第35号(平成19年度/2007)

掲載日:2018年3月28日

発刊のことば

神奈川県立体育センター

所長 佐々木 悦子

 

このたび、当体育センター指導研究部の平成19年度の研究報告書をまとめた「体育センターレポート第35号」を発刊する運びとなりました。

本号は、指導研究部の研修指導室、スポーツ科学研究室、生涯スポーツ推進室、スポーツ情報室が行った研究と、体育センター長期研修員の授業研究により構成されております。これらの研究につきましては、抄録のみの掲載となっておりますが、下記のページに研究報告書を掲載しておりますので、併せてご活用いただければ幸いに存じます。

体育センターは、子どもから高齢者まであらゆる年齢層の方たちが日常生活の中で主体的にスポーツを実践し、生きがいつくり、体力つくりを促進していくことができるよう、県のスポーツ振興の中核機関として県民のスポーツライフを総合的にサポートしております。今後も、より多くの方に心身共に健康で豊かな生活を営むことができるよう、質の高いサービスを提供していくとともに、指導者及び実践者への支援、スポーツ情報の提供、調査研究に取り組んでまいりますので、益々のご指導、ご鞭撻を賜りますよう、お願い申し上げます。

最後に、本号掲載の研究推進に、ご協力を賜りました皆様に厚くお礼申し上げ、発刊のことばといたします。


目次

調査研究

《研修指導室》

《スポーツ科学研究室》

《生涯スポーツ推進室》

《スポーツ情報室》

 

体育センター長期研修

《小学校》

横須賀市立大塚台小学校 筒井 宣行

《中学校》

大和市立光丘中学校 山内 辰徳

《高等学校》

県立六ツ川高等学校 村山 明夫

 


体育学習における技能の系統に関する研究
ー運動の技能の基となる知識を手がかりとしてー(2年継続研究の1年次)

研修指導室 野間基子 小野澤克己 江守哲也 石井美乃 大越正大 松野明

はじめに

体育・保健体育で効果的な学習指導を行うためには、「何を、いつ、どの順序で」指導するかといった系統性の視点が重要であると言われている。そこで、本研究においては小・中・高等学校12年間の体育・保健体育の学習内容の特定と配列が課題となっていることを踏まえ、各段階における運動の技能の基となる知識を明らかにすることで、全ての領域・種目の学習内容を全校種、各学年において系統的に整理し、教育現場における指導と評価の一体化の取組の一助としたいと考える。

 

内容及び方法

学習指導要領解説に示される各領域・種目における学習内容、特に技能の内容に着目し、学年進行のそれぞれの段階で身に付けさせたい力の基となる知識を整理し、次の方法で学習内容の特定と配列のモデルを提示することとした。

  • 資料収集・文献研究により発達段階等、系統性についての整理の根拠(理論)を特定する。
  • 各領域、種目の学習内容を技能の系統性の観点で整理する。
  • 学習指導要領の改訂を踏まえて各校種・各学年別に整理する。
  • 「体育・保健体育学習ハンドブックー小・中・高等学校の12年間の学習内容の整理モデルー(仮称)」を制作する。

 

研究成果

1 学習内容の系統に関する理論ー中央教育審議会答申に見る研究の意義ー

平成20年1月17日、中央教育審議会より「幼稚園、小学校、中学校、高等学校及び特別支援学校の学習指導要領等の改善について」の答申(以下答申)が文部科学大臣に提出された。答申では現行の学習指導要領のキーワードである「生きる力」は、新しい学習指導要領においても引き継がれることが示された。またこれまでの「学習指導要領の理念を実現するための具体的な手立てが、必ずしも十分ではなかった」と指摘した上で「ゆとり」と「詰め込み」の二項対立での議論ではなく、基礎的・基本的な知識・技能の習得と、これらを活用する思考力・判断力・表現力等をいわば車の両輪として相互に関連させながら伸ばしていくこと、そして「教えて考えさせる」指導を徹底し、基礎的・基本的な知識・技能の習得を図ることの重要性が述べられている。

答申では、学習指導要領改善の基本方針として、「体育科、保健体育科については、生涯にわたって健康を保持増進し、豊かなスポーツライフを実現することを重視し改善を図る」ことを引き続き示した上で、学習したことを実生活、実社会において生かすことを重視し、学校段階の接続及び発達の段階に応じて指導内容を整理し、明確化・体系化を図ると述べている。特に体育では、「それぞれの運動が有する特性や魅力に応じて基礎的な身体能力や知識を身に付け、生涯にわたって運動に親しむことができるように、発達の段階のまとまりを考慮し、指導内容を整理し体系化を図る」と述べている。ここでいう「身体能力」とは、「体力及び運動の技能により構成されるもの」であり、「知識」は、「意欲、思考力、運動の技能などと相互に関連しながら、身に付いていくもの」と説明されている。さらに「知識」は「動きの獲得の過程を通して一層知識の大切さを実感できるような指導が求められる」と述べている。例えば、バレーボールの直上パス(トス)の学習では、「連続20回続けること」を目標とする学習は何を教えているかが曖昧であるが、「ボールの落下地点に入ること」を目標とする学習は、教える内容が明確になる。バレーボールの直上パス(トス)の運動が成立する原理・原則は「ボールの落下地点に入ること」であり、これが具体的な知識となるものと考えられる。

このように、児童生徒を「わかる」につなげ「できる」ようにするためには、発達段階(身体的発達と知識理解力)とその領域・種目の技能的特性を考慮し、「何を教えればよいのか」ということを「知識」として整理することが必要不可欠と考える。

2 学習内容を特定し、配列するにあたって根拠とした理論

学習内容の捉え方

(1)名称 「覚える」「暗記する」といったまとまり

【例】

ルールとしての「ライン」
動きのまとまりとしての「サーブ」「スパイク」

(2)方法 「練習の仕方」などの方法のまとまり

【例】

「スパイクする感覚を身に付ける練習を先に行ってからレシーブの練習を行う」
「サーブがエンドラインから入らない場合にラインよりも前に出てサーブが入る一から打ち、
少しずつ下がって打つ」

(3)概念(考えの枠組み)→その運動が成立する原理・原則、法則性

【例】

「上方にあがったボールをレシーブするためには、落下地点にはいることがある」
「前方から飛んでくるボールをレシーブするためには、ボールの正面にはいることがある」

参考:「中等教育資料」平成18年5月号より

学習内容は、「名称」「方法」「概念(考えの枠組み)」の分類が考えられる。

ここでいう「考えの枠組み(その運動が成立する原理・原則、法則性)」が知識として身に付ける重要な学習内容となり、「何を教えるのか」(学ぶのか)の具体の部分にあたると思われる。

次のイメージ図(試案)は、現行の学習指導要領解説においては各領域の内容を「技能の内容」、「態度の内容」、「学び方の内容」の3つで整理統合しているが、実際の授業では4観点(関心・意欲・態度、思考・判断、運動の技能、知識・理解)で身に付けたい力を整理し、生徒の実現状況を評価している。これらの観点には全て基となる「知識」があり、この「知識」が教える内容(=学習内容)を抽出するのに有効であることを示したものである。


学習内容のイメージ(試案)

3 学習内容の整理

ここまで述べてきた基礎理論に基づいて、次の手順で学習内容の整理を行った。

(1)「技能の内容」の基となる知識を配列する。

(2)目指す運動の様相から必要な技能を設定する。

(3)技能の内容以外でも必須の知識であれば記入する。

(4)運動が成立する原理・原則を中心に記述する。

(5)「これを教えれば出来るようになる」という観点内容を精選する。

(6)高度な技術になりすぎないように留意する。

(7)該当種目(競技)の精通者に助言を得る。

また、文章の標記については、次のルールに従って次に示すフォーマット(例)に基づいて全ての校種、学年における各領域・種目の学習内容を書き出した。

  • 主部と述部からなる文章で記述する。
  • 文体には「・・・には、・・・ある(こと)」を基本形とする。
  • 強制する表現は用いないこととする。
  • 「条件」や「要因」を示す表現とする。
  • できばえ、能力、意欲を含めないで記述する。

整理のフォーマットは、発達段階を考慮するという観点から、1年生―2年生―3年生に分けて整理するが、「初めの段階」―「進んだ段階」―「さらに進んだ段階」等の学習段階と捉えることとする。

整理票
整理表のフォーマット(例)

 

今後の方向性

2年継続研究の1年目にあたる今年度は、体育・保健体育で効果的な学習指導を行うために各領域・種目の学習内容の中でも特に技能の内容に着目し、学年進行のそれぞれの段階で身に付けさせたい力の基となる知識を整理し、各校種、各学年における学習内容を具体的に明示することをねらいとして文献研究や研究協議を中心に作業を進めてきたが、次のような課題が残った。

  • 技能の内容以外の態度の内容、学び方の内容を扱っていないこと。また、平成20年度に告示される新学習指導要領の解説においても学習内容の示し方が現行のように技能の内容、態度の内容、学び方の内容で示されるかが未確定であること。
  • 武道のように基本動作が技能に位置付けられているものは、学年進行で配分してそれらの技能を配列できないこと。
  • 学年進行で示す学習内容と技能の高まり(習熟度)及び評価規準の高さ(ABC)が混同してしまいがちであったこと。
  • 今回の各校種、各学年における学習内容の特定は、現行の学習指導要領解説を根拠としたものであり、新学習指導要領には対応していないこと。
  • これらの課題を踏まえて、次のように次年度の研究につなげていきたい。
  • 技能の内容以外の態度の内容および学び方の内容の項目について、学習指導要領改訂の動向をさぐりながら、どのように整理するか検討する。
  • 上記の検討を踏まえて総合的に学習内容の整理をする。
  • 専門家の意見をさらに聴取し、各領域・種目における各校種・各学年の学習内容(技能の内容)をさらに検討し精度を高める。
  • 新学習指導要領の内容を踏まえ、継続的に修正を加える。
  • 研究の成果を製本し県内全公立小・中・高等学校(政令・中核市を除く)に配付するとともに、体育センターホームページに掲載する。

これらの取組により、児童生徒が生涯にわたる豊かなスポーツライフの基礎を培えるような、よりよい学習展開ができるよう、それぞれの内容に応じた指導計画、評価計画等を作成する際の参考となる体育学習の指導資料を作成していきたいと考える。

 

<参考・引用>

平成18年度全国都道府県指定都市教育委員会学校体育担当者指導主事研究協議会配付資料ほか

このページの先頭へ戻る


ウォーキング時における中高齢者の主観的運動強度に関する研究
(3年継続研究の1年次)

スポーツ科学研究室 中村徳男 水野昌享 小峰譲二 重本英生 藤川未来
研究アドバイザー 法政大学 日浦幹夫

 

はじめに

生活習慣病予防のための健康・体力つくりには、日常の生活において積極的に運動を行い、全身持久性や柔軟性、筋力・筋持久力および身体組成などの健康関連体力(health-relatedfitness)を高める必要がある。特に、健康・体力つくりのための運動等を処方する場合、全身持久性の維持・向上が大きな要素となるので全身持久性を測定・評価することが必要になる。

