百日咳

百日咳菌(Bordetella pertussis )という細菌が原因の感染症です。名前の通り、長い間激しい咳が続くのが主な症状です。学校での集団感染や、地域において流行が発生することがあります。感染症法では2017年までは定点把握対象疾患5類感染症でしたが、2018年から全数把握対象疾患5類感染症となりました。また、学校保健安全法では第2種感染症に指定されていて、百日咳と診断された場合は「特有の咳が消失するまで、または5日間の適正な抗菌薬療法が終了するまで」は出席停止の扱いになります。

感染経路

百日咳菌に感染した人の咳やくしゃみを吸い込むことによって、人から人へ感染します(飛まつ感染)。ワクチンを接種していない新生児(生後1カ月未満)や乳児(生後1歳未満)へ感染すると、重症化することが多くなります。

症状

百日咳菌に感染してから5日~10日後に、症状が現れます。初期はかぜ症状に似た鼻水、咳、発熱などが現れますが、1~2週間かけて次第に咳が激しくなります。顔を真っ赤にしてコンコンと激しく咳をする「スタッカート」や、咳をした後にヒューっと音を立てて大きく息を吸う「ウープ」を伴う咳が特徴的です。咳の症状は数週間かけて少しずつ改善していきますが、回復までに数か月かかることもあります。乳児では咳の症状が目立たず、嘔吐や無呼吸によって生命が脅かされることもあります。また、合併症として、肺炎や稀に脳症を伴うことがあります。

診断について

2週間以上の長引く咳や、特徴的な咳(スタッカート、ウープ)の症状などから診断されます。検査としては菌の培養や遺伝子検査がありますが、鼻や咽頭のぬぐい液から百日咳菌を分離・培養するのは難しく、PCR法やLAMP法といった遺伝子検査が有力な検査法として期待されています。

治療について

百日咳菌に有効な抗菌薬の投与や、それぞれの症状に対する対症療法が行われます。抗菌薬は主に、エリスロマイシン、クラリスロマイシンといったマクロライド系といわれる抗菌薬が用いられ、2週間程度投与されます。通常、菌の排出は咳の症状が現れた時期から約3週間持続しますが、適切な治療が行われた場合は治療開始から5日後には菌の排出が抑えられます。

予防のために

新生児・乳幼児は百日咳に感染すると重症化しやすいため、百日咳菌に感染している可能性のある大人(風邪症状、特に長引く咳のある人)との接触から遠ざけることが大切です。予防には、百日咳ワクチンが有効です。百日咳ワクチンは、現在、定期接種されている4種混合ワクチン(初回3回、追加1回の計4回接種)によって、ジフテリア・破傷風・ポリオのワクチンと同時に接種されます。

参考リンク

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