医薬品適正使用の推進に向けて
医薬品の適正使用とは | 神奈川県における取組み|医薬品を適正に使いましょう!(Q&A)|関連情報|
厚生省薬務局長の私的諮問機関であった「21世紀の医薬品のあり方に関する懇談会」の最終報告書(平成5年5月)において、「医薬品の適正使用とは、まず、的確な診断に基づき患者の状態にかなった最適の薬剤、剤形と適切な用法・用量が決定され、これに基づき調剤されること、次いで、患者に薬剤についての説明が十分理解され、正確に使用された後、その効果や副作用が評価され、処方にフィードバックされるという一連のサイクルと言えよう。」とされています。
また、「こうした適正使用が確保されるためには、医薬品に関する情報が医療関係者や患者に適切に提供され、十分理解されることが必須の条件である。医薬品は情報と一体となってはじめてその目的が達成できるからである。」とされており、医薬品適正使用における医薬品情報等の重要性がうたわれています。
神奈川県では、平成12年度に神奈川県薬事審議会に対し、医薬品の適正使用を推進するために神奈川県が講ずるべき具体的な施策に関して諮問し、平成14年7月には、同審議会から「神奈川県における医薬品適正使用の推進に向けて(最終報告書)」が知事あてに報告されました。この報告書の中で、医薬品による健康被害を未然に防止するためには、医師や薬剤師等の医薬関係者が患者情報を共有し、患者に処方された医薬品が禁忌や慎重投与に該当しないかどうかを確認するなど、医薬関係者間の連携を図ることが必要とされました。
また、製薬会社のMR(医薬情報担当者)が直接訪問して医薬品情報を提供できない医療機関等に対しては、卸売会社が分担して行うなど、会社間での組織的な連携が不可欠であり、その適正な連携を促進する必要があるとされました。この提言を受けて、平成15年度に具体的な対応策を検討する委員会を設置し、医薬品の適正使用に係る関係者の連携体制とその業務内容を示した試行用ガイドラインを作成しました。平成16年度はモデル事業を通じて試行用ガイドラインの内容を検証し、その有用性を認めたことから、「神奈川県医薬品適正使用連携体制整備ガイドライン」として策定しました。
医薬品ってどんなもの?
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医薬品を造ったり、売ったりすることは自由にできるの? |
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答はNOです。
医薬品は医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律という法律(以下「医薬品医療機器等法」という。)で、製造したり、販売したりする時に必ず都道府県知事などの許可を受けなければならないことになっています。
「医薬品」は、人や動物の病気の診断、治療又は予防に使われるものですが、誰もが自分勝手に、製造したり、販売したりしてしまうと、効果がなかったり、かえって有害なものが人に使われるおそれがあり、その結果、人の健康が損なわれる可能性もあります。ですから医薬品の製造や販売は法律で規制されており、許可を得た者だけが行えるようにしているのです。
健康食品って効能効果があるの?
医薬品以外の食品などでは、医薬品のような効能効果は認められません。(医薬部外品や特定保健用食品というものもありますが、医薬品より弱いおだやかな効能効果が認められています。)また、医薬品ではないのに、医薬品のような効能効果があるとして宣伝をしたり 広告を行って、医薬品ではないものを販売することは、医薬品医療機器等法で禁止されていますので、そのようなものを見つけても、むやみに買ったり使ったりしないようにしましょう。
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メーカーが製造販売してる医薬品の多くは、国が効能効果や安全性を審査してるって本当? |
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答はYESです。
国の官公庁の一つである厚生労働省は医薬品のメーカーからの申請に基づいて、その医薬品の効能効果(有効性)や安全性を審査して、確かに有効性があることを、また安全性に問題がないということを確認しています。(これを医薬品の製造販売承認といいます。)国が定めた基準に則した医薬品などを除き、原則的には医薬品はこのような公の承認を受けて製造販売が可能となります。
医薬品メーカーが厚生労働省から医薬品の製造販売承認を得るためには、様々な試験データを提出しなければなりませんが、新たな成分の医薬品(新薬などといいます。)の場合などには人に使った臨床試験の成績なども求められます。
このような試験を行ったり、新薬を見つけ出す基礎研究などには多大な費用と長年の期間が必要ですので、医薬品の研究開発を行える企業は限られたものとなっています。
医薬品の臨床試験ってどんな試験?
