ホーム > くらし・安全・環境 > 身近な生活 > 県民の声・広聴 > 対話の広場 > 第1回「黒岩知事との“対話の広場”Live神奈川」開催結果

更新日:2024年3月29日

ここから本文です。

第1回「黒岩知事との“対話の広場”Live神奈川」開催結果

平成23年7月28日(木曜)に開催された、第1回黒岩知事との“対話の広場”Live神奈川の実施結果についてご覧いただけます。

概要

第1回黒岩知事との“対話の広場”Live神奈川

 

テーマ かながわの『いのち』を守る-自殺を防ぐ社会づくり-
日時 平成23年7月28日(木曜) 18時30分から20時
会場 神奈川県庁 本庁舎3階大会議場
参加者数 67名

実施結果(動画版)

当日の録画映像をご覧いただけます。





実施結果(テキスト版)

知事

こんばんは、神奈川県知事の黒岩祐治です。知事に就任させていただきまして、ちょうど3か月が経ちました。その就任の当初から、こういう会を一日も早くやりたいと思っておりました。

私の立候補というのは突然のことでありまして、昔、大学1年生から6年間は横浜に住んでいたのですが、最近は東京都民でしたので、なかなか神奈川の現状、皆さんの本当の生の気持ちからはちょっと離れていたかもしれない。だから、なるべく早く皆さんと対話する会をぜひつくりたいと思っておりました。

そして、様々なブレーンといいますか、すばらしい方々といろいろな意見交換をしながら、知恵をもらいたいということで、「知恵袋会議」というのをつくりまして、その知恵袋会議で出たすばらしいアイデアとか、いろいろなものの考え方というものを、即座に県民の皆さんとの「対話の広場」という形にして、直接お話をしながら、その中で県政の中で生かせるものがあったら、スピード感を持って生かしていきたいということで、企画していた次第でありました。

そして、つい先日でありますけれども、第1回知恵袋会議を開きました。そこで出てきたテーマが、今回の「自殺」というテーマでありました。この自殺というテーマは、非常に難しい問題だと思います。しかし、我々がやはりきちんと向き合わなければいけない重要なテーマだと私は感じております。

そこで、その知恵袋会議から出てきたホットな自殺というテーマを、難しいですけれども、最初の県民の皆さんとの対話の広場のテーマにしたいと考えた次第でありました。

今日はその知恵袋会議のメンバーをご紹介したいと思います。社団法人神奈川県医師会理事、松井住仁さん。医療法人社団緑成会横浜総合病院副院長・看護部長、桃田寿津代さんです。そして、学校法人東海大学体育学部長、山下泰裕さんです。今日は知恵袋会議のメンバーにも来ていただきましたから、直接お話をしていきたいと考えております。

実は、この自殺というテーマを知恵袋会議の中で最初に話してくださったのが、山下さんだったんですね。それで「確かにそうだな」という気持ちになって。今日はたまたま医療関係者の方が多いですけれど、知恵袋会議には神奈川のいろいろな分野の専門家がいらっしゃるんですね。様々な専門家がいらっしゃって、一つのテーマでみんなが織り成すような議論ができるのかと不安でもあったんですが、山下さんから「自殺」というテーマを出していただいたら、その知恵袋会議のメンバーもそれぞれの専門家の立場から、いろいろな意見をおっしゃってくださったということがありました。そのテーマを今日は持ち込んで、皆さんとともに議論したいと思いますので、今日の議論の口火は、山下さんの方から切っていただきたいと思っています。一言お願いできますでしょうか。よろしくお願いします。

山下委員

皆さんこんにちは。ご紹介いただきました、東海大学体育学部長、柔道の山下でございます。できるだけ簡潔にまとめて、私も3分以内で済ませたいと思っています。

まずお手元に、私からの配布資料「スポーツは日本の病に効く」が入っていると思います。ここに、私が思っていることの半分ぐらいは書かれていると思うんですね。ご参考にしていただければと思っております。

2006年から、神奈川県体育協会の会長を務めております。神奈川県体育協会の会長として、今まで一生懸命取り組んできたのが、スポーツを通したいじめ撲滅運動。スポーツで最も大切なフェアプレーの精神は、スポーツをやっているときだけのことではない。スポーツを通して学んだこのフェアプレーの精神を、若い選手だけではなく、スポーツに携るみんなが日常生活で生かしていこうと。そして、スポーツという限られた分野からではあるけれども、活力ある神奈川をつくっていきたい。そういう思いで活動をしてきております。

今回、黒岩知事の下で知恵袋会議のメンバーとなりました。1回目の会議で、私は「日本は非常に不健康ですよ、日本人病んでいますよ。健康というとみんな体のことを考えるけれども、体以上に日本人の心の方が不健康で病んでいて、知事が『いのち輝く神奈川』づくりで進んでいかれるときに、この不健康で病んでいる部分を何とかしていかないと、神奈川がいきいきと輝いていかないのではないですか」と話しました。

そして、具体的に事例として出させていただいたのが、自殺者が13年連続で年間3万人を超えている。13年も続きますと「あ、そんなものか」と思われますが、他の国と比較すると、これが異常な数字であるということがわかるんですね。WHOの最新のデータによりますと、人口10万人あたりの自殺率は日本は上から6番目。でも、日本の上にあるのは、ベラルーシとかリトアニアとか、ロシア、ハンガリーなど、非常に情勢が不安定なところ。先進国と言われる国々の中では、日本はダントツなんですね。

そしてそれだけではなくて、うつ病、躁うつ、統合失調症あるいは精神および行動の障害。こういった方々も、90年代から非常に増えてきている。それから、心の健康に不安を抱えている人たちが非常に増えていて、大人の3人に一人がその不安を抱えている。30代、40代になると、約4割の人がそれを抱えている。これはたいへん難しい問題ではありますけれども、心が病んだこの日本を何とか、みんなで知恵を絞りながらより健康な状態に、心がいきいきといのちが輝く、そんな神奈川、日本にしていく必要があるんじゃないかと。

こんなことを知恵袋会議でお話させていただいたんですけれども、黒岩知事にはまずお礼を申し上げたいと思っています。そういう提案をしましたら、さっそくこういう直接県民と対話する場を設けていただきました。すぐに行動していただいたことに対して、心から感謝しお礼を申し上げたい。

ただ、私の専門は柔道、スポーツ、教育です。ですから、それに対して具体的にどういう行動を取れるのか、私自身がしっかりとしたアイデアを持っているわけではない。今日この場で、皆さんのいろいろなお話や現状をお聞きしながら、それを元にして私個人だけではなく、スポーツ界の人間、県体協の会長として、明日からできることを行動していきたいし、私のいるところでも、みんなで考えていきながらできることから進めていきたいと思っております。どうぞ今日はよろしくお願いします。

知事

ありがとうございました。山下さんの言葉には、やはり一つ一つ重みがあるということで、これは我々受け止めなければいけないと思った次第でありますが、県としても、こういった問題は全く知らん顔をしていたわけではないんですね。

では、神奈川県としては実際どんなことをやってきたのか、どういうふうに取り組んでいるのかということを、事務局の方から発表させたいと思いますのでよろしくお願いいたします。

保健予防課長

それでは、神奈川県の取組みにつきましてご説明させていただきます。お手元に配布しております、A3横長カラー刷りで三つ折りになっている「神奈川県における自殺総合対策」[PDFファイル/186KB]という資料をご覧いただきたいと思います。

この資料の左上ですが、神奈川県の自殺者の現状でございます。神奈川県の自殺者数は、平成10年に、当時金融機関の相次ぐ破綻で、全国的に失業者数が大幅に増加したということを受けまして、本県でも自殺で亡くなられる方が増えております。

以後、ここ数年は残念ながら1,800人台前後で推移しているという状況でございます。1,800人台前後で推移しているということですが、平成21年に自殺で亡くなられた方は1,908人となっております。これは東京都、大阪府に次いで、全国で3番目に多い数となっております。

