第40号(平成24年度/2012)

掲載日:2018年3月28日

発刊のことば

神奈川県立体育センター所長 中村 ふじ

 

昨夏に開催されましたロンドンオリンピック・パラリンピックでは、日本選手の活躍に感動と勇気をいただきました。

神奈川県ゆかりの選手では、体操の内村航平選手や競泳・平泳ぎの立石諒選手、川澄奈穂美選手をはじめとするサッカー女子「なでしこジャパン」の活躍が記憶に新しいところです。また、パラリンピックでは競泳の秋山里奈選手や自転車の石井雅史選手らがメダルを獲得されました。皆さんおめでとうございます。また、ありがとうございました。

一方、無念にも目標を達成できなかった選手も、誇りを持って真剣に競技してくださいました。悔し涙や無念の表情に私たちも共感を覚え、エールを贈りたくなりました。

結果に関わらず、見る者に力を与えることのできるスポーツの力や魅力を改めて実感したロンドン大会でした。

さて、このたび「体育センターレポート第40号」を発刊する運びとなりました。40号という節目を迎えられましたのは、県内体育・スポーツ関係の皆様の御支援、御協力の賜物と心より感謝申し上げます。

本号は、平成24年度に当センター事業部の研修指導班、調査研究班、スポーツ推進班、スポーツ情報班が行った体育・スポーツ等の調査・研究、及び長期研究員の保健体育科教育研究の報告により構成されています。これらの研究報告は、研究抄録のみの掲載となっておりますが、研究報告書の全文につきましては、当センターのホームページに掲載いたしますので、併せて御活用いただければ幸いに存じます。

当センターは、子どもから高齢者まであらゆる年齢層の方たちが、各自のライフステージにおいて、心身共に明るく豊かで活力ある生活を営むことができるよう、県の体育・スポーツ振興の中核機関として県民のスポーツライフを総合的にサポートしています。今後も、心と体の健康つくりをめざす体育・スポーツ活動を促進し、質の高いサービスを提供していくとともに、指導者及び実践者への支援、スポーツ情報の提供、調査研究に取り組んでまいりますので、益々の御指導、御鞭撻を賜りますよう、お願い申し上げます。

最後に、本号掲載の研究を進めるにあたり、御協力を賜りました皆様に厚くお礼申し上げ、発刊のことばといたします。

 


 

目次

所員による研究

《研修指導班》

《調査研究班》

《スポーツ推進班》

《スポーツ情報班》

 

長期研究員による研究

《小学校》 小田原市立富士見小学校 三島真一郎

《中学校》 秦野市立西中学校 大熊 桃世

《高等学校》神奈川県立生田東高等学校 鯨吉 剛

《特別支援学校》神奈川県立藤沢養護学校 菅原 祐司

 


「単元計画の構造図作成ツール」の活用を踏まえた改善(単年度研究)

研修指導班 田所克哉 小川雅嗣 佐藤康二 幸田 隆 中村直子 富澤桂子

研究アドバイザー 鹿屋体育大学 佐藤 豊

 

はじめに

当体育センターにおいては、佐藤の考案した単元計画の構造図1)の作成(以下、単元構造図)が、学習指導要領を踏まえた単元構想に役立つと考え、平成21年度より研修で活用してきた。しかしながら、単元構造図を作成するには、多くの時間を要したり、作業が繁雑であったりといった課題があり、平成23年度には、単元構造図の作成過程を簡易化した中学校用「簡易版単元構造図作成ツール(以下「ツール」(注1)と言う)を試作した。

そこで平成24年度は、ツールを研修で活用し、受講者の生の声を参考にしながら、ツール活用によって期待できる効果を、より明確にするとともに、ツールを改善することとした。


図1 ツール(フォーマット)の4つのゾーン

(注1)ツール(フォーマット)(図1)は、次の4つのゾーンで構成されている。Aゾーン:学習指導要領及び解説に記載されている内容を把握し、教えるべき内容を整理するゾーン。B1ゾーン:指導内容をキーワードでとらえ、授業時間に配置したり関係付けを行うとともに、その指導内容が身に付いたかどうかを評価する授業時間の構想も行うゾーン。B2ゾーン:学習過程を組み立てるゾーン。Cゾーン:指導内容に応じた評価内容を確認し、評価する授業時間を確定するゾーン。

 

研究の内容及び方法

【研究期間】

平成24年4月から平成25年3月

【研究方法】

1 研修におけるツール活用で期待できる効果を予想するため、体育センター指導主事6名により検討会を実施した。(5月2日)

2 4回の研修で、ツールを活用したあとに、アンケート調査を実施し、その結果を踏まえながら、ツール活用の効果を特定しつつ、ツールの改善を図った。

3 研修におけるツール活用を総括するため、体育センター指導主事6名を中心に検討会を実施した。

 

研究成果と考察

1 高等学校初任者研修1日目(5月10日)受講者39名

受講者は、A3版に印刷した中学3年生用ツール(フォーマット)のB1ゾーンに、学習内容のキーワードの書かれたカードを配置するとともに、評価する時間についても記入し、B2ゾーンには学習過程のサンプルを参考に、学習過程を記入し、簡易版単元構造図を作成した。

ツールの長所について、アンケート調査を行った結果、受講者39名中22名の受講者が、「指導内容等が構造化され、一覧性があり、見えやすくなっている(可視化)」といった内容を記載しており、ツールの活用は、学習指導要領及び解説に記載されている内容が見えやすくなり、その理解を促進する効果があると考えられた。

2 中学校10年経験者研修(8月2日)受講者5名

高等学校初任者研修1日目のアンケート結果を踏まえ、サンプルの作成や作成手順書を作成した上で、中学1・2年生用ツールを活用した。

受講者は、1人が1台のパソコンを使い、サンプルを参考に、画面上のフォーマットのB1ゾーンに指導内容のキーワードの書かれたカードを配置しながら、それを評価する時間をセルに色を付け特定した。そして、B2ゾーンに学習過程を記入し、簡易版単元構造図を作成した。

また、5月2日の検討会及び高等学校初任者研修1日目のアンケート結果より、ツール活用による効果を、仮に次の5つと考え、アンケートを作成した。

(1) 学習指導要領及び解説の内容を踏まえた授業づくりの考え方を理解できる。
(2) 指導内容を精選し、明確にする必要性を理解できる。
(3) 指導と評価の時期を考える方法を理解できる。
(4) 指導内容の面から単元全体をイメージする方法を理解できる。
(5) 作成をとおして、学習指導要領及び解説の内容の構造や読み方がわかり、指導内容について理解できる。
アンケート結果では、受講者5名全員が、5つの効果(仮)について、「思う」または「どちらかというと思う」「どちらかというと思う」と回答しており、研修講師側と受講者側でツール活用による効果を共有できていることが確認できた。


3 県中学校体育連盟研究部学習会(10月2日)受講者33名

受講者は、県中学校体育連盟の研究部員であり、教職経験年数は、数年から20年以上までと幅が広かった。

ツール活用にあたっては、中学10年経験者研修で活用したツールを、手書き用に少し修正した。受講者は、フォーマットを印刷したA3版の用紙に、手書きで記入し、簡易版単元構造図を作成した。

中学校10年経験者研修とほぼ同様なアンケート調査を行った結果、33名の受講者全員が、5つの効果(仮)について、「思う」または「どちらかというと思う」と回答しており、研修講師側と受講者側でツール活用の効果を共有できていることが再度確認できた。

4 高等学校初任者研修4日目(10月18日)受講者39名

中学10年経験者研修で活用したツールを元に、高等学校初任者研修最終日に行う模擬授業の実施種目に合わせた高等学校入学年次用のツール(「体つくり運動」 球技 ゴール型「バスケットボール」、「サッカー」、ネット型「バレーボール」「バドミントン」)を作成し、活用した。受講者は、1人が1台のパソコンを使い、画面上で指導内容の書かれたカードを授業時間ごとにB1ゾーンに配置するとともにそれを評価する時間をセルに色を付け特定した。また、B2ゾーンにサンプルを参考に学習過程を記入し、簡易版単元構造図を作成した。

