(表紙) 神奈川県 ともに生きる社会かながわをめざして 障がいのある方への差別解消に関する事例集 平成28年度「障害者週間のポスター」の神奈川県推薦作品(小学生部門)の絵 平成29年3月 神奈川県 (表紙裏) この事例集について  国連の「障害者の権利に関する条約」の締結に向けた国内法制度の整備の一環として、全ての国民が、障がいの有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現に向け、障がいを理由とする差別の解消を推進することを目的として、平成25年6月、「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(以下、「障害者差別解消法」といいます。)」が制定され、平成28年4月1日から施行されました。  この障害者差別解消法では、差別を解消する措置として、行政機関や事業者については障がいのある方への「不当な差別的取扱いの禁止」、「合理的配慮の提供義務(事業者は努力義務)」が示されています。  しかし、障害者差別解消法では、「何が差別的取扱いになるのか」、「何が合理的配慮の提供になるのか」について、具体的な記載がされていません。そこで、差別的取扱いや合理的配慮の提供について、事業者や県民の皆さんが、実際に障がいのある方と接する際の参考資料としていただくため、アンケート調査を実施し、ご回答いただいた内容をもとに、この事例集を作成しました。  同じ障がいの種別や、同じような事例であっても、それぞれの方の状態や症状、ニーズは、一人ひとり違い、また、それぞれの場面によって違いますので、同じ対応をするのではなく、柔軟な対応が必要です。この事例集の事例は、あくまでも一つの目安ですが、事業者や県民の皆さんの対応が、障がいのある方に対する差別的取扱いとならないように、また合理的配慮の提供が適切に行われるように、この事例集が皆さんの参考としていただけることを期待しております。  本県としても、障害者差別解消法や、平成28年10月に策定した「ともに生きる社会かながわ憲章」に関する取組みを進め、「誰もがその方らしく暮らすことのできる地域社会の実現」を目指してまいります。 (目次) 各ページタイトル ページ番号 掲載事例について 1 視覚障がいのある方 2 聴覚障がいのある方 3 盲ろう(視覚と聴覚の両方に障がいがある)の方 4 肢体不自由のある方 5 内部障がいのある方 6 知的障がいのある方 7 発達障がいのある方 8 精神障がいのある方 9 難病を原因とする障がいのある方 10 他にこんな対応をすることも考えられます 11 障害者差別解消法について 13 障がい者差別に関する相談について 15 「ともに生きる社会かながわ憲章」 16 (1ページ)  掲載事例について  この事例集に掲載している事例は、差別的取扱いや合理的配慮の提供について、障がいのある方やそのご家族、支援者、民間事業者の皆さんを対象としたアンケート調査をもとに作成しました。  実際にアンケートにご回答いただいた皆さんは、「こんなことがありました」の事例を障害者差別解消法の「差別的取扱い」として、「このような対応もできたのでは?」の事例を障害者差別解消法の「合理的配慮の提供」として捉えています。  しかし、この事例集の事例は、あくまでも一つの目安です。  「こんなことがありました」の事例のような対応のみをしなければ、差別的取扱いに該当しない、「このような対応もできたのでは?」の事例のような対応さえしていれば合理的配慮の提供がなされているというわけではありません。  同じ障がいの種別や、同じような事例であっても、それぞれの方の状態や症状、ニーズは、一人ひとり違い、また、それぞれの場面によって違いますので、同じ対応をすれば良いということではなく、障がいのある方などからきちんと話を聞き、話し合ったうえで、負担が重すぎない範囲で対応することや、場合によっては別の方法をさがすなども考えられます。  障がいのある方一人ひとりから、お話を聞いて、それぞれの方、場面ごとに判断し、柔軟な対応をしてください。   (2ページ) 視覚障がいのある方  眼の不自由な方のことを、視覚障がい者と呼んでいます。そして、視覚に障がいのない方のことを「晴眼者」と言います。  視覚障がい者と言っても、全くみえない方(全盲)から光を感じる方(光覚)、メガネなどで矯正しても視力の弱い方(弱視)、見える範囲の狭い方(視野狭窄)などさまざまです。 