全身持久性を評価し、効果的な目標運動負荷を設定するために使われる一般的な指標としては心拍数が考えられるが、測定には最大努力に近い運動負荷を与える必要があり、また、運動実践の場面では運動中に心拍数の測定が必要になる。特に、中高齢者にとっては安全性重視の視点から強い運動負荷をかけずに測定でき、かつ運動実践時に煩雑さの無い方法が望まれる。

安全で簡便な全身持久性の指標としては主観的運動強度(rating of perceived exertion)、(以下「RPE」という。)が考えられる。RPEは生体にかかる運動負荷を運動者がどの程度の「きつさ」として感じているかを測定するものであり、全身持久性の測定・評価および有酸素運動時における効果的な強度設定に際して有用であると考える。

本研究では、ウォーキング時における中高齢者のRPEと生理的運動強度の指標である心拍数の関係において個人差にかかわる体力、体組成や運動習慣及び性格との関連性を分析し、運動指導のための基礎資料を得ることを目的とした。

 

内容及び方法

1 研究期間

平成19年4月から平成20年3月

2 対象

県内在住・在勤・在学ですでに運動を始めている方やこれからはじめようとしている40歳以上の方。

3 募集方法

「健康・体力つくり支援コース」と称する事業で、モニターを公募

4 測定項目と測定方法

(1)問診票(身体各部症状、罹患暦、通院・入院・手術暦等)

(2)運動・性格・生活習慣に関するアンケート

(3)形態、体組成の計測

(4)脈拍の測定

(5)フィットネステスト測定

ア 柔軟性:長座体前屈
イ 筋力・筋持久力:30秒上体起こし
ウ 瞬発力:脚伸展パワー
エ 平衡性:開閉眼片足立ち

(6)RPEの尺度表

本研究では、5から19で表現された15段階尺度RPE表を使用した。

(7)RPEの測定方法

カルボーネン法における運動強度が25%、35%、45%、55%、65%、75%、85%の心拍数時に、被験者の前方に掲示した15段階尺度表から感じるRPEを数字で答えてもらい記録した。

 

結果

1 属性および受診者の状況について

健康・体力つくり支援コースの年代別と性別の属性は表2のとおりであった。

表2 年代別・性別の属性(単位:人)
年代 男性 女性 総計
40代 3 8 11
50代 6 26 32
60代 20 35 55
70代以上 11 13 24
総計 40 82 122

2 RPEと心拍数について

RPEと心拍数との間には相関関係が認められた。また、心拍数とRPEの運動強度別散布図から、RPEのばらつきに幅があり、心拍数とRPEの関係には個人差があると考えられる。

3 RPEと各項目の関係

分析に当たっては、各項目を2から3群に分類し、カルボーネン法による運動強度時におけるRPEとの関係を検討した。3群のグルーピングについては、各項目の測定値から男女別にパーセンタイル順位〈PR〉により対象者を測定値低群〈P33から〉(以下「低群」という。)、測定値中群〈P33から66〉(以下「中群」という。)、測定値高群〈P66から〉(以下「高群」という。)とした。

(1)RPEと性差について

性差とRPE平均値の比較においては、低い運動強度で女性の方が低い値を示すが、運動強度が高くなるにつれてその差はなくなり、運動強度75%では女性が男性を上回っていた。

(2)RPEと形態・体組成について

形態・体組成では、キャリパー法による体脂肪率とインピーダンス法による体脂肪率とRPE平均値の比較において、すべての運動強度で低群が高群よりも低くなっていた。また、キャリパー及びインピーダンスの体脂肪率と腹囲における運動強度45%から65%のRPE平均値は、どの群もRPE11"やや楽である"ーRPE13"ややきつい"で差が見られないが、運動強度65%を越えると低群が高群より低くなり、差も広がっていた。

(3)RPEとフィットネステストについて

フィットネステスト項目のうち、柔軟性の指標である長座体前屈については、すべての運動強度で高群とその他の群でRPE平均値に明らかな差が見られた。また、脚伸展パワーと開眼片足立ちでも、高群がその他の群より各運動強度でのRPE平均値が低い傾向にあった。

(4)RPEと性格について

性格については、我慢強さや忍耐力などの項目を得点化しているが、すべての運動強度で高群が他の群よりRPE平均値が低い傾向であった。

(5)RPEと生活習慣

生活習慣については、食習慣や睡眠時間などの項目を得点化しているが、すべての運動強度で高群、中群、低群の順でRPE平均値が低くなっていた。

(6)RPEと運動暦・運動習慣

運動習慣あり群と運動習慣なし群のRPE平均値は、すべての運動強度で運動習慣あり群が運動習慣なし群より低くなっていた。

(7)RPEとウォーキング実施状況について

ウォーキング実施状況では、すべての運動強度で実施群のRPE平均値が非実施群より低くなっていた。

(8)RPEと身体状況

身体状況問題あり群と身体状況問題なし群のRPE平均値を比較すると、運動強度65%から身体状況問題あり群が高くなっていた。

(9)RPEと薬の服用状況

薬の服用状況で、全運動強度で薬の服用あり群と服用なし群ではRPE平均値の差はあまり認められなかった。

 

まとめ

RPEは運動中の感覚をよりどころとする指標である。本研究では、カルボーネン法による各運動強度でのRPEには個人差は見られるものの、全体の傾向としては、心拍数との相関関係が確認された。また、運動強度55%から65%では、他の運動強度と比べ、各群のRPE平均値に差がなくなる項目が多く見られ、この区間におけるRPE感覚尺度がほぼRPE11"やや楽である"からRPE13"ややきつい"にあたることから、中高齢者は運動中の中程度の「きつさ」については、比較的認識しやすく、その結果個人差が少なかった可能性が考えられる。

RPEは、有酸素運動の運動強度設定の際に広く使われる心拍数と相関関係にあるとともに、個々の身体的要素及び精神的要素の影響を加味できる、安全で簡便な指標と考えられる。特に、個人差の大きい中高齢者の運動指導を考える上では、RPEを有効に活用する意義は大きい。

このページの先頭へ戻る


競技力向上支援に関する研究
ー競技力向上における基礎体力に関する研究ー(3年継続研究の1年次)

スポーツ科学研究室 小峰譲二 水野昌享 重本英生 中村徳男 藤川未来 大場瑞穂
研究アドバイザー 慶應義塾大学 大西祥平

 

はじめに

ジュニア競技者の競技力向上を図る上では、心身の発達段階を十分考慮するとともに科学的理論に基づいた適切なトレーニングを長期的な視点に立って実施する必要性がある。

特にジュニア期においては、各種目の専門的トレーニングを始める前段階として、基礎体力をバランスよく高めるトレーニングに重点を置くことが、スポーツ障害の予防や競技力を向上させる上で重要である。

体育センターでは競技力向上コースを設け県内の競技団体(チーム、クラブ等)や個人競技者を対象に、体力測定及びスポーツドクターによるメディカルチェック、トレーナーによるフィジカルケア等を実施してきた。

そこで同コースにおける基礎体力等の測定結果及び活動実態調査の分析をとおして、ジュニア競技者の基礎体力とスポーツ障害の状況を把握し、その結果に基づいて、各選手の基礎体力向上とスポーツ障害の予防と競技力向上支援のための基礎資料を得ることを目的にした。

 

内容及び方法

1 研究内容

県内競技団体(チーム、クラブ等)や個人競技者に体力測定、スポーツドクターによるメディカルチェック、トレーナーによるフィジカルケア、個人属性及び活動実態調査

2 研究の方法

(1)期間:平成19年4月から平成20年3月

(2)対象:平成15年度から平成19年度において実施した「競技力向上コース」に参加したジュニア競技者

(3)測定項目:形態計測、身体組成、基礎体力、専門体力

(4)調査項目:メディカルチェック(診察及び評価)、スポーツ活動に関する問診票、活動実態調査

(5)分析データ:平成15年から平成19年10月までの競技力向上コース参加者(高校生1058名、男612名、女446名)を分析の対象データとした

(6)分析方法:参加競技者のスポーツ障害の状況を把握し、性差、種目、基礎体力、専門体力との関係について分析した

 

結果

1 障害部位について

障害部位:腰背部、足部、膝関節、足関節、肩関節、大腿肘関節、手指、下腿、胸、上腕、首の12箇所

2 医学的評価対象者1058名の内訳

A 439名、B-1 523名、B-2 73名、C-1 19名、C-2 4名

医学的評価表

分類 管理 スポーツ 処方
A
(正常)
なし 継続 全く問題なし
B-1
(観察)
自己 継続 自己管理をしながらスポーツを続けてよい
B-2
(注意)
指導者 継続 指導者の管理下で注意しながらスポーツを続けてよい
C-1
(精査)
医師 継続
(制限)
医師による精密検査が必要であり、スポーツを続けてよいが練習量や練習方法に制限が必要なこともある
C-2
(治療)
医師 中止 医師による治療が必要であり、スポーツは一時中止する

3 競技種目別障害部位の状況

男子309名、女子310名

男子:腰背部74名、膝関節50名、足部49名、足関節48名、肩関節27名、肘関節26名、手指9名、大腿14名、下腿6名、胸3名、上腕2名、首1名

女子:腰背部83名、足部78名、膝関節46名、足関節46名、肩関節23名、大腿14名、手指7名、下腿6名、胸3名、肘関節2名、上腕1名、首1名

 

考察

1 障害発生状況の概要

(1)発生件数と医学的評価について

対象生徒1058人に対して、619人(58.5%)の生徒が何らかのスポーツ障害を持ちながら活動を続けている。そのうち障害の度合がB-1の生徒が84.5%と比較的軽い者が多い。

しかし、正しい管理方法を身につけなければ、やがてB-2、C-1、C-2という悪化の方向に向かう可能性が大きい。また、Aと診断された生徒も、障害を発生させた生徒と同じ練習をしていることを考えると、すべての生徒がスポーツ障害の未然防止や軽減・改善のため、正しいトレーニング方法やフィジカルケアの方法を身に付ける必要性は高いと言える。

(2)発生部位について

障害の発生部位では、腰背部が最も多く、次いで足部、膝関節、足関節の順になっており、スポーツの場面でもっとも多く使われる体幹を支える部位や床や地面に力を伝えるための部位に障害が多いことがわかった。このことは、基礎体力のトレーニング不足か練習後のケアが不十分であるか、もしくは、過度の練習によるオーバーユースを示唆していると考えられる。

(3)男女差について

スポーツ障害の発生率を見ると、男子の50.5%に対して女子は69.5%と19ポイントも上回っている。また、発生部位を見ると、男女とも「腰背部」が1位で、男子2位の「膝関節」「足部」「足関節」と差があるのに対し、女子は2位の「足部」が「腰背部」と同様に多く、次に「膝関節」「足関節」となっている。男女とも「足部」の障害は、足甲、足底、踵、アキレス腱、シンスプリントなどであることから、女子は、男子に比べて足底屈筋群が劣っていることが考えられる。また、女子は、男子に比べ体脂肪率が高く、筋力が劣る傾向があるので相対的に体重に対する筋力は低くなることが障害の多さに結びついていると考えられる。