中学校10年経験者研修とほぼ同様なアンケート調査を行った結果、ほとんどの受講者が、5つの効果(仮)について、「思う」または「どちらかというと思う」と回答しており、研修講師側と受講者側でツール活用の効果を共有できていることが再度確認できた。しかしながら、「どちらかというと思わない」、「思わない」と回答した受講者が若干名おり、初任研におけるツール活用については、よりきめ細かな説明を加えるなどの工夫が必要であると考えられた。

5 検討会(12月4日、1月24日)

4回の研座が終了した12月には、体育センター指導主事6名を中心に、これまでの研修でのツール活用を総括するために検討会を持った。まずは、単元構造図と一般的な「単元計画」とを比較検討するため、一般的な「単元計画を作る上で必要なこと」についてブレインストーミングを行い、知識を共有することとした。そしてその結果を、予め定義した単元デザイン力(注2)の構成要素に合わせて分類したところほとんど全てのアイデアが、概ね5つの構成要素にあてはまった。

また1月には、「ツール活用により、単元デザイン力のどの構成要素を保証できるのか」について、同メンバーにより検討を行い、「学習指導要領を踏まえざるを得ないことから、指導内容の設定の仕方を学ぶことができる」、「指導方法や評価方法を適用するのは、経験がないと難しい」といった意見が出された。(表1右)

また、指導方法(学習形態、学習過程等)の適用については、「初任の教員には、指導の『引き出し』が少なく難しい」といった意見が出るなど、最終的には、対象によってツール活用の仕方を明確に分けるべきであるといった結論が導かれた。

(注2)本研究では、単元計画の作成に必要な力を、5つの構成要素による単元デザイン力と定義した。(表1左)

表1 単元デザイン力の構成要素及びツール活用での保証

 

【考察】

吉崎は授業についての教師の知識領域を、教材(注3)内容、教授方法、子どもの3つの領域で提案しており、領域の交わった部分(複合的知識)の重要性について言及している。2)つまり、単元デザイン力についても、構成要素と構成要素を効果的にリンクさせる複合的知識があってはじめて、ツール活用時に、指導内容と指導方法などをリンクさせて考えることが、可能になるとも考えられる。

また吉崎は、「複合的知識は、授業実践の経験を通して獲得される『実践的知識』にほかならない。」2)と述べており、この実践的知識のないことが、経験の浅い教員にとって、実践的な単元計画の作成が難しい理由と考えることができる。

(注3)本研究では教材を学習の内容(指導内容)と捉えた。

 

【まとめ】

ツールには、学習指導要領等の内容が、表や箇条書きで示され、理解しやすく整理されているといった長所や、指導内容を、評価と絡めて時系列で考えながら、設定ができるといった長所があることから、ツール活用による一番の効果は、指導内容の設定方法の理解であると考えられる。

またツールの主な改善としては、活用の目安ができたことがあげられる。例えば、実践的知識の少ない初任者には、学習指導要領を踏まえた単元づくりの枠組みを理解することを、10年経験者には、指導内容と指導方法をリンクさせた実践的な単元計画をつくることをそれぞれのねらいとするなど、より対象に応じた活用を考えることが可能となった。

 

【引用・参考】

1)佐藤豊「体育理論の授業をつくろう」、佐藤豊他『楽しい体育理論の授業をつくろう』大修館書店,2011年,124頁
2)吉崎静夫『デザイナーとしての教師アクターとしての教師』金子書房,1999年,42-47頁

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高校生競技者の体格及び基礎体力に関する研究
ー競技力向上コース5年間のまとめー(単年度研究)

調査研究班 天野裕介 江守哲也 佐竹美奈 三浦陽輔
研究アドバイザー 慶應義塾大学 大谷俊郎

 

はじめに

神奈川県立体育センターでは、昭和62年度から「競技力向上コース」を設け、県内の各競技チームを対象に形態及び体力測定を実施してきた。測定したデータは各選手にフィードバックする他、指導者にデータ一覧、結果の考察等を送付し、以後のトレーニング等に御活用いただいている。

また、これまで蓄積されたデータは、様々な研究で活用され、多くの研究成果につながった。

そこで、過去5年間に実施した同コースにおける測定結果をとおして、体格や基礎体力が競技成績とどのような関わりがあるのかを分析し、基礎体力向上と競技力向上支援のための基礎資料を得ることで、今後の本県における競技力向上に寄与することを目的として本テーマを設定した。

 

内容及び方法

1 研究の期間

平成24年4月1日から平成25年3月31日

2 研究の内容

(1)平成19から23年度に県内高校生チームを対象に実施した形態及び体力測定結果の集計及び分析。

なお、この研究は次の限定的な条件の下で行った。

ア 参加者は、無作為に抽出したチームだけではない。
イ 複数年度にわたって参加した選手も、別のケースとして扱った。

(2)測定項目は次のとおりである。なお、腕は利き手、脚はキック足の値を使用した。

ア 形態(9項目)

身長、体重、胸囲、上腕伸展囲、上腕屈曲囲、前腕囲、大腿囲、下腿囲、体脂肪率(キャリパー法)

イ 体力

(ア)共通(11項目)

背筋力、脚伸展筋力、脚屈曲筋力、握力、立ち幅とび、上体起こし(30秒)、シャトルラン(20m)、反復横とび(20秒)、座位ステップ(10秒)、全身反応時間、長座体前屈。なお、背筋力、脚伸展筋力、脚屈曲筋力は、体重1kg当たりの数値を使用した。

(イ)オプション

a ソフトテニス競技:Tテスト
b バレーボール競技:ブロックジャンプ、9m3往復走、3回連続立ち幅とび
c ハンドボール競技:垂直とび
d 陸上競技:最大無酸素パワー、最大無酸素パワーピーク時間及びピーク回転数、立ち5段とび

3 研究の方法

(1)データの抽出

期間中の「競技力向上コース」参加者、延べ181チーム、2,784人(男子1,630人、女子1,154人)から研究対象者のデータを次のとおり整理、抽出した。

ア 高校生(15から17才)のデータ。
イ 年度内に複数回測定した場合は、最後のデータ。
ウ 男女別に100人程度以上のケースがある競技。

(2)競技成績による群分け

抽出したチーム(選手)の当該年度及び次年度の競技成績を調査し、ソフトテニス、バレーボール、バスケットボール、ハンドボールの各競技については、各大会での順位の平均値が16位以上のチーム(選手)をA群、それ以外をB群とした。競技協会等の選抜チームの選手はA群とした。

硬式野球競技は同一校のデータのみなので、ベンチ入り選手をA群、それ以外の選手をB群とした。

また、陸上競技については群分けをせず、トラック種目の記録を用いて分析をした。

(3)分析

分析は同一競技内において男女別に実施した。

ア t検定を用い、A群、B群の平均値の差を検定する。
イ 判別分析を用い、競技成績によるA群、B群の判別精度を確認するとともに、判定に貢献する項目を分析する。なお、分析は「形態データ」と「体力データ」を別々に行なう。
ウ 陸上競技は重回帰分析を用い、形態及び体力データから記録(タイム)の予測に貢献する項目を分析する。
エ t検定及び判別分析の結果を基に考察をする。

 

研究の成果と考察

競技ごとに(1)t検定で有意差の出た項目、(2)判別分析の結果、(3)考察の順で記載する。なお、判別確率が60から85%とやや低かったが、結果の範囲内で考察を行なう。陸上競技については、(1)重回帰分析の結果、(2)考察の順で記載する。

1 ソフトテニス競技

(1) 男子は体重、胸囲、上腕伸展囲、上体起こし、反復横とび、全身反応時間、Tテスト。女子は身長、前腕囲、脚伸展筋力、握力、立ち幅とび、上体起こし、反復横とび、Tテスト。
(2) 男子は上腕伸展囲や胸囲、反復横とびの値が大きいとA群に近づく。女子は前腕囲、上体起こし、脚伸展筋力、握力の値が大きいとA群に近づく。
(3) 男子は上腕伸展囲の貢献度が高い。上腕三頭筋の発達が推測され、胸囲、上体起こしと併せて考えると、スイングに関連する筋力が競技成績に強く影響していると推測できる。女子は握力や前腕囲の貢献度が高いことから、ラケットを握る力やコントロールする力が競技成績に強く影響していると推測できる。

