疹、下痢などの症状をひきおこすアレルギー様食中毒が多く発生しています。
 これは赤身魚筋肉中に多く含まれる遊離のヒスチジンが、細菌の作用によりヒスタミンに変化しこれにより起こるものと考えられます。赤身魚筋肉中のたんぱく質に含まれるグルタミン、チロシン、ヒスチジン、リシンが細菌の作用によりそれぞれスペルミジン、チラミン、ヒスタミン、ガダベリンという物質に変化します。これらは不揮発性腐敗アミンといわれ、これを検出することでアレルギー様食中毒を推定します。しかし、スペルミジン、チラミンは早い段階で消失し、カダベリンやヒスタミンが残存するので、現在はこの二つの物質を測定しアレルギー様食中毒を推定しています。
検査の改良法の開発と普及
 
  平成13年以前は、アレルギー様食中毒検査は、動物組織を用いた生物学的判定法、薄層クロマトグラフ法で実施していましたが、これらは不揮発性腐敗アミンの総量を測定する方法でした。そこで平成13年当所では、衛生試験法注解に示されている不揮発性腐敗アミンの試験法の改良を行い、プレカラム反応HPLC法を研究開発 ※1し、不揮発性腐敗アミンの分別を可能にしました。
  また、平成15年以降、「ポストカラム蛍光検出器付きHPLC」の導入により、物質の特定が迅速にできるようになりました。この方法は、「赤身魚」について測定の方法(文献※2)を、加工食品(食中毒事例)に適用できるよう神奈川県衛生研究所で検討※3し、アレルギー様食中毒の検査法として確立したものです。
  その後、地域調査部(地域の検査を担当)では、この方法に基づき、平成18年度より、地域調査部で検査に対応しております。
 
(理化学部 甲斐茂美)
   
※1
土井佳代ほか、「不揮発性アミン類のN-hydroxysuccinimidyl-6-aminoquinoly carbamateによる迅速分析」,日本薬学会第122年会(2002)
※2
山中英明ほか、「高速液体クロマトグラフィーによる赤身魚中のポリアミン類の同時定量及び鮮度の判定」,食品衛生学雑誌 30p396-405 (1989)
※3
渡邊裕子ほか、「魚介類加工品によるアレルギー様食中毒および苦情事例についてPDFが別ウインドウで開きます」,衛生研究所報告 34 P52-55(2004)

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