更新日:2005年5月3日

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第32号(平成16年度/2004)

体育センターレポート。指導研究部の4室が行った研究と、体育センター長期研修員の授業研究により構成されております。これらの研究につきましては、抄録のみの掲載となっておりますが、研究報告書を掲載しておりますので、併せてご活用いただければ幸いに存じます。

発刊のことば

写真:藤原 三津男 所長

神奈川県立体育センター

所長 藤原 三津男

このたび、当体育センター指導研究部の平成16年度の研究報告書をまとめた「体育センターレポート第32号」を発刊する運びとなりました。

本号は、指導研究部の4室(研修指導室、スポーツ科学研究室、生涯スポーツ推進室、スポーツ情報室)が行った研究と、学校体育長期研修の先生方の授業研究の報告により構成されております。これらにつきましては、抄録のみの掲載となっておりますが、下記のページに、研究の全体がわかる研究報告書を掲載しておりますので、本レポートと併せてご活用いただければ幸いに存じます。

体育センターは、県民の皆様に明るく豊かなスポーツライフを送っていただくために、施設の利用者に満足度の高いサービスを提供するとともに、体育・スポーツに関する時代の要請に則した人材の育成や医学的サポート、地域におけるスポーツ活動組織の育成・支援、調査研究、スポーツ情報の提供を図ってまいりたいと考えております。今後とも、益々のご指導、ご鞭撻を賜りますよう、お願い申し上げます。

最後に本誌の発刊に際しまして、ご協力を賜りました皆様に厚くお礼申し上げ、発刊のことばといたします。

 


目次

調査研究

《研修指導室》

《スポーツ科学研究室》

《生涯スポーツ推進室》

《スポーツ情報室》

 

学校体育長期研修

《小学校》

座間市立中原小学校 泉田 裕

《中学校》

厚木市立厚木中学校 広瀬 清美

《高等学校》

県立麻溝台高等学校 大石 泰平

 


高等学校保健体育の学習評価に関する研究
―指導と評価の一体化を目指して―

【研修指導室】久保寺忠夫 郡山強 白井功 落合浩一 林ますみ 大越正大
中村ふじ(生涯スポーツ推進室) 中川裕志(県立綾瀬高校)

キーワード:評価規準、評価場面、評価方法

はじめに

本研究では、まず高等学校保健体育における学習評価及び評価資料の活用方法について理論的研究を行い、その理論を基に授業実践を行うことで、その成果と課題を整理することを目的とした。さらには、それらを基にして、各学校が学習評価計画を作成する際に活用できる学習指導と評価の具体的な方法を示した「学習評価ハンドブック」を作成するための資料とすることを目的とした。

研究の方法

1.理論の研究(平成15年度)

文献研究を行い、指導と評価の一体化を主眼とした新学習指導要領の趣旨に基づいた学習評価方法の要点と手順を整理する。(学習評価ハンドブック理論編の作成)

2.授業実践(平成16年度)

理論の研究を基に、科目「体育」(体つくり運動・バドミントン)と科目「保健」(社会生活と健康)について授業実践を行い、学習評価に関する成果と課題を整理する。(学習評価ハンドブック、全編の作成)

(1)学習評価に対する整理の視点

ア.評価規準は適切であったか
イ.評価の場面は適切であったか
ウ.評価方法は適切であったか

(2)授業実践の計画

ア.日時及び実践校

(ア)科目「体育」体つくり運動(県立A高校)

日時:平成16年9月24日ー11月30日
対象:2年生女子1クラス(22名)

(イ)科目「体育」バドミントン(県立B高校)

日時:平成16年10月1日ー12月13日
対象:1年生3クラス1展開(24名)

(ウ)科目「保健」社会生活と健康「環境と食品の保健」(県立C高校)

日時:平成16年10月15日ー11月26日
対象:2年生1クラス(39名)

まとめ

1.理論研究のまとめ(抜粋)

(1)学習評価の基本的な考え方

学校や教師にとっての評価は、「各学年、各学校段階等の教育目標を実現するための教育実践に役立てるもの」であり、生徒にとっての評価は「生徒の一人ひとりのよさや可能性を積極的に評価し、豊かな自己実現に役立つようにするもの」である。したがって、学習の評価とは、「児童生徒のための評価であると同時に、学校や教員が進める教育自体の評価である。」(答申)といえる。

(2)目標に準拠した評価とは何か

目標に準拠した評価(いわゆる絶対評価)とは、学習指導要領に示す目標に照らして生徒の学習の実現状況を見る評価のことである。

生徒一人ひとりの学習展開に応じて、あらかじめ教育目標を分析して設定した評価規準に照らして、その目標がどの程度実現されたかを評価するものである。評価規準を事前に設定し、日常の授業の中で直ちにフィードバックして指導や支援に役立てることが重要である。目標に準拠した評価は生徒の学習の実現状況を他者と比較するものではない。

(3)具体の評価規準作成上の基本的な原則

ア.内容のまとまりごとの評価規準で使用した用語は避け、より具体的に表現する。

イ.文末は、観点で特徴的な姿や学習行動を表現する動詞(キーワード)とする。
※上記2項目で、縦を配慮して作成する。
→縦(教科・領域→単元→具体例の一貫性を図る)

ウ.混乱を避けるため、観点間で同じ表現や似た表現を使用しない。
→横(観点間の表現の重複や紛らわしい表現を避ける)

エ.多面的に評価するため、「おおむね満足できると判断される」状況(B)を複数の視点から設定し、それぞれに「十分満足できる」及び「努力を要する」状況と判断できる学習活動(方法的側面)の例を学習形態・内容等との関わりで予測し、明らかにしておく。
→高さ(同じ軸で質の高まりを表現する)

 


図1:学習活動における具体の評価規準の構造(文部科学省 戸田芳雄)


図2:評価規準作成の手順

2.理論を踏まえた授業実践のまとめ

(1)具体の評価規準の設定について

数量的な達成、到達の度合いを指す「基準」ではなく、学習指導要領の目標に照らした実現状況、即ち新しい学力観に立って生徒が自ら獲得し、身に付けた資質や能力の質的な実現状況とすることを、まず大前提とする。

評価規準の設定は国立教育政策研究所の資料に示されている内容を参考にするが、その内容や捉え方も改善されてきている。それらを踏まえつつ、各学校において、それぞれの種目・領域ごとに3年間を見通した学習内容と評価規準を系統性に留意し、計画的に設定することが必要になる。

(2)評価の場面の妥当性

効果的に評価結果を指導に生かしていくためには、評価結果をフィードバックできるサイクルを成立させる場面設定が必要である。具体的には事前に評価情報を観点別に整理し、学習の活動状況を見取っていく場面を設定する。

あらかじめ計画する評価に関しては、指導の流れに準拠するとともに、評価に追われない適正な、評価場面(回数等)を設定する。

生徒の変容に合わせてその都度行う評価については、即応性が求められる。場合によっては、学習後に補充指導が必要な場合も考えられる。

(3)評価方法の妥当性

授業実践では、一つの評価規準について複数の方法を用いて評価することによって、より詳細に見取ることができ、個に応じた細かい指導ができたが、非常に労力が必要であった。最も有効な方法・場面という観点で精選し、実際の指導の状況に即した方法及び回数等を設定する必要がある。

