第38号(平成22年度/2010)

掲載日:2018年3月28日

発刊のことば

神奈川県立体育センター所長 安斉 講一

 

このたび、当体育センター事業部の平成22年度の研究報告書をまとめた「体育センターレポート第38号」を発刊する運びとなりました。

本号は、事業部、指導研究課研修指導班・調査研究班、生涯スポーツ課スポーツ推進班・スポーツ情報班が行った各班の研究報告と、体育センター長期研究員の授業研究報告により構成されております。これらの研究報告につきましては、抄録のみの掲載となっておりますが、当センターのホームページに研究報告書の全文を掲載しておりますので、併せて御活用いただければ幸いに存じます。

体育センターは、子どもから高齢者まであらゆる年齢層の方たちが、各自のライフステージにおいて、心身共に明るく豊かで活力ある生活を営むことができるよう、県の体育・スポーツ振興の中核機関として県民のスポーツライフを総合的にサポートしております。今後も、心と体の健康つくりをめざす体育・スポーツ活動を促進し、質の高いサービスを提供していくとともに、指導者及び実践者への支援、スポーツ情報の提供、調査研究に取り組んでまいりますので、益々の御指導、御鞭撻を賜りますよう、お願い申し上げます。

最後に、本号掲載の研究推進に、御協力を賜りました皆様に厚くお礼申し上げ、発刊のことばといたします。

 


 

目次

所員による研究

《研修指導班》

《調査研究班》

《スポーツ推進班》

《スポーツ情報班》

 

長期研究員による研究

《小学校》伊勢原市立緑台小学校 峰 孝一

《中学校》小田原市立白山中学校 稲毛 真弓

《高等学校》県立横浜清陵総合高等学校 橋本 晴子

 


「新学習指導要領に対応した学習評価についての研究」
(2年継続研究の1年次)

研修指導班 幸田 隆 井上信二 小川雅嗣 磯貝靖子 瀬戸隆紀 佐藤康二 納富崇典
研究アドバイザー 国立教育政策研究所 佐藤 豊

 

はじめに

中央教育審議会から、平成20年1月17日に「幼稚園、小学校、中学校、高等学校及び特別支援学校の学習指導要領等の改善について」の答申が発表された。この答申を受けて、学習指導要領が改訂され、小学校については平成23年度、中学校については平成24年度から全面実施、高等学校については平成25年度から学年進行により実施される。

学習評価については、同答申を受け、平成22年3月24日に「児童生徒の学習評価の在り方について(報告)」が提示されたところである。

今後、この学習評価が各学校において円滑に実施されるためには、これまで以上に、「学習指導と学習評価の在り方、評価の観点、評価規準、具体的な評価の方法等」について参考となる資料を示すとともに、具体的な事例の収集・提示を行っていくことが重要であると考える。

研修指導班においては、前回の改訂時に際しても、同様の観点から研究を重ね、教育現場で役立つ資料を提供してきた。しかしながら、評価の観点、評価規準の必要性等、理念についての理解を得ることができた一方、評価方法等における煩雑さは否めず、実践にあたっての十分な支援に至らなかったことが、大きな反省点である。

今回の改訂にあたり、この反省を踏まえ、神奈川県の子どもたちの学びがより深まるための、学習評価の在り方について研究を進めたいと考え、テーマを設定した。

 

内容及び方法

新しい学習指導要領に示された指導内容を基に、指導と評価の一体化を目指した評価規準、具体的な評価内容、評価方法について理論研究及び研究に基づいた授業実践例を作成する。

〇「児童生徒の学習評価の在り方について(報告)」の学習評価についての理解(平成22年度)

〇体育・保健体育科における学習評価実施上の課題及び問題点の抽出(平成22年度)

〇学習評価の考え方、評価規準、単元計画作成のための理解、現行のものとの相違点の確認(平成22年度)

〇指導内容と評価の観点の整理(平成22年度)

〇指導内容に対応した学習評価のためのマニュアルの作成(平成23年度)

〇作成した単元計画(評価規準)を使用しての授業実践例の作成(平成23年度)

〇まとめと考察(平成23年度)

 

研究の成果と考察

1 現行の学習指導要領と新学習指導要領の学習評価の相違点について

今回、学習評価の相違点を明らかにするために比較した資料は、以下のとおりである。

現行
  • 「評価規準の作成、指導方法の工夫改善のための参考資料」(小・中)平成14年2月(高)平成16年3月国立教育政策研究所
  • 「評価規準の作成のための参考資料」(小・中)平成22年11月国立教育政策研究所
  • 「小学校、中学校、高等学校及び特別支援学校等における児童生徒の学習評価及び指導要録の改善等について(通知)」(高)「評価の観点の趣旨」のみ平成22年5月文部科学省

(1)評価の観点の趣旨の相違点の一例

  現行
思考・判断
語尾
「考え、判断し、それらを表している」 「考え、判断している」

(2)内容のまとまりごとの評価規準に盛り込むべき事項の相違点の一例

  現行

関心・意欲・態度

「公正・協力」

「勝敗」

小学校1から4年
「受け入れる」

中学校1・2年

「認める」

中学校3年

「冷静に受け止める」

小学校1から4年

「素直に認める」

小学校5・6年

「正しい態度をとる」

中学校

「公正な態度をとる」

(3)評価規準の設定例の相違点の一例

  現行

知識・理解

語尾

〇〇について、理解したことを、言ったり書き出したりしている

〇〇について、学習した具体例を挙げている

〇〇を知っている

(4)比較から見えてくること

今回、現行と新の学習指導要領の学習評価の評価規準を比較したが、新のものが現行のものよりも整理されていることを感じた。しかし、新しい学習指導要領の評価規準を作成するに当たっては、現行の評価規準を作り変えたものではなく、新しい学習指導要領から新たに作ったものなので、直接的に比較をするには難しさを感じた。また、文言が変わっていても、新旧で評価する規準が変わったものと、規準は大きく変わっていないが、新では系統性を明確にするためにことばが変わっているものとがあり、新旧を比較するよりも、新の系統性を明確にすることで、より相違点が確認できると考えられる。

2 新学習指導要領の評価規準の系統性について

(1)評価の観点の趣旨の系統性の一例

  小学校 中学校 高等学校

関心・意欲・態度

「愛好的態度」

進んで

積極的に

主体的に

(2)内容のまとまりごとの評価規準に盛り込むべき事項の系統性の一例

  小1・2年 小3・4年 小5・6年 中1・2年 中3年

関心・意欲・態度

「愛好的態度」

進んで 進んで 進んで 積極的に 自主的に

関心・意欲・態度

「健康・安全」

気を付ける 確かめる 気を配る 留意する 確保する

(3)評価規準の設定例の系統性の一例

  小1・2年 小3・4年 小5・6年 中1・2年 中3年

関・意・態

「公正・協力」
「責任・参画」

友達と協力
して、用具
の準備や片
付けをする
友達と協力
して、用具
の準備や片
付けをする
用具の準備
や片付けで
分担された
役割を果た
分担した
役割を果
たす
自己の
責任を
果たす

(4)系統表から見えてくること

ア 関心・意欲・態度

学年があがるにつれ、ことばが変わり、その変化を見ることで段階があがっていくことが、わかりやすくなった。中学校では、「愛好的態度」、「公正・協力」、「責任・参画」、「健康・安全」の4カテゴリーで分けられるが、小学校では、協力と責任の要素があると考えられ、4カテゴリーでは、うまく分けられないものもあると考えられる。

また、変化していくことばの意味については、学習指導要領解説に説明があるので、その意味や違いを理解して、指導や評価につなげていくことが大切である。

イ 思考・判断

系統的に作られているが、特に設定例で小学校と中学校の接続の部分でうまく接続しきれない部分があると感じた。それは、小学校では、思考・判断の中に知識の要素が含まれていること。小学校、中学校の児童生徒の発達段階を考えると思考・判断といっても同じようにはとらえられないこと。小学校と中学校とでは想定している単元の長さが違うので、その中で求められる思考・判断も変わってくることなどがその理由として考えられる。