2 各障害部位と基礎体力の関係について

(1)足関節

足関節に障害のある生徒は、ほとんどの項目、特に脚力の項目や「立幅とび」「反復横とび」などで低い割合を示している。これは脚筋力が全般的に劣っていると考えられる。

(2)膝関節

膝関節に障害のある生徒は、ほとんどの項目、特に脚力や「上体起こし」などで低い割合を示している。これは脚筋力や腹筋などの筋力が劣っていると考えられる。

(3)腰背部

腰背部に障害のある生徒は、特に「上体起こし」「長座体前屈」「脚筋力」の項目などで低い割合を示している。このことから筋力全般が劣っていると考えられる。

(4)足部

足部に障害のある生徒は、男子では「長座体前屈」「伸展/屈曲右」「伸展/屈曲左」を除く他の項目が平均よりやや低い割合となっている。女子については、多くの項目が平均よりやや低い割合となっている。ここから筋力全般が劣っていることが伺え、柔軟性も十分でなく動きの負荷が足部に集中すると考えられる。

(5)肩関節

肩関節に障害のある生徒のうち男子は、「上体起こし」「座位ステッピング」「長座体前屈」「伸展/屈曲右」「伸展/屈曲左」」を除く他の項目が平均よりやや低い割合となっている。

女子は、「握力」「立幅とび」「反復横とび」「全身反応時間」「長座体前屈」「背筋力」を除く他の項目が平均よりやや低い割合となっている。

(6)手指

男子、女子ともに該当者数が少ないために単純に比較できない。この障害部位についてはボール種目の競技特性によるものが多いと考えられる。

女子は「握力」がかなり平均を下回っている。この原因が、障害があることによるものなのか、握力がないから障害が多いのかの判断ができないので早計に結論づけることはできない。

 

まとめ

本研究においてジュニア競技者の障害状況を分析した結果、以下について明らかになった。

(1)半数以上は、何らかのスポーツ障害がある。

(2)障害の発生率は、男子より女子のほうが高い。

(3)障害の部位は、腰背部といった体幹及び膝関節、足部、足関節といった下半身に多い。

(4)多様な動きを要求される種目は、障害の部位も多様になる。

(5)スポーツ障害のある生徒が多い団体ほど基礎体力のバランスが悪い。

競技力を向上させるためには基礎体力、精神力、技術力を高めるためのトレーニングをバランスよく計画的に行う必要がある。特に、身体的な成長期にあるジュニア競技者については、将来の可能性を広げるためにも、技術力を支え、精神力にも影響する基礎体力のトレーニングについては、その年代の発育・発達の特性を考慮して行われなければならない。

トレーニング計画作成にあたっては、将来のための基礎づくりとスポーツ障害の予防という二つのことを念頭に置かなければならない。なぜなら、それぞれの競技種目に応じた専門的な体力を培うためには、その基礎となる体力が十分に備わってなければならず、また、ジュニア期におけるスポーツ障害は競技力向上の大きな妨げになるだけでなく、場合によっては競技者としての将来を奪うことにもなりかねないからである。

本研究におけるジュニア競技者の障害の発生部位は、腰背部を中心としたものが多かった。このことから、体幹を中心とした筋力トレーニングの計画的な導入が必要と言える。また、右腕と左腕、右足と左足といった左右のバランスや脚伸展筋力と脚屈曲筋力といった前後のバランスを整えることも障害の発生を防ぐポイントであることからも、特定の部位に偏ることのないような配慮が必要である。

一方、プレーによるオーバーユースと同様にトレーニングによってもオーバーユースが引き起こされることに留意し、トレーニング部位のメンテナンスであるフィジカルケアの重要性も同時に認識しなければならないことを付け加える。

このページの先頭へ戻る


学校体育に関する児童生徒の意識調査
ー高校生の意識ー(3年継続研究の3年次)

スポーツ科学研究室 重本英生 水野昌享 小峰譲二 中村徳男 藤川未来 大場瑞穂
研究アドバイザー 横浜国立大学 落合優

はじめに

体育センターでは、学習指導要領の改訂に伴い、昭和47年・昭和58年・平成6年と過去3回、おおよそ10年ごとに小・中・高校生(小学生は平成6年より)を対象に学校体育に関する意識を明らかにしてきた。そこで、現行の学習指導要領導入後、3年が経過したことを受け、平成17年度から3年継続事業として1年次小学生・2年次中学生・3年次高校生を対象に調査を行うことにした。

今年度は、高校生の意識等の現状を把握するとともに、平成17年度小学生調査、平成18年度中学生調査、及び平成8年度高校生調査と比較し、高等学校体育の今後の方向性を探るための基礎資料を得ることとした。

 

内容及び方法

1 研究期間

平成19年4月から平成20年3月

2 研究内容

児童生徒の学校体育に関する意識調査及び学習状況等に関する実態の調査・分析

3 研究方法

(1)調査

ア 調査期間:平成19年6月上旬から6月中旬
イ 調査方法:質問紙法による
ウ 調査対象者及び標本構成:県内10地区より抽出した県立高等学校20校、1校につき各学年60名、合計180名
エ 回答数と内訳:4,309名(男子2,143名、女子2,166名)

(2)調査項目

  1. 運動やスポーツの好き、嫌い
  2. 体育の学習の好き、嫌い
  3. 体育の学習の取組状況
  4. 体育の学習で楽しいとき、つまらないとき
  5. 体育の学習で好きな運動種目
  6. 好きな、または行ないたい運動やスポーツ
  7. 男女共習
  8. 安全面で心がけていること
  9. 休み時間や放課後の運動実践
  10. 運動部活動
  11. スポーツクラブ
  12. 帰宅後や休日の運動実践
  13. 体育をどんな先生に教えてもらいたいか

 

調査結果

1 多くの生徒が運動やスポーツが好き

運動やスポーツをすることが「好き群」の割合は、男子82.0%、女子69.6%であり、多くの生徒が運動やスポーツを「好き」であることがわかった。このうち体育「好き群」の割合は、男子89.0%、女子82.9%で、体育「嫌い群」の割合は、男子2.5%、女子3.4%であることから、「運動やスポーツ好きは体育好き」であり、いわゆる「運動好きの体育嫌い」は、ほとんど認められなかった。

2 体育好きの生徒は10年前より増加、小学生から学年の進行とともに減少していた体育好きが高校で増加傾向に

体育学習「好き群」の割合は、10年前より増加している。また「好き群」の割合が、中学生から学年進行とともに低下していたが、男子は高校2年生、女子は高校1年生を境に上昇に転じている。

3 体育の取組状況は10年前の高校生より高い、しかし中学生よりも全体的に低下

体育学習において、多くの生徒が自分なりの課題や目標を持ち、準備や片付けに進んで取組、友だちと教えあったり、協力し合ったりして、精一杯最後まで努力して活動している様子がうかがえた。

平成8年度調査との比較では「自分なりの目標や課題をもって活動する」生徒の割合は増加していたが、平成18年度中学生調査と比較すると、授業に対する取組が低下していた。

4 体育の楽しさは、男女で違いあり

体育学習が「楽しいと感じる群」の割合は、全学年で男子91.4%、女子90.3%で、男子は「気持ちがすっきりした」「身体を動かす」「記録が伸びた」で、女子は「友達と仲良く学習」「記録が伸びた」で、男女で差がでている。

体育の学習が「つまらないと感じる群」の割合は、男子54.1%、女子60.7%で、理由は「気持ちがすっきりしない」「練習しても記録が伸びない」であった。

5 体育で人気の種目は、男子「バスケットボール・サッカー」、女子「バドミントン・バレーボール」

好きな運動種目は、男子はバスケットボール・サッカーが1・2位を占め、バレーボール・ソフトボールが続いている。女子はバレーボール・バドミントンが1・2位を占め、バスケットボール・テニスが続いている。領域別にみると、3学年男女ともに「球技」「陸上競技」「器械運動」の順であった。

6 好きな、または行ないたいスポーツは、男子「サッカー・バスケットボール・野球」、女子「バドミントン」

男子は、サッカー・バスケットボール・野球が上位を分け合っている。女子は全学年バドミントンが1位で、バレーボール・テニスが続いている。

7 男女共習が楽しい生徒は、中学生よりも増えている

男女共習の「楽しい群」の割合は、男子72.0%、女子72.5%で、平成18年度中学生調査よりも増えている。楽しいと思う理由は、各学年男女ともに「男女一緒に仲よく、楽しい雰囲気で活動できる」が1位で、「選択種目が増える」「体力差・技能差を克服する工夫が協力してできる」が続いている。

楽しくないと思う理由は、「男女の技能差などがあり、思い切り活動できない」が最高位で、「男女の体力差がはっきりしてしまう」が続いている。

8 安全面で心がけていることは「準備運動や整理運動を十分にすること」

体育の学習で、けがをしないために心がけていることは、男女ともに「準備運動や整理運動を十分に行う」が1位で、以下「集中して取組む」「具合が悪いときは見学する」「場所、器具用具の安全確認」があげられている。

9 休み時間や放課後に運動をしている生徒は、中学よりも減っている

休み時間や放課後に運動をしている生徒の割合は、男子1年生69.6%、2年生65.0%、3年生56.7%、女子1年生46.8%、2年生39.1%、3年生29.4%で、平成18年度中学生調査よりも低く、学年進行とともに低下している。運動をする理由は「運動が好きで楽しい」が、運動をしない理由は「他にやりたいことがある」がそれぞれ1位であった。

10 運動部活動への入部率は、男子61.8%、女子38.1%

部活動入部率は、男子1年生74.7%、2年生66.6%。3年生59.6%、女子1年生42.3%、2年生40.0%、3年生24.4%と、多くの生徒が熱心に運動部活動に取組んでいる。

入部率は、男子の方が女子よりも高く、また体育学習が「好き群」の方が「嫌い群」よりも高い。

11 スポーツクラブ等への加入率は、男子9.0%、女子6.2%

スポーツクラブ等への加入率は、男子1年生7.9%、2年生8.7%、3年生10.4%、女子1年生6.3%、2年生6.9%、3年生5.3%であり、平成18年度中学生調査よりも加入率が低下している。

12 まったく運動やスポーツをしない生徒は、男子9.9%、女25.1%

部活動やスポーツクラブ等に加入せず、放課後や休日にもまったく運動をしない生徒の学年での割合は、男子1年生6.0%、2年生9.2%、3年生14.7%、女子1年生19.4%、2年生23.1%、3年生32.9%であり、男子よりも女子の方が多く、また学年進行とともに増加している。理由は「他にやりたいことがある」「時間がない」が上位にあげられている。