また、忘れてはならないことは、ねらいの明確化が、合理的で簡便に評価を行う上で基本であるということである。生徒にどのような力を付けさせるのかを明確にすることによって、初めて言葉で表される規準、場面、方法等が具体化する。さらに、学習中に生じる課題をあらかじめ想定し、事前に手立てを考案しておくことができる。周到な評価計画を立てることが、よりよい評価を行うために重要である。

 

引用・参考文献

  • 宇土正彦他編著:「体育科教育法講義」大修館書店 1992.10
  • 日野 宏:「保健体育ジャーナル」68号 学習研究社 2004.1
  • 川崎市教育センター:「新学習指導要領とこれからの評価」-評価を授業に生かすために- 平成13年11月
  • 佐野 金吾・児島宏編著:「新しい評価の実際」-生きる力を育てる評価(第2巻)- ぎょうせい 2001.7
  • 新潟県教育センター:「これからの学習評価」平成14年5月
  • 佐野 金吾・児島宏編著:「新しい評価の実際」-生きる力を育てる評価(第1巻)- ぎょうせい 2001.7
  • 神奈川県立総合教育センター:「高等学校シラバス例示集」平成16年2月
  • 文部省:「学校体育実技指導資料第7集 体つくり運動―授業の考え方と進め方―」平成12年3月
  • 戸田 芳雄:「平成16年度全国都道府県・指定都市教育委員会学校体育担当指導主事研究協議会資料」平成16年9月

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児童生徒の体力・運動能力と生活実態に関する研究

【スポーツ科学研究室】高井瑞穂、大谷一記
【研究アドバイザー】横浜国立大学 落合優

キーワード:運動習慣、生活習慣

はじめに

社会環境や生活様式の変化などにより、運動の機会の減少や生活習慣の乱れが生じ、児童生徒の体力・運動能力は長期的低下傾向にある中、平成14年9月に中央教育審議会より、「子どもの体力向上のための総合的な方策について」の答申が出された。

この答申では、体力は人間の発達・成長を支え、創造的な活動をするために大切な役割を果たすものであり、将来を担う子どもの体力を向上していくことは、わが国の将来の発展のためにも重要な課題であるとしている。また、児童生徒の体力の向上を図るため、子どもの頃から体を動かし、運動に親しむことや望ましい生活習慣を確立することの必要性を述べている。

神奈川県においても、児童生徒の体力・運動能力調査を基に、児童生徒の体力と運動習慣の関連性について研究することにより、今後の児童生徒の体力向上に資すると考えた。

方法

1.研究内容

(1)運動実態と体力・運動能力

(2)運動習慣と体力・運動能力

(3)朝食摂食状況・睡眠時間・テレビ視聴時間と運動習慣

(4)朝食摂食状況・睡眠時間・テレビ視聴時間と体力・運動能力

2.データの概要

(1)平成15年度児童生徒体力・運動能力調査(保健体育課による)

(2)調査期間

平成15年4月から平成15年7月

(3)標本数

小学校児童男女 N=11,300
中学校生徒男女 N=7,250
全日制高等学校生徒男女 N=9,385

(4)内容

ア.新体力テスト結果
イ.生活実態調査結果

3.研究期間

平成16年4月ー平成17年3月

4.研究方法

(1)文献研究

(2)集計・処理

ア.生活実態調査のクロス集計:カイ二乗検定
イ.体力・運動能力と生活実態調査のクロス集計:t検定及び一元配置分散分析

(3)結果の分析・考察

(4)まとめ

結果と考察

生活実態調査の中で、運動実態に関する内容(運動実施頻度、運動実施時間、運動部・地域スポーツクラブへの所属状況)について分析したところ、運動・スポーツの実施頻度(以下実施頻度)については、小学校では、「週1ー2日程度」が最も多く、中学校・高等学校では、「週3日以上」が最も多かった。また、1日の運動スポーツ実施時間(以下実施時間)については、小学校低学年で「2時間以上」が少なく、「30分未満」の割合が多かった。高等学校においては、「2時間以上」行う生徒と「30分未満」の生徒の割合が多く、実施時間に二極化がみられた。

運動部・スポーツクラブへの所属状況(以下所属状況)については、小学校低学年から中学校まで、学年が進むにつれて増加していたが、高等学校になると大きく減少していた。

実施頻度と実施時間について、新体力テストの項目ごとに調べたところ、実施頻度が多いほど、また実施時間が長いほど、平均値が高いことがわかった。さらに詳細に見ていくため、表1に示したとおり、実施頻度と実施時間を掛け合わせたものを運動習慣として定義して、分析した。結果は以下のとおりである。

表1:運動習慣

運動習慣あり・・・実施頻度が週3日以上且つ実施時間 30分以上

運動習慣なし・・・上記以外


図1:運動習慣

図1より、小学生の運動習慣については、学年期が上がるにつれて、徐々に「運動習慣あり」が増え、中学校においては、60%を超えていたが、高等学校では減少していた。


図2:運動習慣と所属状況

図2より、運動習慣と所属状況についてみたところ、「運動習慣あり」の児童生徒の方が、運動部・スポーツクラブに「所属している」割合が多かった。特に、中学校・高等学校においては、「運動習慣あり」の約90%が運動部やスポーツクラブに所属しており、運動習慣に大きく影響していることがわかる。

次に、新体力テストの平均値を比較した。特に、全身持久力の指標となる「持久走」や「20mシャトルラン」、また、筋力・筋持久力の指標となる「上体起こし」などで平均値に差がみられた。運動習慣の影響は、男子よりも、女子に強く出ていた。また、「運動習慣あり」の平均値が上昇しつづけるのに対し、「運動習慣なし」は停滞または、低下する傾向がみられるものもあった。図3、4はこのような傾向が顕著な例である、20mシャトルランと運動習慣の結果である。


図3:運動習慣と20mシャトルラン【男子】


図4:運動習慣と20mシャトルラン【女子】

次に、運動習慣と朝食摂食状況、睡眠時間、テレビ視聴時間の関連性についてみてみた。朝食摂食状況と運動習慣の関係については、高等学校において差がみられた。運動習慣と睡眠時間、テレビ視聴時間については、運動習慣のあるなしで大きな差はみられなかった。

また、朝食摂食状況、睡眠時間、テレビ視聴時間について新体力テストとの関係をみたところ、朝食摂食状況、睡眠時間、テレビ視聴時間において、全学年を通じて顕著な差がみられたものはなかった。しかし、中学校・高等学校において、朝食摂食状況で、「毎日食べる」が「時々食べない」「食べない」に比べ新体力テスト測定項目の平均値が高くなる傾向がみられた。特に、図5、6に示すとおり、「持久走」や「20mシャトルラン」について差がみられた。また、テレビ視聴時間では、「3時間以上」において平均値が低くなる傾向がみられた。

 


図5:朝食摂食状況と20mシャトルラン【男子】

 


図6:朝食摂食状況と20mシャトルラン【女子】

 

まとめ

実施頻度と実施時間が満たされることによって、体力・運動能力の向上につながることから、体力・運動能力の向上のためには、運動やスポーツを週3日以上、3日30分以上行う必要があることが認識できた。このことから、小学校においては、外遊びなど運動の機会を増やすことが、また、中学校・高等学校においては、運動部やスポーツクラブに所属しない生徒の運動やスポーツでの運動量をいかに確保していくかということが課題として挙げられる。