こんなことに気を付けて □ 慣れていない場所を一人で移動することが難しい方が多くいます。 □ 外出時は、白杖を使用する方(左右に振った杖の先が、物や壁に当たることで、足元の安全を確認したり、歩く方向を修正します。)もいます。また、視覚障がいのある方でも杖を使用していない方もいます。 □ 視覚からの情報が得にくいので、音声や手で触ることなどで、情報を得る方もいます。 □ 文字の読み書き:文書を読むことや、書類の決まった場所に文字を記入することが難しい方が多くいます。 こんなことがありました 窓口対応  代筆をする母親と一緒に、書類提出のために窓口に行ったら、対応した職員が「代筆はできません!」ときつい口調で言い、窓口から離れて行ってしまいました。規則で代筆できない場合でも、穏やかに話してほしかった…。 このような対応もできたのでは?  窓口で対応する場合、単に書類を渡して終わりにするのではなく、必要に応じて書類の代読、規則などで禁止されていない場合を除き、代筆を認めています。また、代筆できない場合も、理由などを丁寧に説明しています。   こんなことがありました 買い物・飲食  視覚障がいがありますが、お店に支援者と一緒に入ったら、お店の方が、お客である私ではなく、一緒に行った支援者ばかりに向かって話しをしていました。 このような対応もできたのでは?  視覚障がいのある方には、メニューなどについて必要に応じて、口頭で説明をしています。また、クロックポジション(※3)でテーブルの上の配置などを説明しています。 ※3:アナログ時計の文字盤の数字の位置を用い、視覚障がい者に対して、物の位置を説明する方法です。 (3ページ) 聴覚障がいのある方  耳の聞こえない方、又は聞こえにくい方を聴覚障がい者と呼んでいます。いっぽう、聴覚に障がいのない方のことを「健聴者」と言います。  身体障がいでも、聴覚に障がいのある方は、外見で判断できないので、周囲の方に障がい者と気づいてもらえないことが多いです。また、周囲の人と音声によりコミュニケーションすることが困難なため、なかなか自分のことを理解してもらうことができません。 こんなことに気を付けて □外見からは聞こえないことが分かりにくいため、あいさつをしたのに返事をしないなどと誤解されることがあります。 □駅、空港や建物の放送などの音声による情報を得ることが困難ですので、文字や記号などの視覚による情報が必要です。 □コミュニケーション手段は手話、筆談などいろいろあり、その人の聞こえにくさの程度や聞こえなくなったまたは聞こえにくくなった年齢により違います。 □補聴器をつけている方もいますが、補聴器で声を大きくしても、明瞭に聞こえているとは限らず、相手の口の形を読み取るなど、視覚による情報で話の内容を補っている方もいます。 □手話を使って生活している聴覚障がい者には、日本語の読み書きが苦手な人もいます。 こんなことがありました 医療  病院に行った時に、お医者さんに「聞こえないので筆談してください」とお願いしたのに、筆談してくれませんでした。 このような対応もできたのでは?  病院では、受付で聞こえない方がいらしたら、看護師などが筆談や簡単な手話で対応しています。また、歯科診療所では、治療いすに筆談がしやすいように、筆記用電子表示板を取り付けています。   こんなことがありました 交通機関の利用・旅行  聴覚障がい者だけで観光ツアーの申し込みをしたら、健聴者と一緒でないと申し込みは受け付けられませんと言われました。 このような対応もできたのでは?  聴覚障がいのある方からの旅行の申し込みがあった場合、健聴者の同伴が必要かどうかについて、障がいのある方ときちんと話し合いを行い、判断をしています。なお、必要に応じて、添乗員がマイクで説明の後に、聴覚障がいの方向けに、マイクで説明した内容をホワイトボードで書いて説明をしています。 (4ページ 盲ろう(視覚と聴覚の両方に障がいがある)の方  「盲ろう者」ということばを聞いて、まず何を思い浮かべるでしょうか?「ヘレンケラー女史」が有名です。「ろう」は老人のろうではありません。耳が聞こえないことです。全く見えなくて聞こえない「盲ろう」の様子を、ある重度盲ろう者は、「光も音も届かない深い海の底で、箱の中に閉じこめられた状態のようだ。」と表現しています。  