その隣の真ん中の表ですが、自殺者を年齢別、男女別に見ますと、全国と同様の傾向を示しておりまして、中高年男性の自殺が多く、男性と女性の割合は7対3で男性が多くなっております。

また、年代別、原因動機別も全国と同様の傾向でございまして、健康問題の占める割合が全年代で多く、特に中高年世代では経済・生活問題の占める割合も多くなっております。

次に、資料の左の下段に移りまして、県の対応をご説明させていただきます。県の自殺対策につきましては、平成18年度から進めてきたところでございますが、今後さらに総合的に自殺対策を推進するため、平成23年3月に「かながわ自殺総合対策指針」[PDFファイル/4.86MB]を策定いたしました。

指針では、自殺対策の基本的な考え方としまして、まず自殺は追い込まれた末の死であること、自殺はその多くは防ぐことのできる社会的な問題であること、自殺を考えている人は悩みを抱えながらもサインを出していること。この3つの認識のもとに、社会的要因も踏まえ総合的に取り組むことや、県民一人ひとりが主体となって取り組むことなどを基本にしまして、自殺対策を進めることにしております。

数値目標としましては、自殺で亡くなる方を一人でも多く減少させることとし、平成29年度までに平成17年の自殺者数を20パーセント減少させることにいたしました。また、重点施策としては、普及啓発の推進やゲートキーパーの養成など10項目を定めまして、県全体で自殺対策を推進することにいたしております。

次に、右の表にございます重点施策の主な取組みでございますが、「孤立しない 地域づくり かながわ」、あるいは九都県市の標語をスローガンに掲げまして、具体的には、「2 普及啓発」では、県民誰もが自殺予防の主役になれるよう、街頭キャンペーンやシンポジウムなどに取り組んでまいります。

また「3 ゲートキーパー養成」では、自殺の危険性の高い人の早期発見、早期対応を行うため、かかりつけ医や企業労務担当者などを対象として、自殺の危機を示すサインに気づき適切な対応を図るゲートキーパーを養成するほか、「4 心の健康づくり」では、企業や学校など、あらゆる場で心の健康づくりに取り組むことにいたします。

次に「5 うつ病対策」では、自殺を企てた人の多くは直前にうつ病に罹患していることから、うつ病治療に関する研修などに取り組むほか、「7 社会的取組み、環境整備」では、多重債務者支援、さらに人権子どもホットラインなど、学校のいじめ問題に取り組んでまいります。

このほか、「9 自死遺族支援」としまして、自死遺族の集いやサポート相談に取り組むほか、「10 関係機関・民間団体との連携強化」では、行政のほか学識・司法・報道・医療関係者などを構成員とする「かながわ自殺対策会議」を設置しまして、自殺対策に取り組む民間団体等と連携して、自殺対策を推進しているところでございます。

資料の説明は以上でございますが、本日、全国と県の自殺者数や職業別の自殺者の状況などを説明した追加の統計資料[PDFファイル/146KB]も配布してございますので、後ほどご覧いただければと思います。

また、9月10日の世界自殺予防デーに合わせまして、9月に県内各地で自殺対策の講演会・シンポジウムが開催されます。本県でも9月24日の土曜日に「こころの健康づくり講演会・シンポジウム」を小田原市民会館で開催いたします。お手元にチラシを配布してございますので、ぜひご参加いただきますようご案内申し上げます。以上でございます。

知事

ということで、県の方としても「自殺総合対策指針」を設けて、ちゃんとした数値目標、平成29年度までに平成17年の自殺者数を20パーセント以上減少させると。こういう施策に取り組んでいるということなんですが、果たしてこういう施策そのものが本当に皆さんのところに届いているかということも含めて、本当に実のある政策というのはどういうものかということを、皆さんとともに議論していきたいと思うんです。今日は本当に率直にお話をいただきたいと思っています。

まず、自分の非常に身近な人が自殺をされたという体験をお持ちの方から、たとえば何を求めるのか、どんなことがどうだったのかと、ここで聞いてほしいということがあったら、まずはそこからお話を始めたいと思うんですが、そういう方いかがでしょうか。なかなか言いにくいことかもしれませんが、いかがですか。

参加者 

横浜市のカトウと申します。私自身がカウンセリング業務を仕事としており、実際、私の相談者が自殺したというケースがあります。これは、救いようがないというんですか、自殺をするときというのは自分が決めた日。ただ私が自殺をされた日というのは、年間でたった3日間、出張していた日なんです。ですから、そういう意味からすると、助けようとしても助けられないケースが存在しているということがあります。

もう一つは、逆に足止めをして助かったケースもあるんです。私が出かけようとしたときに、なぜだかわかりませんが、10分か15分、とにかく出かけられなかったんです。そして、出かけるといったときにドアをノックされました。そしたら、その人は今電車に飛び込もうと思っていたけれど、ふと顔を思い出したから来ましたと。それで救えたケースもあります。ですから、自殺自体を防ぐということは非常に難しいと私は感じています。

それから、もう一つはやはり医療機関ですね。診察にかかる時間が非常に少なすぎます。どうしても少ない。ほとんどが、聞かれる先生というのは、「今日はどうですか」って聞かれますから、本人は「変わりません」と。「じゃあ、お薬を出しておきましょう」と。こういう格好では、やはり問題をほじっていませんので、救うことはできないんじゃないかなという気がいたします。以上です。

知事

ありがとうございました。助けようと思っても、なかなか助けられないものだと。こういうお話が出てきました。

参加者

私も同じように体験をしているんですけれども、やはりあまりにも今の医療のやり方、問診が「今日はどうですか」という感じで、それも非常に短い。「じゃあいつものようにお薬出しておきましょう」とか、そういう感じになっているんですけれども、これが医療と言えるのかと、我々素人でも思えるような対応の仕方にすぎないのではないかと思っています。

他の病気を見ますと、たとえばがん治療あるいは肺炎その他にしても、ちゃんとどこが病気の源になっているということが、画像あるいはいろいろな数値で明らかにされるわけですね。ところが、心の病気というのは、そういうことを医療機関の人が一切やってないと私は思っているんですよ。どこかでやっているかもしれませんけれども。

医療機関にかかっていく患者さん、病気のその重さはいったいどうなのか。たとえば、がんでは1段階から4段階まであるとか、そういうフェイズ時期はどうなっているのかとか、そういうこともわからない。脳内の物質が足らないとか、セロトニンが足りないとか、エネルギーレベルが落ち込んでいるとか、そういう表現はするんですが、それらが3ヶ月間の治療でどういうふうに改善されたのかとか、半年の改善でどうなったのかとか、そういうようなことは言われない。

それで、治療によって「もうあなたは全快しています」ということも、医者が責任を持って言えない。だからだらだらと長い受診になっていく。そういう医療のあり方でいいのかということは疑問です。

それからもう一つは、今の日本の社会では、110番をすればおまわりさんが駆けつけてくれます。119番にかければ消防車がやってきます。同じように、非常に緊急な事態で患者さんが心の病気をあらわしたときに、どういう対応するのかということになると、そういう駆けつけてくれるような人はいません。これは非常に不幸なことだと思います。そういうことを実感として感じております。以上です。

知事

ありがとうございました。医療のあり方の問題も出てまいりました。そういうことはまた後でいろいろと議論していきたいと思いますが、いかがですか、他の方。

参加者

私は夫を亡くした自死遺族ですけれども、この「あなたに知ってほしい」[PDFファイル/526KB]などの小冊子に必ずある「自殺は防ぐことができる」とか「追い込まれた末の死」「サインが出ている」という文言を遺族が目にすると、遺族はただでさえ「自分は防げなかった」「気づかなかった」「自分が追い込んだんじゃないか」という自責の念を持っているのに、余計にそういう思いが強くなる。基本認識には「多くの自殺は」って入っているけれども、こういう冊子には「多く」が抜けているんですよね。