また、朝食摂食状況・睡眠時間・テレビ視聴時間については、体力・運動能力に対して明らかに影響しているとはいえなかった。しかし、朝食においては一部影響がみられたことから、体力・運動能力の向上や健康維持のためには、望ましい生活習慣を確立していくことが必要であると考えられる。

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神奈川県が推進している「3033運動」による健康・体力つくりに関する研究
(2年継続研究の1年次)

【スポーツ科学研究室】幸田隆
【研究アドバイザー】横浜国立大学 落合優 神奈川工科大学 高橋勝美

キーワード:3033運動、運動習慣、体力、意識

はじめに

平成12年9月に文部科学省から告示された「スポーツ振興基本計画」には、スポーツ振興施策の展開方策が示されており、そのうちの「生涯スポーツ社会の実現に向けた、地域におけるスポーツ環境の整備充実方策」において、「できるかぎり早期に、成人の週1回以上のスポーツ実施率が2人に1人(50パーセント)となることをめざす。」という具体的な数値が政策目標の一つに示されている。その施策展開としては、「成人の2人に1人が毎週スポーツを行うような生涯スポーツ社会の実現に向けて、国民一人一人が自らの関心や体力に応じて、スポーツを生活文化として日常生活の中で行うことにつながるキャンペーンを実施する。」こととしている。

それに先駆け神奈川県では、「新総合計画21」において、2001年(平成13年)を「希望の年」として位置づけ、年間を通じて「生涯スポーツフェスティバル」を開催し、その中で1日30分間、週3日、3ヶ月間、継続してスポーツを行う「3033運動」スポーツ啓発キャンペーンを展開した。そして「生涯スポーツフェスティバル」終了後もその普及・啓発キャンペーンを継続している。

平成16年3月には新しい県の総合計画「神奈川力構想・プロジェクト51」が示され、「文化芸術・スポーツを楽しむ環境づくり」の実施計画に、「成人の週1回以上のスポーツ実施率を2006年(平成18年)までに41パーセントにする」施策目標が掲げられた。「3033運動」などの普及・啓発事業を推進することによって、現在は全県的な健康・体力つくりの推進体制の整備を進めている。

このように「3033運動」は、全国に先駆けたスポーツ実践啓発のキャンペーンとして注目に値する。この運動が、県民に広く普及し、生活に定着することによって、スポーツ実施率は上昇し、県の施策目標達成の一助となり、また、県民の健康や体力が向上し、生涯スポーツ社会の実現に向け、県民に心豊かなくらしが創造されるようになるものと期待される。

よって本研究は、神奈川県が推進している「3033運動」に着目し、県内のあまり運動習慣のない中高齢者の方に「3033運動」を実践してもらい、運動やスポーツの習慣化が計られるか、また、心身にどのような効果があるかどうかを検証することにする。それにより、実践者には運動やスポーツによって及ぼされる効果が体験でき、運動やスポーツをすることに対する認識が深められ、運動習慣が定着し健康的な生活が実現されるものと考える。

本研究を通じて「3033運動」の実践が、県民全体の健康や体力の向上に資するものとしてさらに広く普及することを願う。

 

方法

1.研究期間

平成16年4月ー平成18年3月(本年度は2年継続研究の1年次)

2.対象

県内在住または在勤の方で、30歳から65歳までのあまり運動習慣のない方
各期12名 5期 計60名

3.募集方法

“「3033運動」で行う健康増進指導”のモニターとして公募

4.調査内容及び方法

応募したモニター(以下「実践者」という。)に「3033運動」ノートを配布し、事業の趣旨、実践内容、実践方法等について十分な理解を得た後、「3033運動」の実践をしてもらうとともに、事前、中間、事後において各種測定及びアンケート調査を行う。

(1)「3033運動」の実践

実施期間を13週間とし、開始1週間はそれまでの運動をあまりしない生活を継続し、その後12週間は「3033運動」を実践する期間とした。開始1週間で現状の運動量を認識してもらい、その後の運動状況についての目標設定後、12週間の「3033運動」を実践してもらうよう啓発した。

なお、「3033運動」の実践は、強制的に運動プログラムに参加させるものではなく、あくまでも実践者の主体性により、生活の中に意識して運動する機会を増加させようとするものであり、これまでよりも意識されて行われた運動が、すべてそれに含まれることになる。

(2)運動習慣定着への試み

13週間に渡り生活活動量の計測を行い、実践者がそれを一日ごとに記録することによって、実践者自身が生活における運動量を認識し、運動する意欲が日々継続されるように試みた。また、運動指導を期間中3回、開始時、中間時(6週後)及び終了時に臨床的に行ったほか、計3回電話による「3033運動」の実践状況の確認と運動指導を行った。

(3)生活活動量の記録と評価

生活活動測定機から、一日ごとに総エネルギー消費量、運動量(kcal)、歩数を記録した。また、運動の内容(持久力、柔軟性、筋力、その他)ごとに運動時間を記録し、一日の運動時間の合計が30分以上であるかどうか、30分以上実践した日が1週間に3日以上あるかどうかを(○・×)で評価した。生活活動測定機に記録されないような運動を実施した場合は、その内容と実施時間を備考に記録した。

(4)健康・体力面の意識調査

実施期間の初日と最終日にアンケートを実施し、健康・体力面の意識の変容、及び運動習慣の定着具合とその理由について調査した。

(5)体力等の測定

「3033運動」の開始時と中間時(開始6週間後)、終了時に、形態、体組成の計測と体力測定を行った。体力測定は、体力要素を測定する基礎体力テストと日常生活における機能性を測定する生活体力テストとして実施した。

内容については以下のとおりである。

ア.形態、身体組成の計測

身長・体重・基礎代謝・筋肉率・体脂肪率・BMI・内臓脂肪レベル・体年齢

イ.基礎体力の測定

持久力:PWCテスト
筋力:握力テスト
筋力・筋持久力:30秒上体起こしテスト
柔軟性:長座体前屈テスト
瞬発力:脚伸展パワーテスト
敏捷性:座位ステッピングテスト

ウ.生活体力測定

立ち上がり動作:両足片足立ち上がりテスト
移動動作:大股10歩テスト(30ー49歳)
移動動作:10mS字歩行テスト(50歳ー65歳)
家事動作:ハンガー掛け替えテスト
身辺動作:縄くぐりテスト
転倒回避力:ファンクショナルリーチテスト
転倒回避力:足関節可動域テスト

(6)メディカルチェック

3回の体力等の測定の開始直前に、血圧・脈拍測定及びドクターによる問診、医事相談を実施した。問診の結果、体調不良の場合は、測定可能項目のみを実施した。

結果と考察

1.属性および実践状況

第1期と第2期について実践した。第1期に途中から辞退者1名、第2期に開始時に辞退者1名がいたため、実践者数は22名となった。年代と性別の属性は表1のとおりであった。

  30代 40代 50代 60代 合計
男性 0名 0名 2名 2名 4名
女性 4名 2名 8名 4名 18名
合計 4名 2名 10名 6名 22名
表1:年代および性別

生活活動量の記録が信頼できるものであるかどうかの確認を行った結果、実践者22名中19名の記録は信頼できるものであった。

記録が信頼できると判断した19名のうち、期間中の「3033運動」の実践状況は表2のとおりであった。

全期間を実施した(全12週) 10名
半分以上を実施した(6ー11週) 6名
半分以下を実施した(1ー5週) 3名
表2:実践状況 全期間を実施した

データ分析にあたっては、実践者22名中事後測定未実施者1名を除く21名を対象とした。測定日に体調不良、怪我、服薬があり、データに影響すると判断した場合には、測定項目ごとにそのデータを除去した。また、PWCテストで上限値を超えたものはデータから除去した。足関節可動域テストの第1期については、途中から測定方向を変更したためデータから除去した。

