第2号(平成26年7月10日発行)

神奈川県衛生研究所

神奈川県 腸管出血性大腸菌感染症情報(2)

腸管出血性大腸菌感染症は、ベロ毒素を産生する腸管出血性大腸菌に感染することで発症します。汚染された食品からの経口感染が多いですが、感染者の便を介しても感染します。予防のために、汚染される可能性のある食品は十分に加熱、調理器具の消毒・殺菌などを十分に行いましょう。トイレの後、食事の前などは、石けんと流水で十分な手洗いを心がけましょう。

  1. 神奈川県の週別発生状況 
    第27週(6/30~7/6)に15例の報告があり、第1週から第27週までの累積報告数は82例となっています。82例のうち無症状病原体保有者は16例、溶血性尿毒素症候群(HUS)の報告は2例です。
  2. 神奈川県の月別発生状況
    例年、報告数は5月頃から増加し、6月から9月にかけてピークになります。今年は、6月からの発生が多いことから今後の発生動向に注意が必要です。

  3. 神奈川県の年齢・性別累積報告数
    各年代より報告があり、特に10歳代の報告数が多くなっています。男女別では、男性が38名、女性が44名となっています。
  4. 神奈川県の血清型・毒素型の累積検出状況(2014年第1週~第27週)
    血清型はO157が多く、うち毒素型はVT1・VT2 (VT1とVT2を両方産生するもの)が57例、VT1 1例、VT2が5例、毒素型不明2例が検出されています。
  5. 腸管出血性大腸菌感染症の分子疫学調査
    感染症の発生時においては、感染源や感染経路の推定による感染拡大の防止が重要です。感染源を推定する方法のひとつに分子疫学調査があります。地方衛生研究所は保健所を介して集められた菌株について生化学的形状、血清型、毒素型などを確認した後、分子疫学調査の一環であるPFGE解析(図1)を実施し、感染症の拡大防止および散発発生の迅速な検出と抑止に役立てています。
    今年の6月頃から神奈川県を含めた関東地方で腸管出血性大腸菌O157 VT1VT2の報告が増加しており、当所微生物部が実施したPFGE解析の結果と一致した菌株もありました。PFGE解析が一致した菌株は、感染源が同一である可能性が高いと考えられます。この結果は、感染の原因究明のための疫学調査に役立てています。

    PFGE(パルスフィールド・ゲル電気泳動)解析:
    細菌の染色体DNAの塩基配列が菌株により異なることを利用して、特殊な酵素(制限酵素)で特定の塩基配列を示す部位を切断して断片を比較することにより、起源が同じ菌かどうかを推定する方法です。

腸管出血性大腸菌感染症の報告数は、当該週の国からの還元データおよび各保健所からの報告をもとに集計しています。報告遅れ、修正等のため、報告数が前後することがあります。

<参考リンク>