確かにうちも医療にかかっていましたけれども、それでもまさか自分で死ぬまでは考えていなかった。亡くなってから、そういえばあれがサインだったのかもしれないと思っても、当時はやはりちょっと体調が悪いだけ、ちょっと眠れないだけかと。

キャンペーンでも、「悩みがあったら相談に行きましょう」「眠れなかったら病院に行きましょう」って言いますけれども、実際に遺族の集いなどに行くと、相談に行っても、医療にかかっても亡くなっている方はとても多いので、サインに気づいた後にどうすればいいかということを、もっとやってほしいと思う。

やはり「防げる」という言葉は、体験者としてそう簡単に防げるものではないというのを身をもって知っています。これから9月に街頭キャンペーンがあるときに、「防げる死」というフレーズだけがあまりにも浸透してしまうと、何で家族は気づかなかったんだろうねという話になっていく。すると、ますます自死遺族は、家族が自死したことを言えなくて、下を向いて生きていかなきゃいけないので、その辺を検討してほしいと思っています。

知事

ありがとうございました。本当に生の声というのは切実ですよね。我々は何かそれはいいことのように、きっとサインはあるんだと、それをキャッチしましょうよって簡単に言っているけれども、それがご遺族にとってはいたたまれない思いだというのは、確かにそうだという感じがいたしますね。他にいかがですか。

参加者

横須賀のハタナカといいます。皆さんにぜひ伝えたい。とりあえず皆さんに警告します。あなたの身の周りの家族が、もうこの瞬間に命を落としているかもしれません。私の兄弟が自殺で亡くなったんですけれども、連絡を受けたころには既に死んでいました。

その後、私自身が精神的におかしくなってしまって、統合失調症をわずらいました。入院したんですけれども、悪性症候群にかかってしまって、危うく自分自身も命を落とすところまでひどい状態に陥って、結果、リハビリのかいあって、こうして日常も滞りなく生活することができるんですけれども、家族を失ったことの悲しみは一生背負っていく。この辛い気持ちを一生抱えて生きていく。

皆さんも家族で、ほんの些細なことでいいですから、とにかく家族と交流、会話をする。何かちょっとでもおかしいことがあったら、話を聞いてあげる。そういうことから始めていかないと、まず自殺は防げないのかなと。

もう一点は、国の統計を見ますと50代、60代の人が、健康上の理由や経済的な理由で自殺に陥っているようですけれども、やはり大企業の昨今のリストラですね。会社を追われ経済的基盤を失い、そして健康問題を抱えて家族が崩壊し、行き場がなくなって自殺に追い込まれる。そういうケースが多いと思うんです。絶対に大企業のそういうリストラの傾向というものは無視できない。

ここに集まっている県民の皆さんに呼びかけるだけではなくて、もっと知事自らが、大企業のお偉いさんや経営層に、自殺は社会的損失がとても大きなものなんだと、そして、その自殺に追い込まれてしまった人たちを救うためにも、雇用を守る、たとえ賃金が下がっても首は切らないよう呼び掛ける、そういうことをぜひお願いしたいと思います。

知事

ありがとうございます。確かに経済のあり方というのも、自殺との関係が非常にあるということがわかってきましたけれどね。こういった問題をいろいろ整理しながら、後で議論していきたいと思いますが、他にございますか。

参加者

県の総合対策を見ますと、基本的な考え、数値目標、重点施策はあるんですが、やはり数値目標を立てて解決する問題ではないのが、この自殺だと思うんです。先ほどの方がおっしゃったように、たとえばリストラされたとか、そういう雇用問題などは、企業とかの連携。あるいは精神的なものであれば、メンタルの面でケアしてくれる方。学校、いじめ等であれば、学校とか地域の連携というものをやらなければ、防止というのはできないと思います。

そして、個々に自殺する方というのは、統計ではたとえば自分の病とか、金銭の問題とかあると思うんですが、一つのくくりでは決められないものがあると思います。

ですから、原因がわかっているのであれば、原因を取り除かなければ防げる問題ではないと思いますので、ただ数値目標等を立てて結果が出るものではないと思います。原因を取り除く方法というのを県が考える。あるいは基礎自治体と連携を取るということが重要ではないかと思います。

知事

ありがとうございます。結果として、数が減るということになればいいわけですが、なかなかここをこうすれば数値目標に向かっていくというのが簡単に見えないだけに、非常に難しい問題だと思います。いかがですか、他の方。

参加者

神奈川県の精神障害者の家族会の代表をやっておりますイチカワといいます。自殺という問題で、私どもも家族会の中でよく議論することなんですけれども、我々が特に感じていることは、統合失調症をはじめ精神障害者の数が一向に減らない。

それと、原因はいくつかあるんですけれども、大きな部分を占めているのは、うつ病から自殺にまで追い込まれていく。

それからもう一つは、精神障害者でも医療につながっている方はいいんですけれども、つながっていても中断してしまったり、医療につながっていないかなり多くの方が自宅で引きこもっていると。その引きこもり対策が、非常に大きな問題であると思うんですね。

我々の情報では、精神障害者は日本が飛び抜けて多く、なおかつ今までどちらかというと閉じ込め政策できましたから、諸外国と比べると入院患者も非常に多いということが背景にあると思うんですね。

そこで、私どもが今取り組んでいる在宅患者への訪問介護を、何とか制度的に推し進められないかということで、一部はアメリカですでに治療方法の一つとして、我々は「ACT(アクト)」と言っているんですけれども、そういう形で医療チームをつくって患者の対応にあたっている。やっぱり、なかなか当事者は医療機関に来られないんですね。そういう人たちを、出前じゃないですけれども、医療の側から訪問して医療につなげていく。そういう制度をもっと進めていくことによって、自殺の一部分は防げるんじゃないかなと思います。以上です。

知事 

ありがとうございます。ここで一つ、医療の問題がいろいろ出てまいりましたから、松井さんいかがですか。医療のあり方がなかなか十分じゃないから、自殺がなかなか減らないという指摘がありましたけれど、どうですか。

松井委員

私は内科なので、「3分診療」に近いことをやっているんじゃないかと思うんですけれど、これは神経科の先生たちが専門なんですが、かなりの時間かけてやっているはずなんですね。僕も学生のときには神経科を回って、1人に30分以上かけていました。ですから、おそらくかなり専門の先生たちはやってらっしゃるんじゃないかと。神経科の先生とか、心療内科の先生たちですね。

ところが、先ほど言われましたように、自殺というんでしょうか、「うつ病は必ず治る」とか、そういうことをどちらかというと専門の先生たちが言うんですね。僕はそう思わないので、「そんなことないでしょう」って言ったら、「いや治せる」って言うんですよね。僕は治んないんじゃないかなと思っているんです。

やはり全部治すという完璧な医療というのはありませんから、かなりは治せるでしょうけれど、やはり自殺する人は自殺しちゃうんじゃないかと思います。でも、じゃあどんなふうになっているのかというと、個人的にはやはり、僕らでも若いときに失恋して自殺したくなったり、成績が悪かったとか容貌のことを考えたりして、どんどん落ち込んでいったり、そういうことがあったわけですけれども、そういうのを抜きにしても、社会的には、やはり日本の社会の貸付制度というんですか、金融制度が僕は非常によくないと思っています。要するに個人保証と連帯保証ですね。バブルの後からたくさん自殺する方が増えているんですけれども、やはり個人保証というのをすると、自宅まで取っていかれる。それから連帯保証というのは、自分が借りていないのに、人がはじけたおかげで自分まで全部の財産を取っていかれちゃう。こういう制度は世界的に見てもまずないと思うんですね。そういうのを直すだけでも、バブルがはじけてから自殺者は1万人増えていますので、その1万人のうちいくらかは減らせるんじゃないかと。社会制度的に変えただけでも自殺者は減るんじゃないかと思っていますので、その辺もぜひ考えていただけたらと思っています。