2 バスケットボール競技

(1) 男子は体脂肪率、背筋力。女子は身長、体重、胸囲、上腕屈曲囲、前腕囲、大腿囲、下腿囲、体脂肪率、上体起こし、シャトルラン、座位ステップ。
(2) 男子は上腕屈曲囲、大腿囲、背筋力の値が大きいとA群に近づく。女子は大腿囲、上体起こし、座位ステップ、シャトルランの値が大きいとA群に近づく。また、男女ともA群の選手は体脂肪率が低い。
(3) 男子は上腕屈曲囲、大腿囲、背筋力の貢献度が高い。攻守の様々な場面における姿勢保持や中腰の姿勢(ディフェンス等)を維持する力が競技成績に強く影響すると推測できる。女子は上体起こし、座位ステップ、大腿囲が同程度の貢献度を示しており、筋力や素早い動きが競技成績に強く影響すると推測できる。また、男女とも体脂肪率の貢献度も高い。競技への取り組みや食生活の状況など、意識の向上も重要と推測する。

3 バレーボール競技

(1) 男子は身長、体重、胸囲、上腕伸展囲、上腕屈曲囲、前腕囲、大腿囲、下腿囲、体脂肪率、背筋力、握力、立ち幅とび、上体起こし、シャトルラン、長座体前屈、ブロックジャンプ、9m3往復走、3回連続立ち幅とび。
女子は身長、体重、胸囲、上腕伸展囲、上腕屈曲囲、前腕囲、大腿囲、下腿囲、握力、立ち幅とび、シャトルラン、反復横とび、ブロックジャンプ、9m3往復走、3回連続立ち幅とび。
(2) 男子は上腕伸展囲、体重、背筋力、ブロックジャンプの値が高いとA群に近づく。女子は体重、ブロックジャンプの値が高いとA群に近づく。男女ともA群の選手は体脂肪率が低かった。
(3) 男子は上腕伸展囲とブロックジャンプの貢献度が高い。上腕三頭筋の発達が推測され、強いスパイクを打つ能力と高いブロックジャンプ力が競技成績に強く影響すると推測できる。女子は体重とブロックジャンプ、9m3往復走の貢献度が高いことから、体の大きさや高いブロックジャンプ力、スピード持久力が競技成績に強く影響すると推測できる。

4 ハンドボール競技

(1) 男子は胸囲、上腕伸展囲、上腕屈曲囲、前腕囲、大腿囲、下腿囲、脚屈曲筋力。女子は体脂肪率、背筋力、脚伸展筋力、全身反応時間、垂直とび。
(2) 男子は上腕伸展囲や垂直とびの値が高いとA群に近づく。女子は上腕屈曲囲、脚伸展筋力の値が高く、全身反応時間が早いとA群に近づく。
(3) 男子は上腕伸展囲が非常に高い貢献度を示しており、次いで垂直とびの貢献度が高い。パスやシュート能力が競技成績に大きく影響すると推測できる。女子は上腕屈曲囲が非常に高い貢献度を示しており、脚伸展筋力と全身反応時間も貢献度が高い。筋力の強化と素早く反応する能力が競技成績に強く影響すると推測できる。

5 硬式野球競技

(1) 身長、体重、胸囲、上腕伸展囲、上腕屈曲囲、前腕囲、背筋力、握力、立ち幅とび、上体起こし、反復横とび、長座体前屈。
(2) 身長、胸囲、前腕囲、握力、立ち幅とびの値が高いとA群に近づく。
(3) 身長、前腕囲、立ち幅とびが高い貢献度である。体が大きいこと、投球に関する能力やバッティングに必要な瞬発力が競技成績に強く影響していると推測できる。

6 陸上競技

(1) 男女100mは、30%程度の説明率であるが重回帰式を求めることができた。男子は立ち5段とび、シャトルラン、女子は立ち5段とび、最大無酸素パワーピーク回転数、座位ステップの値からタイムを推測できる。
また、中長距離種目は50%程度の説明率で、女子1500mはシャトルランの値から、女子3000mはシャトルランと長座体前屈の値からタイムを推測できる。
(2) 100mでは、男女とも立ち5段とびが貢献している。これは下肢の筋力や筋持久力、瞬発力の指標となるので当然と思われるが、男子で全身持久力の指標となるシャトルランも貢献する項目となっており、予想外の結果であった。女子では脚を素早く動かす能力も貢献しており、ピッチが重要な要素であると推測する。中長距離種目では予想どおりシャトルランの結果が大きく貢献している。
また、長座体前屈については、疲労回復や故障予防のための入念なストレッチの結果、値が高くなったのではないかと推測する。

 

まとめ

判別分析や重回帰分析を用いることで、競技者の形態や体力のどの項目がどの程度競技レベルの違いに影響(貢献)しているかをみることができ、限定的なデータの分析ではあったが、有用な結果を得ることができた。

なお、形態や体力のみで競技力を語ることはできないが、データ分析から客観的な指標を示すことで、トレーニングのポイントが明らかになると考えられる。

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神奈川県総合型地域スポーツクラブがもたらす効果について
―会員の意識調査より―(単年度研究)

スポーツ推進班 大西理也 逸見育磨 池田 剛 千葉正範

 

はじめに

我が国における地域スポーツは、行政サービスとして地域住民に提供されるか、または、地域住民が同好の人たちと一緒に特定のスポーツを仲間内で楽しむという形が一般的であった。しかし、少子・高齢社会の進展、地域社会の機能低下などが指摘される中、地域スポーツをめぐる状況は大きく変化しており、新しい形態でのスポーツ環境の整備が求められている。

このことを受け、平成12年に告示された「スポーツ振興基本計画」(平成18年改訂)では、生涯スポーツ社会の実現のための重点施策として、全国の各市区町村において少なくとも一つは総合型地域スポーツクラブ(以下「総合型クラブ」という)を育成することを到達目標とした。1)その結果、平成24年7月1日現在、全国では1,742市区町村のうち78%にあたる1,362市区町村が育成済みとなり、クラブ数は、創設済み3,048クラブ、創設準備中クラブ348クラブで、合計3,396クラブが活動するに至った。2)神奈川県においても、平成25年2月1日現在、県内33市町村のうち、育成済み市町村は22市町村となり、活動クラブ数は、創設済み70クラブ、創設準備中12クラブ、合計82クラブとなっている。

平成23年8月に施行された「スポーツ基本法」では、『スポーツを通じて幸福で豊かな生活を営むことは全ての人々の権利であるとするとともに、スポ-ツが、青少年の健全育成や、地域社会の再生、心身の健康の保持増進、社会・経済の活力の創造、我が国の国際的地位の向上等国民生活において多面にわたる役割を担うこと』を明記している。3)

また、平成24年7月の「健康日本21(第2次)」では、「健康を支え、守るための社会環境の整備」中で『個人の健康は、家庭、学校、地域、職場等の社会環境の影響を受けることから、社会全体として、個人の健康を支え、守る環境づくりに努めていくことが重要であり、(中略)また、地域や世代間の相互扶助など、地域や社会の絆、職場の支援等が機能することにより、時間的又は精神的にゆとりのある生活の確保が困難な者や、健康づくりに関心のない者等も含めて、社会全体が相互に支え合いながら、国民の健康を守る環境を整備する。』と明示された。4)これらのことを踏まえた時、総合型クラブは、今後、様々なスポーツ活動を行う場を創出することはもとより、地域スポーツ活動を通して、地域の絆や結びつきを再発見するなど、共助の精神で活動する「新しい公共」を担うコミュニティの核としての期待がますます大きくなると考えられる。そこで、県内総合型クラブのより一層の普及・定着を図るには、総合型クラブを創設したことによる会員への効果をより明確にしていくことが重要であると考え、本テーマを設定した。

 

研究内容

県内総合型クラブの会員・参加者を対象に意識調査を行い、その結果を整理し、文部科学省で実施した「総合型地域スポーツクラブの設立効果に関する調査研究」報告書(平成22年3月)5)と比較できる項目について分析・考察を行う。さらに、「総合型クラブがもたらす効果」について分析・考察を行う。