医薬品の臨床試験は「治験」とも呼ばれ、動物試験などを行った結果、ある程度の有効性と安全性を認めた薬品について、患者などの人に使用してみて、有効性と安全性などの有用性を実証するために行います。
治験は、安全性などが確立していない薬品を人に使用するわけですから、科学的に適正に実施されかつ、倫理的に十分に配慮されることが求められています。そのため、厚生労働省は「医薬品の臨床試験に関する基準」(GCPといいます。)を定めて、治験はこの基準に適合するものでなければならないとしています。
また、治験は参加する患者などの人(被験者といいます。)がいて、はじめて成立するものですから、被験者の協力によって新薬などの開発が支えられているのだと言えます。
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医薬品の副作用について
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副作用がまったくない医薬品はあるの? |
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答はNOです。
医薬品が効いて病気やけががよくなる場合、そのような医薬品の効能効果を「主作用」といいます。医薬品は主作用を目的として作られるものであり、主作用が発揮されることを期待して使われます。それに対して効能効果ではない、期待されない医薬品の作用を「副作用」といいます。
医薬品は人の体にとっては異物ですから、いろいろな影響を及ぼし得ます。残念ながら現在の科学技術では副作用がまったくない医薬品を開発することは難しいのです。
また、誰にでも医薬品を使うことで副作用が起こる可能性がありますが、医薬品による副作用は必ず起こるわけではなく、むしろ普通は起こる確率は低いのです。
副作用の起こる確率は?
医薬品の副作用は、医薬品によって、また副作用の種類によって 起こる確率は異なりますが、治験成績などに基づき厚生労働省による安全性の確認を受けているので、一般的には起こる確率は低くなっています。ただ、患者数が限られている治験では全ての副作用を見つけられるわけではないので、実際に市販されてたくさんの患者に使われて初めてわかる副作用もあります。
また、アレルギー体質の人や、過去に副作用を経験している人などは、医薬品の使用に際して医師や薬剤師などによく相談しましょう。
副作用が疑われるときには医師や薬剤師などの専門家に相談して正しく対応することが大切なのです。特に医療用医薬品の使用を中止すべきかについては、医師等に相談することが大切です。
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次の症状のうち医薬品の副作用の可能性がまったくないものはどれ?
1 鼻水を止めるため、医薬品を飲んだら眠くなった。
2 医薬品を飲んだ後、体にブツブツが出たり息苦しくなった。
3 漢方薬を飲んだら体がだるくなった。
4 医薬品を注射されることを考えただけで気分が悪くなった。 |
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答は4となります。4は医薬品を使用していませんので明らかに副作用ではありません。
医薬品を使用した後に体に何か異常を感じても、もともとの病気のためや単に体調が悪いためということもありますので、直ちに使用した 医薬品の副作用とは断定できません。しかし、医薬品が原因ではないことが明らかな場合を除いて、医薬品の副作用の可能性も考えなければなりません。
副作用には、眠気のように軽い症状から、医師に治療してもらわなければならないような重い症状までありますが、どうして副作用が起こるのか、その原因の全てがわかっているわけではありません。
また、漢方薬は副作用がないと誤解している人がいますが、漢方薬も医薬品ですから、副作用を起こす可能性があります。(質問3の場合)
副作用の原因は?
副作用の起こる原因には、副作用を起こした医薬品の性質による場合と、患者の体質による場合などがあります。副作用を起こした 医薬品の性質による場合とは、たとえば、鼻水を止める医薬品には、眠気を起こす働きもあって、鼻水を止める目的で医薬品を使ったのに、眠気の副作用が起こってしまうような場合です。このような副作用はある程度起こることを予想することができます。(質問1の場合)
患者の体質による場合とは、医薬品を使った後に体に発疹が出たりする場合です。これは患者の体がその医薬品に必要以上に反応して起こったもので、過敏症といいいますが、患者がその医薬品に反応する体質だったので起こったものです。
ですから、そのような体質でない患者には起こりません。(質問2の場合)
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医薬品の適正な使用について
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次の医薬品の使い方は正しいかな?