なお、本研究は2年継続研究の1年次に当たり、計画されたデータ数が確保されていないため、今回はデータの分析に平均値と標準偏差を示すのみとし、統計分析は行わずにデータの比較を行い、現在までの傾向を把握した。

2.形態・体組成

筋肉率・体脂肪率の平均値について事前・中間・事後で比較したところ、変化は認められないようであった。その他の項目については比較したかった。

3.基礎体力テスト

すべての項目の平均値について事前・中間・事後で比較したところ、持久力(PWC)、筋力・筋持久力(30秒上体起こし)、柔軟性(長座体前屈)、瞬発力(脚伸展パワー)、敏捷性(座位ステッピング)で記録が十分に向上している可能性があった。筋力(握力)はやや向上している可能性があった。

4.生活体力テスト

すべての項目の平均値について事前・中間・事後で比較したところ、立ち上がり動作(両足片足立ち上がり)、移動動作(大股10歩・10mS字歩行)、家事動作(ハンガー掛け替え)、身辺動作(縄くぐり)で記録が十分に向上している可能性があった。転倒回避力(ファンクショナルリーチ・足関節可動域)については、記録が十分に向上している可能性は認められなかった。

5.健康・体力面の意識

自分の健康・体力に対する自覚などについて、事前・事後で比較したところ、健康への自覚、体力への意識、肉体的な疲労感、体力の衰え感、便秘の症状、充実感、爽やかさ、転倒や捻挫のしやすさ、階段の昇り降りが楽にできる、の項目で意識が十分に向上・改善している可能性があった。精神的な疲労感やストレス、不眠の症状、食欲不振感、若々しさ、やわらかい動きができる感、の項目でやや向上・改善している可能性があった。

6.運動習慣の定着について

運動習慣の定着意識について、事前(習慣がつくと思う)と事後(習慣がついた・習慣が続く)で調査したところ、図1のようであった。


図1:運動習慣の定着意識

このことから、3ヶ月に渡る健康増進指導によって大方の人に運動習慣を定着させることができるが、運動習慣が定着したとあまり思わない者が1割程度でる可能性もある。しかし、健康増進指導を通じた「3033運動」の普及・啓発活動により実践者に運動習慣が定着し、その後も運動を継続していく可能性が高そうである。

運動習慣の定着・継続の理由としては「意識改革になったから」「気軽で、無理なく、楽しくでき、生き甲斐を持てたから」「運動による効果があったから」「健康・体力を維持したいから」「運動するきっかけができたから」「運動習慣を定着することができたから」などであった。

まとめ

基礎体力や生活体力の身体面は、危険回避力を除き「3033運動」により向上したといえそうである。ただし、3ヶ月の取り組みでは形態・体組成の変容には至らないことからすると、3ヶ月間での運動では生活習慣病の予防や改善に、直接的即効的に効果をあげるわけではないことが予想される。精神面に対しても具体的な効果を及ぼし、健康や体力を高めたといえそうである。また、運動習慣は以下の順により効率良く形成されるといえそうである。(1)きっかけをつくる。(2)実際に運動に取り組む。(3)効果や楽しさを実感する。(4)意識改革をはかる。(5)健康や体力を維持しようとする態度が形成される。(6)運動を継続していこうと思う。

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スポーツ関係NPO法人実態調査
ー県内における活動状況について―

【生涯スポーツ推進室】加藤木紳克

キーワード:スポーツ関係NPO法人、協働

目的

本県を取り巻く環境は、少子・高齢化やライフスタイルの多様化など、大きな時代の変動期にあり、スポーツの分野においても、既成の体制や価値観の再検討が求められています。 こうした中、社会貢献を行う市民団体の意義や役割の重要性が高まり、スポーツ組織・団体そのものにも変化が生じています。

特に、平成10年に「特定非営利活動促進法」(NPO法)が施行されて以来、特定非営利活動法人(以下、「NPO法人」という。)が神奈川の新しい力として注目されています。

本調査では、神奈川県知事の認証を受けたNPO法人の中で、各法人の定款の項目に「スポーツ・レクリエーション等に関する記載がある団体」を「スポーツ関係NPO法人」と定義しています。

本県では、先駆性、専門性や行動力を持った多彩なNPO法人が、公益を目的とした活動に対して活発に取り組んでいます。特に、新たな住民ニーズが発生しているにも関わらず、その対応のための組織やしくみが整備されていない諸課題について、多くのNPO法人が、自らその解決についての役割を担っています。

こういった現状を踏まえた上で、今後、豊かなスポーツライフの確立に向けた取り組みを進めていくためには、行政やスポーツ関係NPO法人が協働し、各々の特性や資源を生かしあって事業に取り組むことが重要になると考えます。

そこで本調査は、スポーツ関係NPO法人の特性について調査することにより、行政や民間企業とスポーツ関係NPO法人とが協働し、豊かなスポーツライフを確立するための参考に資することを目的に実施しました。

方法

平成16年7月1日現在で、神奈川県知事の認証を受けているスポーツ関係NPO法人80団体へのアンケート調査を実施し、文献等からの参考資料との比較、特に、本調査では平成13年に財団法人笹川スポーツ財団が全国のスポーツ関係NPO法人を対象に実施した「スポーツNPO法人に関する調査報告書」(以下、「全国調査」という。)の結果との比較により本県の団体の特性を分析しています。

なお、アンケート調査の回答数は27、回収率は33.8%でした。

結果及び考察

1.スポーツ関係NPO法人の活動特性

本県のスポーツ関係NPO法人は、「法人格申請以前から活動していた」団体が多く、現在実施している活動としては「スポーツ大会や教室の開催」、「会員などによる実際のスポーツ活動」といった、いわゆる「する」スポーツを中心に活動している団体が多い傾向でした。

また、そうした基礎的な活動ベースを持った団体が法人化されているケースが多く見られました。

今後取り組みたい活動として挙げられているものは、「指導者相互のネットワークづくり」や「調査・研究」といった「ささえる」スポーツを挙げている団体が多い傾向でした。

今後も取り組む計画のないものとしては「施設・設備の管理(受託含む)」や「スポーツを通じた国際交流」などの事業を挙げている点に特徴が見られました。

2.スポーツ関係NPO法人の組織特性

事務局スタッフが1ー3名の団体が半数以上を占めており、専任・非専任に関わらず有給でのスタッフ(専任は週30時間以上、非専任は30時間未満の雇用)は約半数の団体が雇用できていない状況でした。

また、役員(理事・監事)や正社員(正会員)、準社員(非会員・利用会員等)なども含め、団体のスタッフ数は少なめでした。

団体の活動費については、全体の8割が年間1000万円未満の収入規模で、そのうち100万円未満が4分の1を占めており、小規模な傾向でした。

また、全体の8割が寄付金収入を得ておらず、補助金や助成金収入の占める割合が多くなっています。

支出に関しては、100万円未満が4割を占めています。特に人件費では7割以上の団体で支出がなく、ボランティア的な関わりによって、組織が維持されている状況が伺えました。