小学校では、思考・判断を「課題(の設定)」と「課題の解決のために(楽しむために)工夫すること」の2つのカテゴリーに分けてみた。また、中学校では、「体の動かし方や運動の行い方」、「体力や健康・安全」、「運動実践につながる態度」、「生涯スポーツの設計」という4カテゴリーに分けた。小学校では技能とのかかわりが大きいが、中学校では、技能、態度、知識のかかわり合いの中で、指導や評価を行っていくことが大切であると考えられる。

ウ 技能

思考・判断と比べ、技能は小学校から中学校への接続がスムーズで、系統性が非常によくわかるようになっている。「ねらい・条件」と「動き」の2つのカテゴリーに分けたが、「ねらい・条件」、「動き」のそれぞれで、学年があがるにつれて段階があがっていくことがわかる。また、その中で技能の段階が下がる部分があるが、それはゲームが「易しいゲーム」、「簡易化されたゲーム」から「(正規のルールの)ゲーム」へと設定が変わるからである。

エ 知識・理解

知識・理解については、学習内容は変わるが、評価規準の語尾だけでは、系統性について見て取れない。しかしながら、学習指導要領解説によると、「体育理論」の内容を精選したことに伴い、知識に関する内容を、技能と関連させて学習することが大切であるとしている。すなわち、系統性のある技能と関連させることで、知識・理解の観点も系統性をもって指導と評価を行っていくことにつながると考えられる。

保健についても、「理解している」と「理解したことを言ったり、書い(書き出し)たりしている」ということばで終わっているので、系統性について見て取れない部分があるが、学習の内容が小学校、中学校、高等学校とあがるにつれて、「身近な生活」、「個人生活」、「個人生活及び社会生活」という広がりがあり、また、理解の仕方が「より実践的に」から「より科学的に」という段階に変わっていることから、系統的に指導と評価を行っていくことが大切である。

 

まとめと次年度に向けて

今回、新学習指導要領に対応した学習評価について、評価規準を比較、分析することから理解を深めようとした。来年度提示される高等学校の盛り込むべき事項及び設定例とともに、さらに理解を深めていきたい。

また、次年度は、新学習指導要領に対応し、指導と評価が一体となったもので、評価が効果的・効率的に行えるように工夫された学校が使いやすい資料を作成していきたいと考える。

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「中学校・高等学校期競技者のための傷害予防トレーニングメニューの研究」(単年度研究)

調査研究班 柳瀬 実 黒岩俊彦 中村徳男 藤川未来 三浦陽輔
研究アドバイザー 慶應義塾大学 大谷俊郎
World Athlete Club Academy 岩崎由純

 

はじめに

中学校、高等学校期競技者の競技力向上を図る上では、心身の発達段階を十分配慮するとともに科学的理論に基づいた適切なトレーニングを長期的な視点に立って実施する必要性がある。特に中学校、高等学校期においては、各種目の専門的トレーニングを始める前段階として、基礎体力をバランスよく高めるトレーニングに重点を置くことが、スポーツ傷害の予防や競技力を向上させる上で重要であると考える。

そこで、平成19年度から平成21年度に体育センターで行った競技力向上支援に関する研究で得られた基礎体力に関する項目の測定値とスポーツ傷害の発生状況等を基に、中学校、高等学校期競技者に必要な体つくりや傷害予防に関するトレーニングのメニューを作成し、競技力向上のための一助とした。

 

内容及び方法

1 研究の内容

過去3年間の調査・研究及び今回のデータの分析の結果を基に、スポーツ傷害発生の部位別に重点を置いたスポーツ傷害予防トレーニングメニューを作成し、それをスポーツ傷害予防ハンドブックDVD版にまとめる。

2 研究期間

平成22年4月から平成23年3月

3 研究の方法

(1)スポーツ傷害の部位別、発生頻度の分析

(2)文献研究

(3)データの分析、調査結果を基にアドバイザーの協力によるスポーツ傷害予防トレーニングメニューの作成

(4)スポーツ傷害予防ハンドブックDVD版の作成

 

スポーツ傷害の分析結果

データは平成15年度から19年度に競技力向上コースに参加した選手であり、スポーツドクターに問診を受けた男子806名、女子570名が対象である。なお、傷病発生については受診時点のものである。

1 スポーツ傷害発生状況

表1 男女別のスポーツ傷害発生状況

男子45.0%、女子61.1%の選手が「けが」をしながらスポーツを行っている。女子のスポーツ傷害発生率が高い。

2 スポーツ傷害発生数の細部位別状況


図1 男女別、細部位別のスポーツ傷害発生状況

男子の発生率で一番高いのは、腰背部、次いで膝関節、足関節、肩関節、下腿、肘関節の順である。

女子の発生率で一番高いのは、腰背部、次いで下腿、膝関節、足、足関節、大腿、肩関節の順である。

3 発生頻度の高いスポーツ傷害

(1)腰背部

腰背部で発生している傷病は、男女ともに「腰痛症」が最も多い。傷病の診断は、病院での検診(MRI検査、CTスキャン等)ではないためにはっきりとした診断名が出せないケースが多く、従って「腰痛症」と診断された中には、様々な病名が含まれている可能性がある。「腰痛症」を競技別にみると、男女ともにすべての競技に発生が見られる。

(2)膝関節

膝関節で発生している傷病は、男女で異なり、男子は筋力が強く「膝痛」「ジャンパー膝」「オスグッド病」「膝蓋大腿関節痛」等、大腿部と下腿部をつなぐ「脚伸展機構」への傷病が多く発生している。一方、女子は骨盤の幅が広いため、下肢のX脚傾向が強く膝が内側に入り易い(knee-in、toe-out)ことから「膝蓋骨亜脱臼」「靱帯損傷」などの発生率が高いと考えられる。

男子の「膝痛」発生率をみると競技の特性に関係なく受傷している。ジャンパー膝はジャンプ競技の特性があらわれている。女子の「膝蓋骨亜脱臼」「靭帯損傷」の発生割合をみると、インドア競技に多く見られ、脚を強く踏み込む競技に多く発生している。

(3)下腿

下腿部で発生している傷病は、男女ともに「シンスプリント」が最も多く、女子の発生割合が高い。男女ともに多くの競技に発生がみられる。男子はバレーボール5.1%、陸上競技4.6%の順に発生率が高く、女子はバスケットボール13.7%、バレーボール8.9%の順に発生率が高い。

(4)足関節

足関節で発生している傷病は、男女ともに「捻挫・靭帯損傷」が最も多く、女子の発生割合が高い。また、男女ともに多くの競技に発生がみられる。

(5)肩関節

上肢部で発生している傷病は、男女ともに「肩痛」が最も多い。男子は硬式野球、6.8%、バレーボール1.9%の2つの競技に発生が見られ、女子はハンドボール5.1%、バレーボールの3.6%、剣道3.4%、の順に発生率が高い。

(6)肘関節

肘関節で発生している傷病は、男子「肘痛(内側部痛)」「野球肘」である。女子の発生率は低い。男子の競技別では「肘痛(内側部痛)」硬式野球5.4%、「野球肘」硬式野球4.5%である。

4 腰背部と各部位のスポーツ傷害発生の関連性

腰背部は男女ともに、スポーツ傷害発生率が最も高い部位である。「腰背部に傷病が発生している選手が、各部位の傷病発生に関連」があるか。また、「各部位に傷病が発生している選手が腰背部の傷病発生に関連」があるか比較分析した。

各部位ともに、「腰背部」のけがをしながら、「各部位」のけがをしている割合よりも「各部位」のけがをしながら、「腰背部」のけがをしている割合が高く、男女ともに、「肩関節と腰背部」には受傷割合に有意差がみられた。

 

考察

1 スポーツ傷害発生状況

スポーツ傷害受傷の割合は男子が45.0%で、女子が61.1%となっており、女子の受傷割合が高い。これは身体の骨格構造、ホルモンによる脂肪量、筋肉量の違いによるものと考えられる。