 

研究結果と考察

1 運動やスポーツの実施状況にもたらす効果について

クラブ会員の6割以上がクラブ入会後、運動やスポーツの内容・種目が、広がったと感じており、(図1)そのきっかけとして約3割が、「以前から興味はあったが、やれなかった」と回答している。

クラブ会員の半数以上が総合型クラブ加入前にサークルやクラブ等で活動していないことから、総合型クラブが設立されたことにより、運動やスポーツに親しむ地域住民が増加し、さらに、興味があっても参加できなかった種目への広がりやクラブ内の他の種目への参加が見られるなど、地域住民の運動やスポーツの実施状況に大きく影響したといえる。様々なスポーツ活動を行う場の創出が行われたことによる、総合型クラブが運動やスポーツの実施状況にもたらした効果だと考える。


図1 行うスポーツの内容・種目の広がり

2 地域住民の交流にもたらす効果について

総合型クラブ入会後に、余暇を地域で過ごす時間が増えたと感じている会員が半数を超えている。また、地域の人々と接する機会が増えたと感じている会員が6割であった。さらに、総合型クラブへ入会したことで、地域の友人・知人の増加した会員が半数以上おり、(図2)その世代の割合は20歳以上60歳未満が高い割合となった。

余暇を住んでいる地域で過ごす時間が増えたと回答した会員のうち、地域の人々と接する機会が増えたと感じる会員は約8割となった。その会員の世代の割合は、20歳以上60歳未満が高い結果となった。

ボランティア活動への参加も、周辺住民と未設置は2割程度だったが、クラブ会員は3割を超える状況にあり、ボランティア活動に対する参加意欲が高い傾向が見られた。ボランティア活動のきっかけは、友人からの誘いが約3割で、総合型クラブからの誘いも約2割を占める割合であった。

これらのことから、地域住民の交流が活発に行われ、地域との結びつきや人間関係が構築された状況がうかがえ、地域スポーツ活動を通じて地域の結びつきや共助の精神で活動する「新しい公共」を担うコミュニティの核として、地域に変化を与える結果となった。これは、総合型クラブが地域住民の交流にもたらす効果だと考える。


図2 クラブ入会前と比べて効果があったと感じること

3 健康状態や生活にもたらす効果について

現在の健康状態が、「よい」「まあよい」と回答した割合が周辺住民や未設置が5割程度であったことに対し、クラブ会員は約8割であり、概ね良い傾向であることがわかった。精神的な落ち込みや不快感を感じない割合も、クラブ会員が高い傾向であった。

また、クラブ入会後の健康状態の変化を見ると、「よくなった」との回答が約7割であった。(図3)また、バランスの良い食事を心がけるようになった会員も約半数であった。そして、精神的に大きく落ち込んだり、強い不快感(不安、イライラなど)を感じたりすることが少なくなったと感じている会員が約4割であった。さらに、効果があったと感じることとして、「体力の向上」や「肩こりの解消(健康の維持・増進)」、「疲れにくくなった」など、さまざまな変化をもたらした。


図3 健康状態がよくなったか

このことから、総合型クラブの設立されたことにより、クラブ会員の心身の健康の保持増進に良い影響を及ぼしていることが明らかになった。これも総合型クラブが健康状態や生活にもたらす効果だと考える。

 

【まとめ】

本研究の結果・分析から、「運動やスポーツの実施状況にもたらす効果」「地域住民の交流にもたらす効果」「健康状態や生活にもたらす効果」の3つの効果が明らかとなった。

これらの効果から、総合型クラブは、スポーツ活動の場となることはもとより、地域スポーツ活動を通して地域の絆や結びつきを発見するなど、共助の精神で活動する「新しい公共」を担うコミュニティの核として地域住民の交流に変化をもたらしたことがうかがえた。また、総合型クラブでの活動が、地域の人々の心身の健康保持増進等に、大きく寄与していることもうかがえた。

総合型クラブ創設は、個人を取り巻く環境を変え、社会全体として個人の健康を支え守る環境づくりとなり、子どもから高齢者まで全ての人々が共に支えあいながら希望や生きがいを持ち、ライフステージに応じて健やかで心豊かに生活できる社会の創出にもつながるものといえる。今後、より多くの総合型クラブが創設され、地域住民にとって身近な存在となることが期待される。

 

【今後に向けて】

本研究では、総合型クラブが創設されたことによる効果が明らかとなった。しかしながら、平成25年3月現在、神奈川県内の全市町村への総合型クラブ育成や中学校区程度での総合型クラブ育成には至っていない状況であり、本研究により明らかとなった効果をより多くの地域に波及させるため、「神奈川らしい」地域住民による自主的な取組みを、引き続き支援していく必要があると考える。

今後さらに、総合型クラブが普及・定着するためには、会員の確保、助成金に頼らない財源の確保、指導者の確保など、運営の方法や総合型クラブ組織のあり方を探り、魅力を高める方策を具体化することが必要だと考える。

 

【引用文献】

1)文部科学省スポーツ・青少年局企画・体育課(2000)スポーツ振興基本計画
2)文部科学省スポーツ・青少年局スポーツ振興課(2012)平成24年度全国の総合型地域スポーツクラブ育成状況
3)文部科学省スポーツ・青少年局スポーツ・青少年企画課(2011)スポーツ基本計画第1章1(2)スポーツ基本法の制定-背景とスポーツの果たす役割の明確化-
4)厚生労働省(2014)健康日本21(第2次)第一国民の健康の増進の推進に関する基本的な方向 四
5)文部科学省(2010)「総合型地域スポーツクラブの設立効果に関する調査研究」報告書

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ソーシャルメディアの活用によるスポーツ情報の発信・提供に関する研究

スポーツ情報班 米山教子 奥津賢一 須田敏弘

 

はじめに

近年、国や地方公共団体等の公共機関においては、情報発信力強化のためにソーシャルメディアを利用する事例が増えてきている。特に東日本大震災発生以降、震災対応に関する情報発信をきっかけとして、多くの自治体等でソーシャルメディアが注目されはじめた。

平成23年5月、神奈川県県民局企画調整部広報課は、県政に関する情報を、多様な媒体の活用等により県民に積極的に提供することを目的として、「ソーシャルメディアの利用に関するガイドライン」を策定した。しかし、ソーシャルメディアに対する理解度・浸透度の低さや、公共性・広域性を有する行政機関の特性等により、実際にソーシャルメディアを導入した事例は少なく、また、成果の検証に関する詳細な報告もほとんどなされていないのが現状である。

そこで、本研究では、ソーシャルメディアがもつ情報の発信・提供に係る有効性を把握するとともに、神奈川県立体育センター公式Twitter(以下、「体育センターTwitter」という。)導入による広報効果の検証・分析をし、その効果を県内市町村、スポーツ関係団体等に示すことで、スポーツ振興に寄与するものと考え本テーマを設定した。

 

研究内容及び方法

1 研究の期間

平成24年4月から平成25年3月

2 研究の内容

ソーシャルメディアとは何かを把握し、体育センター公式Twitter導入による効果を検証するとともに、市町村等のソーシャルメディア活用の実態を調査・分析し、今後のソーシャルメディアの効果的な活用方法を模索する。

3 研究方法

(1)文献研究

マスメディア(産業メディア)とソーシャルメディアの違い、ソーシャルメディアの定義・分類について検討する。

(2)体育センターTwitter導入

フォロワー数の推移について分析を行うとともに、Twitterの運営について検証を行う。

(3)アンケート調査と結果の集計・分析

県内市町村のスポーツ担当者及び、スポーツ団体である総合型地域スポーツクラブ(「以下、総合型SC」という。)代表者に対し体育センターTwitterとソーシャルメディア活用に関する調査を実施する。

(4)体育センターホームページへのリンクについての検証

体育センターTwitter導入後のホームページアクセス件数を、前年度と比較・検証する。

 

研究結果と考察

1 ソーシャルメディアとは何か

ソーシャルメディアという用語は、平成18年アメリカで学生のみに限定されていたFacebookが一般に公開され、爆発的な広がりを見せたところから使われるようになった。日本においては、平成20年5月にFacebookの日本版が利用可能となり、更に平成21年10月に、携帯電話向けサイトが開設され爆発的な広がりを見せたころから、ソーシャルメディアという用語が一般的に浸透し始めた。 