団体の事務所は「役員の個人宅」においている割合が半数以上を占めており、「事務所の所有」や「公共施設の中に設置」している団体はありませんでした。

活動拠点については、使える場所のある団体が9割以上を占め、特に本県の団体の特徴としては、民間(企業)施設を有効に活用している点であり、学校施設を利用している割合は少ない状況でした。

3.スポーツ関係NPO法人の分類

スポーツ関係NPO法人を現在実施している事業の内容により「活動系」、「事業系」、「施設系」、「サポート系」、「情報系」の5つに区分し、それぞれの活動をあてはめてみたところ、単独の分類では「活動系」に区分できる団体が約2割で、最も多くなっていました。

しかし、5つの区分のうち、特定の系統への分類が困難な「その他」や複数の系統にまたがった活動をしている「複合系」の団体がそれぞれ3割近くあり、スポーツ関係NPO法人は単一のくくりではカバーできない多様な活動を行っている状況が伺えました。

4.スポーツ関係NPO法人との協働

スポーツ関係NPO法人は、他の団体や機関と協働を図っていくことで、自らの団体の事業拡大や情報収集、社会的認知の向上などがもたらされることを期待して、法人格を取得した様子が伺えました。

行政や民間(企業)との協働では、「活動場所の提供」といった項目が多く、特に本県の団体の場合には、民間企業との協働が多い傾向が見られました。

しかしながら、行政との協働は、3割以上の団体が「特に関係ない」といった回答でした。

他のスポーツ関係NPO法人相互の協働については、「イベント等の企画・開催」や「指導者やスタッフの人材派遣」といった、現在行っている活動や今後実施の予定がある活動での協働を望む傾向が見られました。

5.スポーツ関係NPO法人の情報収集

スポーツ関係NPO法人が必要とする情報は「補助金などの取得について」や「イベント、セミナーの開催について」という回答が多く、情報収集の目的では「各種事業への活用を図るため」「スタッフなどの人材育成・教育のため」「団体の活動資金を調達するため」「事業についての評価を行うため」という回答が多くありました。

情報収集の媒体としては約8割の団体でインターネットを活用している状況が見られました

高速化、大量化する情報の中で、スポーツ関係団体がどのような情報を欲しているか、また、市民がNPO法人に対してどのような情報を欲しているのか、そうした視点でスポーツ関係NPO法人や行政、民間のネットワークを構築していくことが重要なのではないかと考えます。

6.今後のスポーツ関係NPO法人像について

専従スタッフに期待する業務内容としては、「事務的な業務」に対して手腕を発揮してもらいたいとの回答が多い傾向が見られました。

一方、社員(正会員)に期待する業務内容としては、「スポーツ競技の指導」が多く、「事業・企画づくり」は少ないといった特徴が見られました。

また、組織の充実や事業の拡大に必要なものとしては、団体としての目標設定や社員(正会員)としての役割やメリットの明確化、活動資金の獲得などを重視している傾向が伺えました。

今後は、スタッフの人材育成、活動費の調達、活動拠点の確保を通じて、いかに社会にアピールできる活動をしていくか、また、行政、民間、他団体といかに上手く協働路線をとっていくか、といった視点がスポーツ関係NPO法人の方向性を定めていくことになるのではないかと考えます。

まとめ

今回、県内のスポーツ関係NPO法人を対象に、その活動内容を掌握するためにアンケート調査を実施しましたが、アンケートの回収率が低かったこと、スポーツ関係NPO法人に特化した先行研究の具体事例が少ないことなどから、本県におけるスポーツ関係NPO法人の特性を見出すまでに至りませんでした。しかし、全国調査との比較により、大まかな傾向は捉えたと考えます。

今後のスポーツ振興を考える上で、スポーツ関係NPO法人や行政、民間、他団体がどのような役割や責任を分担していくのかといった協働の視点は、今後ますます重要なものとなっていきます。

そこで、こうした視点を実現して行くためには、スポーツ関係NPO法人が協働していく団体の下請け的な存在となるのではなく、あくまでも対等な関係で、スポーツ関係NPO法人として、地域住民のニーズに即した柔軟なサービスを提供することが必要であると考えます。

特に県や市町村などの行政が、スポーツ関係NPO法人の活用方策について明確にしておくとともに、対等なパートナーシップを構築していくための役割分担や相互協力の内容を協議していくことが最重点課題であると感じています。

本県の総合計画である「神奈川力構想・プロジェクト51」の戦略プロジェクト「ボランタリー活動の推進」の中で、「NPOなどとの協働・連携による公的サービスの推進」として構成事業化され、平成16年の10月には「NPO等との協働推進指針」が策定されています。

また、本県のスポーツ振興指針である「アクティブかながわ・スポーツビジョン」の中でも、システムプロジェクトの中長期的な取り組みの中で、「スポーツ関係NPO等との協働の促進」を掲げています。

そうした状況なども踏まえながら、協働についての話し合いや協議の土俵づくりをしていくことが必要であると考えます。

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ITを活用したゲーム分析支援プログラムの開発
ーバスケットボールのゲーム分析支援ー

【スポーツ情報室】岩田幸男 加藤真男 三木英正

はじめに

近年の著しい情報通信技術の進展はめざましく、ITが生活の中にすっかり定着してきている。そのような中、新学習指導要領では、生徒がコンピューターや情報通信ネットワークなどの情報手段を積極的に活用できるようにするための学習活動の充実に努めることを新たに示した。このことから、各教科で教育用コンテンツの充実が図られている。体育では動画を取り入れたコンテンツが「教育情報ナショナルセンター」を中心に配信されているが、「ゲーム分析」に関するコンテンツが皆無である。そこで、ITを活用し、生徒の関心が高いと思われる部分をデータとして表し、ゲームを客観的に捉えることで「自己の運動技能の把握」「チーム課題発見や課題解決に向けた思考判断」「知識理解を深める動機付け」となるプログラムの開発に取り組んだ。

 

研究方法

  1. 先行研究のレビュー
  2. 中・高校生を対象としたプログラムの作成
  3. 授業において活用実践
  4. 授業活用への妥当性の検討と収集データの正確性を調査
  5. プログラムの修正

 

試作プログラムによる授業実践

研究協力校(A高校 男子14名、B高校 女子37名)で授業実践を2回実施した。A校の1回目の実践では、予想した以上にプレー・プレーヤーのアナウンスができ、さらに入力者との連携も良く、ゲームの初めは比較的スムーズに入力できていた。しかし、ゲーム記録の入力画面をディフェンスとオフェンスに分けたので、ディフェンスとオフェンスの区別が付けにくい状況が見られ、領域入力が無い状況ができてしまった。さらに、プレーヤー入力の際には、入力画面上のプレーヤー記号が離れすぎていたこと等の理由でアナウンスから入力までの間にタイムロスができてしまった。B校では、ボールに人が集まりやすくゼッケンやプレーが見えにくいため、プレー・プレヤーのアナウンスが難しかった。予想していた以上にプレー・プレーヤーの入力と領域入力とのタイミングが合わなかった。