知事

そうですよね。日本の中小企業の社長さんは、金を借りるというときに連帯保証をすると。会社が倒産したら、自分の個人の財産も全部身ぐるみはがれて、何もなくなってしまうと。私のすぐ身近でも、つい先日そういうことがありましたね。何もなくなっちゃう。全部取られていっちゃうんですからね。それは想像を絶する悲惨な状況。そういうシステムに大きな問題があるんだという指摘がありました。

桃田さんはどうですか。ナースの立場として。今、在宅の人たちをもっと丁寧に見れば、もっと防げたんじゃないのかなという話が出ていましたけれどね。

桃田委員 

皆様からいろいろご意見が出ましたけれども、私も医療従事者としてもっともな部分があるというふうに思います。

ただ、救急をやっていますと、季節によってはそういう自殺未遂で搬送されて、本当はその方とじっくりかかわる時間が持てればいいんですけれども、何しろそれができないのが今の医療の限界だと思っているんです。

それで、今日こういう会を持たれたということは、私たちというのは一方的な見方しかしていないんじゃないかなというふうに、今日、私は反省をさせられました。やはり自殺というのは何か特別な人というのではなくて、地域で医療も含めたことを神奈川県としてきちんとやっていって、そして自殺に対してはその地域に専門の先生方がいらして、スタッフがいるわけですから、そういうところを広く県民に知っていただく。

それってとても大事じゃないかなというふうに思いますし、ゲートキーパーの養成ということもございましたけれども、それもどんどん広げていって、孤立させないということを私たちは考えながら、在宅の方にもできれば医療職が訪問したり、あるいはいろいろな人たちの力を借りて自殺者を減らすということを、神奈川から発信していけばいいんじゃないかなというふうに、私も深く反省しております。

知事

ありがとうございます。今日は私の友人で、精神科のドクターである横浜の相原病院の吉田院長が来てくれていますので、彼も本当にそういう専門家というか、実際に生のいろいろな症例に向き合ってきている先生ですけれども、今までの議論を聞いていかがですか。

吉田院長

吉田でございます。黒岩知事が早急に「いのち」というものをキーワードとして、こういった会議を開いてくださったことに、まず敬意を表したいと思っています。

最初に山下先生がお話なさったように、13年間、毎年3万人以上の人たちが自殺で亡くなっているという現実。なかなかぴんときにくいかと思うんですけれど、36,000人と仮定すれば、月に3,000人ですよね。月に3,000人ということは日に100人で、100人は未遂ではなく自殺を成功した人なんだよね。未遂じゃなくて成功した人。

じゃあ、自殺未遂をした人はどれぐらいいるかと言われれば、その10倍はいると言われているぐらい、我々がこうやって生きているこの社会、この現実、この日本に毎日100人、1,000人の人が死のうとしている。そういうふうに思わなければいけない現実なんだ。

だから、自殺した人だけを数えるのではなくて、それこそ自殺未遂をしている人まで含めてケアをする。毎日1,000人の人が命を断とうとしているという現実を、まず見ていかなければいけないと思います。

医者がみるに当たって、「調子どうですか」「眠れていますか」「食欲ありますか」くらいのことですぐ診察が終わってしまう。確かにそのとおりの傾向があるかと思います。30分、1時間かけて話を聞いてあげるということは、なかなか難しい。もちろん、入院になる初診のときはおそらく1時間くらいかけて聞くんですけれど、外来通院では現実的にそういった現状。これは、我々も本当に反省しなければいけないことかと思います。

一つ、僕が企業などいろいろなところで話をさせていただいていることとして、もちろん自殺を企てるときにはうつ状態、うつ病というのがその背景にある。その背景にある中で、うつ病の人のテンションは我々のテンション、気持ちの高さより下がっている。でも、この高さの状態では絶対に自殺をしません。自殺を企てるときは、その状態からほんのちょっと瞬間的に下がる。これは必ずしも長続きはしない。ちょっとしたことで、元々のうつの高さまでは戻ってくれる。だから、一般的に自殺の名所とか言われるようなところには「ちょっと待て」とか、あるいは公衆電話に「おうちへ電話してみませんか」って、いろいろなものが置いてあるかと思います。

勉強していないうちは、自殺しに来た人がこんなものを見てやめるはずはないだろうと軽く思っていたんですけれど、この道を一生懸命勉強してみると、確かに自殺するのにちょっと下がったテンションを、少し上げるために役立つと思っていいくらい。そのちょっとしたことというのを、皆さんがここで覚えておいていただければありがたいなと。

たとえば企業で、暗い顔をしてうつでいる人に、「こいつ大丈夫かな。このまま放って金、土、日と別れたときに自殺してしまうんじゃないかな」というときに、どうしたらいいですかという質問をよく受けます。「まさか、おまえ死ぬんじゃないよな、大丈夫だよな、死んじゃいけないからな」なんてことはそんな簡単に言えることではない。そういったときに、僕がいつもお願いしているのは「じゃあ月曜日な」と、これだけ言ってほしい。すなわちまた会う約束をする。また必ずどっかで会おうという約束をする。

基本的に自殺にまで追い込まれる人というのは、非常にまじめです。我々が約束していて、どうってことないと思うことを、本当に真剣に思っていてくださったりすることがある。

だからそういったときには、極端な話、崖の上に立って飛び降りようとした瞬間に、「じゃあ月曜日な」ということを思い出してもらえる。絶対ではないですよ。もちろん、なかなか防ぎにくいです。確かに、専門家の目で見てもなかなか防ぎにくいことはある。ただ、そういったことを約束してくださっているというのは、大事な予防のためのポイントなのかなと。

おそらく、誰と一緒にいたとしても、その人は心理的に孤独という状態。見かけの上では家族みんなで暮らしていたとしても、心理的には孤独なんだと。その心理的に孤独でない状態をつくってやって、「じゃあ月曜日な」という一言を思い出していただければ、ある意味で防ぐ一つの手段になるのではないかと思っています。

確かに、僕の外来の患者様には必ず次に来る日を約束します。必ず「一週間後ね」「二週間後ね」。あるいは、安定している人であれば「四週間後ね」ということを約束します。それは、何かちょっとしたことがあったとき、「じゃあ何曜日おいで」と言われたことを思い出してくれたらありがたいと思うからです。

実際、僕の友達の中で、いつも約束をしていたけれど、ちょっと次の外来の約束をし忘れちゃった、あるいは「薬がなくなったらまた来て」くらいのときに、自分のみていた患者様が命を断ったという経験をしたと聞いています。

ですから、必ず次の約束をしている。私は必ず見離されていないんだよ、心理的に孤独じゃないんだよ、気にかけてもらっているんだよと思ってもらうことが、ある意味での自殺予防の一つの助けになるのではないかなと思っています。

知事

一つ聞いていいですか。うつ病の人がうまく治療されれば、自殺の人は減りますか。

吉田院長

うつ病の方の治療がきちんとされれば、自殺は減ります。もう一回言いましょう。自殺は減ります。

知事

ということは、うつ病になっても、うまく医療の手が及んでいない人がたくさんいるということですね。

吉田院長

かなりいらっしゃると思います。

知事

どうすればいいですかね。

吉田院長

精神科、心療内科という科目自体がまだまだ敷居が高すぎる。だんだん最近はかかりやすくなってきたかと思います。でも、通常は精神科の薬を飲んでいるということだけで、いろいろな病院にかかると「ああ、もうそうなっていたらうちじゃみられない」と思われた時代もあったかと思います。でも、最近はそれがかなり受け入れられて、精神科にかかる敷居が少しは低くなってきている。