2 スポーツ傷害発生数の部位別状況

男女ともに競技種目によって酷使している部位が違うために、スポーツ傷害の部位別発生率に差がみられる。身体を細部位別にみると、男女ともに腰背部、膝関節、足関節、下腿の発生率が高い。腰背部が男女ともに発生率第1位なのは、身体の中心部であり、動作の始点となっているコア部であるために、どの競技も高くなっていると考えられる。

3 発生頻度の高いスポーツ傷害

「発生頻度の高いスポーツ傷害」のテータ分析の結果、傷害予防のためには「スタビライゼーション」「モビリティー」「アライメント」「筋力アップ」が重要であることが明らかになった。また、「筋力アップ」メニューについては競技の特性に合わせて「神経」「安定」「アクティブ」「リアクティブ」の順に体力要素を高めていくことが大切である。

4 腰背部と各部位のスポーツ傷害発生の関連性

「肩関節と腰背部」「腰背部と肩関節」については受傷割合に有意差がでていることからも、各部位にスポーツ傷害が発生した場合は、治癒に専念することが大切であり、そのまま活動を続けていると腰背部にスポーツ傷害を併発する可能性があると推測される。

 

まとめ

本研究で得られた分析結果を基に、スポーツ傷害予防のための「ストレッチ」及び「ストレングスメニュー」を作成した。トレーニングメニューは競技の特性に合わせて、正しい動作で正確に行うとともに、回数、時間、セット数、頻度など個人の能力に合わせて活用することが大切である。なお、具体的なトレーニングメニューは体育センターホームページに掲載されているので、中学校・高等学校期の多くのスポーツ競技者の傷害予防及び競技力の向上に役立ててもらえれば幸いである。

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「幼児の運動能力測定総括」
ー幼児の運動能力測定事業4年間のまとめー(単年度研究)

調査研究班 藤川未来 中村徳男 黒岩俊彦 柳瀬 実 三浦陽輔
研究アドバイザー 日本体育大学 西山哲成

 

はじめに

文部科学省の報告(2005)によると、児童の体力・運動能力は全国規模の測定が始まった1960年代より1980年代のピーク出現まで連続的に上昇したが、その後から現在まで20年以上の長期間にわたって低下傾向がみとめられている。幼児についても1960年代からの希少な蓄積データより、その年代推移をみれば、児童とほぼ同じように1980年代にピークが発現し、その後2002年まで連続的な低下傾向を示し、2008年までは低下のまま停滞傾向であることが示されている。このことから、「子どもの体力・運動能力」のレベルは、児童期の前段階である幼児期のレベルを強く反映するものと推察でき、幼児期もしくはそれ以前の子どもにおける運動能力向上のための指針も必要であると考えられる。そこで、神奈川県教育委員会教育局スポーツ課では、平成18年度から平成21年度の4年間にわたり「幼児の運動能力測定事業」を実施し、平成22年度については4年間の総括として、幼稚園・保育所等における幼児の体力つくりに活用できる報告書を作成することとした。

 

内容及び方法

1 研究期間

平成22年4月から平成23年3月

2 報告書内容整理

(1)事業の概要

ア 4年間の取組

イ 運動能力測定の実績

(2)県内幼児の運動能力を構成する基本的な体力要素

ア 運動能力測定結果より

イ アンケート調査結果より

(3)幼児の運動能力向上へ向けて

ア 県や市町村が取り組むべき施策の方向性

イ 幼稚園・保育所及び家庭等で取り組める効果的な体力つくりについて

(4)その他

 

事業の概要

1 運動能力測定実績

(1)平成18年度:幼稚園17園 保育所32園 4,159名測定

(2)平成19年度:幼稚園13園 保育所34園 2,828名測定

(3)平成20年度:幼稚園3園 保育所29園 1,995名測定

(4)平成21年度:幼稚園6園 保育所32園 2,387名測定

2 運動能力測定種目

3 アンケート調査

(1)園アンケート

施設の広さ、クラス数・人数、職員構成、運動あそび時間、体力測定経験・運動指導担当講師の有無 他

(2)担任アンケート

運動あそびの時間・頻度・強度、測定動作の理解度

(3)保護者

家族構成、きょうだい数、親子あそび頻度、習い事、食欲、就寝・起床時間 他

 

子どもの体力・運動能力の向上をめざして

1 神奈川県幼児の体力・運動能力測定結果

2 調査結果要約

(1)運動あそびの頻度・強度

「園での運動あそびが、より高い頻度・高い強度であった幼児の運動能力測定値は高い」という結果より、運動あそびの時間を確保することだけではなく、子どもたちが夢中になって、何回も続けて取り組むことができる運動あそびの実践が必要であるといえる。

たとえば、全力で逃げる鬼あそびや、より活発な動きを引き出すドッジボールなど、子どもたちが楽しくあそびながら体力・運動能力を身につけるような場の設定が効果的である。

(2)神経系が発達する時期

「3から6歳児の中でも、低年齢群ほど記録の伸びが大きい」という結果より、子どもの運動能力発達の可能性は、幼児期においてより大きいことが確認された。

児童期の運動能力のレベルは、幼児期のレベルを強く反映していると考えられる。

(3)測定・継続測定の効果

測定結果のフィードバックや継続測定の実施は、「運動活動に対する園や先生、保護者の意識を変える」「限られた園生活内での運動あそびの内容変化と時間の延長を生じさせる」「家庭での保護者との運動あそびの頻度を増加させる」という効果がある。

継続的な測定の実施、およびその結果を知ることは、子ども・園関係者・保護者における運動への取組みについての強い動機づけとなると考えられる。

3 実践例

(1)広いスペースでの全力疾走

幼児期の子どもは、スタートしてから15から20mくらいで初めてピーク速度に達する。広いスペースでこそ可能となる全力走の経験不足が、走能力低下の一因となっていると考えられるので、障害物のない広い場所で自分の最高速度を経験させることが大切である。

(2)あそび場の工夫

ア ドッジボールを木に吊るす

ジャンプしたら届きそうな高さにボールを吊るしておくと、子どもたちは何回もジャンプする。少しずつ高さを変えて3から4個用意して、子どものチャレンジ意欲を刺激することが効果的である。

イ 的当てボードを設置する

“投げる”という動作は“走る・跳ぶ”動作に比べて、日常生活で頻繁にみられる動きではないため、意識的に場を設定する必要がある。

大人が一緒にあそぶことで、子どもたちも的からの距離を伸ばしたり、投げ方を指導していなくても大きく腕を引くことができるようになったり、体重移動ができるようになったりする。

(注)砂や小豆を入れたお手玉を使用する。

お手玉は簡単に握ることができ、多少の重さが手首を使う投げ動作の感覚を高める。

また、弾まないので的当ての主目的となる“投げる”ことに集中できるという効果もある。

ウ ハイハイ&両足跳びで移動

あそびとあそびのつなぎをスキップや両足跳びで移動することや、室内であれば後方ハイハイやクモ歩き、クマ歩き、雑巾がけなどをすることによっても全身の身のこなし能力が高まる。

(3)応援する・ほめる

小さなことでも大げさにほめることで、子どもたちはその気になってどんどん動くようになる。

<例>「カッコいい!」「スゴイね!」「もう1回見せて」「ヤッタァ」 など

(4)異年齢交流

魅力ある動きの見本になるような年上の子どもたちと交流し、「まねをしようとする」「追いつこうとする」ことでも運動の強度は高まりやすい。

異年齢交流における運動あそびや、近隣の大学や高等学校に協力依頼して、一緒にあそぶ時間を設定してみるのも効果的であると考える。

4 すぐに出来そうなこと

(1)幼稚園・保育所

運動あそびの「強度が高い」子どもは「頻度も高い」傾向がある。

幼稚園や保育所では、現在実施している活動の強度を重視することにより、自発的でより活発な運動あそびを誘発できると考えられる。

(2)家庭

「週1回以上」保護者と運動あそびをする子どもは、「運動能力測定値が高い」傾向がある。

神奈川県では、親子ふれあい体操で3033(サンマルサンサン)運動を推奨しており、1日30分・週3回・3ヶ月を目標に運動することも効果的であると考える。

5 継続測定の効果

運動能力測定の結果をもとに運動あそびの内容の検討や運動指導の導入、運動プログラムの実践や施設・用具の工夫等、体力・運動能力の向上に向けた対応策が考えられるとともに各園や家庭において実践されることが期待できる。