全国盲ろう者協会では、「身体障害者手帳に視覚と聴覚の両方の障がいが記載されている方」を「盲ろう者」としていますが、日本では、社会的にも法的にもまだ「盲ろう者」の定義が確立していません。  身体障がいの種類と等級を規定している現行の「身体障害者福祉法」では、「視覚障がい」および「聴覚障がい」はそれぞれ別個に規定されていますが、両方の障がいをあわせた「盲ろう」に関する規定はありません。 こんなことに気を付けて □一口に「盲ろう」といっても、その見え方や聞こえ方の程度や障がいの発生の順により様々なタイプがあります。 □盲ろう者は、その方の生活環境や障がいの程度や障がい発生時期により、通訳の方法がひとりひとり異なるのが大きな特徴です。 □一般的には、大きく分けて「手話」「点字」「手のひら書き」「音声」「筆談」「指文字」「その他」に分類でき、盲ろう者は、これらの中から一つ、あるいは複数の方法を組み合わせて会話をしています。 手話通訳者・要約筆記者・盲ろう者通訳・介助員の派遣について  神奈川県聴覚障害者福祉センターで、手話通訳者・要約筆記者の派遣事業、盲ろう者通訳・介助員の派遣事業を実施しています(いずれも有料)。  また、番組等の映像に手話を付ける場合も(手話挿入事業、有料)、神奈川県聴覚障害者福祉センターにご相談ください。  詳細は神奈川県聴覚障害者福祉センターのホームページ(http://www.kanagawa-wad.jp/)でご確認ください。 (5ページ) 肢体不自由のある方  肢体不自由のある方の中には、上肢や下肢に切断や機能障がいのある方、座ったり立ったりする姿勢保持が困難な方、脳性まひの方などがいます。移動については、杖や松葉杖を使用される方、義足などを使用される方、自力走行や電動の車いすを使用される方などがいます。  また、病気や事故で脳が損傷を受けた方の中には、身体のまひや機能障がいに加えて、言葉の不自由さや記憶力の低下、感情の不安定さなどを伴う方もいます。 こんなことに気を付けて □下肢に障がいのある方では、段差や階段、手動のドアなどがあると、一人では進めない方がいます。また、歩行が不安定で転倒しやすい方もいます。車いすを使用されている方は、高いところには手が届きにくく、床のものはひろいにくいです。 □手にまひがある方や、脳性まひで不随意運動を伴う方などでは、文字を記入できなかったり、狭いスペースに記入することが困難です。 □脊髄を損傷された方では、手足が動かせないだけでなく、感覚もなくなり、周囲の温度に応じた体温調節が困難な方もいます。 こんなことがありました 買い物・飲食  人気の飲食店に、車いすを使っている男性と入ろうとしたら、お店に段差があったので、お店の方に手伝いをお願いしましたが、『今混んでいるから、車いすはねえ』と入店させてもらえませんでした。 このような対応もできたのでは?  店にはスロープがないのですが、店員が協力し、車いすを持ち上げ、段差を乗り越えました。店内が混雑していたのですが、車いすの方でも、わずかな配慮で、他のお客さんと同じように食事をしていただくことができました。   こんなことがありました 施設・建物・住宅の利用  工事の見積もりを取ろうとしたら、うまくしゃべれなかったため、「言うことがわからないからダメだ」と断られました。 このような対応もできたのでは? 工事の見積もり依頼があったが、電話では依頼者の話がうまく聴き取りができなかったので、実際に現場を訪問し、依頼者と一緒に現場を見ながら、わかるまで話を聴いて対応をしました。 (6ページ) 内部障がいのある方  内部障がいとは、内臓機能障がいであり身体障害者福祉法では、心臓機能、呼吸器機能、じん臓機能、ぼうこう・直腸機能、小腸機能、ヒト免疫不全ウィルス(HIV)による免疫機能、肝臓機能の7種の機能障がいが定められています。  内部障がいがある方の特徴として、外見からは障がい者と分かりにくいということがあります。そのため、内部障がいを表すマーク(ヘルプマーク等)をかばんなどに付けている方もいます。  また、内部障がいのある方の多くが、日常生活においてさまざまな誤解を受けることがあります。例えば「障がい者用の駐車スペースに車を停めていると警備員に注意される。」、「疲れやすいので優先席に座ると冷ややかな目で見られる。」などです。 こんなことに気を付けて □ 障がいのある臓器だけでなく、全身状態が低下しているため、体力がなく、疲れやすい状況にあり、重い荷物を持ったり、長時間立っているなどの身体的負担を伴う行動が制限されます。 □ 呼吸器機能障がいのある方では、たばこの煙が苦しい方もいます。 □ ぼうこう・直腸機能障がいで、人工肛門や人工ぼうこうを使用されている方(オストメイト)は、排泄物を処理できるオストメイト用のトイレが必要です。 こんなことがありました 施設・建物・住宅の利用  オストメイトですが、ストーマ装具を装着していれば、問題なく入浴できますが、入浴施設で入浴を拒否されました。 このような対応もできたのでは?  入浴を希望される障がいのある方は、衛生上、何ら問題はないと判断し、入浴していただきました。障がいのある方には、ストーマ装具等が適切についているかどうかなどの状況を、口頭で確認し、周りのお客様から問い合わせがあった場合は、そのことをお伝えしています。   こんなことがありました 施設・建物・住宅の利用  障がい者用の駐車スペースへ駐車しようとしたら、駐車場の係の方に駐車してはだめだと言われました。内部障がいであるため身体障害者手帳を見せましたが、車いすの方専用とのことで、車を動かしました。 このような対応もできたのでは?  障がいがあっても、外見からは障がい者と分かりにくい方がいます。体力がなく疲れやすかったり、重い荷物を持ったりすることが、身体的負担を伴う場合がありますので、駐車場の利用は、一定のルールを設けていますが、障がいのある方の話をよく聞き、柔軟な対応をしています。 (7ページ) 知的障がいのある方    知的障がいのある方は、発達時期において脳に何らかの障がいが生じたため、知的な遅れと社会生活への適応のしにくさのある方です。常に同伴者が必要な方もいますが、会社で働いている方も大勢います。また、複雑な事柄や抽象的な表現を理解することが難しい方もいます。 こんなことに気を付けて □ 複雑な話や抽象的な表現は理解しにくい方もいます。 □ 人にたずねたり、自分の意見を言うことが苦手な方もいます。 □ 漢字の読み書きや計算が苦手な方もいます。 □ 一つの行動に執着したり、同じ質問を繰り返す方もいます。 □ 環境に適応することが難しいため、不安になったり、落ち着かなくなったりする方もいます。 こんなことがありました 行事  イベントに参加しようとしたら、声を出したり、他人に迷惑をかけたりすることはないかと聞かれ、そのような場合が発生した場合は退室してもらうことを了承してくださいと言われました。 このような対応もできたのでは?  途中で声を出してしまう障がい者も一緒にイベントを楽しんでいただくように、事前に出演者の了解を得たり、また、開演5分前に会場にその旨のアナウンスを流したりしています。   こんなことがありました 雇用  仕事でミスしてしまいましたが、誰もフォローしてくれませんでした。その後の上司の方からの聴き取りの際も、障がいに配慮してもらえず、退職することになりました。 このような対応もできたのでは?  仕事の説明をする時は、仕事内容のマニュアルを本人に渡すだけでなく、障がいのある方に合わせて、分かるように説明しました。また、本人から事情などの話を聞く時は、現場の上司だけではなく、本人の事をよく知っている方に同席してもらっています。 こんなことがありました 買い物・飲食  知的障がいがあるこどもが、店の中で商品を一人で見ているときに、店員さんが、ずっと後ろについて歩き、こどもが商品に手を触れないように邪魔をしていました。 このような対応もできたのでは?  特に、障がいのない方と対応を変えていませんが、買う前の商品を、乱暴に扱うなどのことがあった場合は、ご本人に「穏やかな声で、短く、わかりやすく」注意させていただいています。 (8ページ) 発達障がいのある方  発達障がいは、自閉症、アスペルガー症候群等の広汎性発達障がい、学習障がい(LD)、注意欠陥・多動性障がい(ADHD)、トゥレット症候群、その他これに類する脳機能の障がいで、通常低年齢において症状が発現するものです。 こんなことに気を付けて □ 外見から分かりにくいです。 □ 相手の言ったことを繰り返すときでも、相手が言っていることが理解できていないこともあります。 □ 遠回しの言い方やあいまいな表現は理解しにくい方もいます。 □ 相手の表情・態度やその場の雰囲気を読み取ることが苦手な方もいます。 □ 順序立てて理論的に話すことが苦手な方もいます。 □ 関心あることばかり一方的に話す方もいます。 □ 落着きがないように見える方や、視線が合いにくかったりする方もいます。 □ 文字や文章を読むことができても、書くことが極端に苦手な方もいます。逆に、聞いて理解することができても、読むことが極端に苦手な方もいます。 こんなことがありました 学校  小学校の卒業式の練習の卒業証書の受け取りの際、子どもが緊張のため壇上にあがることができなかったところ、学校から式典への出席しないことや、名前の読み上げだけで受け取りを行わないこととすることを提案されました。 このような対応もできたのでは?  校長先生が壇上からおりて、子どもが壇上にあがるのを拒否した本人のところに行き、児童の席で卒業証書を渡しました。   こんなことがありました 医療  かかりつけのクリニックに行った時、一般駐車場が満車のため、車内で待つことが難しいこどもだということを説明し、身体障がい者用の駐車スペースに停めさせてほしいとお願いをしましたが、聞いてもらえず、とても困りました。 このような対応もできたのでは?  身体障がい者用の駐車場であっても、可能であれば状況により、他の障がいのある方の使用を認めています。また、待合室で待つことが苦手な人には、ご本人の過ごしやすいところで待っていてもらい、順番が来たら、呼びに行ったり、携帯電話等で呼び出したりしています。 (9ページ) 精神障がいのある方  精神障がいのある方は、統合失調症、そううつ病、うつ病、てんかん、アルコール中毒等の様々な精神疾患により、日常生活や社会生活のしづらさを抱えている方です。  適切な治療・服薬と周囲の配慮があれば、症状をコントロールできるため、大半の方は地域で安定した生活を送られています。 こんなことに気を付けて □ ストレスに弱く、疲れやすく、対人関係やコミュニケーションが苦手な方が多いです。 □ 外見からは分かりにくく、障がいについて理解されずに孤立している方もいます。 □ 精神障がいに対する社会の無理解から、病気のことを他人に知られたくないと思っている方も多くいます。 □ 周囲の言動を被害的に受け止め、社会生活のしづらさを抱えている方もいます。 □ 思春期の発病や長期入院のために、社会生活のしづらさを抱えている方もいます。 こんなことがありました 施設・建物・住宅の利用  不動産業者に物件の相談に行った時、精神障がいと聞くと、話を聴くことなく、断られてしまいました。 このような対応もできたのでは?  精神障がいの方でも、最初から断ることをせず、状況などの話をよく聞いて、細かく対応をしています。   こんなことがありました 雇用  仕事を頑張っていたのですが、仕事中に体調が悪くなることが多くあります。しかし、体調が悪くなっても、休憩することができず、体調が悪化し、職場に相談をしたのですが、仕事を辞めなければならなくなりました。 このような対応もできたのでは?  昼休みや体調が悪くなった時などに横になって休めるように、鍵のかかる個室等、休憩できる部屋を用意しています。 (10ページ) 難病を原因とする障がいのある方  原因が不明で、治療法が未確定、かつ後遺症を残す恐れが少なくない疾病のうち、国が指定をしているものを難病といい、中には、難病を原因とする障がいのある方がいます。  体調の変動が激しく、座ったり横になったりすることが多い方や、ストレスや疲労により症状が悪化しやすい方もいます。 こんなことに気を付けて □ 外見からはわからないため、電車やバスの優先席に座っても周囲の理解が得られないなど、心理的なストレスを受けやすい状況にあります。 □ 午前中は体調が悪かったとしても、夕方になると良くなることや、その逆など一日の中での体調の変動が激しい方もいます。また、ストレスや疲労により症状が悪くなる方もいます。 こんなことがありました 窓口対応  窓口が混雑をしていて、長い列ができていました。私は疲れやすく、長時間立っていることができないので、別の日に再度窓口に行くことにして、その日は帰りました。 このような対応もできたのでは?  立って長時間待っていただくことが難しい方は、その方の後ろの方に説明して、別の場所のいすに座って待っていただき、順番が来たら、担当者が呼びに行くなどの対応をしています。   こんなことがありました 雇用  私は病気のため、重たい物を持てない、立って行う長時間の作業ができないなどがあることを、就職希望先に説明を事前にしましたが、就職できませんでした。 