でも、まだまだ精神科、心療内科という響きだと、心療内科の方が軽い人なんじゃないかというような響きがあるのも事実。精神科のドクターが大学病院にいて、いざ開業すると、精神科ではなく心療内科みたいに名乗っていること自体が、まだまだ精神科にかかるための、治療を受けるための敷居が高すぎるのではないかというふうに思っています。

僕自身は自分として、そういったことを、「特別なことじゃない」「簡単に相談してもらっていいんだよ」ということを啓発して、あるいは企業の産業医としても、「精神科の先生が産業医で来ているから、悩みがあったら相談しな」と言ったって、そんなに簡単に来るものではない。これをいかに、みんなで「気軽に相談していいんだよ」「気軽に来ていいんだよ」というようなことを啓発するか。

たとえば、「自分のことじゃなくていいんですよ。『うちのじいちゃんがちょっとぼけてきた。そういったことを相談したいんだ』『うちの子どもが学校に行くのを渋る。それをちょっと相談したいんだ』そういうことでも結構ですから」と啓発をします。

そうすると、最初は「おばあちゃんがぼけている」ときて、でも3回、4回相談を繰り返していると、「いや実は私のことなんですけれど」というふうに始まったりする。我々としては、それぐらいの努力をすべきだと思っております。

知事

今まで聞かれて、何かご意見ありますか。

参加者

先生が今おっしゃった、ちょっとしたことということで、もし誰か親戚、お友達、お姉さん、お母さんにでも少しでも電話できる。そのちょっとしたことがそれにかかわってくると思うんですね。

今思うんですけれど、資料を見た段階では、経済と家庭が原因のまず1位になっていますよね(※実際は「健康問題」が1位)。経済力がなくて、失業して、日雇いになって、それでうつ病になって、病院に行ければいいですよね。行けない方はどうしたらいいんですか。行けない方は、それにも携わることさえできないですよね。

それで、いろいろなところに窓口を設けてくださるのはとてもいいと思うんですけれど、フリーダイヤルではない。そういう方は、電話して最初からお話して1時間も電話料金は払えません。そういうふうに思います。

私、実は今、5カ月ぐらいは外国で暮らしているんですね。この前帰ってきたんですけれど。そのときも外国の方々が、日本へ電話するとどうしていつもファックスになるのかと。だから、日本は電話代が高くて、実はこういうシステムになっていてと言って、それからいろいろなサークルの活動の話をしたら、それで自殺者が多いのね、日本はすごい自殺者ねって。

よくそこら辺の皆さんの生活を見てみると、会社から帰って、シャワーしてご飯食べて、その後に一番仲のよい友達に「今日はこういうことあった」って電話して。外国では電話が20ドル前後でフリーなんですよ。例えば中高年の男性は、奥様に気兼ねして自分の親にも兄弟にも電話をかけられないですよね。電話代が高くなったって、奥さんに怒られるじゃないですか。そういうふうになっていくじゃないですか。

携帯電話は若い人も使って、どんどん競争で、かけ放題とかいろいろなことになっていますけれど、固定電話に関しては中高年の男性が使うには日本の料金は高すぎると思います。それが先生のおっしゃる「ちょっとしたこと」に私はつながると思います。

これは、いろいろなところでディスカッションをたくさんしてきたんですね。常々それをずっと思っていて、ちょうどこのいい対話の会があったので、うつ病の病院にいく前にぜひ意見を申し上げたいと思って。

知事

確かにそうですよね。うつ病の人が、自分がうつ病だとわかって精神科にかかるっていうのは少ないんじゃないですかね。うつ病の人というのは、そこまで深刻な状況になっていたり、周りで病院に行きなさいと言ってくれる人がいるんだったらいいけれども、自分の自覚症状とかっていうと、そうじゃない。

よく、私も医療のことで取材する中で聞いたのですが、実は精神科の病気の人は、最初は精神科に行く人よりも、普通の病院に行く人が多いという。最近、具合が悪い、頭痛がとれないと言って行く。でも、そこにいるドクターは、心療内科の先生だとまだいいけれど、内科の先生のところに行ったら、内科の視点で見るので、そういうものを発見しないという。だから、本当はそういう先生でも、精神科的な素養ってもっと必要なんだという話を聞いたことがありますけれどね。こんなことで何か、皆さんご意見ありますか。

参加者

海老名市のナカジマです。先ほど、うつになったら病院に行けばいいという話で、病院の方も来やすくしましたということだった。プロパーだったら別にそれでいいと思うんですけれど、私は派遣で働いている。派遣だったら、もしそれで病院に行くようになりましたと言ったら、次の更新は間違いなく切られるんです。切られたら、そのまま退職勧奨されるので、病院に行けないんですよ。それを知っている人は、病院にも行けないから自分で抱え込むしかないです。

知事

普通に勤務している人だったらば、いろいろな病院もあるし、診療所もあったりするけれども、派遣だったら、それを言った瞬間にだめになっちゃうと。そういう現実もありますよね。皆さん、他にいかがですか。

参加者

心の相談ということで、一つ何でこうなっているんだろうという非常に大きな疑問は、まず心理カウンセラーです。

いわゆる臨床心理士と言われる人たちが、国家資格か何か知らないですけれども、そういう人たちが活躍する場が本当に与えられているのかというふうに思ったりするんですけれども。そういう人たちに、もし健康保険適用で気軽に相談できたら、これは病気の最初の糸口がその人たちによって、あなたは病院に行かれた方がいいとか、あるいはこういった形でこういう対応の仕方もあるとか、いろいろ相談ができると思うんですね。

ところが、まずたどり着くまでがとてもたいへんで、1回行くと5,000円、10,000円ということになりますし、健康保険が適用されていないから、何カ月も何回も行くわけにいかないということとか、あるいはその他、人数が少ないからそういう場を利用できないとか、いろいろな不自由なことがある。たとえば全然別な話なんですけれども、かつて私たちが若いころには、あんま治療なんていうのは保険適用になってなかったと。今は保険が適用になるようなところもあるんですけれども。そういうものも保険適用になれば、これは心と心の通い方がもっと増えるんじゃないかなと思います。

知事

ここで皆さんに聞いてみたいと思います。これだけの皆さんに、「はい」って言えるかどうかわかりませんけれど、この中で、もしかして、私はかつて自殺をしたことがありますという人いますか。しようと思ったことがある人は。こんなにたくさんいらっしゃる。

参加者

私は2度の自殺経験者で、生存しています。先ほどの横浜相原病院の院長先生にお世話になっている患者です。私は元々明るく活発で、そういうことを絶対する人ではない。まず1回目のときに、みんなが驚きました。自殺というのは止められない。サインを出しているんだけれども、いつやるかわからないんですね。そのときがそのときなんです。

だからもっと早い時点で、まず本人が自分が病気だということに気づき、医療機関に行くなりそういうことをして防がないと、自殺というのはなくならないと思います。自殺は病気で言えば末期のがんです。

でも、私は助かって、先生の力、家族の力を借りながら、一生懸命生きようとしています。生きています。これからもそうして生きていこうと思っています。以上です。

知事

本当に勇気あるご発言、ありがとうございました。助かってよかったと思いますか。

参加者

思います。

知事

こういう話を聞くと、助かってよかったという人は結構私も聞いたことあるんですよね。

参加者

今は南区に住んでいます。10年ぐらい前に1回、横浜を脱出して福岡の方へ行って、自殺を試みたんですけれど、漁師の方に助けられて。それから自殺の神様から見離されたみたいだ。

今は76歳で、昔大酒飲みだったもので、今は自助グループの断酒会に入っています。ここで毎日のように仲間と一緒に話して。自分でもうつ病を少し持っていると思うんですけれど、ドクターに言わせると軽いうつ症状だと。他にも病気をいっぱい持っているんですけれど、クリニックから出していただいている薬で何とかやっています。以上です。