ソーシャルメディアとは、

  • インターネット上で提供されるサービスのうち、誰もが参加できる即時性に優れた情報発信技術を用いて、社会的相互作用を通じて広がるように設計された比較的新しいメディアであり、
  • 個人及び組織の発信した情報が、Webサービスやアプリを経由することによって共有化が図られ、それ自体が意味を持つコミュニティとなり、実社会に広く拡散され、影響力を持ち始めたものである

と考えることができる。

2 体育センターTwitterについて

体育センターでは、ホームページ運営事業の一環としてホームページへの誘導を目的とした新たなスポーツ情報発信ツールであるTwitterの円滑な運営をするために、次に掲げるものを作成し、体育センターTwitterの運営を開始することとした。

  • 神奈川県立体育センターTwitter(ツイッター)アカウント運用ポリシー
  • 神奈川県立体育センターTwitter ツイート手順
  • 神奈川県立体育センターTwitter ツイートフォーム

開設以来フォロワー数について調べてみたところ、フォロワー数は確実に伸びているが、爆発的なフォロワー数の確保には至っていない。

体育センターTwitter開設にあたり、先ず考えたことは、フォロワーの確保であり、県民に向けたチラシ等の配布や、インターネットからの配信を積極的に行うこととしたが、必ずしも宣伝効果があったとは言えない。また、この他にも、体育センター事業における研修会や会議等を活用し、チラシによる広報活動を行ったが、同様の結果であった。

そこで、新たな試みとして、従来の事業案内中心のツイート内容から、ツイッターの特徴である即時性を活かすスポーツ情報の発信を試行的に行ってみた。具体的には、7月11日から始まった全国高等学校野球選手権神奈川大会の結果を配信してみたところ、大会期間中(18日間)のフォロワーの件数は、大会前と比較をし、45件増となった。また、テレビやラジオで報道されていない「allかながわスポーツゲームズ市町村対抗『かながわ駅伝』競走大会」(以下「かながわ駅伝」という。)においては、当日の大会開催の可否及びレース内容等をリアルタイムにツイートした。この駅伝競走大会開催中にフォロワーの数は、分単位で増加し、一日で21件のフォロワー増となった。

リアルタイムな情報は、会場の雰囲気やレース状況をそのまま伝えられるので、興味を引くことができる。また、新聞等では翌日にレース結果が公表されたが、レース直後に結果をツイートしたことで、ツイッターの即時性を活かすことができた。

3 体育センターTwitterとソーシャルメディアの活用に関するアンケートについて

県内全市町村のスポーツ担当者及びスポーツ団体(総合型SC)の代表者に体育センターTwitter導入とソーシャル」メディアの活用についての調査を行った。

市町村担当者における体育センターTwitterの認知度については、Twitterを知っていると回答した人は、ほぼ半数であった。同様の質問を総合型SCでも行ったところ「知っている」という回答はわずか32.4%で、約7割の人が知らないという回答であった。総合型SCにおいても、さらに認知度が低いという結果であった。

市町村担当者および総合型SC代表者の体育センターTwitterフォロワー状況について「フォローしている」と回答した人は、市町村スポーツ担当者では、わずか5.9%に対し、総合型SC代表者では、50.0%であった。フォローをしている理由については、市町村スポーツ担当者は、「情報収集のため」という回答であった。また総合型SC代表者は、「情報収集のため」「コミュニケーションとして」という回答が多くあった。逆に体育センターTwitterをフォローしない理由については、「Twitterをやっていない」または「必要性を感じていない」という回答の割合は、市町村スポーツ担当者では約9割、総合型SCでは約7割であった。これは体育センターTwitterの認知度や、Twitterから情報収集をしたいというニーズが低いことが考えられるが、一方で、「設定がわからなかった」「使ってみたいが使い方がよくわからない」というような回答もあり、Twitterそのものの操作性が認識できれば、活用率が上がるのではないかと思われる。

市町村担当者および総合型SC代表者のソーシャルメディアの認知度については、「知っている」と回答したのは、市町村スポーツ担当者では69.7%で、総合型SC代表者では83.3%であり、いずれも高い数値であった。また、ソーシャルメディアの活用率については、市町村スポーツ担当者27.3%、総合型SCの代表者54.1%であった。このことより、ソーシャルメディアという用語は両者とも知っている人は多いが、実際に活用をしている人は少なく、特に市町村スポーツ担当者は、認知度に比べ活用率は低いということがわかった。

4 体育センターホームページへのリンクについて

Twitterを導入した平成24年6月から平成25年1月までの体育センターホームページ゛全体のアクセス数について平成23年度の同月と比較をしてみたところ、平成24年度は、2倍以上の伸び率であった。これは、インターネットの利用者が増えていることが一因と考えられるが、これに加え、体育センターTwitterによる情報発信を含めた総合的な広報の成果によるものと推測される。

5 課題及び今後の方向性

(1)Twitterの運営課題として次のことについて検討が必要である。

ア フォロワーを増やすための方策
イ 行政サービスとしての運営方法
ウ 市町村、スポーツ団体等との情報発信における連携
エ コミュニケーションツールとしての運営

(2)今後の方向性について

Twitterの導入によるスポーツ情報を通したコミュニティは、情報ネットワークの形成へと発展できるのではないかと考える。今後は、ソーシャルメディアを活用した市町村やスポーツ関係団体等との情報ネットワークの構築を目指し、さらなる活用方法の検討および、その有効性を探ることが必要である。

 

まとめ

今回、スポーツ情報の新たな発信・提供ツールとして、体育センターTwitterを導入したことにより、情報を「伝える」ことへの可能性が広がった。Twitterは、140文字の中で「今」を伝えることができ、その「今」を、多くの人々がネット上で「共感」できる。

また、情報化社会といわれる現代において、ここ数年、情報収集のスタイルは、スマートフォンやタブレットといったモバイルツールへとシフトしてきた。このことによりインターネットの利用は、「いつでも」「どこでも」といった利用方法へと変化しており、今後は「すきま時間」の利用という視点を備えた情報の発信・提供方法を考える必要がある。

しかし、加速化する情報化社会の中で、格差が生じているのも事実であり、あらゆる情報発信・提供の手段の一つとして、ソーシャルメディアの導入・運営を考えていく必要がある。

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サポートの動きがわかってできる小学校中学年の易しいゴール型ゲーム
―課題が浮き彫りになる発問と条件付けられたゲームを通して―

小田原市立富士見小学校 三島 真一郎

 

はじめに

現行の小学校学習指導要領体育におけるボール運動系の領域では、種目が種目固有の技能ではなく攻守の特徴(類似性・異質性)や「型」に共通する動きや技能を系統的に身に付けるという視点から整理されるとともに、中学年のゲームと高学年のボール運動では、技能が「ボール操作」及び「ボールを持たないときの動き」で構成されている。

これまでの自分の授業実践を振り返ってみると、「ボール操作」については技能を高めることができていたが、「ボールを持たないときの動き」については、児童の技能を十分に高めることができないままであった。

そこで本研究では、攻撃時のボールを持たないときの動き(以降「サポートの動き」と言う)に着目し、ゴール型ゲームの授業で課題が浮き彫りになる発問と条件付けられたゲームを組み合わせた学習を行うことによって、サポートの動きがわかってできるようになり、ゲームを楽しむことができる児童の姿を目指した。また、その効果の検証を通して1つの学習過程を提案することとした。

 

研究内容及び方法

1 研究の仮説

小学校中学年の易しいゴール型ゲームにおいて、課題が浮き彫りになる発問と条件付けられたゲームの段階的設定により、サポートの必要性を理解し、サポートの動きがわかってできるようになるであろう。

2 分析の視点

(1)サポートの必要性が理解できたか
(2)サポートの動きがわかったか
(3)サポートの動きができたか

3 検証授業の計画

(1)期間

平成24年10月16日(火曜日)から11月7日(水曜日)

(2)場所

小田原市立富士見小学校

(3)対象

第3学年3組(34名)

