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更新日:2023年12月27日

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神労委令和3年(不)第19号パーソルテンプスタッフ等事件命令交付について

神奈川県労働委員会(会長 浜村彰)は、標記の事件について、申立人の不当労働行為救済申立てを棄却する命令を交付しました。

1 当事者

申立人 神奈川シティユニオン(組合)
被申立人 パーソルテンプスタッフ株式会社(パーソルテンプスタッフ)

同 三明化成株式会社(三明化成)

2 事件の概要

本件は、組合が、パーソルテンプスタッフ及び三明化成に対し、組合員Aの労働問題に関する団体交渉(以下「本件団交」という。)を申し入れたところ、両社が誠実に団体交渉に応じなかったことが労働組合法(以下「労組法」という。)第7条第2号に、パーソルテンプスタッフが、Aに契約等に関する書類を送付したこと及び雇用契約の更新をしなかったことが同条第3号に該当する不当労働行為であるとして、救済申立てのあった事件である。

3 命令の概要

(1) 主文

本件申立てを棄却する。

(2) 争点及び判断の要旨

(争点1)

パーソルテンプスタッフが、令和3年4月15日付けで、組合に連絡送付せずに「契約関係書類送付のご案内」及び「就業条件明示書(兼)派遣労働者雇入通知書」(以下「3.4.15文書」という。)をAに送付したことは、労組法第7条第3号に該当する不当労働行為に当たるか否か。

(判断の要旨)

パーソルテンプスタッフは、Aの組合加入を認識する前に、3.4.15文書の発送を外部業者に指示していた。また、同社は、同人に対し、組合加入前から同文書の内容を伝えており、同文書が送付されたことによって、組合と同人の信頼関係が揺らぐ等の事情は認められない。

したがって、同社が同人に対して3.4.15文書を送付したことは、労組法第7条第3号に該当する不当労働行為には当たらない。

(争点2)

パーソルテンプスタッフが、令和3年4月1日にAに対して他の派遣先を探している旨のメールを送信したにもかかわらず、組合が同人の組合加入通知書を送付して以降、派遣先が見つからないとして、雇用契約を不更新とする対応をしたことは、労組法第7条第3号に該当する不当労働行為に当たるか否か。

(判断の要旨)

パーソルテンプスタッフは、Aに対して令和3年4月8日に他の派遣先を紹介した後、同人からの応答がない中で、同社が同人に対してあえて新しい派遣先を紹介しなかったとする事実は認められない。また、登録型派遣の形式をとっていた同人の労働者派遣契約が終了し、その後、同社が新しい派遣先がないために雇用契約を更新しなかったことは自然なことといえる。

したがって、同社の対応は、労組法第7条第3号に該当する不当労働行為には当たらない。

(争点3)

パーソルテンプスタッフが、本件団交において、労働者派遣契約書の提出を拒否したことは、労組法第7条第2号に該当する不当労働行為に当たるか否か。

(判断の要旨)

本件団交において、組合は労働者派遣契約書の開示を求める理由を具体的に説明しておらず、組合から一方的に非難を受けたパーソルテンプスタッフが、同契約書の提出を拒否したからといって、誠実に対応する義務に反したとまではいえない。

したがって、同社が本件団交において、労働者派遣契約書の提出を拒否したことは、労組法第7条第2号に該当する不当労働行為には当たらない。

(争点4)

パーソルテンプスタッフが、本件団交において、具体的な解決案を提案しなかったことは、労組法第7条第2号に該当する不当労働行為に当たるか否か。

(判断の要旨)

使用者に課される誠実交渉義務には、原則として、組合に対して解決案を示すことまで含まれてはいない。加えて、本件団交において、組合から具体的な要求がなく十分に交渉が行われていない中で、パーソルテンプスタッフから具体的な解決案が提案されなかったことが、同社の責任によるものとは認められない。

したがって、同社が本件団交において、具体的な解決案を提案しなかったことは、労組法第7条第2号に該当する不当労働行為には当たらない。

(争点5)

三明化成は、Aとパーソルテンプスタッフとの労働契約不更新問題について、労組法第7条第2号の「使用者」に当たるか否か。

(判断の要旨)

組合が三明化成に対して求めた交渉事項は、不明確であるものの、要旨は、Aの労働契約不更新問題であると認められる。Aの雇用契約は、同人とパーソルテンプスタッフの間で締結される契約である。三明化成は、組合が主張するようなAに対する採用についての面接を行ってはいない。また、同人に対して雇用契約の終了を伝えたのは、パーソルテンプスタッフであり、組合は、三明化成がその決定に関与したとされる具体的な事実を明らかにしていない。

以上のことから、三明化成は本件団交の交渉事項に関する限り影響力を有しておらず、雇用主と同視できる程度に現実的かつ具体的に支配、決定することができるものとは認められない。

したがって、三明化成は、労働契約不更新問題という本件団交の交渉事項との関係で、労組法第7条第2号の「使用者」には当たらない。

(争点6)

争点5において三明化成が「使用者」に当たる場合、本件団交における三明化成の対応が、労組法第7条第2号に該当する不当労働行為に当たるか否か。

(判断の要旨)

三明化成は労組法第7条第2号の「使用者」には当たらず、争点6については、これを判断するまでもなく組合の主張は認められない。

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