知事

ありがとうございました。となりの方も手が挙がりました。どうぞ。

参加者

同じく、南区のヒグチと申します。隣の方と同じ断酒会に籍を置かせてもらって、お酒をやめている状態です。

僕の飲酒というのは16ぐらいから始まりまして、ほとんど毎日のようにお酒を飲んで、ごく一般的な飲み方ではなく、毎日浴びるようにお酒を飲んだあげく体を壊し、精神もぼろぼろになったあげく、もうだめだと、このままじゃどうにもならないと。もちろん仕事もだめになりましたし、このままだと本当に自分が自分でなくなってしまうということで、隣にいる妻に泣いてお願いして、平成20年に県立せりがや病院というアルコール専門の精神の病院に3カ月間入院させてもらいました。入院中に断酒会というものを知りまして、今4年目に入ったんですけれど、お酒はもう一滴も飲まずに生活ができています。

その当時、お酒で狂っていた頭で考えていたのは、やはり自分なんか生きていてもしょうがないということばかりでしたね。アルコールを飲んでいると、そんな思いや考えしか浮んでこないんです。でも、今はお酒をやめていることによって、本当に小さい幸せですけれど、生きていてよかったなと。今はそうやって生活を送れています。以上です。ありがとうございます。

知事

ありがとうございます。何があなたを救ったんでしょうかね。

参加者

今思っているのは、やはり妻の存在が一番大きかったです。もちろん、アルコール依存症というのは、結構偏見があったりしていると思うんですけれど、幸い僕の場合はそういう偏見に対しては、今のところそういうのを周りから受けたことがないので、よかったかなと。妻の存在も一番大きいんですけれど、もちろんアルコール依存症からうつになったりとかもしますし、アルコール依存症が病気だとわかってもらえないんですよね。実際の話、うちの母親はこの病気を病気だと思っていません。だけど、うちの妻は一緒になって勉強してくれて、病気だと理解してくれて支えてもらっています。そこでやはり生きる力をもらっているなと思っています。

知事

ありがとうございます。奥様の立場から見ていてどうだったですか。

参加者

私も最初、病気ということがわからなくて、ただ朝から晩までお酒を飲み続けるんですね。おいしくて飲んでいるのではないので、飲むと暴言を吐いたり、俺なんか生きていてもしょうがないとか、そういう日々で。仕事には行くんですけれども、やはり自分に自信がないので、お酒で紛らわせている。朝まで飲んでいると、次の日はもう出勤できなくて、それで仕事も何回もやめて。

生活ができなくなってくると、夫婦げんかも多くなって、何度も離婚しようと思っていたんですけれども、病院につながったときに、これは病気だっていうことに初めて気づいて。気づいてからはどんどん、「あ、これは病気だったんだ」って思うと、気持ち的には楽になったんですけれども、もし病気って知らなければ、たぶんそのまま私も離婚していたと思うし、先ほど「医療につながった方はいい」って、本当にそうなんですね。

断酒会や家族会に通っていると、医療機関につながらない人はまだまだたくさんいて、そういう人たちが少しでも少なくなればいいなと思って、こういう会に少しでも主人と一緒に足を運んでいる日々です。

知事

本当にすばらしいですね。離婚しないでいたからこそ、今こうしていらっしゃるというのは、非常によかったですね。こういったような体験とか、私たちにはこんなことがあったとか、まだほかにありますか。こういうことを言っておきたいんだということがありましたら。

参加者

私は川崎から来ました。今のお二方と一緒で断酒会の人間です。自分のことではないんですが、実はドクターにきちんとした見立てをお願いしたい事例が2、3あったんです。肝心のアルコール依存症が後回しにされたというか、「あなたはアルコール依存症ではなくうつ病だから、お酒は気持ちも高揚するので少しくらいはどうぞ」と、全く見当違いの診断をされて、結局お酒を選んだ。私たちから見ると、完全な自殺行為なんですよ。それで「俺はドクターにそう言われたからやめる必要はない」と言って、結局お酒を飲み続けて亡くなるケースがかなりあるんですね。

その点、精神科のお医者さんにもいろいろな専門分野があると思うんですけれど、きちんとした見立てをお願いしたいなと。私たちの実感です。

知事

ありがとうございました。先ほど隣の方も手を挙げました。どうぞ。

参加者

港南区のカワニシと申します。先ほどから続いていてたいへん申し訳ないですが、私もアルコール依存症者であって、断酒会に通わせていただいている一人であります。

お酒を飲んでいますと、自分の命が失われていくことに対する気持ちがどんどん弱くなっていきます。これから死んでしまうということに対して、生と死のボーダーが低くなるんです。

私自身も、このままお酒を飲んで体がぼろぼろになって、動けなくなって、歩けなくなって、主人との会話もろくに通じない状態で、「あー、このままぼろぼろになって私は死んでいくんだわ。私が死ねば、今私のお酒で苦しんでいる家族は楽になるわ」。そんなことを考えてしまうんです。

その考え方はとても間違っています。どの家族もそんなことは望んでいません。でも、脳を狂わせる、考え方を狂わせる、お酒を飲むこと以外何も考えることができないっていうお酒の作用が、そういうふうに死との間の境界線を曖昧にしていくんです。実際に首をつったり、手首を切ったりということはしませんでした。ただ漠然と、とても気の長く苦しい、自殺に近いことを続けていたという状態です。

私の主人のお父さんもアルコールで亡くなりました。みていただいていた脳神経外科の先生に「アルコールを飲みすぎて肝臓が悪い」と言われてお酒をやめた後で、「もういいでしょう。大丈夫です。肝数値も下がりました。飲んだ方が調子いいのではないですか」と言われてお酒を飲んで、そのまま亡くなりました。

普通の内科とか、精神科以外の先生方に、アルコールが、依存症という問題になってしまった場合には、もう飲んではならないということ、あるいは専門病院や行政につなげていただくということを、ほんの少し知っておいていただきたいんです。

知事

たまたまアルコール依存症だったという方の話が続きましたけれども。でも、今話を聞きながら、ふと気づいたことがあります。断酒会に入ってらっしゃるということによって、皆さん今その非常に厳しいぎりぎりのとこから救われているわけですよね。

これ吉田さん、こういう同じ状況に陥って、非常に苦しい人、やはり同じ苦しみを持った人たちが一緒に集まって、そして支え合うという力の中で、絶望の淵から立ち直ってくるという。そういうことってあるってことですよね。

吉田院長

そのとおりだと思います。大事なことだと思います。一人じゃない。そういう状態では、世の中で一番俺は不幸だというような思いになってしまって、孤独感がどんどん進んでいく。断酒会で同じ悩みを話したり、いろいろな相談をしたりということがお互いにできるというのは、非常にいい環境だと思います。

もう一つ、なかなか他の科の先生の理解がなくて、いったん肝機能が治まったら、少しぐらいいいんじゃない、百薬の長と言われるから飲んだっていいんじゃない、くらいのことをおっしゃる。たいへんな間違いであります。あるいは、先生の中には「そんなことしたら体壊すよ、そんなことしたら周りに迷惑かけるよ」と、説教してやめさせようとする考えが広がっている。これは無意味。だって、病気の症状なんだから、悪いなんて誰だってわかっていること。いいことをしているとは誰も思ってない。それを何となく説教して、そして名台詞を言ったからこれでやめてくれるだろう、みたいなことを思っていることは大きな間違い。

やはり、最初のころはアルコールの専門できちんとした行動制限をして、そしてお酒をしばらく中断して、そしてその後、自助グループ、そういった断酒会などでみんなでやっていく。一人だと、どうしても意志が弱い中でやってしまうことを、みんなで揃っているとその中でうまくやっていく、というのが現状だと思います。