プログラムに修正を加えたA校での2回目の授業実践では、1回目よりアナウンス、入力係ともスムーズに行えた。入力画面の修正により、プレーヤー入力のマウス操作範囲が小さくなり、アナウンスより遅れての入力やディフェンスからオフェンスに切り替わる場面での入力ミスも減少した。ゲーム終了後の分析・整理から学習カード等の印刷もエラーが出ることもなくスムーズに処理できた。振り返りでは、学習カードへの記入も前回に比べ多く、ゲームの状況を把握していたり、課題を発見し、その解決方法について話している様子も伺えた。しかし、チーム全体のゲーム状況の把握には、どのような状況が良く、どのような状況が良くないかを理解できるような図・表・グラフをさらに工夫し提示する必要があると感じられた。B校では、入力作業を3ぺアに増やしたが、入力ペアの息が合わず上手くデータ入力ができなかった。

A校2回目のゲーム記録の正確性についてビデオ撮影した映像とゲーム記録を比較したところ8割は正しく記録されていた。

 

結果と考察

今回の研究を通してITを活用したゲーム記録方法については先行研究が少なく、さらにITを活用した体育授業においてのゲーム記録方法について研究報告は見あたらなかった。したがって、まず体育授業におけるバスケットボールの技術指導法とゲーム記録法について文献を調べることから始めITを活用した「わかりやすい授業」が展開できるよう新たにプログラムを開発した。このプログラムにより、多くのデータを短時間で分析・整理し生徒に分かりやすい図・表・グラフとすることで、ゲームにおける状況や課題発見、課題解決に役立つと思われる。そして、さらに改善し「より使いやすく」、「より分かりやすい」データを示すことで学習を深めることに役立つと考えられる。先生方がこのプログラムを基礎としてさらに使いやすい、効果的なプログラムを作成し、子供たちに還元できるよう期待している。また、本プログラムとバスケットボール等の動画コンテンツを研究成果としHP公開したいと考えている。

 

まとめ

生徒にとって入力作業は思った以上に難しかった。ゲームを分析・整理した図・表・グラフは、学習活動に役立つが、その利用方法や表現等の工夫が必要である。データの信頼性や入力ミスの修正等は課題として残るが、総合的にゲーム状況の把握や課題発見に有効であると評価されたのではないか。今後の課題として今回のプログラムは、結果としての事実を表したもので、誰がゴールしたとか、コート上をどのように経由したかなど攻撃のみに限定されている。なぜその領域を使って攻撃したのか、どのような方法を用いてシュートに持ち込めたかを把握するには不十分である。そのためには、プレーヤー一人ひとりにセンサーを付け、赤外線や無線による通信でPCへコート上のどの位置にいるか信号を送り、リアルタイムでデータ化するなどの方法が考えられる。ボールを持たないプレーヤーや他のプレーヤーのプレーが簡単に把握できるようITの進歩を期待したい。

 

【完成版ゲーム分析支援プログラム】

  • ゲーム記録入力画面

  • ゲーム終了後のゲーム記録の分析・整理<ゲーム目標別に表示される図・表>抜粋


図1:ボールコントロール時間割合とシュート率等
(相手チームとボールコントロール時間の比較等)

 


図2:ボールコントロールの領域別時間割合
(オフェンス時に利用した領域の状況を表す)

 


図3:パスの続いた回数一覧
(1ターン中のパスが続いた回数とそのパス回数の割合を示した図)

 


図4:ボール軌跡図(コート上のボールの動きとプレーヤー間でのボールコントロールの状況を表す。)

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巧みに動ける力を伸ばす鬼遊びの学習
ー何度でも挑戦し、思いっ切り動き回れるルールや場の工夫ー

【座間市立中原小学校】泉田 裕

キーワード:鬼遊び・巧みに動ける力・ルールや場の工夫

はじめに

現在の子どもたちは、体力・運動能力の長期低下傾向と、運動に興味を持ち活発に運動をする者とそうでない者との二極化の状況が見られる。本校でも同様の傾向が見られ、ボールが当たったときに目がつぶれない、転んだときに手を上手につけないなど、自分の体をうまく使いこなせなくなっている。

これらの原因として、巧みに動ける力が十分に伸びていないことが考えられる。1年生から3年生のプレ・ゴールデンエイジの時期に、いろいろな運動の基礎となる動きを習得させていく必要がある。

鬼遊びは、ルールが簡単で、多くの友だちとかかわり合いながら、思いっ切り走り、スピードや方向を変え、作戦を立てながら自然に声や体を使い、誰もが楽しさを味わうことのできる優れた教材である。

しかし、巧みに動ける力を確実に伸ばしていくためには、楽しく運動させていく中で、さらに学習指導法を工夫していく必要がある。そこで、小学校低学年におけるゲーム「鬼遊び」の学習において、ルールや場を工夫することにより、体を動かすことの楽しさを十分に味わいながら、この時期に必要な巧みに動ける力を伸ばしていく学習指導法を構築していくことを目的として、本主題を設定した

 

研究の仮説

様々な動きにつながる鬼遊びを設定し、何度でも挑戦し、思いっ切り動き回れるようなルールや場を工夫することによって、巧みに動ける力を効果的に伸ばすことができる。

 

検証授業の実際

1.期間

平成16年10月19日(火曜日)―10月28日(木曜日)

2.場所

座間市立中原小学校

3.対象

第2学年1組(男17名、女16名、計33名)

4.単元名

ゲーム「鬼遊び」

5.ねらい

関・意・態勝ち負けを素直に認め、安全に気を付け、協力しながら、仲良く楽しく鬼遊びを行おうとする。

思考・判断鬼遊びを楽しむための場を選んだり、作戦を立てたりしている。

技能鬼遊びの易しい遊び方を身に付けることができる。

6.学習の内容

ねらい1 鬼遊びの仕方を知り、仲よく鬼遊びを楽しむ。
ねらい2 ルールを工夫したり作戦を考えたりしながら、追いかける、逃げる、思いっ切り動き回るなどをして、鬼遊びを楽しむ。

7.単元計画

表:単元計画

 

8.鬼遊びについて

(1)ルール・場の工夫

3種類の鬼遊びを選び、ルール・場を次の表のように工夫した。

(2)鬼遊びのルール

<じゃんけん鬼>*15ー20人で実施

  • 鬼(6人)は赤い帽子、逃げる人は白い帽子をかぶる。
  • 鬼がタッチしたら2人でじゃんけんをし、勝った人は白い帽子にして一番近い安全地帯に素早く入る。負けた人は赤い帽子にして鬼になる。
  • 安全地帯は3ー4箇所。1人しか入れない。
  • 安全地帯に入っている人を捕まえることはできない。誰かが安全地帯に入ってきたら、安全地帯にいた人はすぐに出る。

<ボール追いかけ鬼>*15ー20人で実施

  • 鬼は6人で、3種類(ラグビーボール、Z-ボール、卵ボール)のボールのうちどれか1つを持つ。
  • 鬼がタッチしたら、ボールを上に投げ上げる。
  • タッチされた人は、ワンバウンドしてからそのボールを拾い上げて、鬼になり追いかける。

<じゃんけん鬼>*15ー20人で実施

  • チーム対抗戦。じゃんけんで勝ったチームが先攻。
  • 攻める人は宝(紅白玉)を1個持ち、腰に2本のタグをつけて川を3本渡る。川を1本渡るごとに1回ストップする。3本渡り、タグが1本以上あることを確認して、宝を宝置き場に置く。
  • 守る人は川にいて、攻める人のタグを取る。
  • タグを2本とも取られたら、宝を持ったまま外にあるタグを2本つけ直して、スタートからやり直す。
  • 宝1個が1点。宝の数を数え、得点の多い方が勝ち。

 