13 理想の教師像は、「ユーモアのあるやさしい先生」

生徒は、ユーモアがありやさしく、生徒一人ひとりを大切にし、よいところは誉め、悪いとことは注意し、楽しく工夫のある授業をする先生を求めていることがわかった。

体育の学習が「好き群」の生徒は、同じ傾向であったが、「嫌い群」の生徒は、「できない人をけなしたり怒ったりしない」「最後まで教えてくれる」「分け隔てなく教えてくれる」が上位にあげられていた。

  • 「好き群」=「とても好き」+「どちらかというと好き」
  • 「嫌い群」=「とても嫌い」+「どちらかというと嫌い」
  • 「感じる群」=「いつも感じる」+「時々感じる」
  • 男女毎にまとめた割合については別途計算したものである

 

まとめ

体育授業の好き嫌いと運動スポーツの実践、体育の学習への取組、体育の学習以外の運動やスポーツ活動への取組には関連があり、「好き群」の方が「嫌い群」よりも取組状況が高いことがわかった。

高等学校においては、学習指導要領の体育の目標である「明るく豊かで活力ある生活を営む態度を育てる」ことを目指しており、生涯にわたって運動やスポーツを実践するための資質や能力、健康で安全な生活を営む実践力及びたくましい心身を育てることが求められている。そのためには、体育好きや運動好きを増やし、体育嫌いや運動スポーツ嫌いを減らしていくことが課題となる。

ついては、次の5点が考えられる。

1 生徒一人ひとりの意識や実態を把握した指導

高校生は、学習経験の差が大きい上に、興味関心が多様化しており、体力、運動能力、意欲の個人差が大きいため、生徒一人ひとりに目を向けたきめの細かい指導を行う必要がある。具体的には次の4つがあげられる。

 (1)体格や体力差に応じた指導
 (2)能力差に応じた指導
 (3)男女差に応じた指導
 (4)体育の学習に対する意識に応じた指導

2 技能の習得と向上を保障する

努力をして繰り返し練習をした結果、記録が伸びたり、できなかったことができるようになったりという体験をしたときに生徒は楽しいと感じており、そのような体験を数多くさせることで、自分はできるという自信や、努力したり練習したりすればできるようになるという自信をもたせることができるようになる。

3 良好な人間関係を育む

体育の学習においては、個人的な運動や集団的な運動があるが、いずれの運動においても、教えあい・学びあい・励ましあいの場を設定することにより、一人ひとりのコミュニケーション能力が高まるとともに、信頼に基づくよりよい人間関係が築かれ、一緒に活動する楽しさにつながっていく。

4 校種間の連携・協力を行う

生徒の発育・発達の特性や異校種の教育内容を知ることは、学習過程を作成したり、指導の内容や方法を考えたりする上での大きな資料となる。校種間での学校見学や、研究授業、情報交換の機会を積極的に設ける必要がある。

5 地域との連携・協力を行う

体育の学習が、生徒の運動スポーツの好き嫌いに大きく影響することは明らかだが、体育の授業だけで、運動やスポーツが嫌いな生徒を減らしていくことは難しい。そこで、学校の教育活動における取組に加え、生徒・家庭を取り巻く地域社会がそれぞれの役割を果たしながら、連携・協力し、いわゆる三間(時間・空間・仲間)を保障するための支援も大切なことである。

このページの先頭へ戻る


学校体育に関する児童生徒の意識調査
ー小学生・中学生・高校生の意識ー(3年継続研究のまとめ)

スポーツ科学研究室 重本英生 水野昌享 小峰譲二 中村徳男 藤川未来 大場瑞穂
研究アドバイザー 横浜国立大学 落合優

はじめに

体育センターでは、学習指導要領の改訂に伴い、昭和47年・昭和58年・平成6年と過去3回、おおよそ10年ごとに小・中・高校生(小学生は平成6年より)を対象に学校体育に関する意識を明らかにしてきた。そこで、現行の学習指導要領導入後、3年が経過したことを受け、平成17年度から3年継続事業として1年次小学生・2年次中学生・3年次高校生を対象に調査を行うことにした。

本年度は、3年継続研究のまとめとして、各校種の結果を比較分析することにより、小学生・中学生・高校生の児童生徒に対する学習指導の参考資料を得ることとした。

 

内容及び方法

1 研究期間

 平成17年4月から平成19年3月

2 研究内容

 児童生徒の学校体育に関する意識調査及び学習状況等に関する実態の調査・分析

3 研究方法

(1)調査

ア調査期間

小学校:平成17年9月中旬から10月中旬
中学校:平成18年6月上旬から6月下旬
高等学校:平成19年6月上旬から6月中旬

イ 調査方法:質問紙法による

ウ 調査対象者及び標本構成

小学校

県内11地区より抽出した公立小学校20校
男子1,893名、女子1,842名、合計3,735名

中学校

県内10地区より抽出した公立中学校20校
男子2,015名、女子1,918名、合計3,933名

高等学校

県内10地区より抽出した県立高等学校20校
男子2,143名、女子2,166名、合計4,309名

(2)調査の内容

ア 運動やスポーツの好き、嫌いについて
イ 体育の学習について
ウ 体育の学習以外の運動への取組について
エ 好きな、または行いたい運動やスポーツについて
オ 体育を指導してくれる理想的な教師像について

 

調査結果

1 多くの生徒が運動やスポーツが好き、小学生から学年進行とともに減少していた運動スポーツ好きが高校で増加傾向

運動やスポーツをすることが「好き群」の児童生徒の割合は、小学生・中学生・高校生を通じて、男子84.4%、女子73.0%であり、多くの児童生徒が運動やスポーツを好きであることがわかった。「好き群」の割合は小学4年生が最も高く、その後中学3年生まで学年進行とともに減少していたが、高校生からは増加傾向を見せている。

2 小学生から学年進行とともに減少していた体育好きが高校で増加傾向に

体育学習「好き群」の児童生徒の割合は、小学生・中学生・高校生を通じて男子80.3%、女子67.2%であり、多くの児童生徒が体育好きであることがわかった。「好き群」の割合は、小学4年生が最も高く、その後男子中学3年生まで、女子高校1年生まで学年進行とともに減少し、以後上昇傾向を見せている。

3 体育の取組状況は、小学生・中学生に比べて高校生で低下

体育学習において、小学生・中学生・高校生ともに、多くの児童生徒が自分なりの課題や目標を持ち、準備や片付けに進んで取組、友だちと教えあったり、協力し合ったりして、精一杯最後まで努力して活動している様子がうかがえた。

しかし、小学生・中学生に比べて高校生の取組状況が低下していた。

4 体育の楽しさは、「記録が伸びたり、できないことができるようになったりしたとき」など

体育学習が「楽しいと感じる群」の割合は、小学生・中学生・高校生を通じて、男子92.6%、女子91.3%であり、多くの児童生徒が体育の学習を楽しいと感じていることがわかった。理由は「記録が伸びたり、できないことができるようになったり」が上位であった。

体育の学習が「つまらないと感じる群」の割合は、男子39.5%、女子49.8%で、理由は「練習しても記録が伸びなかったり、うまくならなかったりしたとき」であった。

5 体育で人気の種目は、体育好き群では集団種目、体育嫌い群では個人種目

体育で人気の運動種目は、男子は小学生がドッジボール・サッカー、中学生がサッカー、高校生がバスケットボール・サッカーが1位に、女子は小学生が水遊び・ドッジボール・バスケットボール、中学生はバドミントン・バスケットボール・バレーボール、高校生は、バレーボール・バドミントンが1位であった。

体育の学習「好き群」は集団種目を好み、体育の学習「嫌い群」は個人種目を好むことがわかった。

6 好きな、または行ないたいスポーツは、男子「サッカー・バスケットボール・野球」、女子「バドミントン」

男子の1位は、小学生・中学生がサッカー、高校生はサッカー・バスケットボール・野球が、女子の1位は、小学生が水泳・バスケットボール、中学生・高校生は、バドミントンであった。

7 男女ともに多くの生徒が男女共習は楽しい

男女共習を行ったことがある生徒の割合は、中学3年生の86.0%から高校1年生の25.6%まで減少し、その後学年進行とともに増加し高校3年生で76.9%となった。

男女共習の「楽しい群」の割合は、男子63.9%、女子67.8%であり、その理由は、各学年男女ともに「男女一緒に仲良く楽しい雰囲気で活動できる」が1位で、「体力差・技能差を克服する工夫が協力してできる」が続いている。

楽しくないと思う理由は、「男女の技能差がある」「男女の体力差がある」が上位にあげられている。

8 安全面で心がけていることは「準備運動や整理運動を十分にすること」

児童生徒は、けがの予防や事故防止のために、準備運動や整理運動を十分に行い、気を抜かず集中して、自分自身の体調についてもよく考えている。また、周りの人や活動場所の安全についても配慮しながら取組んでいる。

9 休み時間や放課後に運動をしている児童生徒は、学年の進行とともに減少、理由は「他にやりたいことがある」

学校で休み時間や放課後に運動を「している群」の児童生徒の割合は、男女とも中学2年生男子84.8%、女子62.9%をピークにその後学年進行とともに減少している。

運動をしている理由は「運動が好きで楽しい」「好きな運動ができる」が、運動をしない理由は「他にやりたいことがある」「時間がとれない」がそれぞれ上位にあげられている。

10 運動部活動への入部率は、学年進行とともに減少

入部率の推移を見ると、中学1年生から学年進行とともに減少しているが、中学生全体69.4%、高校生全体49.8%の生徒が運動部活動に取組んでいる。

11 スポーツクラブへの加入率は、学年進行とともに減少

スポーツクラブの加入率は、小学生から中学生、高校生へと大きく減少している。

12 まったく運動やスポーツをしない生徒が増加

学校で休み時間や放課後に運動をせず、また運動部活動やスポーツクラブ等に加入せず、休日にもまったく運動をしない児童生徒の割合は、学年進行とともに増加しており、男子よりも女子に多い。理由は、「他にやりたいことがある」「時間がない」が上位にあげられている。

13 理想の教師像は、「ユーモアのあるやさしい先生」

児童生徒は、ユーモアがありやさしく、生徒一人ひとりを大切にし、よいところは誉め、悪いとことは注意し、楽しく工夫のある授業をする先生を求めていることがわかった。

体育の学習が「嫌い群」の児童生徒は、「できない人をけなしたり怒ったりしない」「最後まで教えてくれる」「分け隔てなく教えてくれる」を上位にあげていた。

  • 「好き群」=「とても好き」+「どちらかというと好き」
  • 「嫌い群」=「とても嫌い」+「どちらかというと嫌い」
  • 「感じる群」=「いつも感じる」+「時々感じる」

 

まとめ

小学生・中学生・高校生の9年間は、楽しく明るく豊かで活力のある生活を営む態度を育てる時期であり、生涯にわたって運動やスポーツを実践するための資質や能力、健康で安全な生活を営む実践力及びたくましい心身を育てることが求められている。