(4)単元名

ゲーム ゴール型ゲーム

(5)単元の目標

ア【技能】

  • 基本的なボール操作やボールを持たないときの動きによって、易しいゲームをすることができるようにする。

イ【態度】

  • 運動に進んで取り組み、規則を守り仲よく運動したり、勝敗を受け入れたり、場や用具の安全に気を付けたりすることができるようにする。

ウ【思考・判断】

  • 規則を工夫したり、簡単な作戦を立てたりすることができるようにする。

(6)学習過程

(7)指導の工夫

ア 発問について

児童の思考を促し、段階ごとの課題を浮き彫りにするために、課題を意識させる発問、それを解決する方法を考えさせる発問、具体の解決方法を特定させるための発問を段階ごとに組み込んだ。

イ 条件付けられたゲームについて

児童に課題を意識させたり、解決させたりするためにアウトナンバーゲームを中心に行った。


図1 条件付けられたゲームの例(7時間目)

 

研究結果と考察

1 サポートの必要性が理解できたか

学習カード(2時間目)の「パスの必要性」の問いに97%の児童が「わかった」と回答した。学習カード(4時間目) の「サポートの動きの大切さ」の問いに97%の児童が「わかった」と回答した。(図2)学習カード(2-10時間目)の自由記述から、児童は単元後半に向けて「サポートの動きの大切さ」を認識していた。事前・事後アンケートの自由記述の比較から、児童はパスや動き、特に「サポートの動き」に意識を持つようになった。


図2 パスをつなげるためには、サポートの動きが大切なことがわかりましたか(n=33)

2 サポートの動きがわかったか

学習カード(5、6時間目)の「サポートの仕方の理解」の問いに5、6時間目ともに94%の児童が「わかった」と回答した。学習カード(7-10時間目)の「味方への指示」の問いに9、10時間目は100%の児童が「できた」と回答した。事前・事後アンケートの自由記述の比較から、児童は見るものは「ボールだけでなく味方や相手」であること、動く場所は「相手のいないところ」「パスをもらえるところ」と認識していた。「見るもの・動くところ」ともに期待される回答数が増加した。事後アンケートの「サポートの仕方の理解」の問いに97%の児童が「できた」と回答した。(図3)


図3 あなたは、サポートの仕方が理解できましたか(n=33)

3 サポートの動きができたか

VTRによりサポート数の変化」を確認した2班は、ともにサポート数が3倍以上に増加した。学習カード(3-10時間目)の「技能の伸び」は、10時間目にはほとんどの児童が「できなかったことができるようになった」と回答した。 学習カード(7-10時間目)の「サポートの動きの実践」の問いに9、10時間目は100%の児童が「できた」と回答した。(図4)事後アンケートの「サポートがよりうまくなった」の問いに97%の児童が「できた」と回答した。


図4 サポートの動きができましたか

 

まとめ

本研究では、次のことが明らかになった。
○課題が浮き彫りになる発問と条件付けられたゲームを段階的に設定した学習過程は、小学校3年生ゴール型ゲームのサポートの動きがわかってできる学習に有効だった。

そこで、小学校中学年の易しいゴール型ゲームにおける、サポートの動きを身に付けるための学習過程を提案したい。(図5)


図5 学習過程の提案モデル

1次ではうまくいかない原因と解決方法を考え、2次では「ボール操作」の技能の上達を主なねらいとし、3次では「サポートの動き」を身に付けさせることをねらいとし、最後にリーグ戦でサポートしながらゲームを楽しむことができる学習過程を図5のように設定する。

今回の研究から、課題解決学習を小学校中学年で行うことは、可能であると考える。このような学習が他のゴール型ゲームにも生かされ、さらには小学校の高学年へとつながれば、生涯にわたってスポーツに親しむための礎になるのではないだろうか。

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状況に即した判断力を高めるバスケットボールの学習
―「見る」・「選択する」・「実行する」の流れをふまえた学習を通して―

秦野市立西中学校 大熊桃世

はじめに

今年度より全面実施となった学習指導要領の解説では、従前と比べ、球技の技能の例示に「守備者がいない位置で」など具体的な状況が示され、今後は状況に即した中での技能の獲得が期待されてきている。そのような中で自分のバスケットボールの授業を振り返ると、得意な生徒が個人技能だけで強引なプレイをしていたり、苦手な生徒がボールを保持してもどのようなプレイをするかわからなかったりするなど、生徒は適切なプレイ選択をすることができていなかったと感じる。また、学習過程では、基礎的練習とドリルゲームの後に、タスクゲームとメインゲームを行っていたが、前半の練習の成果が後半のゲームで反映されないことが多かった。これは、学習過程の中に状況をふまえた上での集団的技能の学習が設定されていなかったことが原因と考える。

中川は、ボールゲームにおける状況判断は4つの重要な精神過程の連鎖を経ておこなわれているとしている。この理論を参考にすれば、状況に即した判断力を高めるための学習が可能になるものと考える。

そこで、本研究では、生徒がゲーム状況について「見る」「選択する」「実行する」ことができることを目指して、単元内に状況判断トレーニングを導入するとともに、タスクゲームにおいてその習得が図れるような学習過程を設定し、この学習過程での生徒が状況判断力を身に付けることの有効性について検証することを目的とした。なお、本研究は授業時数が7時間であることから、状況はシュートにつながる局面に限定した。

 

研究内容及び方法

1 研究の仮説

バスケットボールの授業で、周囲を見て、適切なプレイを選択し、実行する状況判断を身に付けるための学習過程を設定すれば、ゲームでのシュートにつながる局面における状況判断力が高まるであろう。

2 分析の視点

(1)シュートにつながる局面での状況判断の仕方を理解することができたか
(2)状況判断トレーニングにおいて、シュートにつながる局面での状況判断ができたか
(3)メインゲームにおいて、シュートにつながる局面での状況判断ができたか

3 検証授業

(1)期間

平成24年10月1日(月曜日)から10月24日(水曜日)

(2)場所

秦野市立西中学校

(3)対象

第2学年2組(38名)、3組(37名)、6組(39名)

(4)単元名

球技 ゴール型「バスケットボール」

(5)学習過程

(6)状況判断トレーニングについて

シュートにつながる局面において、周囲を見て、適切なプレイを選択し、実行するパフォーマンスを身に付けるための練習を行った。

ア 状況判断トレーニング1

イ 状況判断トレーニング2

「1」は「2」にパスを出す。「2」は守備者(動くのは一歩)の動きを見て、パスかドリブルか判断する。

ウ 状況判断トレーニング3

守備者は「2」にパスを出す。「2」は守備者の動きを見てパスかドリブルかを判断する。

(7)ゲームについて

ドリルゲーム: 班対抗1分間パス&シュート
タスクゲーム1: シュートエリア設定ゲーム
タスクゲーム2: 3対2のアウトナンバーゲーム
タスクゲーム3: 4対4(フロントコートは4対3)のアウトナンバーゲーム
メインゲーム: 4対4のゲーム

 

研究結果と考察

1 シュートにつながる局面での状況判断の仕方を理解することができたか

学習カードの自己評価(4件法)では、「できた」との回答が1時間目の35.5%から7時間目は76.6%に増加した。高橋の「侵入型ゲームでの状況判断のための判断材料とプレイ選択の原則」(以下「プレイ選択の原則」)を問う事後アンケートの3つの質問に対し、9割以上の生徒が適切に回答した。

このことから多くの生徒が状況判断の仕方を理解することができたと考えられる。

2 状況判断トレーニングにおいて、シュートにつながる局面での状況判断ができたか

(1)相手の動きを「見る」ことができたか

班のカード(状況判断トレーニング1)の自己評価(2件法)は95%以上の生徒が「見られた」と回答し、4時間目の学習カードの自己評価では、99.1%の生徒が肯定的な回答(注1)をした。VTRの分析(注2)でも95%(3クラス平均)の生徒が見ることができたと判断できた。

