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海外で注目すべき感染症

マラリア

(厚生労働省検疫所FORTH ホームページより)

マラリアは、マラリア原虫を媒介する蚊(ハマダラカ)に刺されることによって感染する寄生虫感染症であり、HIV/エイズ、結核とともに世界の三大感染症とされています。アフリカ、中東、アジア、オセアニア、中南米で広く流行しており、毎年2億人以上がマラリアに感染し、約66万人がマラリアで亡くなっていると報告されています。マラリア原虫の種類により、主に熱帯熱マラリア、三日熱マラリア、四日熱マラリア、卵形マラリアの4種類に分類され、分布地域が異なります。重症化しやすい熱帯熱マラリアでは、早期の治療が行われない場合死に至る場合があります。現在、日本国内における感染の報告はありませんが、海外渡航帰国者の感染報告がみられ、年間およそ50~70例で推移しています。

マラリア原虫を媒介する蚊に刺されてから潜伏期間(熱帯熱マラリアで12日前後、四日熱マラリアで30日前後、三日熱・卵形マラリアで14日前後)を経て、悪寒、発熱、頭痛、筋肉痛、関節痛などの症状が現れます。発熱は、いったん下がっては上昇することを繰り返す周期的な発熱を呈します。血中に侵入したマラリア原虫は、肝臓の細胞で増殖して再び血中の赤血球に侵入し赤血球を破壊します。その後、新たな赤血球に侵入しては破壊することを繰り返します。熱帯熱マラリアでは、マラリア原虫が感染した赤血球の表面に原虫由来物質が発現し、赤血球が血管の壁に固着する原因となります。その結果、脳症、腎症、肺水腫などの多臓器不全を起こすことがあります。

マラリアの流行地へ渡航する際には、蚊に刺されることを防ぐため長袖・長ズボンの着用、虫よけスプレーやローションなどの使用が勧められます。ハマダラカは夕方から夜間に出没する傾向があるため、特に夜間の屋外での飲食や外出時には注意しましょう。あらかじめマラリアの予防薬を服用する方法もありますが、医師の処方が必要です。現在日本において承認されている予防薬にメフロキンがあります。

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黄熱

(厚生労働省検疫所FORTH ホームページより)

日本脳炎と同じフラビウイルス属の黄熱ウイルスによる感染症で、黄熱ウイルスを媒介する蚊(ネッタイシマカ、ヒトスジシマカ等)に刺されることで感染します。主にサハラ砂漠以南のアフリカ、南米でみられ、世界では年間およそ20万人の患者が発生し、およそ3万人が亡くなっています。

黄熱ウイルスを媒介する蚊に刺されてから3~6日後、発熱、寒気、頭痛、筋肉痛、吐き気などの症状が現れます。重症の場合は黄疸、出血(鼻・歯肉出血、下血など)を伴います。治療は対症療法のみで、発病すれば致死率は20%と高くなります。

黄熱ウイルスに対するワクチンがあり、黄熱に感染する危険がある地域に入国する前にはワクチン接種が勧められます(渡航の10日前までに接種を済ませておく必要があります)。また蚊に刺されないように長袖・長ズボンの着用、虫よけスプレーやローションなどの使用が勧められます。

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デング熱

(国立感染症研究所ホームページより)

日本脳炎ウイルスと同じフラビウイルス属のデングウイルスによる感染症で、デングウイルスを媒介する蚊(ネッタイシマカ、ヒトスジシマカ)に刺されることによって感染します。比較的軽症型のデング熱と、重症型のデング出血熱があります。年間1億人がデング熱を、25万人がデング出血熱を発症すると推定されています。流行は、東南アジア、南アジア、中南米、カリブ海諸国を中心にみられています。海外渡航で感染し国内で発症する例(輸入症例)が増加しつつあり、2014年の夏季には輸入症例により持ち込まれたと考えられるウイルスにより150例以上の国内流行が発生しました。