そのためには、体育好きや運動スポーツ好きを増やし、体育嫌いや運動スポーツ嫌いをいかに減らしていくかが課題となり、次の5点が考えられる。

1 児童生徒一人ひとりの意識や実態を把握した指導

児童生徒の運動に対する興味関心や、体力、運動能力、意欲には個人差があり、そのことが体育の学習に対する取組にも影響を及ぼしている。児童生徒一人ひとりに目を向けたきめの細かい指導を行う必要があり、具体的には次の4つがあげられる。

(1)体格や体力差に応じた指導

(2)能力差に応じた指導

(3)男女差に応じた指導

(4)体育の学習に対する意識に応じた指導

2 技能の習得と向上を保障する

児童生徒が体育の学習を楽しいと感じるのは、記録が伸びたりできなかったことができるようになったりという体験をしたときであり、努力して繰り返し練習をすれば「できるようになる・記録が伸びる」といった体験を数多くさせることで、自分はできるという自信や、努力したり練習したりすればできるようになるという自信をもたせることができる。

3 良好な人間関係を育む

体育においては、個人的な運動や集団的な運動があるが、いずれの運動においても、教えあい・学びあい・励ましあいの場を設定することにより、一人ひとりのコミュニケーション能力が高まるとともに、信頼に基づくよりよい人間関係が築かれ、一緒に活動する楽しさにつながっていく。

4 校種間の連携・協力を行う

児童生徒の発育発達の特性や異校種の教育内容を知ることは、学習過程を作成し、指導内容や方法を検討する上での大きな資料になるとともに、小学校・中学校・高等学校を通して共通理解を持って個々の児童生徒に対してきめの細かい指導を行うことが可能になる。

5 地域との連携・協力を行う

体育の授業だけで児童生徒の運動スポーツ嫌いを減らしていくのは難しい。学校の教育活動での取組に加え、児童生徒を取巻く学校・家庭・地域社会がそれぞれの役割を果たしながら、連携・協力していくことが必要である。

平成16年度から小学校において実施された「子どもキラキラタイム実践研究」や平成19年度から中学校で始まった「かながわイキイキスクール実践研究」といった活動をさらに発展させていくこと、また、総合型地域スポーツクラブと学校との連携も視野に入れていく必要もある。これら子どもたちが友達や先生、家族、そして地域の人たちと触れ合いながら運動を積極的に実践していくための方策が今後も重要である。

このページの先頭へ戻る


生涯スポーツ指導者の研修に関する実態・意識調査
ー生涯スポーツ指導者の指導力向上を図る研修のあり方についてー

生涯スポーツ推進室 中野久美子 佐野朗子 塩浦健吾 末包博

 

はじめに

現代社会では、社会環境の変化に伴い、運動不足による体力の低下や精神的ストレスの増大、加齢に伴う身体機能の変化などの様々な健康問題が顕著になっている。このような状況の中、スポーツは、人生をより豊かに充実したものとすると共に、活力に満ちた社会の形成に大きな役割を担っている。スポーツの持つ多様な可能性を実現するためには、スポーツを提供する側と実践する人々が一体となった取り組みを展開し、一層のスポーツ振興を図る必要がある。

平成12年9月に文部省がスポーツ環境を整備するために定めた「スポーツ振興基本計画」(平成18年改定)では、課題の一つに生涯スポーツ社会の実現に向けた、地域におけるスポーツ環境の整備充実方策があげられている。そのための不可欠な施策として、総合型地域スポーツクラブの育成・支援策の全国展開があり、これを効果的に推進するために、ニーズに対応した質の高いスポーツ指導者の養成・確保が必要とされている。

本県では平成16年度に、神奈川県のスポーツ振興指針である「アクティブかながわ・スポーツビジョン」を策定し、この中でスポーツ活動を拡げる環境づくりの推進方策として、総合型地域スポーツクラブの育成支援とともに、クラブ運営に携わる様々な人材育成や県民のスポーツニーズに対応したスポーツ指導者の育成が求められており、スポーツ指導者の育成・指導力向上に係る研修の重要性が示されている。

体育センターでは、昭和44年よりスポーツ指導者の指導力向上のために幅広い視点から研修を開催してきた。また、平成14年度より、総合型地域スポーツクラブの運営に携わる様々な人材を育成するための研修も行っている。

しかし、今まで以上に効果的な研修を企画するためには、研修の内容、研修日程や場所の設定、研修会の広報方法等の現状やニーズを分析し、課題を整理する必要がある。

そこで本研究では、生涯スポーツ指導者の研修に関する実態・意識を把握し、指導力向上を図る有効な研修のあり方を探るために、本テーマを設定した。

 

内容及び方法

神奈川県内の生涯スポーツ指導者団体である県体育協会生涯スポーツ委員会に所属する指導者連絡協議会会員(1,180名)及び、神奈川県生涯スポーツリーダー会会員(100名)に、平成19年7月から8月にアンケート調査を実施し、それらを集計処理した後に結果の分析及び考察や課題の検討を行った。アンケート回答数は410、回収率は32.0%であった。

 

結果と考察

1 回答者属性について

回答者の性別は女性が約7割、男性が約3割であり、年代は60歳代が約4割、50歳代が約3割であった。また、他の回答項目で年代による傾向を見るため、仕事(家事・育児含む)が生活の中心であると思われる「50歳代以下」(193名47.1%)と仕事が生活の中心でないと思われる「60歳代以上」(217名52.9%)に分け比較した。

2 スポーツ指導の状況

スポーツ指導の回数については、週1回以上定期的に指導を行っている回答者が、全体の約7割と高い数値であり、さらに「定期的に指導している団体がある」回答者が7割を超えていた。スポーツ指導が生活の一部として位置づいている回答者が多いことがわかった。また、指導をしている回答者が全体の約9割であった。

スポーツ指導の内容(地域クラブ指導、教室講師等)は、「地域クラブ・サークル」が最も多かった。また、「所属のスポーツ教室」、「市町村のスポーツ教室」、「健康づくり教室」、「県のスポーツ教室」のスポーツ教室関係は合計すると「地域クラブ・サークル」を上回り、回答者が地域クラブ・サークルでの指導をしながら、スポーツ教室の講師を務めていることがわかった。

スポーツ指導の対象では「女性」と「高齢者」が際立って多く、「社会人」、「小学生」も多かった。

スポーツ指導時の利用施設では、「市町村立スポーツ施設」と「市町村立施設」の合計が約6割であり、公立施設を中心に活動が行われているが、学校施設の利用が少ないことがわかった。

3 研修に対する考え

研修の必要性について、回答者の約9割が研修は必要であると答えていた。そして、回答者の約8割が過去3年間の研修参加理由を自己研鑽のためと答えており、研修の重要性がはっきりした。

研修に参加できない理由に「日程が合わない」「場所が遠い」等の物理的条件が両世代に共通して多く、研修の日時や場所等の設定に工夫が必要であると考えられる。この背景には、スポーツ指導の回数が多いため、研修参加の時間が確保できないことが考えられる。

研修の適当な日程では「休日午前」「休日午後」が多く、休日の研修が参加しやすい傾向がわかった。さらに、世代比較では、「50歳代以下」は休日午前が約6割近く、休日午前が最も適当な研修日程であることがわかった。一方、「60歳代以上」では、「平日午前」も研修の日程として適当と考えている回答者が3割いることがわかった。

研修情報の収集については、特に「所属団体からのチラシ」が5割を超えており世代による差はなく、所属団体を通じてチラシを配布することが有効であることがわかった。また、「県・市町村の広報誌」が3割を超えており、これらの公的広報誌も有効であることがわかった。このことから、公的広報誌以外にタウン紙や口コミ情報誌への掲載も活用する必要があると思われる。また、電子媒体の広報である「研修主催団体からのメール」「所属団体からのメール」等、電子媒体による情報収集のニーズも高いことがわかった。また、世代比較では、「60歳代以上」では、紙媒体による情報収集が有効であり、「50歳代以下」では電子媒体による情報収集も有効であることがわかった。

4 有意義な研修

有意義だと思う実技研修では、「ストレッチング」が最も多く、次に「テーピング」が多かった。その他では「持久力を向上させるトレーニング方法」「用具を使ったトレーニング方法」「筋力を増加させるトレーニング方法」「瞬発力・敏捷性等向上のトレーニング方法」のどれもが同程度の回答数であり、有意義であると考えられていることがわかった。

有意義だと思う講義型研修では、「高齢者のスポーツと指導方法」が最も多く、次に「怪我の応急処置」が続いており、この傾向に世代による差は見られなかった。「高齢者のスポーツ指導方法」については、現在「高齢者」を指導している指導者以外の回答者も、これからのスポーツ指導には、高齢者に対する適切な運動指導が必要であると考えていることがわかった。その他の項目については、「50歳代以下」では、「コーチング方法」が「怪我の応急処置」と並ぶ高い数値であり、「60歳代以上」では、「コーチング方法」が低い等、世代によって有意義だと思う講義型研修の傾向に差があることがわかった。

有意義だと思う研修全体では、「ストレッチング」「テーピング」「怪我の応急処置」等の怪我の予防や対処に関する研修が世代による差がなく、有意義だと考えていることがわかった。

5 総合型地域スポーツクラブについて

総合型地域スポーツクラブ認知度は、「名称も名前も知っていた」が5割を越えていたが、スポーツ指導者ということを考えると、高い値とは言えず、総合型地域スポーツクラブの情報を十分得ていないことがわかった。総合型地域スポーツクラブの認知度と、総合型地域スポーツクラブを支援する気持ちの関連性を見たところ、総合型地域スポーツクラブの認知度が進むと、支援する気持ちが高まる傾向があり、総合型地域スポーツクラブに関する広報を一層充実させることで、クラブの支援者の増加が見込まれると考える。

総合型地域スポーツクラブに関する研修については、「クラブと地域のコーディネート」「クラブの運営」「クラブの作り方」などクラブ設立の基礎的な内容が有意義な研修と考えられており、今後のスポーツ振興についての初期的段階の研修が必要であることがわかった。

 

結論

1 ライフステージに応じた指導者の研修

今回の調査結果から、高齢者の指導や体操を指導している指導者が多く、高齢者のスポーツ指導に関する研修のニーズが高いことがわかった。これらのことから、現在、体育センターでは、中高齢者スポーツの指導者研修を開催し好評であるが、さらに講座を増やすことや、医療機関などと相互に連携を取るなど、高齢者スポーツの指導者研修の工夫や充実は必須であると考える。今後もライフステージに応じた指導のスキルアップを支援するとともに、集合型だけではない研修のあり方を検討したい。

2 総合型地域スポーツクラブに関する研修の充実

総合型地域スポーツクラブ設立等に関する基礎的内容の研修を実施することが、総合型地域スポーツクラブに対する知識や理解を深めるとともに、将来的にクラブ運営に携わることができる人材の育成にもつながると考える。現在、体育センターでは「地域スポーツクラブコーディネートに関する研修会」として、クラブ等の運営に係る「基本講座」とクラブ経営能力を有する専門的人材を養成する「専門講座」をそれぞれ8講座開催しているが、今後もスポーツ指導者のニーズに対応した講座を開催するとともに、クラブ運営に必要な様々な講座の充実を推進していくことが重要である。