結果と考察

1.周りの状況をよく見ることができたか

(1)鬼がどこにいるかをよく見ることができたか

逃げている児童が首を振った回数をVTRから数え、学習の始めと終わりとを比較すると、「じゃんけん鬼」は6.4ポイント、「ボール追いかけ鬼」は5.1ポイント上昇し、どちらも0.1%水準で有意差が認められた。

2.適切なフォーム、タイミング、スピードで動くことができたか

(1)状況に応じてステップを使うことができたか

「宝運び鬼」において、ディフェンスが相手の動きに合わせてサイドステップを踏んだ回数をVTRから数え、比較すると、8.1ポイント上昇し、0.1%水準で有意差が認められた。(図1)


図1:ディフェンスが相手の動きに合わせてサイドステップを踏んだ回数(宝運び鬼)

BCTの計測結果を比較すると、「後ろ歩き」は3.3ポイント上昇し、5%水準で有意差が認められた。「横跳び」は17.2ポイント上昇し、0.1%水準で有意差が認められた。

(2)状況に応じてスピードの変化をつけることができたか

逃げている児童がスピードを変化させた回数をVTRから数え、比較すると、「じゃんけん鬼」は1.9ポイント、「ボール追いかけ鬼」は1.4ポイント上昇し、どちらも0.1%水準で有意差が認められた。

(3)状況に応じて体勢を整えることができたか

「宝運び鬼」において、クラス全体のフォームの変化をVTRで分析した。表1はディフェンス、表2はオフェンスの主要な変化を抜き出し、比較したものである。

表1:ディフェンスのフォームの変化

表2:オフェンスのフォームの変化

3.素早く動く力が伸びたか

(1)思った方向へ素早く動くことができたか

体力テストの計測結果を比較すると、「反復横跳び」は4.1ポイント、「座位ステッピング」は12.3ポイント上昇し、どちらも0.1%水準で有意差が認められた。

 

まとめ

1.研究の成果

「思いっ切り動き回れる」「何度でも挑戦できる」という視点で、目印・安全地帯・不規則に弾むボール・タグ・攻守交替といったルールや場を工夫することが、巧みに動ける力(状況把握能力、正確に動作を行う能力、素早く動作を実行する能力)を効果的に伸ばすことに有効であることが明らかになった。

2.今後の課題

(1)巧みに動ける力を簡便に見取る方法
(2)巧みに動ける力につながる動きの捉え方
(3)巧みに動ける力の系統性を踏まえた6年間の指導計画
(4)ねらいに即したグループ編成の工夫

 

参考文献

1)大築立志『入門運動神経生理学』市村出版2003年
2)白石豊『どの子も伸びる運動神経上』かもがわ出版2003年

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踊る楽しさや喜びを味わう現代的なリズムのダンスの学習
ー場・学習資料・学習形態の工夫を通してー

【厚木市立厚木中学校】広瀬 清美

キーワード:リズムカード グループ編成 交流会

はじめに

現代的なリズムのダンスの楽しさは、リズムに乗って自由に踊ることや、仲間と自由にかかわり合って踊ることである。心地よい音楽のリズムに乗って全身で弾んだり、揺れたりすることから心身が解放される。また、仲間と動きやリズムを共有する体験から、仲間との一体感を味わうことができる教材である。

しかし、中学生期は心身ともに不安定で難しい年代であり、仲間からどのように見られるか不安で自己表現がうまくできず、ダンスと聞くと身構える生徒も少なくない。1)

本校の、リズムダンスの学習においては、「リズムに乗れない」「恥ずかしさがある」「友だちとうまくかかわれない」等の課題があげられており、生徒はリズムに乗って踊る楽しさや喜びを十分に味わえていないのではないかと思われる。

そこで、互いの動きを共有して踊ることができるような場、リズムを取りやすくするようなリズムカード等の学習資料、仲間と動きを教え合うことができるようなグループの編成等の学習形態を工夫することにより、生徒の課題を解決していけるのではないかと考えた。

以上のことから、本研究では中学1年生の現代的なリズムのダンスの学習において、場や学習資料及び学習形態を工夫することにより、リズムに乗って体を動かすことや仲間と共に踊ることができ、踊る楽しさや喜びを味わうことができるのではないかと考え、本主題を設定した。

 

研究の仮説

現代的なリズムのダンスの学習において、場・学習資料・学習形態の工夫をすることによって、リズムに乗って体を動かすことや仲間と共に踊ることができ、踊る楽しさや喜びを味わうことができるであろう。

 

検証授業の実際

1.期間

平成16年9月21日(火曜日)―11月2日(火曜日) 10時間扱い

2.場所

厚木市立厚木中学校

3.対象

第1学年1・2組(女子37名)

4.単元名

ダンス「現代的なリズムのダンス」

5.ねらい

関心・意欲・態度 現代的なリズムのダンスの特性に関心を持ち、仲間とリズムに乗って踊る楽しさを共有することができるようにする。また、互いの違いやよさを認め合い、協力して練習したり工夫したりすることができるようにする。
思考・判断 自己の能力に適した課題の解決に向けて、練習の仕方や交流の仕方を工夫している。また、自分や仲間の動きや取り組みのよさがわかる。
技能 音楽のリズムやビートに乗って踊ることや、仲間とまとまりのある動きを変化させてさらに楽しめるダンスにすることができる。
知識・理解 現代的なリズムのダンスの特性や学び方を理解するとともに、交流の仕方や鑑賞の仕方を理解し、知識を身に付けている。

6.学習の道すじ

ねらい1

  • 簡単な動きでリズムに乗って楽しく体を動かす。

ねらい2

  • まとまりのある動きで自由にリズムに乗って楽しく踊る。
  • 見せ合ったり一緒に踊ったりして、互いの踊りの楽しさを分かち合う。

7.学習過程

表:学習過程

 

結果と考察

検証の視点

現代的なリズムのダンスの学習において、場・学習資料・学習形態の工夫をすることにより、リズムに乗って体を動かすことや仲間と共に踊ることができ、踊る楽しさや喜びを味わうことができたか。

1.リズムに乗って体を動かすことができたか

図1は、学習ノートの自己評価項目「リズムに合わせて動くことができたか」についての4段階評価の割合の変化と「大変そう思う」と「そう思う」と回答した人数を表したグラフである。 

このグラフから1時間目から7時間目までは、学習の経過とともに「大変そう思う」と回答した生徒が増加していることが分かる。


図1:「リズムに合わせて動くことができたか」

図2は、事後アンケート項目「リズムカードは体でリズムを取ることに役立ったか」についての3段階評価の割合を表したグラフである。

「役立った」と答えている生徒は32人で全体の89%である。多くの生徒が「リズムカードは体でリズムを取ることに役立った」と振り返っていることが分かる。


図2:「リズムカードは体でリズムを取ることに役立ったか」

2.仲間と共に踊ることができたか

図3は、学習ノートの自己評価項目「自分や仲間のよさを見つけることができたか」についての4段階評価の割合の変化と「大変そう思う」と「そう思う」と回答した人数を表したグラフである。


図3:「自分や仲間のよさを見つけることができたか」

7時間目までは、学習の経過とともに「大変そう思う」と回答した生徒が増加していることが分かる。これは2人組や4人組、6人組とグループ編成を段階的に変化させることで、多くの仲間とかかわり合うことができ、仲間の様々な動きに触れ、多くの仲間のよさを見つけることができたと思われる。