また、その後定期的に運動能力測定を実施することにより、実践内容を評価・修正することが可能となる。

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「県民の体力・スポーツに関する調査」
ー県民の体力・スポーツに関する実態の推移をとおしてー(単年度研究)

スポーツ推進班 大石泰平 市川嘉裕 小峰譲二 亀谷 学 布施誠之

 

はじめに

神奈川県及び神奈川県教育委員会では、県民の皆さんが、いつでも、どこでも、だれでも、いつまでも、スポーツに親しむことのできる生涯スポーツ社会を実現するために、神奈川県スポーツ振興指針「アクティブかながわ・スポーツビジョン」を平成16年度に策定した。その後、平成18年9月に改定された国のスポーツ振興基本計画や、平成19年7月に策定した県の総合計画「神奈川力構想」などと整合を図るために見直し、その一部が改定された。

ここでは子どもから高齢者まで、みんなが元気に笑顔で、外遊びや運動、スポーツを「する」「みる」「支える」ことができるような社会を実現させることが望まれている。また、平成27年度を目標年度とし、成人の週1回以上のスポーツ実施率を2人に1人(50%)以上にすることを目指している。

本研究では今年度調査および平成18年度調査、平成13年度調査で実施した調査回答の推移を比較し、今後の生涯スポーツ社会の推進に向けた、地域スポーツ振興の手段方策を検討していく資料の一つとするために本テーマを設定した。

 

内容及び方法

平成22年4月1日現在、神奈川県に居住する満20歳以上の男女個人3,000人を調査対象とし、層化二段階無作為抽出を行い、アンケート調査票を用いた往復郵送調査法を実施した。有効回収標本数は1,359サンプル、有効回収率45.3%であった。

平成22年度調査と、平成18年度調査及び平成13年度調査の各年度の結果を比較し、分析及び考察を行った。

 

結果と考察

1 成人の週1日以上運動やスポーツを行った人の割合(神奈川県・全国)

神奈川県の成人の週1日以上運動やスポーツを行った人の割合は平成13年度調査では37.1%、平成18年度調査では39.7%と上昇し、平成22年度今回調査では42.2%である。

全国の成人の週1回以上スポーツ実施率は、男女でスポーツ実施率の割合が変容しながらも、昭和63年の26.3%から平成21年の45.3%まで上昇し続けている。

2 成人の週1日以上の運動・スポーツを行った人の割合の神奈川県と全国との比較

成人の週1日以上運動・スポーツを行った人の割合は全国の平成12年度調査と、神奈川県の平成13年度調査との差は1.4ポイントであったが、平成18年度には全国と神奈川県との差は4.7ポイントに拡大し、全国の平成21年度調査と、神奈川県の平成22年度調査の差は3.1ポイントまで縮まったが、依然として神奈川県に比べ全国の週1日以上運動やスポーツを行った人の割合が高い。

3 世代別の1年間に行った運動・スポーツの日数

週1日以上運動やスポーツを行った人の割合は平成22年度調査では全世代が42.2%であった。世代ごとに比較すると30代が最も低く29.2%であった。30代から60代までは世代が上がるにつれて週1日以上運動やスポーツを行った人の割合は上昇している。

全世代と30代との差は平成13年度調査では4.1ポイントであったが、平成18年度調査では12.4ポイントに、平成22年度調査ではさらに13.0ポイントに広がり、最も大きな差となっている。

平成13年度調査では週1日以上運動やスポーツを行った人の割合は全世代で1番低かったのは20代であった。ところが平成18年度調査及び平成22年度調査では30代が一番低くなっている。このことから30代に着目し、調査結果に特徴があるか見ていくことにする。

4 30代に見られる他の世代との比較

次の項目において30代は他の世代と比べ顕著な傾向が見られる。

(1)普段の健康観 

(2)精神的な疲労

(3)運動不足

(4)健康や体力への注意 

(5)健康・体力維持への留意点

(6)運動・スポーツをしなかった理由

(7)運動・スポーツ活動の満足度

(8)公共スポーツ施設への要望 

(9)今後設置を希望する公共スポーツ施設

(10)運動・スポーツクラブ等への加入状況

以上の項目の内容をまとめると、30代は健康と感じているが、精神的疲労を抱えており、運動不足傾向の意識は高い。健康や体力についてはあまり注意を向けないので、健康のための運動・スポーツをする機会も少ない。

また生活が忙しく、運動・スポーツ活動を実施する時間の確保ができないこともあり、仲間は多いがあえて積極的にお金のかかる運動・スポーツは行っていない。そのため、運動・スポーツクラブへの加入率は低く、運動やスポーツを十分に行って満足だという人も少ない。これらのことはかねてから社会の課題になっていることや、昨今の様々な社会情勢の変化も関連していると思われる。

さらに平成22年度調査での30代の回答者が、10年前は20代であったことになるが、9年前に実施率の低かった20代の人たちが9年経って平成22年度調査においてその傾向を引き継いだことも考えられる。今後、県全体の実施率を向上さるためには、30代のライフスタイルとしての課題の検証と、現在の30代の方に向けた、より運動やスポーツが実施できる仕組みを提供していくことも必要であると考えられる。

5 地区別の1年間に行った運動・スポーツの日数

週1日以上運動やスポーツを行った人の割合は平成22年度調査では全世代が42.2%であった。地区ごとに比較すると西湘地区が最も高く51.1%であった。

平成22年度調査で西湘地区では過去2回の調査に比べ、倍近い割合の人が運動・スポーツをするようになった。今まで運動をしなかった人が運動をするようになったと考えられる。

このことから西湘地区に着目し、調査結果に特徴があるか見ていくことにする。

6 西湘地区に見られる他の地区との比較

次の項目において西湘地区は他の地区と比べ顕著な傾向が見られる。

(1)健康や体力への注意 

(2)運動・スポーツをした理由

(3)公共スポーツ施設への要望 

(4)今後設置を希望する公共スポーツ施設

(5)加入したい運動・スポーツクラブ等

(6)総合型地域スポーツクラブの認知状況

以上の項目の内容をまとめると、西湘地区は健康や体力についてはここ数年で大きく意識が高まってきており、運動・スポーツ活動を行うことで自らを向上させたいという変化が伺える。一人で行う種目だけでなく、友人や仲間との交流も図りながら運動やスポーツ活動を実施したいという傾向が伺え、そのための活動ができる施設を要望している。そして、地域にあるスポーツクラブの中では、多種目・多世代・多志向型の総合型地域スポーツクラブがよく知られ、総合型地域スポーツクラブへの加入の意向も高いと考えられる。これらの傾向がみられる背景には西湘地区では小田原市において、総合型地域スポーツクラブが平成19年度と20年度に2つ創設されたことが関っているのではないかと考えられる。

西湘地区の方の「自らの意思で、健康を保ち体力を高めるために運動・スポーツ活動を行う」という意識とこの地区に2つの総合型地域スポーツクラブが創設され、その認知度が高まり活動をしていることとの相互作用が働き、平成18年度調査から平成22年度調査にかけて成人の週1回以上のスポーツ実施率が倍近く上昇したことに関連があるのではないかと考えられる。

 

