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鳥類のウエストナイル熱

≪定義≫
 フラビウイルス科フラビウイルス属ウエストナイルウイルスの感染に起因する疾患。

≪臨床症状≫
 鳥類では、一般的には無症状の場合が多いが、沈鬱、食欲不振、衰弱、体重減少などの特異的でない症状が見られる場合もある。なかには運動失調、振戦、転回、不全麻痺などの神経症状を呈するものもあり、カラス等のように感受性が高く死亡する種類もある。臨床症状は1-24日の幅があるが通常は1週間以内である。血液学的所見及び生化学的所見に特異的なものは認められていない。

≪届出基準≫
 診断した獣医師の判断により、疫学的情報、症状・所見等から当該疾病が疑われ、かつ、以下のいずれかの方法によって病原体診断又は血清学的診断がなされたもの

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病原体の検出
 総排泄腔、口腔拭い液、脳、腎臓、心臓、血液等からのウイルスの分離

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病原体の遺伝子の検出
 総排泄腔、口腔拭い液、脳、腎臓、心臓、血液等からのRT-PCR法による遺伝子の検出

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病原体に対する抗体の検出
 中和試験等による血清抗体の検出

≪備考≫
 ウエストナイルウイルスには多くの哺乳動物並びに鳥類が感受性であるが、米国での発生ではカラスが最も高い感受性を示し、ウエストナイルウイルスにより死亡した可能性のある鳥の1/3から1/4を占める。カラスにおけるウエストナイルウイルス感染も疫学的には他の感染症と同様、流行は時間の経過にともなって、病気あるいは死亡数が徐々に増加し少なくとも数週間に亘って継続すると考えられる。米国におけるウエストナイル熱に係るカラスの死亡調査では、殆ど(約9割)は単独で発見されており、複数(2から100羽)で発見される場合でも平均は2.8羽である。一方、中毒等の場合は発生数が時間軸に対しにシャープなピークを示し、自然発生の感染症とは異なるパターンを示す。
 もし他の死亡原因が考えられず、疫学的見地から何らかの感染症の自然発生が疑われるカラス等野鳥の死体発見が継続する傾向がある場合は検査することが望ましい。


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