知事

同じ医師として、松井先生いかがですか。

松井委員

確かに、お酒をやめろと言うことはありますけれど、そのやめ方とか、そういうことについてはあまりよくわからないので、私は港南区ですから、芹香病院とか、あの辺りをかなりご紹介しています。

僕も18、19の頃、いろいろ悩んで自殺しようとしたことがあります。でも、できませんでした。なぜかというと、怖くてできなくなっちゃったんですね。睡眠薬を飲んでガスをひねったんだけれど、これで死んじゃうんだと思ったら怖くて、全部開けっぱなしにして、結局寝ただけで生きてきましたけれど、そういうことを思っています。

先ほど「うつ病はがん」と言っていましたけれど、『死にいたる病』ってキルケゴールという人が絶望について哲学で書いていますよね。そういうのも読んだりしていました。本当に自己嫌悪で、どうしようかと思ったときに、いろいろ本を読んでいるうちに、ジャン=ジャック・ルソーという人の本に当たったんですね、『告白』という本。それを読んで「あ、そうなんだ」と思ったことがあるんです。

それは、「自分でいい」ということなんですね。もてなくたって、勉強ができなくたっていいんだ。何でも僕らしい、自分らしければそれでいいんだということに気がついたんです。それからは、さばさばとして生きているといいますか、淡々として生きているっていうんでしょうか。自分は人からどんなにばかだと言われようが、どんなに非難されても僕は自分で生きていく。自分らしさが出ればいいと、そういう生き方に変わったんですけれど、そういうふうになっていただければ意外といいんじゃないかなと。ちょっと医者らしからぬかもわかりませんけれど、僕はそういう感じで生きてきました。

知事

桃田さんはナースとしていかがですか。こうやって同じ患者さん同士のこういうふれあいの中で、ぎりぎりのところから救われるということもあるだろうし、ナースとの対話の中で、そういうことを乗り越えていくこともあるだろうし。どうですか。

桃田委員

今お話をお聞きしていまして、やはり人とかかわりを持つとか、それからお酒を好きな方たちがお酒をやめて会を持って、その中で自分の悩みを打ち明けるというのは、とても私は大事なことだと思います。

私ども看護職も、仕事に行き詰まって心療内科にかかって、多くの薬を飲んでふらふらになって、自殺を選ぶ人もいます。

それは、みんな仲間ですから、仲間がやはりしっかり見守って支える。私は今日、自殺をしなくてよかったというお話をお聞きしまして、こういう会が私は多くの人に知っていただけると、気持ちを開いて生きていけるんじゃないかなと思いますし、私どもも看護職として、自殺防止の方たちのキャンペーンみたいなものを協会としてやっていけたらというふうにも思っております。よろしいでしょうか。

知事

ありがとうございました。今日は医療の問題が割と中心になってきました。医療のあり方が変わっていくと、実は結構救える部分もあるのかもしれない。というとともに、さっきの電話もまさにそうでしたけれど、お医者さんにかかるっていう前に、やはり誰か、診療までいかなくても、誰かに聞いてもらうといったときに、それがある種の治療行為に近い形っていうものが実は生まれてくるのかもしれない。

それをやればすべてが救われるという、そう簡単なものじゃないけれども、でも何かそういうものが実はあるのかなんていうことを、ちょっと皆さんと話をしながら感じてきたところなんですけれどね。

ここまでの議論を踏まえて、たとえば、私は今、行政を預かる立場になっていますけれど、こんなことをやってくれというようなことがもしあれば、いかがですか。

参加者

知事、今日はこういった場をつくってくださって、ありがとうございます。そして、山下さん、自殺について発言してくださって、本当にありがとうございます。横須賀市で市議会議員をしております、藤野秀明といいます。

10年前に恋人を自殺で亡くして、その弔い合戦みたいな気持ちで、自殺対策の仕事をするために政治家をしています。全国の地方議員でつくっている、「地域の自殺対策を推進する地方議員有志の会」の立ち上げも行いました。知事から具体的な提案があればということだったんですが、1点、具体的なこととして予算の提案をさせてください。

2006年に、ここにもいらっしゃる多くの皆さんの力で、自殺対策基本法を国会で成立させることができたのですが、本当に全国の市町村の財政が厳しい中で、自殺対策への取組みができずにきました。

それが、平成21年度に国が補正予算で「地域自殺対策緊急強化基金」をつくって、100億円しかないのですが、各都道府県を通じて全国の市区町村に、10分の10国の負担で、つまり一般財源の負担なしで、市区町村が自殺対策をすることができました。これで本当に全国で少しずつ自殺対策が進んできました。

たとえば、僕が暮らしている横須賀市では、自殺未遂をされた方々、救急救命センターに運ばれた方々を、保健所の保健師さんたちが、アフターケアというのでしょうか、ずっとその後も追いかけて生活支援をする。あるいは、先ほどの知事のお話にもあった一般のかかりつけ医の方と精神科のドクターが、かなりお互いに交流をしている「GP連携」というのをやっていたりする。

こういうことができているのも、「地域自殺対策緊急強化基金」というのがあったからです。ただ、これは3年間の限定の予算であるために、今年度いっぱいで終わってしまいます。横須賀市はこういう取組みで成果が出てきて、彼女が亡くなった年には100人台で自殺が続いていたのが、今80人台でようやく下がってきていると。

そこで、今年度いっぱいで終わってしまうこの緊急強化基金を、ぜひ知事から国に対して継続をするように強く要望をしていただきたいんです。これをやると、本当に全国で多くの自殺対策に取り組んでいる仲間たちが助かると思います。そして、もし仮にこの要望が国に対して通らないときも、神奈川県だけは、県独自の財源で市町村を見ていただきたいというふうに願っています。よろしくお願いいたします。

参加者

こんばんは。神奈川生活支援相談センターのカワイと申します。自殺の要因の中で大きな割合を占めるのは、やはり経済的要因です。私たちは神奈川県から委託を受けて、多重債務者など、借金でお困りの県民からの相談を年間1,000件ほど受けています。自殺対策とも密接に関連するものだと思いまして、参加をさせていただきました。

自殺の対策は、やはり一律的な対応では難しいと思います。多重債務、自宅の家賃が払えないなどの生活苦という不適応の状態をきっかけに、個別に支援が必要だと考えています。私どものセンターの相談体制は、そのモデルの一つになるのではないかと思って、ちょっとご紹介をさせていただきます。

先ほど、事務局のA3版資料の取組みの「7 社会的取組み、環境整備」の中で、多重債務者等生活再建相談とありますのが、私どものやっている相談です。通常、借金の相談というのは、受け付けた窓口が法的な整理をしておしまい、ということになるかと思うんですけれども。また債務者本人が相談をしてこないと、なかなか相談窓口には結びつきません。ただ、私どもの相談の特徴は、法的な解決で終了とするのではなくて、借金によってうつになったり、傷ついた生活を立て直す援助まで継続的に行っています。

具体的には、初回では、法律家と生活支援相談員の2人体制で面接を行います。その後必要に応じて、生活相談によるカウンセリングスキルを使った、我々にはカウンセラーも相談員としておりますので、それを使った面接を継続的に行って、家計改善を目指した生活全般の問題を取り上げ、成果をあげています。

家計に黄色信号が点滅したときに相談すると、傷口が大きくならずに済みます。まして、自殺という最悪の結果を避けることができると考えています。そのため、我々のセンターでは、家族や周囲の方が困っている場合でも相談を行っています。ただこの相談機関も、改正貸金業法の完全施行後、債務関連の相談は減っています。ただ、住宅ローンを抱えた家族の相談ですとか、家族関係が複雑に絡んだ重い相談は、引き続きあります。

当センターでも、やはり自死遺族の方の相談が実際にございます。このような相談に対応できる窓口はほとんどありませんけれども、当センターでは、家族の相談にも応じて、生活再建に取り組む援助を行っています。