3.踊る楽しさや喜びを味わうことができたか

図4は、事後アンケート項目「ダンスの授業を通して踊る楽しさや喜びを味わうことができたか」についての3段階評価の割合を表したグラフである。


図4:「ダンスの授業を通して踊る楽しさや喜びを味わうことができましたか」

このグラフから「はい」と答えている人数は34人で、94%の生徒が、踊る楽しさや喜びを味わうことができたと振り返っていることが分かる。

また、表1は、今回の学習全体の感想を抜粋したものである。リズムに乗って踊ることや仲間と共に踊ることで、踊る楽しさや喜びを味わうことができたことが読み取れる。

 

表1「学習後の感想」(抜粋)

  • 違うクラスの人とも気軽に楽しめたから、友達づくりに最適だった。10時間ありがとうございました。
  • いろいろな人と触れ合って、みんなと仲良くなれてよかった。
  • 前に比べてリズム感覚がよくなったと思う。
  • たった10回でこんなに踊れるようになってびっくりした。

以上のことから、生徒は踊る楽しさや喜びを味わうことができたと考えられる。

 

まとめ

1.研究の成果

現代的なリズムのダンスの学習において、互いの動きを共有して踊ることができるような場、リズムを取りやすくするようなリズムカード等の学習資料、仲間と動きを教え合うことができるようなグループの編成等の学習形態を工夫することは、踊る楽しさや喜びを味わうことに有効であることが明らかになった。

2.今後の課題

(1)動きに気付くための視聴覚教材の効果的な活用
(2)リズムに乗るための教師の支援の仕方
(3)3年間を見通した学習指導計画の作成

 

参考文献

1)村田芳子『最新楽しいリズムダンス・現代的なリズムのダンス』小学館2002

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技能を高め、卓球の特性に深く触れる学習
ー学習資料を使った教え合う学習と地域指導力を活用した学習を通してー

【県立麻溝台高等学校】大石 泰平

キーワード:学習資料 教え合う学習 地域指導力

はじめに

保健体育科の目標では、「生涯にわたって計画的に運動に親しむ資質や能力を育てる」ために「運動技能を高め、運動の楽しさや喜びを深く味わうことができるようにする」ことが大切であるとされている。こうしたことを実現するために「自己の能力に応じた運動の課題を設定し、その課題を自ら解決することによって、運動技能を習得したり、高めたりする」学習を行うことが求められている。

しかし、本校生徒の体育の学習を見ると、多くの生徒が意欲的に取り組んではいるが、運動に必要な技能を十分に高められず、一過性の楽しさは味わえても、運動の特性に深く触れられないでいる生徒が多く見受けられる。

こうした原因は、それぞれの種目の技術認識が不足していたり、課題を明確にする手立てが不十分であったことが考えられる。また課題を解決していく取り組みも、生徒同士教え合う内容がわからなかったり、教え合う活動が少なかったりしていたのではないだろうか。

そこで、今回は卓球の学習において自己の課題を明らかにしていく。課題を解決していく取り組みでは、学習カードを使って具体的にアドバイスをするなど、互いの教え合う場面を設定する。また、動き方の見本を見せたり専門的なアドバイスをするなど、個に応じた指導を展開し、効果的な技能の向上が図れるように、地域の卓球実践者による指導場面を設定する。

こうしたことにより、生徒は動きのポイントを理解し、自らの課題をとらえ、解決する取り組みができるのではないか。そして、このような学習を繰り返すことにより技能が高まり、卓球の特性に深く触れることができるのではないかと考える。

 

研究の仮説

卓球の学習において、学習資料を使った教え合う学習と地域の卓球実践者の指導力を活用した学習をすることによって、技能を高め、楽しむことができるであろう。

 

検証授業の実際

1.期間

平成16年11月1日(月曜日)―12月10日(金曜日)14時間扱い

2.場所

県立麻溝台高等学校

3.対象

第3学年4・6組(男子8名、女子18名)

4.単元名

球技「卓球」

5.単元目標

関心・意欲・態度 練習やゲームをみんなで楽しむことを目指して互いに協力して安全に学習に取り組もうとする。
思考・判断 各自の課題をとらえ、課題を解決する取り組みができる。
技能 卓球の楽しさを味わうために必要な個人的技能ダブルスでの技能を高めることができる。
知識・理解 卓球の特性や学び方、個人的技術やダブルスの動き方のポイント、練習方法や審判法を言ったり書き出したりできる。

6.学習の道すじ

ねらい1

  • 学習資料を活用して、シングルスの4打法の動きのポイントを理解し、課題を発見しながら練習やゲームを行い、楽しむ。

ねらい2

  • ダブルスの動き方を理解し、技能を身に付けながら練習やゲームを行い、楽しむ。
  • シングルスの4打法の技能を高める練習やゲームを行い、楽しむ。

ねらい3

  • 工夫したゲームを高めた技能を発揮して行い、楽しむ。

 

課題解決に向けた道筋と身に付けていく力、工夫した内容ごとの取り組みと、教師の指導・支援の関係
課題解決に向けた道筋と身に付けていく力

7.学習過程

表:学習過程

 

結果と考察

検証の視点

卓球の学習において、学習資料を使った教え合う学習と地域の卓球実践者の指導力を活用した学習をすることによって、技能を高め、楽しむことができるであろう。

1.動きのポイントについての理解が深まったか

生徒は卓球における個々の技術を認識し、その上で動きのポイントについて理解を進め、動きのポイントについて理解を深めることができたと考える。

2.課題を解決する取り組みができたか


図1:仲間と教え合うことができたか

図1は課題を解決する取り組みにおいて「仲間と教え合うことができた」と答えた生徒の割合の変化を示したものである。生徒は課題をとらえ、仲間と教え合いながら解決する取り組みができたと考える。

また教え合う学習において、地域の卓球実践者にアドバイスしてもらったことを学習カードを活用しながらの学習をすることができた。

3.技能を高めることができたか


図2:着目生徒の技能の変化

図2は、着目した生徒が、視点にそった動作ができていた回数を数え、その変化を示したグラフである。これを見るといずれも11時間目に数値が増加している。


図3:「卓球の授業で、技能が高まったと感じましたか」

図3は「卓球の授業で、技能が高まったと感じましたか」についての事前事後のアンケートの比較である。すべての生徒が「技能が高まった」と感じることができた。

生徒は技能を高めることができたと考える。

4.楽しむことができたか


図4:自己評価の平均値の推移

図4は個人学習カードの自己評価項目「今日の授業は楽しかったですか」と「少し上達した感じはするか」についての4段階評価の平均値の推移である。これを見ると7時間目に「技能の高まり」と「楽しかった」という自己評価の高まりが一致していることがわかる。生徒は楽しむことができたと考える。

 

まとめ

1.研究の成果

卓球の学習において、学習資料を使う教え合う学習と地域指導力を活用した学習をすることが、動きのポイントの理解を深め、技能を高め、楽しむために有効であることがわかった。

2.今後の課題

(1)具体的な体の動かし方についてわかりやすく示した学習資料の作成。
(2)学習における地域の指導者の活用について。
(3)短時間でフィードバックして学習に生かしていけるような評価規準の作成。

 

参考文献

1)高橋健夫『体育の授業をつくる』大修館書店、1994年
2)倉木常夫『体育授業としての卓球』不昧堂出版、1989年

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