まとめ

平成22年度調査で見えてきた、週に1回以上の運動・スポーツ実施率が世代間で最も低い30代と、地域間で最も高い西湘地区の傾向を示してきた。30代に顕著に見られる傾向や背景は、将来へ向けた健康への過信と、職場や家庭などでの精神的な疲労感を強く抱え、仕事や家庭生活の中から常に忙しいと感じ、運動・スポーツ活動を実施したくてもとても難しいと考えていることである。運動・スポーツ活動を実施する場合でも、個人や家庭内で取り組みやすく、安価で、子どもと一緒に活動することのできる水泳やテニス、キャンプなどをイメージしている傾向がある。このことから30代の方へのスポーツ実施率向上へ向けた取組みとしては、親子でのコミュニケーションをより強調した取組みや、運動・スポーツ活動(ファミリーコミュニケーション運動や、スポーツコミュニケーションデー、県民スポーツ週間スポーツフェスティバル)などを身近な施設で実施し、充実していくことが重要になってくると考えられる。

また、平成22年度調査の30代が9年前の20代の傾向を引き継いでいたことから、今後の健康を維持するためには、運動・スポーツ活動が必要であることを理解してもらうためにも、30代に向け運動・スポーツ活動を注視し、興味を持てるような啓発活動を実施していくことが必要であると考えられる。

また、西湘地区に見られる、健康志向への意識の変容や、常に運動・スポーツ活動を自ら実践していく前向きな取組み姿勢を全県に発信していく必要があると考えられる。自主的にクラブを創り運営し活動していく一連の流れを体験することで、世代間や地域間の交流の重要性も理解し、地域コミュニティとしての要素も盛り込まれ、充実した満足感の得られる運動・スポーツ活動へと変化していく大切さを、さらに普及・啓発していく必要があると考えられる。これらのひとつの形として総合型地域スポーツクラブの創設、普及・定着があり、運動・スポーツ実施率向上に重要な意味のある活動になるのではないかと考えられる。平成22年度調査結果が、各世代・各地域へフィードバックされ、成人の週に1回以上の運動・スポーツ実施率向上へ向けた取組みとなり、今後のスポーツ振興施策作成等へ役立つことがあれば幸である。

 

参考文献

1)アクティブかながわ・スポーツビジョン第3章改訂版(神奈川県・神奈川県教育委員会,2008)

2)スポーツ振興基本計画(文部科学省,2006)

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「県内市町村におけるスポーツ振興施策等に関する調査」
(2年継続研究の1年次)

スポーツ情報班 落 隆久 江守哲也 田所克哉 米山教子

 

はじめに

平成12年9月に文部科学省が策定した「スポーツ振興基本計画」を受け、神奈川県では平成16年12月に、国の計画に基づき県としてのスポーツ振興の考え方や取組みを示した、神奈川県スポーツ振興指針「アクティブかながわ・スポーツビジョン」が策定された。また、平成23年度には、国の「スポーツ振興基本計画」及び県の総合計画(実施計画)の改定内容を受け、「アクティブかながわ・スポーツビジョン」全体の中間評価及び全体的な改定を行う予定となっている。このことは、県の指針がこの5年間で県内各市町村の施策において、どのように具現化されているかという視点で、見取ることも可能であると考えられる。

そこで、毎年、神奈川県教育委員会教育局生涯学習部スポーツ課が県内各市町村スポーツ主管課に対し行っている、スポーツ関係事項調査の結果を国の施策や県の指針等と照らし合わせながら確認を行うことにより、施策の浸透度を把握するとともに、今後の神奈川県におけるスポーツ振興のPDCAサイクルの一つの評価の材料となり得るのではないかと考え、本テーマを設定した。

 

内容及び方法

1 内容

神奈川県教育委員会スポーツ課が実施している県内市町村におけるスポーツ振興に係る計画及びスポーツ関係事業等についての調査結果を集計・分析した。

2 方法

(1)調査対象 

県内33市町村スポーツ主管課

(2)調査項目

ア 体育・スポーツ振興事業主管課等について

イ スポーツ振興に係る計画について

ウ スポーツ主管課が所管する事業(自主、委託、補助)等について

エ 選手強化事業について

オ 表彰制度について

カ 学校体育施設開放事業について

キ スポーツクラブの状況について

ク スポーツ大会等をサポートするボランティア組織について

ケ 企業等スポーツ施設の地域住民への開放状況について

コ スポーツ施設について

 

結果と考察

1 体育・スポーツ振興事業主管課等について

「高齢者スポーツ」や「障害者スポーツ」については、多くの市町村でスポーツ主管課の所管ではなく、それぞれより関係の深い課(高齢福祉課等)が所管する傾向にあることが明らかになった。

スポーツの振興を目的とした財団等(体育協会は除く)を設置している市町村はそれほど多くなく、また、財団等が所管する事業の調査結果から、主事業は「生涯スポーツ」や「健康・体力つくり」に関する事業であることが推測できる。

2 スポーツ振興に係る計画について

スポーツ振興に係る計画の策定状況は約9割の市町村で策定済みであった。また、未策定の市町村においても平成24年度までに策定予定との回答を得ており、平成24年度までにはほぼすべての市町村において、スポーツ振興に係る計画が策定される予定であることが明らかになった。

3 スポーツ主管課が所管する事業(自主、委託、補助)等について

「高齢者を対象としたスポーツ事業」、「障害者を対象としたスポーツ事業」ともにスポーツ主管課以外で実施している市町村が多く、それぞれの専門分野の事業として整理されていると推測できる。

「青少年を対象としたスポーツ事業」については、多くの市町村でスポーツ主管課の事業として実施しており、サッカーやダンスといった青少年に人気のある種目が多岐にわたって展開されていることが明らかになった。

「健康・体力つくりを主眼とした事業」については、半数以上の市町村で実施されていたが、スポーツ振興財団等による実施が一番多い割合となっており、今後はスポーツ振興財団や体育協会等に事業の所管が移行していくのではないかと考えられる。

神奈川県独自の取組みである1日30分、週3回、3ヶ月継続して、運動やスポーツを暮らしの一部として習慣化するための「3033運動の普及・啓発の取組み」については、約3分の2の市町村で実施の回答を得たが、スポーツ振興計画に位置付けられている市町村は約1割と、必ずしもそれぞれの施策に反映されている状況にないことが明らかになった。

「スポーツを通じた国際交流事業」については、実施している市町村が約1割と低い実施率であったが、昨今の経済状況を勘案すると、現状を維持すること自体が課題であることが推測できる。

「スポーツ指導者登録制度」については、約4分の1の市町村で運営されていたが、市町村の規模等によっては、登録制度の運営自体が困難なところもあると考えられるため、今後は、県立体育センターが運営する神奈川県スポーツリーダーバンクの活用方法などの周知が必要であると考える。

「スポーツ情報提供事業」については、神奈川県立体育センターとしても「指導者」、「イベント・講座」などの情報提供を行っているが、約半数の市町村で実施されていた。今後は、未実施の市町村はもとより、すべての市町村におけるスポーツ情報提供サービスを補完できるようにしていくことが必要であると考える。

4 選手強化事業について

選手強化実施状況については約半数の市町村で、選手の各種大会へ派遣費の補助という形で実施されていた。

5 表彰制度について

スポーツ振興功労者や優秀選手を対象に、約7割の市町村で表彰制度を有していた。審査方法は、自治体が設置した審査委員会やスポーツ振興審議会、体育協会が設置した審査委員会による審査であった。

6 学校体育施設開放事業について

スポーツ振興にとって、学校体育施設の有効活用については以前から課題としてあげられているが、市町村立小・中学校においては、体育館や運動場など概ねすべての学校で、いずれかの施設は開放されていた。

7 スポーツクラブの状況について

スポーツ主管課でスポーツクラブ数及び登録人数を把握しているという回答を得た市町村は約半数であったが、スポーツ主管課でスポーツクラブの状況を把握していない市町村においては、体育協会やスポーツ振興財団等で状況を把握していることが考えられる。

8 スポーツ大会等をサポートするボランティア組織について

ボランティア組織を設置している市町村は低い値を示したが、市町村によっては、イベントごとにボランティアを募っていたり、スポーツ主管課以外の課によって運営されていた。また、設置率の低い理由として、大会やその他の事業の数や規模により組織をつくる必要性を感じていないことが考えられる。