3 体育センター機能の充実と推進

スポーツ指導者が、研修に参加できない要因に日程や場所などの物理的な理由があることから、スポーツ指導者が活動している地域での研修の開催が対応策として考えられる。体育センターでは、所員が研修会講師として出向いて指導する「スポーツ指導者等支援事業」があるが、それらを活用して、今後、所外研修を積極的に開催していくことが望ましいと考える。

また、各種研修会の開催はもとより、県民のスポーツの機会を増やし、スポーツの実施者を増やすことが、スポーツ指導者の研鑽につながると考える。スポーツ実施者がよりよい指導者を求め、レベルが上がれば、スポーツ指導者も指導力の向上が必要になると考えられる。体育センターは、あらゆる側面からスポーツ指導者を支援する方策を推し進め、ひいては県民スポーツ実施率の向上と、心と体の健康つくりをより一層支援していく必要がある。

このページの先頭へ戻る


スポーツ指導者登録・紹介制度の今後のあり方について

スポーツ情報室 磯貝靖子 日下肇 黒岩俊彦 瀬尾一幸

 

はじめに

神奈川県スポーツリーダーバンクは今年度で設立18年目を迎え、平成14年度からはインターネットを利用したスポーツ指導者検索システムを導入しているが、近年、個人情報保護の観点から、情報の取り扱いについてはこれまで以上の配慮が必要となってきた。また、「活用状況の把握ができない」「顔の見える情報ではない」など、開設時からの問題も抱えたままである。

そこで、各種スポーツ関係団体及び市町村におけるスポーツ指導者登録・紹介制度の状況、神奈川県スポーツリーダーバンク登録指導者の意識及び他都道府県におけるスポーツ指導者登録・紹介制度の取り組み状況等について調査・分析し、神奈川県スポーツリーダーバンクの課題や問題点を整理し、今後のあり方を検討するため、本テーマを設定した。

 

内容及び方法

1 研究期間

平成19年4月から平成20年3月

2 研究内容

スポーツ指導者登録・紹介制度に関する調査・分析

3 調査方法

(1)文献研究

(2)質問紙法による調査

ア 調査期間:平成19年7月下旬から8月下旬

イ 調査方法:質問紙法によるアンケート調査

ウ 調査対象者 回収数 / 配付数(回収率)

市町村スポーツ主管課 31 / 33(93.9%)
各種スポーツ関係団体 46 / 107(42.9%)
スポーツクラブ・サークル 11 / 114(9.6%)
神奈川県スポーツリーダーバンク登録指導者(ファックス登録者)198 / 568(34.9%)

(3)聞き取り調査

ア 調査期間:平成19年5月から平成20年1月

イ 調査方法:電話及びe-メールによる聞き取り調査

ウ 調査対象

他県:埼玉県、千葉県、東京都、愛知県、大阪府
県内:PLANETかながわ、ハマスポどっとコム
民間:特定非営利活動法人スポーツ指導者支援協会

 

調査結果

1 神奈川県における状況について

(1)市町村スポーツ主管課

スポーツ指導者登録・紹介制度を実施している市町村スポーツ主管課は少ないが、市町村民からのスポーツ指導者派遣依頼には対応していることがわかった。

(2)県内各種スポーツ関係団体

各種スポーツ関係団体の約6割が、所属する指導者を対象とした講習会等を行っていることがわかった。

(3)スポーツクラブ・サークル

回収率が低かったため、分析対象外とした。

(4)神奈川県スポーツリーダーバンク登録指導者

登録指導者の約9割が、過去3年間にスポーツ指導を行っており、講習会等にも積極的に参加している。また、約6割の登録指導者は、自分の指導に関する評価を受ける必要があると考えていることがわかった。

〔参考〕

中学校・高等学校生徒のスポーツ活動に関する調査(平成19年度神奈川県教育委員会教育局保健体育課実施)

学校長や教職員は運動部活動に外部指導者活用とそのための人材バンクを必要としているが、県スポーツリーダーバンクの認知度は低く、活用されていないことがわかった。

2 他都府県におけるスポーツ指導者登録・紹介制度

東京都、埼玉県、千葉県、愛知県は本県と同様の問題をかかえ、見直しに向けた検討の時期を迎えている。平成17年にスタートしたばかりの大阪府が特徴的な取り組みをしていることがわかった。

3 県内における実態について

「ハマスポどっとコム・人材情報」では、指導資格の証明を求めず登録更新制度が無い。「PLANETかながわ」でも、登録資格の有無を問わず、更新制度が無いことがわかった。一方、県スポーツリーダーバンクでは、指導資格の証明添付を義務付け3年ごとに登録更新の手続きを行っている。

4 特定非営利活動法人スポーツ指導者支援協会におけるスポーツ指導者登録・紹介制度への取り組みについて

一流の指導者による講習会を開催し、その受講歴や指導者の指導に対する「満足度調査」の結果をポイント化し、ホームページ上で公開していることがわかった。

 

現状と課題

1 県民のスポーツ実施状況とスポーツ指導者情報ニーズ

今後、県民のスポーツ欲求は高まることが予測され、スポーツ環境の整備を推し進める中で、スポーツ指導者情報の充実は必須と言えるが、県スポーツリーダーバンクの現在の認知度は低く、十分に活用されていないのが現状である。

2 スポーツ指導者登録・紹介制度の実態

他都道府県との共通した課題は「制度を利用した依頼が少ないこと」である。これからのスポーツ指導者情報に求められる要素は、指導者の指導方法、人柄、評判など「顔の見える情報」であり、今後、収集する情報を精選し、情報内容、発信方法など、システム全体の見直しが必要である。

3 スポーツ指導者の資格について

県スポーツリーダーバンクは、資格証明のコピー添付と3年ごとの登録更新によって、提供する情報の質と信頼性を維持してきた。今後も、非営利活動として指導する有資格者を登録の対象とする姿勢を貫くべきである。

4 学校運動部活動における地域(外部)指導者活用

学校現場での地域(外部)指導者の需要とスポーツ指導者の運動部活動での指導欲求(供給)が存在しているにもかかわらず、結びつかずにいることは大きな課題であり、その解決に向けた取組が必要である。

5 スポーツ指導者の自己研鑽

スポーツ指導者にも、自己の指導能力の維持向上を目指すための自己研鑽として研修会・講習会等に参加することが求められる。こういった学び続ける姿勢を示すことは、依頼者が指導者を選択する判断材料となりうると考える。今後、登録申請書の記入形式を見直すことが必要である。

6 スポーツ指導者の指導評価について

スポーツ指導者のさらなる資質向上につながる指導評価方法の検討が必要と考える。また、指導評価結果の公開についても、今後の重要な課題である。

 

今後のあり方について

1 指導評価の導入

県スポーツリーダーバンクの活用促進のためには、バンクの信頼性を高めなければならない。信頼性の基礎は登録指導者の質の向上にあり、そのため、指導を受けた人からの指導評価結果を本人にフィードバックすることが有効である。

2 顔が見える情報への工夫

県民が求めるスポーツ指導者登録・紹介制度とするには、情報の内容を「顔の見える情報」に近づけることと、より詳しい「顔の見える情報」を提供できる「相談役」を設けることが有効と考える。

(1)「顔の見える情報」の内容

インターネットを利用した情報提供において、県の情報システム上の問題点や個人情報保護の観点を考慮し、最大限提供できる「顔の見える情報」には次のようなことが考えられる。

ア 指導歴

指導経験の豊富さは、依頼者に安心感を与えることが期待される。指導歴が無い理由などを明確に示すことで、偏見や誤解を避けることができると考える。

イ 受講歴

よりよい指導を追及する意欲の現れであり、指導者の質の高さを計り知るために有効な情報であると考える。

ウ 指導評価

指導者選択の判断基準として有効な情報であると考えるが、公開にあたっては、登録指導者から理解が得られる内容と方法についての検討が必要である。

(2)より詳しい「顔の見える情報」を提供することができる「相談役」の設置

依頼を受ける窓口が連絡調整の役割だけではなく、「相談役」としての役割を持つことで、より「顔の見える情報」の提供が可能となると考える。

3 健康・体力つくり及びスポーツ振興施策推進のための具体事業への登録指導者の活用

県スポーツリーダーバンク登録指導者に施策推進に役立つ知識を付加することで、キャリアアップを狙い、あわせて施策推進のための、市町村や学校等でのイベント・講習会開催の必要性と指導者登録・紹介制度の存在をアピールしていく取組が考えられる。

4 学校運動部活動地域(外部)指導者活用に向けて

(1)学校運動部活動専用の情報収集及び提供

ア 学校が求める情報内容の調査

学校に対して、利用しやすい情報内容、及び提供する情報の表現方法について調査する。

イ 登録指導者からの情報収集・名簿作成

これまでの情報に加えて、学校の求める情報内容を上記調査結果を反映させた新たな運動部活動専用情報を作成する。

ウ 学校等への指導者情報の提供

運動部活動専用情報を学校へ配付する。

(2)学校運動部活動が学校教育活動の一環として行われることを理解した指導者の確保

ア 教職経験者

運動部活動の意義、その効果や課題を十分に理解した人材であると考える。

(3)広報

ア 利用促進

学校長及び教職員向け。学校体育団体向け

イ 人材確保

 

まとめ

今後のスポーツ指導者登録・紹介制度としては、大阪府を参考としたシステムの再構築という方向性が考えられる。

また、公開する情報内容を「顔の見える情報」に近づけ、指導者により近い存在である各種スポーツ関係団体に「相談役」としての役割を持たせることで、より「顔の見える情報」の提供が可能となることが考えられた。

スポーツ振興施策推進のための積極的な活用の方向性も考えられる。学校運動部活動への活用に関しては、学校運動部活動専用の情報提供システムを設けることも必要と考えられる。

以上のことを踏まえ、今後の神奈川県スポーツリーダーバンクに関する検討を進めていきたいと考える。

このページの先頭へ戻る


みんなでボールをつなぎ、シュートを決める喜びを味わうバスケットボール型ゲームの学習
ーボールを扱う技能とスペースへの気付きを大切にした学習を通してー

横須賀市立大塚台小学校 筒井宣行

 

はじめに

現在、小学校の体育科では、生涯にわたる豊かなスポーツライフ及び健康の保持増進の基礎を培う観点が重視され、仲間とたくさん関わりながら、各種の運動が好きになるようにすることが求められている。

しかし、実際の授業では、例えばボールゲームにおいて技能が高い児童がボールを独占するゲーム展開がされ、全ての児童が仲間との関わりやボールゲームの楽しさを感じていないなどの課題をよく耳にする。

そこで本研究では、攻守混合型ゲームを初めて行う小学校3年生において、教えるべき学習内容を学年の系統性を踏まえてしっかりと整理し、「この単元を通して児童に何を身に付けさせるのか」という明確な単元目標と、それを達成するための毎時間の学習内容を設定する。そして、学習内容を身に付けるために、技能の習熟に応じた練習と、攻撃側に数的優位な状況が生まれるタスクゲームを行うことで、個人的技能だけでなく、集団的技能も高まり、みんなでボールをつなぎながらシュートを決める喜びを味わうゲームができると考え本主題を設定した。