1 一日三回毎食後に飲むように決められた医薬品だったのに、お昼に飲み忘れてしまったので、夕食後に二回分の量を飲んだ。
2 体調が悪くなった時、前に同じ症状で医師に処方された医薬品が残っていたので使用した。
3 医師から四日間飲むように処方された医薬品だけど、症状が良くなったので医師に無断で三日間で飲むのをやめた。 |
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答は1から3まで全て誤った使い方になります。
医薬品は決められた使い方を正しく守らなければなりません。医薬品の使い方をまちがえると、医薬品の効果が得られなかったり、かえって体の具合が悪くなることもあります。
医師から処方された医療用の医薬品は、その時点での患者の病気の状態を診察して選択されたものですから、病気が回復して不必要になったら捨ててください。それをとっておいて、後で患者の判断で使うのは正しい使い方ではありません。
また、病気が良くなっても、医師から指示された期間は医療用医薬品を使うようにしましょう。やめたい時は医師に必ず相談してください。患者の判断で勝手に途中でやめないようにしましょう。
医療用医薬品と一般用医薬品
医療用医薬品は医師が患者の病気などに合わせて処方されるものですから、使い方は処方した医師が患者に指示します。実際は、医師の処方せんに基づいて医療用医薬品を調剤した薬剤師から患者に 説明されることも多いでしょう。なお、患者に処方された医療用医薬品はその患者以外のほかの人が使ってはなりません。
一方、一般用医薬品は医師の診察がなくても、薬局などで買えるものですから、使い方は薬の外箱や箱の中に入っている説明文書(添付文書)に書いてあります。
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飲み薬は、どんなもので飲んでも効果に変わりがないのかな? |
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答はNOです。
皆さんは医薬品を飲む時どんなもので飲みますか。ジュースやお茶で飲んでいませんか。飲んだ医薬品は胃や腸で溶けて、主に腸から吸収されます。吸収された医薬品は血流にのって全身に行き渡り、具合の悪いところで効果が発揮されます。医薬品が吸収されるときに、吸収に影響を与えるものがあると、医薬品の吸収が妨げられたり、かえって吸収されすぎたりすることがあります。牛乳やジュースやお茶などは医薬品によっては吸収に影響を与えますので、それらで医薬品を飲まないようにしましょう。医薬品はあくまでもたっぷりの水かぬるま湯で飲むようにしてください。
医薬品の相互作用について
二種類以上の医薬品を同時に使うと、医薬品の効果が弱くなったり、強くなりすぎたりすることがあります。これを「相互作用」といいます。
医薬品同士以外にも医薬品と食品や飲み物との相互作用もあり、たとえば飲み薬を牛乳で飲んで、効果が弱くなってしまった場合などは、医薬品と飲み物との相互作用といえます。
複数の医師から医薬品を処方してもらう時や、一般用医薬品と医療用医薬品を併せて使いたい時などには、必ず医師や薬剤師などに相談してください。
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医薬品の専門家について
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医師に処方された医薬品について、処方した医師じゃなくて、いきなり調剤した薬局の薬剤師に相談してもいいのかな? |
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答はYESです。
医薬品の使い方などについてわからないことがある時は、医師や薬剤師などの医薬品の専門家に必ず相談してください。
医療用医薬品については、医薬品を処方した医師に相談するのが確かですが、医薬品を調剤した薬剤師も相談に応じられます。薬剤師は医薬品の専門家ですから、気軽に相談してみてください。薬剤師は薬局や 病院などの調剤室などで働いています。
薬局などで一般用医薬品を買う時も、薬剤師などの医薬品の専門家に相談して、医薬品の使い方などの情報を正しく得ることが大切です。
かかりつけ薬剤師・薬局とお薬手帳について
いろいろな医師に診察をしてもらうことがありますが、医療用医薬品を調剤してもらう薬局や信頼の置ける薬剤師を決めておくことが大切です。このような薬剤師や薬局を「かかりつけ薬剤師・薬局」といいます。かかりつけ薬剤師・薬局では、今までどのような医薬品を処方されてきたかを記録したり(これを薬歴といいます。)、同じ時期に二人以上の医師から処方された医薬品を確認して、同じ効果の医薬品が重なっていないかなどをチェックします。調剤後も患者さんの状態を把握し、処方医へのフィードバックや残薬管理・服薬指導を行うとともに夜間や休日、在宅医療への対応も行っています。
医療用医薬品を調剤されるときに、医薬品の情報を「お薬手帳」という手帳に書いて渡してくれる薬局もあります。
お薬手帳は、どのような医薬品を処方されたのかなどを記録したり、どのような病気で医師に診察してもらったかなどを書けるようになっていますので、病気やけがの時にお薬手帳を医師や薬剤師に見せると、医師が医薬品を選んだり薬剤師が調剤するのに役立ちます。
患者さんによっては複数のお薬手帳が発行されているため、服薬指導に活用されていない場合もありますので、一冊に集約するようにしましょう。
医薬品は、正しい知識をもって正しく使わないと、効果がないばかりではなく、人間の体に害を与えますので、少しでも医薬品のことで疑問があるときは、遠慮なく医師や薬剤師などの医薬品の専門家に相談して、医薬品を適正に使い健やかな生活に役立てましょう。
かかりつけ薬剤師・薬局について(県のホームページ)
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薬局に行く以外に、お薬について知る機会はあるのかな? |
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本県では、医薬品の正しい使い方や副作用が出たときの対応など、お薬全般について分かりやすくお話しする「お薬の基礎知識に関する出前講座」を実施しています。
無料で講師(薬局や病院の薬剤師など)を派遣しますので、お気軽にお申込ください。
お薬の基礎知識に関する出前講座(県のホームページ)
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