9 企業等スポーツ施設の地域住民への開放状況について

地域住民への企業等のスポーツ施設の開放状況を把握している市町村は約4割であった。また、それらの市町村においては、税制の優遇措置についてはされていないことが明らかになった。

10 スポーツ施設について

一部もしくはすべてのスポーツ施設で無休化が実施されている市町村は約4割であった。無休化が実施されていない市町村においては、施設のメンテナンスや人手不足を理由に実施されていなかった。

スポーツ施設の利用申込み等の電子化については、約4分の3の市町村で実施されていたが、未実施の市町村においては、初期投資や維持管理費、施設数の少なさを理由に実施されていなかった。

指定管理者制度については、約6割の市町村で導入されていることが明らかになった。導入していない市町村においては、費用対効果が期待できない等を理由に指定管理者制度の導入に踏みきれていないことも明らかになった。また、指定管理者制度の導入により、サービスの内容の質や利用料金の値上げなどが課題としてあげられる。

 

まとめ

これまで、神奈川県教育委員会スポーツ課で実施されてきた「市町村スポーツ関係事項調査」の結果を集計・分析したことにより、スポーツ振興に関する取組みの全県的な傾向を把握することができた。

「健康・体力つくり」や「高齢者スポーツ」等は多くの市町村でスポーツ主管課以外の他の専門部署やスポーツ振興財団等が担う傾向にあることが分かり、専門部署が単独でスポーツ事業を展開する方向にあることが伺えた。

一方で、神奈川県独自の取組みである「3033運動」については、約3分の2の市町村において、主にチラシやグッズの配付によって普及・啓発の協力を得られているものの、それぞれのスポーツ振興計画への位置付けは約1割と、必ずしも施策に反映されている状況にないということも明らかになった。神奈川県立体育センターでは、「3033運動普及員養成講座」により県内の各地域で「3033運動」を普及できる人材をはじめ、県内の様々なイベントにおいて年10回程度のキャンペーン活動を行っているが、今後はさらに市町村における健康・体力つくりに係る施策において、「3033運動」の活用を促進するために広報活動を充実させることや創意工夫が必要不可欠であることも明らかになった。

今回の調査により、様々なスポーツ関係事項において、実施している市町村、実施していない市町村、あるいは実施でできる市町村、実施できない市町村の実態もあきらかになった。今後は、実施していない、実施できない市町村への支援を県としてどのようにしていくかの再考が求められるであろう。

 

今後の方向性

平成22年に公表された「スポーツ立国戦略」をスポーツ振興施策の今後の基盤として「アクティブかながわ・スポーツビジョン」の改定も進められることが予想される。また、神奈川県立体育センターで実施した「県民の体力・スポーツに関する調査」の調査結果も本県における今後のスポーツ振興施策に反映していく必要がある。

そのため、次年度は、調査項目や質問の内容を吟味するとともにスポーツ振興におけるいくつかの課題に焦点をあてて分析し、神奈川県のスポーツ振興に有用な資料を作成する予定である。

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ボールを持たないときの動きの習得を目指したタグラグビーの学習
ー戦術的な課題を意識させることを通してー

伊勢原市立緑台小学校 峰 孝一

 

目的

今まで、私が実践してきたサッカー、バスケットボールの授業では、ボール操作とメインゲームが中心だったため、ゲームの様相にボールを持たないときの動きが現れることが少なかった。その原因としては、ゲームの攻防の各局面で「相手が防御している」ということを児童の課題として捉え、具体的にどうすれば解決できるかという点に着目してこなかったからだと考える。

そこで本研究では、ボール運動の中で、事前の経験や個人の技能の差が小さく、ボール操作が容易で、ボールを持たないときの動きに目を向けやすいと思われるタグラグビーを取り入れた。そして、子どもたちがボールを持たないときの動きができるようにするために、戦術的な課題を意識させることを通したタグラグビーの学習指導法を明らかにしていくことを目的とする。

 

内容及び方法

1 研究の仮説

タグラグビーの授業において、戦術的な課題を意識させることによって、子どもたちがボールを持たないときの動きができるようになり、攻防の楽しさや喜びを味わうことができるだろう。

2 分析の視点

(1)戦術的な課題を意識することができたか。

(2)ボールを持たないときの動き(サポート)ができたか。

(3)タグラグビーの攻防の楽しさや喜びを味わうことができたか。

3 実践研究の計画

(1)期間

平成22年9月28日(火曜日)から10月29日(金曜日)10時間扱い

(2)場所

伊勢原市立緑台小学校

(3)対象

第6学年1組(28名)

(4)単元名

タグラグビー

(5)ねらい

運動への

関心・意欲・態度

ルールを守り、友だちと助け合って練習や

ゲームを進んで行うことができる。

運動についての

思考・判断

自分のチームの特徴に応じた作戦を考えて、

練習やゲームを行うことができる。

運動の技能

ゲームに発揮されるようなタグラグビーの特

性に応じたランやパスのボール操作やボール

を持たないときの動きができる。

(6)単元計画

ねらい1: ボール扱い、ルール、仲間に慣れながら、いろいろなチームとゲームを楽しみ個人やチームの力を高める。
ねらい2: ゲームを楽しみながら、高まった力で、チームごとに作戦を考え、攻め方を工夫する。

 

(7)指導の工夫

ア 戦術的な課題を意識する過程について

ゲーム中のある運動場面から「トライを目指してボールを運ぶのを相手が防御している」という戦術的な課題に気付き、「相手をかわしてトライを目指してボールを運ぶためにはどう動くべきなのか」という戦術的な課題の解決方法がわかる過程を、毎時間ごとに、ビデオ映像を図式化した掲示物、発問、話し合いを予測しながら作成した。

イ 作戦を考えたタスクゲームについて

6、7、8時間目の授業では、正規の人数である5人でも作戦が実行できるように、まず6時間目に5対3を行い、守備が2人いない分の空きスペースを見つけ、トライしやすい状況にした。7時間目は、より高度な作戦が実行できるように、5対4を行った。8時間目は、5対□を行い、子どもたち自身がチームの作戦の成熟度に応じて、守備の人数を選ぶこととした。

このゲームを通して、自分たちのチームにとって、有効な作戦、有効でない作戦がわかり、5対5のゲームの時に、有効な作戦を実行させてほしいと考えた。

 

結果と考察

1 戦術的な課題を意識することができたか

「相手が防御している」という戦術的な課題を気付かせるために、前時の授業のビデオを見せてから、教師からの発問を投げかけた。ビデオでは86%、発問では75%の児童が本時の習得させたい動きに気付いたと答えている。

「相手をかわしてボールを運ぶためにはどう動くべきか」という戦術的な課題の解決方法をわからせるために、ビデオを見て発問した後、話し合いの時間を取り、その後ビデオ映像を図式化した掲示物を使って説明した。そして、チームに分かれて作戦ボードで各々の動きを確認していった。話し合いでは78%、掲示物では85%、作戦ボードでは86%の児童が本時の習得させたい動きがわかったと答えている。

この要因としては、ビデオや発問で戦術的な課題に気付くことがしっかりできていたため、話し合いも活発になったと考える。また掲示物を使って話し合いのまとめを行うことで、戦術的な課題の解決方法を頭の中で整理してわからせることができたと考える。また言葉だけでなく、作戦ボードを使ったため、チームとしての作戦を明確に共有できたと考える。(図1、図2)

2 ボールを持たないときの動き(サポート)ができたか

ボールを持たないときの動き(サポート)を習得させるために、毎時間の授業の始めに、視覚的資料等を使い、戦術的な課題を意識させることに取り組んだ。その結果、2時間目はサポート数が少なかったが、時間を追うごとにサポート回数が上昇していった。(図3)また2時間目は、フリーでのサポート(〇)をした人の割合が11%であったが、10時間目には、63%と大きく上昇した。(図4)