デングウイルスを媒介する蚊に刺されてから3~14日後、突然の発熱、頭痛、筋肉痛、関節痛を生じます。発症後3~4日後に体幹から顔面、手足に広がる発疹が現れます。これらの症状は通常1週間程度で回復します(デング熱)。一方、デング熱の経過において下熱し始めた時期に、鼻出血や下血などの出血症状、血液が血管外の組織に漏れることによる胸水・腹水の出現、低血圧などの重篤な症状が現れることがあります(デング出血熱)。デング出血熱では、適切な治療が行われない場合死に至ることがあります。治療は、輸液や解熱鎮痛剤などの対症療法が中心です。

デング熱が流行している国へ渡航する場合は、蚊に刺されないために長袖・長ズボンの着用、虫よけスプレーやローションなどの使用が勧められます。

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ウエストナイル熱


ウエストナイルウイルスと日本脳炎ウイルスの分布地

(国立感染症研究所ホームページより)

日本脳炎ウイルスと同じフラビウイルス属のウエストナイルウイルスを原因とする感染症で、ウエストナイルウイルスを媒介する蚊(主にイエカ類)に刺されることによって感染します。アフリカ、ヨーロッパ、中東、中央アジア、西アジアなど広い地域で流行がみられています。近年、米国においても例年数千人の感染者が報告されています。現在、日本国内における感染はみられません。

ウエストナイルウイルスを媒介する蚊に刺されてから3~15日後に、発熱、頭痛、筋肉痛、関節痛などの症状が現れます。また、発病した人のおよそ半数に皮膚の発疹を伴います。意識障害、けいれん、麻痺などの重篤な症状が感染例の1%程度にみられます。感染例の約80%は症状が現れない不顕性感染と推定されます。治療は、輸液や解熱鎮痛剤などの対症療法が中心です。

ウエストナイル熱の流行国へ渡航する場合は、蚊に刺されないために長袖・長ズボンの着用、虫よけスプレーやローションなどの使用が勧められます。

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チクングニア熱

チクングニアウイルスの分布地
チクングニアウイルスの分布地(緑色の部分)

(米国CDCのホームページより)

チクングニアウイルスによる感染症で、蚊(ネッタイシマカ、ヒトスジシマカなど)に刺されることによって感染し、主にアフリカ、南アジア、東南アジアで流行がみられます。2006年にはインドでおよそ140万人の感染者が報告されています。現在日本国内での感染報告はありませんが、海外渡航で感染したのち、日本国内で発病した報告が年間10例前後みられています。デング熱と流行地域や症状が類似していることから、デング熱と誤って診断されることもしばしばあります。

チクングニアウイルスを媒介する蚊に刺されてから3~7日後に、発熱、関節痛、発疹、頭痛などがみられます。関節痛は、急性症状の消失後も数週間から数ヵ月続くことが特徴です。重症な例では、神経症状や劇症肝炎を伴うことが報告されています。治療は、輸液や解熱鎮痛剤などの対症療法が中心です。

予防に関しては、チクングニア熱の流行地で蚊に刺されない工夫が大切です。具体的には、長袖・長ズボンの着用、虫よけスプレーやローションなどの使用が勧められます。

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中東呼吸器症候群(MERS)

2012年3月末以降、重症の呼吸器症状を呈した患者から同定されたMERSコロナウイルスの感染例が、サウジアラビアを中心に報告されています。
2015年6月11日現在、韓国において多数の患者が報告されておりますが、国内感染例は報告されていません。神奈川県では今後も中東呼吸器症候群(MERS)の発生動向について情報収集・提供を行っていきます。

症状としては発熱、咳などの呼吸器症状(重症の肺炎を伴うことが多い)、下痢などの消化器症状のほか、腎不全や急性呼吸窮迫症候群(ARDS)等の合併症が報告されています。

MERSコロナウイルスの患者が発生している国へ渡航した際には、手洗いの励行や動物との接触を避けるなど、一般的な衛生対策を心がけることが大切です。また、MERSコロナウイルスの患者が発生している国に滞在した後に、発熱や咳などの呼吸器症状が現れた場合には、速やかに医療機関を受診し、渡航国や症状の経過などについてお伝えください。

参考リンク

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