平成26年度 神奈川県感染症発生動向調査解析委員会報告
平成27年2月6日(金)開催
[出席委員] | |
委員長 | 森 雅亮(横浜市立大学附属市民総合医療センター 小児総合医療センター部長) |
副委員長 | 勝田 友博(聖マリアンナ医科大学病院小児科 講師) |
委員 | 岡部 信彦(川崎市健康安全研究所長) |
委員 | 片山 文彦(小児科内科落合医院長) |
委員 | 亀谷 雄一郎(野川クリニック院長 神奈川県医師会理事) |
委員 | 木村 博和(横浜市健康福祉局担当部長) |
委員 | 栗原 和幸(神奈川県立病院機構県立こども医療センター母子保健局長) |
委員 | 近藤 真規子(神奈川県衛生研究所微生物部専門研究員) |
委員 | 横田 俊一郎(横田小児科医院長 神奈川県小児科医会長) |
[オブザーバー] | |
岡部 英男(神奈川県衛生研究所長) | |
深澤 博史(神奈川県厚木保健福祉事務所長) |
議題: | (1)平成26年の感染症発生動向調査(全数疾患、定点疾患)について |
(2)平成26年に話題となった感染症について
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(1)平成26年の感染症発生動向調査(全数疾患、定点疾患)について
(全数疾患)
- 腸管出血性大腸菌感染症は昨年より増加し、特に横浜市と県域で多数発生した。血清型はO157が3/4を占めた。
- A型肝炎の報告数は23件で、昨年の2倍を示し、全国的にも増加した。ほとんどは国内感染で、その半数の原因は不明であり、集団発生はなかった。
- デング熱の報告数は31件で、昨年より2倍近く増加した。そのうち14件が代々木公園近郊の流行による国内感染であった。
- レジオネラ症は昨年より2倍以上増加し、全国で第1位であった。検査法では尿中の病原体抗原検出によるものが多く、検査法が普及してきたことが背景にあると考えられる。
- 8年ぶりに日本紅斑熱の報告が1件あり、引き続き動向に注意する必要がある。
- 劇症型溶血性レンサ球菌感染症は昨年より増加し、A群溶血性レンサ球菌の検出も増加しているため疫学的に注視する必要がある。
- 侵襲性肺炎球菌感染症が昨年より増加し、特に高齢者に多かった。今後、昨年定期接種化された成人用ワクチンによる効果にも注目していく。
- 麻しんは全国的に流行し、神奈川県では49件の報告があった。そのうち46件(94%)は検査診断で確定され、昨年の71%に比べ検査診断率は向上した。しかし、症状が不明な場合、適切な時期に検体を採取できず診断が難しくなることが課題の一つである。
(定点疾患)
- RSウイルス感染症が増加している。重症の入院例については、シナジスを接種していない小児に多かった印象がある。今後もワクチン接種対象者は接種漏れがないよう伝えていく必要がある。
- 伝染性紅斑は、全国の2倍から3倍の報告があり、今までにない流行がみられている。現在も報告数が多い状況が継続しており、今後、特に妊婦への影響や脳炎等の重症例に注意する必要がある。
- ヘルパンギーナの流行はほぼ例年と同様であったが、全国に比べ流行規模がやや大きく、原因ウイルスとしてコクサッキーA4ウイルスが多く確認された。
- 無菌性髄膜炎は、全国的にもパレコウイルスが多く検出されており、引き続き動向を見ていく必要がある。
(2)平成26年に話題となった感染症について
○インフルエンザ様疾患からのウイルス検出状況
- 2014年/2015年シーズンは、例年に比べ約1か月早い11月下旬頃から始まり、流行ウイルスの95%がAH3型(香港型)であった。
- 2013年/2014年シーズン、オセルタミビル耐性株が全国で105株、当所では3株検出された。そのうち2株は、札幌市を中心に流行した中国由来の耐性株と近縁であった。2014年/2015年シーズンは、全国的にも耐性株は検出されていない。
- インフルエンザワクチンの有効性については、意見が分かれるが、罹患した場合の重症化を防ぐ効果が期待できる。しかし、その評価はほとんど検証されていないことが課題である。
○麻疹ウイルスの検出状況
- 過去3年間(2012年から2014年)の麻しん疑い例からウイルス分離状況を見てみると、風しんが流行した2013年7月頃から風しんウイルスが多数検出された。2013年以降、麻しんが流行し、2014年は58件中20件から麻疹ウイルス(D8型15件、B3型5件)を検出した。
- 麻疹ウイルスの系統樹解析の結果、2つの遺伝子型とともに海外渡航により国内に持ち込まれた株が、国内で二次感染を起こしたと推定された。D8型の12例は、東京都にある専門学校で流行し、神奈川県内に広がった事例であった。また、後に、この事例については限定的な地域での疫学調査では感染拡大を防ぐことは難しく、広域での疫学調査を行う必要があると思われた。
○デング熱疑い症例におけるウイルス検出状況
- 2014年8月から10月までに代々木公園を中心とした国内感染例は156件報告された。当所では国内感染疑い例37件について検査を行い、3例からデングウイルスD1型を検出した。この他に7月と12月に海外での感染が疑われた2件のうち1件からD1型を検出した。