 

研究の仮説

技能のポイントをわかりやすくし、技能の習熟に応じた練習を行うことで、ゲームで使える技能が身に付き、ボールの扱いが得意になる。また、攻撃側に数的優位な状況が生まれるタスクゲームを取り入れることによって、フリーになっている味方にパスが出せるようになり、みんなでボールをつなで、シュートを決める喜びを味わうゲームができる。

 

検証授業の実際

1 期間

平成19年10月17日(水曜日)から11月9日(木曜日) 8時間扱い

2 場所

横須賀市立大塚台小学校

3 対象

第3学年1組(37名)

4 単元名

ゲーム 「セストボール(エンジョイボール)」

5 ねらい

運動への関心・
意欲・態度

みんなとゲームに進んで楽しく取り組もうとする。

また、互いに役割を分担し、協力してゲームを行うとともに、勝敗を素直に認めようとする。

さらに安全に気を付けて運動しようとする。

運動についての
思考・判断
みんながゲームを楽しめるように、ルールや作戦を工夫している。
運動の技能 パスをつないでシュートをしたり、守ったりすることができる。

6 学習の道すじ

ねらい1 ボール扱い、ルール、仲間になれながら、いろいろなチームとゲームを楽しみ、個人やチームの力を高める。
ねらい2 力の似通ったチームとゲームを楽しみながら、高まった力で、攻め方を工夫する。

7 単元計画

8 技能の習熟に応じた練習とタスクゲーム

(1)「技能の習熟に応じた練習」について

ゲームで使えるパス・キャッチの技能を身に付けるために、始めの時間ではあまり動きがない状態で正しいパス・キャッチの姿勢を身に付けるねらいで行うようにした。そして、児童の様子を見ながら、パスコースや目の前に守りが立っている中でパスをしたり、動いている中でキャッチをしたりするなど、よりゲームの動きを意識した内容にしていくように改善を加えるようにした。

(2)「タスクゲーム」について

フリーになっている味方にパスをする技能を身に付けるために、攻撃側を3人、守備側を2人という人数差を付け、攻撃側のボール保持者にとってはフリーになっている味方が始めから出現している状況を多くすることで、「どこにパスをしたらよいのか」という状況判断をやさしくするようにした。また、数的優位を作る児童をコートの外に待機させ攻撃権の移動によってコートに入るようにすることで、常に3人対2人の状況と、ゲームの流れを止めずに、コートを縦に使った様相を出現するようにした。

 

結果と考察

1 ゲームで使えるパスやキャッチの技能が身に付き、ボールの扱いが得意になったか

ゲームにおいて今回の授業で身に付けたい「頭の上や胸の前からのパスや両手でのキャッチ」ができている割合が、8時間目では92%になった。

またキャッチについては、バウンドしたボールの両手キャッチなども含めると8時間目には90%以上を占めた。このような結果から、多くの児童がゲームで使えるパス・キャッチの技能が身に付くことができたと考える。

さらに、ボールを投げる、つかむことについての苦手意識がある児童が授業前は40%いたが、授業後には共に減少が見られた。このような結果から、多くの児童がボールの扱いが得意になったと考える。

2 攻撃・守備同数のゲームでフリーになっている味方にパスが出せたか

フリーな味方へ出したパス総回数については、5時間目に若干の落ち込みが見られたが、8時間目には増加に転じた。また、パス全体に対して、フリーな味方にパスを出した割合を示す出現率については大きな変化は見られなかった。しかし、ボール保持者やパスの受け手に守りが付くようになり、パスの出し手にとっては、徐々に難しい状況判断を迫られていく中で、横ばいや増加を示したことは、回数(量)では見えづらい、動きの質が高まったと考える。このような結果から、多くの児童がフリーになっている味方にパスを出すことができるようになったと考える。

3 みんなでボールをつないで、シュートを決める喜びを味わうことができたか

ゲーム出場者全員がボールに触って攻撃した割合が、時間を追うごとに増加した。

また、シュートに関しては、シュートをした人数の割合は、時間を追うごとに増加し、シュート決定率についても2時間目では17%だったが、8時間目には29%まで増加し、ゲームにおいてシュートを決める技能が高まったと考える。

さらに、単元を通してシュートをした人数の割合が94%、シュートを決めた人数の割合が72%と、多くの児童がシュートをしたり、決めたりすることができた。

児童の感想では、「シュートを決めて嬉しかった」「シュートを決められなかったけど、シュートがたくさんできてよかった」など、シュートへの喜びを表していた。

以上のことから、みんなでボールをつないで、シュートを決める喜びを味わうことができるようになったと考える。

 

まとめ

1 研究の成果

技能のポイントをわかりやすくし、技能の習熟に応じた練習を行うことで、多くの児童がゲームにおいて正しい姿勢でパスやキャッチができるようになり、投げる・つかむことが得意になった。また、攻撃側に数的優位なタスクゲームを取り入れることによって、多くの児童がフリーになっている味方にパスを出してボールをつなぐことができるようになり、シュートをしたり決めたりする喜びを味わうことに有効であるということが明らかになった。

2 今後の課題

(1)充実した指導計画の作成

技能を高めるための練習内容の精選と、タスクゲームの動き方を導入でしっかりと押さていく。

(2)技能・意識の高まりをさらに実感するための手立て

児童の「できそうな」「できた」場面を見逃さずに、言葉がけを積極的にかけていくことで「できる」経験をたくさん体験できるようにしていく。

(3)高学年・中学校におけるボール運動の学習内容・学習活動の構築

中学年で身に付けた力をさらに高めていくために、今回と同様に学年ごとの学習内容を明確にし、それを達成するような学習活動を講じていく。

このページの先頭へ戻る


実感を伴う生きた知識を身に付け、行動化への意欲と態度の育成を目指した保健学習
ーセルフエスティームを大切にした学習を通してー

大和市立光丘中学校 山内辰徳

 

はじめに

近年、喫煙・飲酒・薬物乱用については様々な情報が溢れ、 入手のし易さも手伝って、青少年にとってたばこ・酒・薬物の存在が身近なものとなりつつあり、社会問題となっている。

このような現状から、学校教育では、様々な機会で学校全体として喫煙・飲酒・薬物乱用防止教育に取り組んでおり、保健学習はその中核として位置付けられている。

しかし、保健学習「喫煙・飲酒・薬物乱用と健康」の単元では、「知識がなかなか定着しない」「実生活に結びつけるのが難しい」といった課題を感じている教員が多い。

保健学習では知識を習得させることだけでなく、得た知識を活用したり探求したりする学習をすることで、単なる覚える内容ではなく「使える知識」とするとともに、「たばこ等に手を出したくない」「手を出さない」といった行動化への意欲・態度の育成が求められる。そのためには、これらの学習と同時期に自分を大切にする心、いわゆるセルフエスティームの高揚を図ることが有効である。

そこで、本研究では保健学習の中で、プレゼンテーションソフトを活用した学習資料を工夫することで効果的に知識を身に付けさせ、薬物乱用経験者の手記や薬物標本に触れたり、参加型学習を導入したりすることによってその知識に実感を伴わせ自分のこととして捉えさせる、言わば「生きた知識」とし、さらに、セルフエスティームを大切にする学習を授業の中に取り入れることにより、行動化への意欲・態度の育成につながる保健学習が展開できると考え、本主題を設定した。

 

研究の仮説

プレゼンテーションソフトの活用により、効果的に知識を身に付けさせ、薬物標本・薬物乱用経験者の手記の使用や参加型学習の導入により知識に実感を伴わせ、セルフエスティームを大切にする学習を行うことで、行動化への意欲と態度の育成につなげることができる。

 

検証授業の実際

1 期間

平成19年10月16日(火曜日)から11月13日(火曜日) 5時間扱い

2 場所

大和市立光丘中学校

3 対象

第3学年2組(38名)

4 単元名

健康な生活と疾病の予防
「喫煙、飲酒、薬物乱用と健康」

5 単元目標

関心・意欲・態度 喫煙・飲酒・薬物乱用の心身への影響や社会的影響、喫煙・飲酒・薬物乱用のきっかけや助長する心理状態・社会環境への適切な対処について、学習カードに記入したり、仲間と意見交換したりしようとする。
思考・判断 喫煙・飲酒・薬物乱用のきっかけや助長する心理状態・社会環境、薬物等に手を出さない生き方に必要な心の持ち方について、仲間との意見交換をもとに整理し、自分の考えをまとめることができる。
知識・理解 喫煙・飲酒・薬物乱用の心身への影響や社会影響、喫煙・飲酒・薬物乱用のきっかけや助長する心理状態・社会環境への適切な対処、薬物等に手を染めない幸せな生き方をするためには自分自身大切に思う気持ちが重要であることについて、言ったり書き出したりすることができる。

6 学習の道すじと工夫

 

結果と考察

1 知識が身に付いたか

授業後に行ったアンケートにおいて、プレゼンテーションソフトを活用した授業は分かりやすかったと答えた生徒は100%であった。

また、単元終了後に行った知識理解度テストの平均正答率は87.8%であり、たばこ・酒・薬物の害に対する認識度は事後アンケートではほぼ100%となった。

このことから、プレゼンテーションソフトの活用によって学習効果が上がり、知識を身に付けることができたと考える。

2 知識に実感を伴わせることができたか

薬物乱用経験者の手記を読んで薬物の恐ろしさや悲惨さを感じた生徒、薬物標本に触れて薬物の存在が遠いものではないと感じた生徒は、ほぼ100%であった。

また、ブレインストーミングで出された要因の数と種類では、「心の問題」についてが圧倒的に多かった。(表1)

このことから、自分のこととして捉え、知識に実感を伴わせることができたと考える。

表1 ブレインストーミングで出された要因と数
カテゴリー 心の問題 社会の問題 その他
主な内容 興味・好奇心(39)
ストレス(26)
カッコつけ(23)
誘われて(30)
大人の真似(15)
周りがやっている(12)
痩せるため(9)
知識不足(8)
何となく(6)
165 71 27

3 行動化への意欲と態度の育成につながったか

セルフエスティームを大切にする学習を行った結果、「自分のことが好き」「自分のことを大切にしている」と答えた生徒は増加した。

また、薬物等に手を出したくないという行動化への意欲を表した生徒は100%であり、その理由として、「自分を大切にしたい」「笑顔を失いたくない」といった、自分を大切にする内容のことを挙げていた。

さらに、学習カードに書かれた生徒の感想からは、実感的で価値的なわかり方(「薬物は怖いなと思った」「・・・の勉強はとても役に立つと思います」等)と、実践への意欲がそそられるようなわかり方(「・・・したくないと思います」「断りたいと思います」等)をしていると判断できる記述を全員の生徒がしていた。(表2)