ただ、いろいろ抱えている問題もありまして、私の前に発言された方もおっしゃっていたんですけれども、これも基金で開かれている窓口ですので期限付きです。1年ごと、我々は委託を受けています。ですから、今年度でこの基金が終わると聞いておりますので、続くかどうかということが一つとても心配です。

もう一つ、県民への広報が非常に不足しているんですね。県のたよりなどに載せていただくと、たくさん相談が来るんですけれども、それがないとなかなか来ないんですね。だから、知らせればたぶんニーズはあるということはわかっているので、我々と相談員60名体制で相談を受けております。行政に何かお任せということは我々は考えていません。民間の市民力がすごく大きな力を発揮すると思っていますので、全員参加社会を我々目指すべきだと思っています。行政と手を組んで、持続した活動ができることを目指しています。 よろしくお願いします。

知事

今の自殺の緊急強化基金、これについては神奈川県としても継続するようにということを、国に毎年要望しているところでありますので、これはしっかりと今日の成果として、継続を要求していきたいと考えています。まだまだ対策で、これは県がやってくれということ、最後に一つだけどうですか。

参加者

はじめまして。匿名希望の者です。金融のことについてなんですけれども、私今テレホンアポイントの業務をやっていまして、お客様に勧誘の仕事をやっています。名前は出せないんですけれども、大手の有名な金融会社さんです。

こちらで会社向けのローンがあります。昨年の8月から始めているんですけれど、特に連帯保証人がいらなくて、1万円から250万円まで。銀行ほど審査が厳しくなく、だいたい早ければ即日、遅くても、断定しちゃうとかなりまずいんですが、1週間から2週間、1カ月ぐらいで、簡単な審査で連帯保証人なしで250万円まで借りられるというサービスを大手金融会社さんがやっています。もし担保がある場合ですと、最大で1億円まで、こちらご融資可能な担保ございますので、宣伝になってしまうんですけれども、よろしくお願いいたします。たぶんこれでお金を借りられると、すぐに立ち直る中小企業さんとか、救われる方はたくさんいらっしゃると思うので、よろしくお願いいたします。

参加者

横浜のシミズと申します。具体的な話がいろいろありましたけれども、最初の方に出ていました保証人の問題、それから企業のリストラの問題、その辺のところにかなり原因があるんじゃないかと私は思いますので、その辺のところを何とか、県の方で少し動ける体制を取ってほしいと思います。

それから、要はうつ病になってからということじゃなくて、ならないような社会にするためにも、今の施策をぜひお願いしたいと思います。以上です。

知事

時間がなくなってしまったんですけれど、今日ずっと議論を聞かれて、山下さん、どんなことを感じられましたか。最後に全体を通して。

山下委員

いろいろな話を聞いていまして、私の周りにもそういえば自殺して亡くなった方が何人もいたなと。私の小学校時代の同級生も一回自殺を試みて、またそのときかかわったんですけれども、「山下君、生きていてよかった」って。その手紙は、私の机の上に今でも置いています。なぜかというと、うちの学生の中でも、特に女性に多いんですけれど、うつ病が多いんですよ。そういう彼女たちに見せるためですね。ですから、私の周りでもそういうケースがいろいろあったなということを感じました。

もう一つ、やはり人生って失敗や挫折はつきものですよね。私もそうですけれども、みんなそんなに強くないですよね。どこか私たちも知らないうちに人を傷つけたり、他の人もいろいろなことで傷ついている。

そういうときに、やはりちょっと誰かの力とか、あるいは仲間といったものが貴重な役割を果たしていくんだなと。そこでもう一つ心配なのは、今の若者はなかなか友達がいない。コミュニケーションも取れなくなった人がいますよと。

そうすると、これからますます彼らが年を取ったときに、増えていく可能性があるんじゃないか。そういうところに対して、スポーツというものが何かお役に立てるんじゃないか。スポーツというと、勝ち負けをすごく気にされますけれど、今日お配りさせていただいた資料にも書いていますが、勝ち負けじゃない。気持ちよく仲間と一緒に体を動かす、汗をかく。私はこれが、限られているけれども力になっていけるんじゃないかと思っています。

「ストップ・ザ・いじめ」の運動をしていますけれども、はっきり言って今の社会の中でいじめがなくなることはないと思っています。子どもだけじゃなく、大人の世界でも。 でも、そういうときに、いじめられた人、傷ついている人に対して、周りの人が思いをいたして気遣って、言葉かけて、そういう社会がやはり健全な社会なんじゃないかな。それで、やはり孤独な人、独りな人、それを少しでも減らしていくということが大事じゃないかと思っています。

先ほどの話もありましたけれども、まずこの自殺に対する対策を取っていただきたい。しかし、そこで終わるのではなくてもう一つ。自殺を試みる予備軍が10倍いるという話です。ですから、そういう意味では、そういううつにならないように、心の不健康にならないように、いのちが輝くように、ぜひもう一歩踏み込んで、次の段階として取り組んでいただきたい。

それから、話を聞いていまして、やはりその中には我々一人ひとりが気づいてあげなければいけないこと、県の力がないとできないこと、県でもできないこと、あると思うんです。今日この対話がスタートで、お願いするだけではなくて、我々一人ひとりも周りに広げていきながら、できることからやっていかなきゃいけないなと思いました。

知事

ありがとうございました。今回の対話の広場は試みということで、こういうふうにやらせていただきました。しかし、多くの発見もあったと思うんですね。

ツイッターからも実はいろいろきているんですが、ご紹介する場がなくなって申し訳なかったです。さっきの「派遣は助からないのか」と、こういうツイッターがきていました。今日は、連帯保証の問題も出ていましたけれど、経済のあり方について今日はあまり深く議論ができなかった。次の課題にしたいと思いますね。そういった問題に本格的に取り組んでいかなきゃいけないということはある。

今日ある程度浮き彫りになったのは、先ほども言いましたけれども、医療の体制というものの中で、実はもっときめ細かいことができていけば、かなりの人が実はそこで救われる可能性があるんだということ。これは一つ、やはり我々が真剣に考えたいなと思う大きなテーマでした。

そのために先ほどの電話については、「電話代がネックなのか」というツイッターもきていましたけれども、もし電話代がネックになるならば、これがフリーダイヤルになって、どこかに自由に相談ができる窓口があれば、そういうことによってもしかしたら1人でも思いとどまる人が出てくれば、それは非常にありがたいことだと思う。そういうことはやはり考えていかなければいけないなと思いました。

それと、断酒会という話も、やはりこういう支え合いというか、同じ痛みを知った人たちが集まることによって、何かそこから回復していくきっかけをつかめるものなんだなということ。じゃあ、こういうことのあり方というのはどうなのかなということをもっと考えるということも、一つの課題かなと思いましたね。

それとともに、先ほど「私は自殺をしました」と。でも「助かってよかったです」という言葉って、やはり自殺をする瞬間というのは非常に感情的になっていて、お酒の勢いがあったりすることもあるかもしれないけれども、行ってしまったら終わっちゃう。そこから帰ってきた人が、「生きていてよかった」って言ってくれることは、非常に大きな強いメッセージかなと思いますね。

しかし、こうやって皆さんとともに話しながら、自殺というむしろ重いテーマではありますけれども、考える、話し合うということはまず第一歩かなって思いますね。

だから、こういうことをまた続けていきたいと思っています。そして、今日ありました経済的な問題、経済のあり方がどうあるべきかということについては、また次の宿題としたいと思います。

それから、山下さんから出ていましたスポーツ。そういうものによって実は自殺をこんなふうに防いでいけるんだということなんだけれども、次なる大きな課題となって残ってきます。またこういうことを続けたいと思っていますので、ぜひよろしくお願いしたいと思います。今日は第1回目の対話の広場、ありがとうございました。

このページに関するお問い合わせ先

このページの所管所属は政策局 政策部情報公開広聴課です。