これらは、9、10時間目になると、守備力が増したのにも関わらず、大幅に上昇したことは、児童一人ひとりがしっかりサポートの意識を持っていたからだと考える。

3 タグラグビーの攻防の楽しさや喜びを味わうことができたか

毎時間に取った学習カード「タグラグビーは楽しかったですか」の結果を見ると、「楽しかった」と感じた児童が全体的に多かった(図5)が、2時間目、5時間目に下降している。これは、5対5のゲームで守備の人数が多いために、うまく攻撃できないで、トライができなかったことが原因であると考える。

また9時間目、10時間目も5対5のゲームであったが、大きく上昇している。これは、トライの有無に関わらず、チームの作戦が成功した結果が上昇につながっていると考える。

 

まとめ

次のことが明らかになった。

〇視覚的資料と発問による話し合いを行うことで、戦術的な課題を意識することができた。

〇戦術的な課題を意識させることで、ボールを持たないときの動きができるようになった。

〇ボールを持たないときの動きができるようになったことで、タグラグビーの攻防の楽しさや喜びを味わうことができるようになった。

また今後の展望として次のようなことが考えられる。

〇今回の授業で習得した「ボールを持たないときの動き」を、中学校で行う球技のゴール型の種目で発揮し、さらに難易度の高い戦術的な課題を学習内容で設定することが可能になると思われる。今回の授業で習得したものを中学校のゴール型につなげていくと考えると(表1)のようになる。

表1 共通する動き(ゴール型)の転移(一例)

小学校5、6年 中学校1、2年
タグラグビー サッカー、バスケットボール等 ゴール型
ボール保持者が前のスペースを見つけて走る 相手にとられない位置でドリブルすること パスやドリブルによるボールキープ
フリーでのサポート ボールを保持する人と自分の間に守備者を入れないように立つこと ボールとゴールの見えるポジショニング
得点しやすい場所に移動し、パスを受けてシュートなどをすること ゴール前への動き出し

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学習形態・教材を工夫して習得する体育理論
ー運動領域での活用を求めてー

小田原市立白山中学校 稲毛真弓

 

目的

中学校学習指導要領が改訂され、中学校では、運動領域に関する知識の内容と、体育に関する知識の内容が整理、明確化され、体育に関する知識は体育理論の名称に改められ、各学年3単位時間以上実施することとなった。そこで本研究では、学習形態や教材を工夫した体育理論の学習内容の習得と、体育理論で得た知識の運動領域への活用の実践例を提示し、中学校体育授業の改善に向けた基礎資料を得る目的とする。

 

内容及び方法

1 研究の仮説

学習形態や教材の工夫をすることにより、体育理論の学習内容を習得することができるであろう。また、体育理論で得た知識を運動領域(ハンドボール)の学習活動で活用することができるであろう。

2 分析の視点

(1)学習形態や教材の工夫をすることにより、体育理論の学習内容を習得することができたか。(第1学年から第3学年)

(2)体育理論で得た知識をハンドボールの学習活動で活用することができたか。(第1学年)

3 実践研究の計画

(1)期間

平成22年10月18日(月曜日)から11月19日(金曜日)
各学年体育理論3時間、ハンドボール9時間

(2)場所

小田原市立白山中学校

(3)対象

第1学年4組(38名)
第2学年1組(39名)
第3学年2組(38名)

(4)単元名

体育理論(第1学年から第3学年)
ハンドボール(第1学年) 

4 学習内容及び指導の工夫(体育理論)

(1)学習内容に対しての、学習形態・学習教材の主なねらいとする観点

学習形態や学習教材を取り入れて授業を行う際に、表1に示すように主なねらいを設定し取組を進めた。

表1学習形態・学習教材の工夫の主なねらいとする観点

(2)体育理論の学習内容の習得につながるように、学習形態では参加型学習の手法を取り入れ、自分の考えを持ったり、発表したりという時間を設けることにより、学習内容が自分自身の事柄として捉えられるようになると考える。

(3)学習教材の工夫

ア 題材設定の工夫
イ 発問の工夫
ウ 具体的・視覚的情報の工夫
エ ワークシート
オ スポーツだより

 

結果と考察 (注)1年生の結果と考察について述べる。

1 学習形態や教材の工夫をすることにより、体育理論の学習内容を習得することができたか

図1事後アンケート「授業形態について」

図1は、1年生の事後アンケートで授業形式について質問したものである。いずれの形式も70%以上の生徒が「よかった・まあまあよかった」と答えていることがわかる。

友達との意見交換〈バズセッション〉は3時間扱いの1時間目に使うことで関心・意欲・態度を高めることに有効であった。2人組での話し合いということで自分の考えを発表しやすく、お互いの考えもよく伝わっていた。その結果、79%の生徒が運動スポーツに関する興味・関心が高まったと答えている。また、ワークシートの記述内容には関心・意欲・態度に関する記述の他に、知識・理解に関する記述も見られた。これは、体育理論の学習内容が、初めて知る内容であったためと考えられる。(図2)

図2、1時間目、授業の自己評価及び授業後の分類

2時間目の授業はスポーツを支える活動について深く考え、思考・判断を高めるためにインターネット検索を行った。その結果、76%の生徒が自分の考えを持ちながら授業に参加できたと答えている。また、ワークシートの記述内容には思考・判断に関する記述が多く見られた。(図3)

図3、2時間目、授業の自己評価及び授業後の分類

3時間目の授業は、グループ学習〈ブレインストーミング〉を、練習の方法を考える場面で活用した。生徒からは、学習したことを生かしながら、様々な意見が出された。その結果、58%の生徒が「あっわかった、ああそうか」と感じながら授業に参加できたと答えている。また、ワークシートの記述内容には、関心・意欲・態度に関する記述や、思考・判断に関する記述も見られた。(図4)

図4、3時間目、授業の自己評価及び授業後の分類

事前・事後の確認テストの結果を図5に示したが全ての問いで正答率が上がり、知識・理解の高まりが見られた。

また、実際の教師の評価も3観点について評価を行ったが、3観点ともおおむね満足できる状況であった。 

このように、学習形態や教材の工夫は体育理論の授業に有効であり、運動やスポーツに関する関心・意欲・態度、思考・判断、知識・理解も高まり、教師から見た実際の評価もおおむね満足できる状況であった。2年生、3年生についても同様の結果が得られた。

図5、事前・事後、確認テスト正答率

以上のことから体育理論の学習内容を習得することができたと考える。

2 体育理論で得た知識をハンドボールの学習活動で活用することができたか

体育理論1時間目、体育理論2時期間目を学習することで、話し合い活動や審判などの活動、アドバイスなどが活発に行われるようになった事が、図6、図7に示す自己評価の数値の高まりや映像による分析などから見られた。また、体育理論3時間目を学習することで自分やチームの課題にも目が向けられ、課題解決の方法がより理解でき、アドバイスも行えるようになったと思われる。よって、体育理論で得た知識がハンドボールの学習活動で活用されたと考える。

図6、バンドボール自己評価、図7、ハンドボール自己評価

 

まとめ

今回の研究では、学習形態や教材の工夫をすることにより、生徒が体育理論の学習内容を習得できることと、体育理論が運動領域で活用されることを求めて授業を行った。その結果、次のことが明らかになった。

〇多くの生徒が学習形態や教材の工夫をすることで、体育理論の学習内容を習得することができた。

〇1年生では体育理論で得た知識を運動領域(ハンドボール)で活用することができた。

特に、参加型学習は、運動やスポーツへの関心・意欲・態度を高めることに有効であり、その関心・意欲・態度が高まることで、思考・判断や知識・理解に結び付いていくものと考えられる。今後は様々な手法をどのような学習場面にあてはめていくかをさらに工夫していく必要がある。

今回の授業で1年生では、体育理論で得た知識が課題解決のための話し合いの場面や、互いに支えあう活動としてハンドボールの学習活動で活用することができた。今後も保健体育の学習全体を通し、指導していくことが望ましいと考える。

