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サル類のマールブルグ病

《定義》
 フィロウイルス科のマールブルグウイルスの感染により起こる急性致死性疾患。
 サル類は自然宿主ではなく、ウイルスを保有する未知の動物から感染する。
 現在まで、ヒトを含め感染の由来はアフリカである。

《臨床的特徴》
 アフリカミドリザルは、本ウイルスに対して高い感受性を示す。
 皮下接種では7〜9日、接触感染では15〜36(平均20)日の潜伏期で100%死亡。 自然感染時の潜伏期は1〜2週間と考えられる。
 アカゲザルは、皮下接種で7〜9日、接触感染で16〜18日の潜伏期で100%死亡。 直接接触では感染するが、空気感染は起こらない。
 特徴的な臨床症状は出現しない。死亡の1〜2日前に元気消失、沈鬱になる。
 通常、ケージの隅に縮こまって座り、食欲は廃絶、周りにわずかに反応する程度である。
 皮膚の発しんは見られない。

《届出基準》

 1)

 アフリカミドリサルでは、ウイルスは唾液、血液、尿中に多量に存在しており、尿では108もの感染粒子が排出されるので、容易にサルからサルに伝播する。感染したサルは短期間で発症するので、検疫期間中に流行が起これば、極めて高い致死率になる。

 2)

 蛍光抗体法による抗原検出(末消白血球、肝臓塗沫)

 3)

 電子顕微鏡によるウイルス検出(末消白血球、肝臓)

 4)

 PCRによるウイルスゲノムの検出

 5)

 不顕性感染例はほとんどないので抗体の検査は効果的でない。

 6)

 解剖時に見られる筋、胸膜下、心筋などの広範な出血病変
 病理組織学的な肝の巣状壊死、好酸性細胞質内封入体、網内系の壊死は診断の助けになる

《備考》
 1967年、当時の西独マールブルグ、フランクフルト及びユーゴスラビアのベオグラードでワクチン製造のためにウガンダから輸入したアフリカミドリザルが感染源となり突然発生。この時の感染者は31名で7名(23%)が死亡。その後1975年に南ア連邦で3名が発病し1名死亡。1980年にはケニアで2名の患者が出ており、また1982年南アで、1987年ケニアで散発的に感染が起こっている。
 日本には常在しない感染症であること、感染後3週間程度で発症することから、輸入時期、又は輸入されたものとの接触の有無等について十分に聴取することが重要

 

 




国立感染症研究所獣医科学部長

 山田章雄

国立感染症研究所細菌第一部長

 渡邊冶雄




 



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