(2)適切なプレイを「選択する」ことができたか

班のカードの自己評価は3時間目以降90%以上の生徒が「選択できた」と回答し、4時間目の学習カードの自己評価では、96.3%の生徒が肯定的な回答(注1)をした。

(3)選択したプレイを「実行する」ことができたか

班のカードの自己評価は3時間目以降88%以上の生徒が「実行できた」と回答し、4時間目の学習カードの自己評価では、93.5%の生徒が肯定的な回答(注1)をした。VTRの分析(注2)では、状況判断トレーニング1では95%(3クラス平均)、トレーニング2では94%(2クラス平均)、トレーニング3では93%(2クラス平均)の生徒が実行することができたと判断できた。

このことから多くの生徒が状況判断トレーニングにおいて、状況判断ができたと考えられる。

3 メインゲームにおいて、シュートにつながる局面での状況判断ができたか

(1)相手や味方、ゴールなどを「見る」ことができたか

学習カードの自己評価では、「できた」との回答が1時間目の46.4%から7時間目は74.8%に増加し、事前・事後アンケート(4件法)の「いつも味方・相手・ゴールを見ながらプレイしていた」の比較では、どの質問においても、肯定的な回答(注3)が増加し、中でも「そう思う」の回答は2倍に増加した。

(2)適切なプレイを「選択する」ことができたか


図1 シュートにつながる局面においてのプレイ選択の適切率

学習カードの自己評価では、「できた」との回答が1時間目の29.1%から7時間目は72%に増加した。VTRの分析(注2)では、シュートにつながる局面で「プレイ選択の原則」に則って適切なプレイを選択ができているかを「適切率」として男女別に示すと、男子は89.8%、女子は89.6%と男女ともに高い数値を示した。(図1)

(3)選択したプレイを「実行する」ことができたか

学習カードの自己評価では、「できた」との回答が1時間目の31.8%から7時間目は71%に増加し、事後アンケートの「以前に比べて選択したプレイを実行できるようになった」では、87.4%の生徒が肯定的な回答(注3)をした。

このことから多くの生徒がメインゲームにおいて、状況判断ができたと考えられる。

さらに、事前アンケート「バスケットボールが得意である」の回答別に、事後アンケート「適切なプレイの選択をするために有効だったと思う練習は何ですか」の回答を状況判断トレーニングとタスクゲームで比較をすると、苦手と感じている生徒ほど状況判断トレーニングが有効であったと感じていた。(図2)


図2 「適切なプレイの選択をするために有効だったと思う練習」の回答(得意・不得意別)

 

まとめ

本研究では、次のことが明らかになった。

周囲を見て、適切なプレイを選択し、実行する状況判断を身に付けるための学習過程を設定すれば、ゲームでのシュートにつながる局面における状況判断力を高めることができる。

また、本研究は、状況をシュートにつながる局面に限定した検証結果であるが、状況判断トレーニングのような内容に着目した学習過程を取り入れることができれば、シュートにつながる局面に限らずに、様々な状況に即した中での判断力を高めることができると考える。

よって、「見る」・「選択する」・「実行する」の流れをふまえた学習を通して、状況に即した判断力を高めることができる。
また、次のことが課題として残った。

  • 生徒の実態に応じて、状況判断トレーニングとタスクゲームのバランスを考えていく必要がある。
  • 状況判断をしてプレイすることが有効にはたらくためには、ディフェンスの仕方を並行して指導していく必要がある。
  • 全員がメインゲームで状況判断する機会を持つには、メインゲームを複数回行う必要がある。

(注1)「できた」「どちらかというとできた」の回答
(注2)筆者及び体育センタースタッフの2名で実施
(注3)「そう思う」「どちらかというとそう思う」の回答

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内野手の状況に応じた連携した守備力を高めるソフトボール授業の一提案
―戦術学習モデルを基にした学習過程と教材・教具の工夫―

神奈川県立生田東高等学校 鯨吉 剛

 

はじめに

これまで自分の行ってきたソフトボールの授業は、従前の学習指導要領を踏まえ、単元の前半で個人的技能を指導し、後半ではゲームを中心とした展開の中で、場面に応じながら集団的技能を指導してきた。しかし、実際のゲームでは、守備側が簡単に出塁や進塁を許し、大量失点が繰り返されることとなっていた。

これは、ソフトボールのゲームには多数の局面が存在するため、予定された時間数の中で、全ての集団的技能を指導することができなかったこと、ゲーム中の場面に応じた指導では、状況に応じた守備ができるようになるために必要とされる内野手の動きに着目した指導が十分にできなかったことなどが原因と考える。

ところで、王・進藤は、ソフトボールのゲームの状況を大きく3つの局面(段階)に整理しており、生徒の能力・適性を踏まえて、3つの局面(段階)の中から特徴的なゲームを選んで内野手の動きに着目した学習を計画すれば、すべての局面を学習しなくても、状況に応じた守備力を高めることができるのではないかと考える。

また、グリフィンは、ゲームにおける戦術的状況の中で技術を用いることによって戦術と技術を関連付けるための学習として、「戦術アプローチ」を提案している。この戦術学習を学習過程に導入すれば、状況に応じた守備の方法を理解してその技能を発揮できるようになるのではないかと考える。

そこで本研究では、内野手の状況に応じた連携した守備力を高めるための、戦術学習モデルを基にした学習過程と教材・教具を提案したい。

 

構想経過

1 学習過程の検討

(1)学習段階について

学習過程を診断的・復習的段階、形成的段階(習得と活用)、総括的・発展的段階の3つの段階に分け、それぞれにねらいを設定した。5-12時間目までを「ねらい2:戦術的な課題を見付け、課題解決のためにみんなで協力しながら、ゲームや練習を楽しむ。」とし、本研究では、学習過程の中でも特に、この形成的段階(習得と活用)に着目した。

(2)戦術学習のサイクル

グリフィンの戦術アプローチの理論に基づき、「条件づけられたゲーム」-「発問・話し合い」-「練習」-「条件づけられたゲーム」の戦術学習のサイクルを形成的段階に組み込んだ。これにより生徒が、技能構造や戦術を理解し、思考・判断をしながら練習することで、技能を身に付けることを期待した。また、1つの戦術学習のサイクルが技能の習得と身に付けた技能を活用(発揮)する流れになっているため、生徒は達成感を味わうとともに、次の総括的・発展的段階へ繋がって行くことを期待した。戦術学習は次のように配置した。(図1)

《省略》図1 戦術学習1-4の配置

2 教材・教具の検討

(1)学習活動について

戦術学習を行うためには、まず、戦術課題が浮き彫りになる条件付けられたゲームを教材として開発し、発問や視聴覚教材、教具を有効活用することが大切である。そこで、次のとおり1つの戦術学習サイクル内に教材、教具等を活用する学習活動を設定した。

  1. 条件付けられたゲーム
    →ゲームを行いながらゲーム記録カード1を付ける。
  2. 話し合い
    →ゲーム記録カード1と教師の発問を基に、守備の戦術カードや作戦ボードを使ってチームや個々の課題について話し合う。その後、「戦術学習について」の視聴覚教材を活用して課題に対しての正しい動き方を確認する。
  3. チーム練習
    →課題を解決するための練習を行う。
  4. 条件付けられたゲーム
    →ゲームを行いながらゲーム記録カードを付けそれを基に振り返りを行う。

(2)条件付けられたゲームの選定

ソフトボールにおける条件付けられたゲームとは、アウトカウントと走者の状況を設定したゲームである。そこで、生徒の能力・適性を踏まえて、王・進藤の3つの局面(段階)の中から特徴的なゲームを選び、段階的に学習できるよう条件付けられたゲームを計画した。(表1)また、内野手の動きに着目することで、状況に応じた連携したボール操作、ボール保持者の意思決定、ボールを持たないときの動きが、段階を踏みながら確実に身に付いていくことを期待した。

表1 条件付けられたゲーム

 

提案内容

1 学習過程の提案について

(1)単元名及び単元時間数

ソフトボール 15時間

(2)対象

第3学年 ソフトボール選択者(40名)

(3)単元計画


2 教材の提案

理論を基に、次のようにゲーム化した教材を開発した。

(1)コートの工夫について

内野のフィールドのみを用いたゲームを行う。

(2)ルールの工夫について

攻撃側は、指定されたエリアに打球をバウンドさせてゴロを打つことや打球を左右に打ち分けるといったルールを設定する。

以上のような工夫をすることで、内野手の守備の戦術に生徒の意識を焦点化させ、学習内容をより効果的に身に付けることができる。(図2)


