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犬のエキノコックス症

≪定義≫
 多包条虫(Echinococcus multilocularis)及び単包条虫(Echinococcus granulosus)の感染による寄生虫症。

≪臨床的特徴≫
 感染は、中間宿主(多包条虫の場合は野ネズミ、単包条虫の場合は有蹄類)の内臓に寄生した幼虫を摂食することによる。摂食によりイヌに取り込まれた幼虫が小腸内で発育し、成虫となる。感染後、多包条虫の場合は約1ヶ月、単包条虫の場合は2ヶ月ほどで糞便とともに虫卵が排泄される。感染したイヌは、通常症状を示さないが、まれに下痢を呈することがある。

≪届出基準≫

 

 獣医師が疫学的な情報(備考欄参照)などに基づきエキノコックスの感染を疑い、かつ以下のいずれかの検査方法によって病原体診断がなされたもの。

 (材料)糞便

  1.

病原体の検出
 虫体またはその一部(片節)の確認

  2.

病原体の遺伝子の検出
 PCR法による遺伝子の検出

  3.

病原体の抗原の検出
 ELISA法による成虫由来抗原の検出(駆虫治療の結果、成虫由来抗原が不検出になったものに限る) 

※虫卵はテニア科条虫では形態上区別できないので遺伝子の検出を試みる。

 

≪備考≫
 現在のところ、国内におけるイヌの感染例は、多包条虫のみである。また、通常、感染したイヌは症状を示すことはない。したがって、キツネのエキノコックス症が確認されている地域※における放し飼いなど、中間宿主である野ネズミの捕食の可能性を示す疫学的な情報をもとに病原体診断を実施する必要がある。さらに、糞便中の虫卵は、ヒトのエキノコックス症の感染原因となるので、糞便の取り扱いに注意を払う必要がある。

※:現在のところ、確認地域は、北海道。


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