また、体育理論の計画と配置は、今回の方法の他にも様々な方法が考えられるので、今後さらによりよい取組を考えていく必要がある。

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イメージをとらえた創作ダンス
ー表現形式を取り入れた授業づくりー

県立横浜清陵総合高等学校 橋本晴子

 

目的

はじめに、これまでの私の創作ダンスの授業を振り返ってみると、生徒には、「テーマや動きのイメージがもてない」「動くことに恥ずかしさがある」などの課題があり、イメージをとらえて自己を表現することに楽しさや喜びを味わう創作ダンスの特性に十分に触れることができない状況にあった。

そこで、この特性に触れるために、山田敦子の「表現形式としての舞踊」をもとに、松本千代栄の「ダンスの学習内容(=課題)」の学習方法を使い、創作ダンスの構造を「運動」「変化」「連続」「構成」「作品」ととらえ、学習過程にこれを設定し「運動」「変化」「連続」の過程でテーマや動きのイメージをとらえる活動を行い、その後「構成」「作品」を含めた過程で、仲間と作品を作り上げるという表現形式を取り入れることによって、イメージをとらえて踊る創作ダンスの授業実践に取り組み、ダンスの特性に触れる授業づくりの一助とする。

 

内容及び方法

1 研究の仮説

創作ダンスの授業において、表現形式を取り入れた授業づくりをすることによって、イメージをとらえて、みんなで踊る楽しさや喜びを味わうことができるだろう。

2 分析の視点

(1)表現形式を踏まえた授業に取り組んだか

(2)イメージをとらえることができたか

(3)踊る楽しさや喜びを味わうことができたか

3 実践研究の計画

(1)期間

平成22年9月24日(金曜日)から10月26日(火曜日)10時間扱い

(2)場所

神奈川県立横浜清陵総合高等学校

(3)対象

第1学年2組(女子)

(4)単元名

ダンス・創作ダンス

(5)ねらい

関心
意欲
態度

創作ダンスの楽しさや喜びを味わうことができるよう、練習や発表
の際に、互いの違いやよさを認め合おうとしている。また、自己の
責任を果たそうとしている。健康・安全に留意して学習に自主的に
取り組もうとしている。

思考
判断

創作ダンスの表したいテーマにふさわしいイメージや、それぞれの
ダンスの特徴に合った踊りの構成など、課題に応じた運動の取り組
み方を工夫している。

技能

創作ダンスでは、表したいテーマにふさわしいイメージをとらえ、
個や群で、緩急強弱のある動きや空間の使い方で変化をつけて即興
的に表したり、簡単な作品にまとめたりして踊るための動きができ
る。

知識
理解

創作ダンスの名称や用語、踊りの特徴と表現の仕方、体力の高め方、
交流や発表の仕方など、理解したことを言ったり、書き出したりし
ている。

(6)単元計画(10時間扱い)

単元計画

 

(7)指導の工夫

ア 見せ合い
イ 相互作用
ウ グループ学習
エ スライド映像の活用

 

結果と考察

本研究では、中・高等学校学習指導要領解説の技能の内容を表現形式に当てはめて、次のように定義した。

運動

身近な生活や日常動作、スポーツなどのテーマや動き

からイメージをとらえる。

変化

緩急(時間的要素)や強弱(力の要素)のある動きや

空間の使い方で変化を付けて即興的に表現する。

連続

動きを繰り返したり、組み合わせたり、つなげたりし

て変化を付けた「ひと流れの動き」で表現する。

構成

「はじめ-なか-おわり」のひとまとまりの動きで表現

をして踊る。

作品 イメージをとらえて、簡単な作品にして踊る。

また、イメージについても、次のように定義した。

イメージの深まり

事象や動き自体がテーマになる段階

(直接的なイメージが内容)

イメージ

「感覚でとらえたもの」

「心に浮かぶものごと」

イメージをとらえる

テーマや題材が感覚でとらえたものや

心に浮かぶものごとで、動きに現され

ていること。

1 表現形式を踏まえた授業に取り組んだか

松本富子の「ダンス授業評価の構造」の「とりくむ」の質問項目を「はい」「どちらでもない」「いいえ」で集計して、1時間ごとと事前と事後の比較をした。

1時間ごとの比較では、3時間目と8時間目で「はい」と回答した生徒が減り、活動の停滞がみられたが、どの質問項目も授業が進む過程で、8割以上の生徒が「はい」と回答し、事前と事後の比較では、6割以上の生徒が「はい」と回答したことから、概ね生徒は表現形式を踏まえた授業に取り組んだと考えられる。(図1)

図1、「めあてに向かって練習できた」の1時間ごとの比較(ダンス授業評価の構造「とりくむ」より抜粋)

2 イメージをとらえることができたか

松本富子の「ダンス授業評価の構造」の「おどる・つくる」の質問項目を「運動」「変化」「連続」「構成」「作品」に分類し、「はい」「どちらでもない」「いいえ」で集計して、1時間ごとと事前と事後の比較をし、別に事後アンケートも行った。1時間ごとの比較では、即興的に表現する段階では、3時間目に活動の停滞がみられ、簡単な作品にまとめる段階では、8時間目に活動の停滞がみられたが、授業が進む過程で8割以上の生徒が「はい」と回答し、前半のVTR分析からは「感覚でとらえたもの・心に浮かぶものごと」を即興的に表現している様子がみられ、後半のVTR分析からはテーマや題材が感覚でとらえたものや心に浮かぶものごとで動きに現されている様子がみられた。事前と事後の比較では、7割以上の生徒が「はい」と回答し、生徒は「運動」でイメージをとらえ、「変化」で緩急強弱の動き空間の使い方がわかり、「連続」でひと流れの動きがわかり、「構成」でひとまとまりの動きで表現をして踊れ、「作品」でイメージをとらえて簡単な作品にして踊れたと考えられる。また、事後アンケートの「表現形式を取り入れることでイメージをとらえることができたか」の質問では、6割の生徒が「はい」と回答していることから、概ね生徒はイメージをとらえることができたと考えられる。(図2)

図2「表現形式を取り入れることでイメージをとらえることができたか」

3 踊る楽しさや喜びを味わうことができたか

「村田芳子によるダンスの楽しさ・魅力に関する因子と項目」の質問を「はい」「どちらでもない」「いいえ」で集計して、事前と事後の比較をし、別に事後アンケートも行った。事前と事後の比較では、6割以上の生徒が「はい」と回答し、生徒は表現形式を取り入れたことや見せ合い、グループワークといった活動を通して、イメージをとらえて踊る楽しさや人に見てもらう楽しさ、人とかかわる楽しさなど、いろいろな楽しさを味わったと考えられる。また、事後アンケートの「踊る楽しさや喜びを味わうことができたか」の質問では、6割の生徒が「はい」と回答していることから、概ね生徒は踊る楽しさや喜びを味わうことができたと考えられる。(図3)

図3「踊る楽しさや喜びを味わうことができたか」

 

まとめ

本研究では、授業に表現形式を取り入れることによって、イメージをとらえて踊る創作ダンスの授業実践に取り組み、ダンスの特性に触れる授業づくりに役立つ提案を行うことを目的に研究を進めてきた結果、次のことが明らかになった。

〇表現形式を踏まえるには、「即興的に表現する」過程と「簡単な作品にまとめる」過程の2段階の設定がのぞましい。

〇踊る楽しさや喜びを味わうために、表現形式を取り入れることは有効であった。

〇見せ合い・相互評価は、他の班や人のよさを取り入れられることや見られることでわかることがあり、新たに発見することや気付くことで作品をつくる過程で効果的であった。

〇グループ学習(グループワーク)は、教え合ったり、助け合ったり、認め合うことで作品をつくる過程で効果的であった。

また、今後の課題として、イメージを深めていくための手立てや授業を展開していく中で、毎時間のねらいを達成させるために、生徒に伝えるための「ことば」と考えさせるための「発問」をはっきりさせて提示していくこと、生徒が心を開放して伸び伸びと活動できる学習内容の工夫などを考える必要がある。

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