図2 条件付けられたゲーム

3 教具の提案

理論を基に、次のような教具を作成した。

(1)ゲーム記録カード1について

ゲームにおける捕球・送球の技能、送球したベース、バックアップ・ベースカバーの動きについて記録できるように作成した。(図3)

図3
図3 ゲーム記録カード1

(2)守備の戦術カードについて

状況に応じた守備位置やボール保持者の送球位置、その他の野手の動き(ベースカバー、バックアップ)の軌跡を記入できるように作成した。

(3)視聴覚教材(戦術学習)について

戦術学習に用いるゲーム状況の守備の戦術についてプレゼンテーションソフトを使用し、それぞれのゲーム状況を選んで視聴できるように作成した。(図4)


図4 視聴覚教材コントロール画面

以上のような工夫をすることにより、課題を明確にし、学習成果の確認ができる。また、戦術について、理解を深めたり、チーム内で共有したりすることができる。

 

まとめ

今回の研究では、戦術学習モデルを基にした学習過程と教材・教具の工夫をすることによって、内野手の状況に応じた連携した守備力が高まるであろうと考え、1つの授業モデルを提案した。様々あるソフトボールの戦術について、生徒が考えながら、学習内容を身に付けていく学習過程や教材・教具により、ゲームの質的な高まりやより発展的な学習が可能となり、ソフトボールの特性に深く触れることができるようになると考える。

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体育授業における動きづくりの視点を共有できるステップ表の作成
―知的障害のある児童生徒の動きの発達に合う指導内容設定に向けて―

神奈川県立藤沢養護学校 菅原 祐司

 

はじめに

知的障害のある児童生徒が運動のスキルを上げていくためには、基礎的な動作(走る・跳ぶなど)の段階的な動きづくりが重要であると、多くの研究者が指摘しているところである。特別支援学校(知的)における「サーキット運動」などで行われる動きづくりの指導は、それを遂行すること自体が授業の目的となり、個々の児童生徒に適した動きづくりに向けた指導内容を意識して実践するまでに至っていないものと感じる。

このことについての教員(藤沢養護学校中学部)へのアンケート調査から、児童生徒一人ひとりの指導内容を設定し、教員間で共有することが難しいとの回答が得られた。

ところで、これまで動きについては、様々な分野や側面から研究がなされている。しかし、これらの多くは、障害種別に応じた指導の研究や個別の指導の研究が中心であり、動きづくりの指導内容設定に向けた、幅広い実態の児童生徒の指導に共有できるための目安となるものを見付けることができなかった。

そこで、本研究では動きの研究等を参考に、動きづくりの目安となるステップ表を試作(素案→試案)し、授業実践での活用を通して改善を加え、より実践的なステップ表を作成することとした。

 

研究内容及び方法

1 「ステップ表素案」の作成

(1)動きの研究

動きの分類・発達段階・質(動きの3つの観点)について整理し、ステップ表素案に取り上げる動き(動作)を考えた。本研究では、小林(2001)らの理論を中心にまとめた。

(2)サーキット運動について

サーキット運動は、体育の指導内容として「いろいろな運動」として捉えられ、多くの特別支援学校で様々な運動プログラム(障害物とびこしや平均台運動など)が実施されている。

(3)素案の作成

動きの3つの観点と運動プログラムを検討した結果、28の動きを含ませて、7つの運動プログラム※1を取り上げることとした。さらに、運動プログラムについて具体的な活動内容を考え、ステップ表素案を作成した。

2 「ステップ表試案」の作成

(1)素案の検討

神奈川県立体育センター指導主事等3名との検討や試行から、内容・順番等を修正し、7つの運動プログラムからなるステップ表試案を作成した。表1はステップ表試案(例:障害物のとびこし)である。

表1 ステップ表試案(例:障害物のとびこし)

(注1)7つの運動プログラム・・・障害物のとびこし、マットでの前まわり、的あてやキャッチボール、平均台でのくぐりぬけとバランス、ゴムチューブのばし、コーンを使ったジグザグ走、ダンボールを使ったつみおろし

3 「ステップ表試案」の活用(授業実践)

(1)期間

平成24年9月21日 金曜日 から 10月29日 月曜日

(2)対象

神奈川県立藤沢養護学校(知的障害) 中学部全学年29名(男子22名、女子7名)

(3)教員数

16名

(4)単元名

サーキット運動(11時間扱い)

(5)授業におけるステップ表試案の活用方法

ア 本時の指導内容(段階・動きの能力要素・具体的なステップ)の設定
イ 生徒の実態に応じた支援方法の決定
ウ 支援方法の工夫改善及び指導内容の再設定
エ 次時の支援方法の考案及び指導内容の設定

4 「ステップ表試案」の活用(授業実践)結果と分析

(1)個人ファイル※2 記載内容及び協議会での意見集約

ア 個人ファイル記載内容から

運動プログラムごとに、指導教員からの記載内容を整理した。例えば「障害物のとびこし」に対して「第4段階で着地感覚が間に入っているが、またぐ生徒もいるのでなじまない。曲げ伸ばしのような動作の上下運動の後に着地の方が自然である。」など、具体的な書式や記載内容に関する意見が挙げられた。

イ 協議会(注3)での意見から

意見の内容は主に二つであった。一つは、ステップ表試案は「子どもの運動の発達段階を系統化したものであるという認識をもつべき。」といった表の捉え方についての意見であった。もう一つは、「マットでの活動段階を整理する必要がある。」などの表の書式や記載内容についての意見であった。

(2)教員事後アンケートの分析

教員に事後アンケートを実施し、主にステップ表試案を活用しやすかった場面と活用しづらかった場面を整理した結果、ステップ表試案の利点と課題が挙げられた。(表2)

表2 ステップ表試案の利点と課題

表2からステップ表試案の活用は、運動機能面の発達段階に合った適切な指導につながるが、指導教員間での共通認識が図れるように、書式の改善や、使い方と見方について提示する必要があることがわかった。

(3)まとめ

ステップ表試案の改善すべき点は、全体については書式を見やすく変更し、各運動プログラムについて、段階と具体的なステップの整理をすることであった。

(注2) 個人ファイル…生徒一人に1冊用意し、教員が生徒の取り組んだステップをチェックしたり、活動の様子及びステップ表に対する意見を記載したりするためのファイル。
(注3) 協議会…毎授業後に筆者・体育センター所員・学部長・主に他校の授業見学者で行い、授業の振り返りやステップ表などについて講評・検討を行った会議。

5 「ステップ表」の作成

4での分析を参考に、運動プログラムを関連する動作から再整理し、数と名称を変更した後に、表3の変更の視点に沿って、8つの運動プログラム(注4)におけるステップ表を作成した。表4はステップ表(例:障害物のとびこし)である。

表3 変更の視点

(注4)8つの運動プログラム・・・障害物のとびこし、マットでの前まわり、的あてやキャッチボール、コーンバーを使ったくぐりぬけ、平均台でのバランス、ゴムチューブを使った身体のばし、コーンを使った横移動、ダンボールを使ったつみおろし

表4 ステップ表(例:障害物のとびこし)

 

まとめ

本研究の成果は、授業実践を通した意見を反映し、「ステップ表」を作成したことであり、これにより、教員間で共有化できる動きづくりの視点と指導内容を示したという点で、意味があるものと考える。

これからの「ステップ表」の実践的な活用に向けては、知的障害のある児童生徒の認知や社会性などを考慮した指導や、「参考となる内容例」に基づいた個別の手立ての充実などが今後の課題になると思われる。

一つひとつの動きができるようになることは児童生徒の喜びであり、児童生徒の動きがスムーズになっていくことは教員の喜びでもある。今後、実践的活用を含めた更なる表の改善や活用方法の検討について取り組んでいくつもりである。そのためにも、知的障害のある児童生徒の体育授業で、この「ステップ表」を動きづくりの視点の共有化や指導内容設定の目安として、まずは多くの方に活用いただくとともに、様々な意見を頂戴できることを心から願っている。

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