以上のことから、セルフエスティームを大切にする取り組みによって自分を大切にする気持ちが高まり、薬物等に手を出さないという行動化への意欲と態度に結び付いたと考えられる。

表2 「実感的で価値的なわかり方」「実践への意欲がそそられるようなわかり方」をしていると取れる記述をした人数(学習カードの記述から)
わかり方のカテゴリー 人数
実感的で価値的なわかり方 36 100
実践への意欲がそそられるようなわかり方 36 100

 

まとめ

1 研究の成果

これらの結果から、仮説「プレゼンテーションソフトの活用により、効果的に知識を身に付けさせ、薬物標本・薬物乱用経験者の手記の使用や参加型学習の導入により知識に実感を伴わせ、セルフエスティームを大切にする学習を行うことで、行動化への意欲と態度の育成につなげることができる」の有効性が検証できたと判断する。

2 今後の課題

(1)セルフエスティームを大切にする学習を単元の最初に行うことや、最後に行うことなどを検討する。

(2)道徳教育をはじめ、関連教科・特別活動・総合的な学習の時間との望ましい連携の仕方について検討する。

このページの先頭へ戻る


コツを伝えあい、技能を高めるマット運動の学習
ー動作を深く観察し、言語化しあうことで運動への理解を深めるー

神奈川県立六ツ川高等学校 村山明夫

 

はじめに

近年の高校生は、生活環境の変化に伴い、運動不足や体力の低下などがみられると同時に、携帯電話やパソコン等の利用率の増加により、コミュニケーションのとり方にも変化が見受けられる。本校の生徒の中には、体育学習において、基本的技能を習得しきれていない生徒や、運動に対して苦手意識を抱く生徒がおり、さらに、話しあいが十分に出来ず、課題の発見・解決が上手くいかない状況がみられることもあった。その傾向は器械運動において、顕著に表れており、指導の難しさを痛感していた。そこで、本研究では授業の中で、運動技能に対する具体的な話しあいをもとに、思考を促し、深めていく学習を通して、技能の習得を図ることを目指した。そのために運動を深く観察し、そこから発見できたことや自ら体感した運動感覚を表現し、お互いに伝えあう。そして、その伝えあった内容を整理して、体現化できるような工夫を行うこととした。

 

研究の仮説

マット運動の技のコツを探る中で身体運動を深く観察し、その姿や感覚を言葉で表現しあうことにより、運動に対する思考の深まりと技能の高まりを生み出すことができる。

 

検証授業の実際

1 期間

平成19年10月3日(水曜日)から10月31日(水曜日) 9時間扱い

2 場所

神奈川県立六ツ川高等学校

3 対象

第1学年 女子 1・2組(28名)

4 単元名

器械運動(マット運動)

5 単元目標

関心・意欲
・態度
マット運動の特性に関心を持ち、楽しさや喜びを味わえるよう、互いに協力して練習に取り組もうとする。また、練習や運動場所および器具の安全や自分の体調を確認するなど、安全に留意しようとする。
思考・判断 技の習得や習熟に向け、そのコツや課題を見つけることができる。また、課題解決に向けた、練習の方法を工夫したり選んだりすることができる。
運動の技能 新たな技の習得や既習の技の習熟を図り、それらを組み合わせて演技することできる。
知識・理解 マット運動の特性や学び方、技の系統性と技術のしくみについて言ったり書き出したりすることができる。

6 単元計画

 

結果と考察

1 運動観察の視点を意識して運動をとらえることができたか

プレゼンテーションや学習カードで、各技の姿や感覚を(はじめ-なか-おわり)とらえることを促した結果、各技に対して多くの具体的なコメントが出された。(表1)また、発表会では、ほぼ全員が適切な自己評価と課題の発見ができた(95%以上)。動作を3局面に分け、その姿や運動感覚を細かくコメントをすることで、技の特性を的確にとらえ、課題の発見ができたことから、生徒は運動観察の視点を意識して運動をとらえられたと考える。

表1 学習カードの生徒の倒立のコメント
5時間目 はじめ 片足をまず高く上げてからもう片足で蹴る
足で弧を描くように
なか アゴを出す
おわり 足をピンと伸ばし、両手で体を支える
7時間目 はじめ 肘を伸ばす
あごを上げる
なか つま先まで伸ばす
足がふらつかないよう
おわり お腹に力を入れて引っ込める
あごをひく

2 動作のコツを理解できた

表2から、器械運動の技をスムーズに行うための感覚づくり運動を実施した結果、生徒が各運動のポイントをとらえ、その意義を理解していたことがわかる。また、事後アンケートでは感覚づくり運動が「技への繋がりを感じた(86%)」等、肯定的な記述が多かった。課題技のポイントが感覚づくり運動を通して把握されていたことから、生徒は技を行うコツを理解していたと考える。

表2 感覚づくり運動のねらいと生徒が感じた運動のポイントや技への繋がり(抜粋)
感覚づくり運動   教師のねらい 生徒のコメント
(運動のポイント)
生徒のコメント
(何に繋がるか)
背倒立   逆さ感覚、腹部から足先までの体幹の緊張 足・腰をまっすぐ、お尻を上げる 倒立、大きな前転、伸膝前転
川跳び   横跳びでの体重移動、逆さ感覚、腕支持感覚 お尻・腰を上げ、腕でしっかり支える、足を高く、伸ばす 側転、倒立、ロンダート

3 技能の高まりがみられたか

感覚づくり運動や課題技の達成度を教師が評価した結果、高まりがみられた。また、生徒全員の感覚づくり運動の毎時の自己評価でも同様の向上がみられたことから、技能の高まりはみられたと考えられる。

 

検証授業を終えて

1 運動有能感について

単元を通し運動有能感の高まりが認められ、多くの生徒が授業に対して楽しさを感じていたと考える。さらに、技能別(低・中・高群)に着目した結果、運動有能感の高まりは、特に低群と中群では顕著であった。しかし、高群では基本的な技の習得が重視され、新しい技への挑戦や美しく行う練習が少なかったため、ほとんど高まりは見られなかった。

 

研究のまとめ

1 学習の工夫と成果

(1)グループ編成の工夫

単元前半は技に対する認識度の異なる生徒同士が混在するように編成し、後半は発表技が同じ者同士でグループを組んだ。その結果、前半はポイントを絞った話し合いや、活発な意見交換が行われていた。

(2)学習カードの工夫

生徒が技の姿を(はじめ)-(なか)-(おわり)の3局面に分けて観察し、細かく簡潔に書き出せるように構成した。記述欄の幅を短くし、数多く区切るなどと工夫したレイアウトを行い、ポイントを絞って記述できるようにしたため、・生徒の負担感が減る。・観点が増え、思考の幅を広げる。・教師の読み取りが容易になる。という効果があった。

(3)感覚づくり運動

課題技に必要な感覚を養うため、技の要素を集めた9種類の感覚づくり運動、「ゆりかご」、「カエル足うち」、「ブリッジ」、「川跳び」、「V字腹筋」、「背倒立」、「前転&ジャンプ」、「しゃくとり虫」、「うさぎ」をサーキット形式でウォーミングアップとして毎時間行った。達成度が高まるにつれて、生徒は技のコツを頭と体の両方で理解できた。

(4)教材の工夫

ア IT支援教材

運動感覚を声に出すことと運動を3局面に分けることを単元の1・2時間目にプレゼンテーションソフトで説明した。また、5時間目以降は技の見本の映像と練習法がわかるノートPCを用意した結果、有効に活用する生徒の姿がみられた。

イ コツボード

技の感覚を共有するために、技の展開の連続図を拡大印刷して壁に張り出し、各自のコツを書き入れた。練習の中でコメントを確認したり、ボードの前で話し合いが自然に行われる様子がみられた。

2 まとめと今後の展望

マット運動の技能の向上には、しっかりと自分や友人の姿を認識することが有効である。反復練習と共に、運動動作を観て、感じたことを言葉にすることは、新しい気づきが増え、より質の高い活動が生まれると考える。また、3局面を意識し、IT支援教材等を活用すれば、的確な課題発見とその解決法の考案がなされ、技能は高まると考えられる。

具体的には、

  • 友人や見本の姿を細かくとらえる。
  • 自身の運動感覚と、ビデオ映像や見本の姿との違いを探しながら反復練習する。
  • 運動の感覚や自身の課題を言葉で表し(つぶやき)ながら反復練習する。
  • 必要に応じて、グループ学習を行う。
  • 必要に応じて、学習カード等を活用する。

これらは他の種目にも当てはまり、その姿や感覚を言葉にしてそれを頼りに練習を行うと、技能の高まりと理解の深まりがみられると考える。表4はハードル走(ハードリング)とハンドボール(右利きジャンプスロー)の動作を3局面の視点でとらえた記入例である。

表3 他種目での3局面のとらえの例
種目 はじめ なか おわり
ハードル走
(ハードリング)
獲物に襲いかかる感じで 振り上げ足と逆の手は前に 抜き足は鋭い膝蹴り
ハンドボール
(ジャンプシュート)
ターン・タ・タンのリズムで ボールは後ろに高く すぐ次の動き

学習カード等に技の連続図を示し、生徒自身がそれぞれの局面を自分の言葉で書き入れるようにする。単元初期では各自の動作の完成度は決して高くはなく、また、言葉の出せる生徒と出せない生徒もいるかと思われる。しかし、はじめは人から出てきた言葉であっても、それらの言葉を手掛かりに練習を重ね続けることで自分の言葉となり、それに伴って理解が深まり、技能が高まると考える。

また、動作が連続する場合には(おわり)の終末局面が次の動作の準備局面に融合すること(ハードル走の抜き足からインターバル走)や、(はじめ)の準備局面から(なか)の主要局面への移行に変化をもたせることについて(球技等で相手の逆を狙うフェイント動作)なども理解できるようになる。このような学習は、領域・種目にかかわらず、すべての運動動作に対して、より深い理解をもたらすと思われる。

また、生徒が、各自の運動の感じ方の違いから様々な運動の感覚を表現する言葉を生み出すためには、教師も多様な言語表現を使って説明やアドバイスをする必要がある。運動動作を細かく観察し、深い分析や共感ができることで、自らが運動を行うだけでなく、観る際にも、その実践者に共感できる。優れた動作に共感し、感動する機会が増えれば、その人の人生をより豊かにしていくと考える。

このページの先頭へ戻る

Adobe Readerのダウンロードページへ

PDF形式のファイルをご覧いただく場合には、Adobe Readerが必要です。Adobe Readerをお持ちでない方は、バナーのリンク先から無料ダウンロードしてください。

本文ここまで
県の重点施策
  • 未病の改善
  • ヘルスケア・ニューフロンティア
  • さがみロボット産業特区
  • 県西地域活性化プロジェクト
  • かながわスマートエネルギー計画
  • 東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会
  • ラグビーワールドカップ2019
  • 神奈川県発、アート・カルチャーメディア「マグカル」
  • ともに生きる社会かながわ憲章
  • SDGs未来都市 神奈川県 SDGs FutureCity Kanagawa