このような対応もできたのでは?  病気のため、重たい物を持てない、立って行う長時間の作業などができない方は、そのような業務がない部署に配属するようにしたり、そのような業務については担当しないように配属部署と事前に調整をしています。また、忙しくなりすぎないように1週間単位での仕事の調整や、通院のための休日振替や休暇の取得など、勤務日の調整を行っています。 (11ページ) 他にこんな対応をすることも考えられます 窓口対応 待つことが難しい障がいのある方の順番を早くするよう、後ろの方に了承を得たうえで、順番を入れ替えて、待ち時間を短くしました。 視覚障がいのある方からの希望があったので、点字で明細書を発行しています。 知的障がいや、発達障がいのある方に、窓口で説明する際に、言葉や書類だけではなく、図や文字で書きながら、わかりやすく説明しています。 医療 歯科検診の時、じっと座ることができない発達障がいのある方に、待合室で歯ブラシを持つところから始めて、診察台で歯磨き、虫歯治療で使う器具を一つ一つ見せての説明など、半年程度かけ、段階的に治療ができるように対応しています。 病院の待合室が混雑していて、騒がしいとき、騒がしいところが苦手な障がいのある方は、別室で、待ってもらう対応をしています。 買い物・飲食 レストランのお客様で、手話で話をされている方がいましたので、料理と一緒に料理の説明を書いた紙もお渡ししました。 視覚障がいのある方が、お店にいらした時、売り場への案内や、商品選びをサポートしています。 電動車いすの方から、レジが通りづらいというご意見をいただきましたので、電動車いすでも通ることができるように、いくつかのレジの幅を広くしています。 公共交通機関の利用・旅行 バスに「筆談します」と表示をしており、希望があった時に、運転士が筆談するようにしています。 視覚障がいのある方が、駅を利用される際、慣れていない所、乗換が複雑な所、工事中などは、駅員が案内をしています。 障がいのある方がタクシーを利用される際、ご希望があれば、荷物を運んだり、玄関まで誘導をしています。 電車が急に止まった時、隣に座っていた聴覚障がいがある方が、放送が聞こえず、状況がわからないことなので、スマートフォンで状況を文字で説明しました。 (12ページ) 行事 結婚式場の従業員が手話をマスターしており、聴覚障がいのある方が、披露宴に出席する際は、側について、手話で説明するようにしています。 年一回の防災訓練に、障がいのある方からの具体的な避難に関する話を聞く機会を設けています。 施設・建物・住宅の利用 スポーツ施設、文化施設等において、移動に困難のある障がいのある方を早めに入場させ席に誘導したり、車椅子を使用する障害のある方の希望に応じて、決められた車椅子用以外の客席も使用できるようにしたりしています。 視覚障がいのある方が、ホテルを利用する際、フロントの職員が、部屋まで誘導し、部屋の中の構造を説明しています。 学校 学校内で、肢体不自由のある生徒に対し、同じ学年全体を、肢体不自由の生徒が移動しやすい階にしました。 緊張のため、小学校入学式の際に不安を感じることが考えられる方がいましたので、「入学式当日の行動を知っていた方が、本人が落ち着くのでは」と、数日前に、下駄箱や教室、体育館の場所を確認していただきました。 視覚障がいのある方が、博物館、美術館に訪れた時に、可能な範囲で、展示物を触って観察鑑賞してもらったり、学芸員が説明したりしています。 雇用 職場に軽い聴覚障がいのある方がいますので、打合せが終わった後に必ず内容をまとめたメモを渡すなどして、内容の確認をしています。また、会議の資料などは、事前に渡すようにしています。 職場の避難訓練の際に、聴覚障がいの方は、放送が聞こえないので、避難訓練の放送内容をメモで書いて渡しています。 (13ページ) 障害者差別解消法について 「障害者差別解消法(※1)」ってどんな法律?  この法律は、障がいのある方もない方も、互いに、その方らしさを認め合いながら、共に生きる社会をつくることを目指しています。 ※1:法律の正式名称は「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」です。 「障害者差別解消法」では、どんなことを定めているの?  この法律では「不当な差別的取扱い」を禁止し、「合理的配慮の提供」を求めています。そのことによって、障がいのある方もない方も共に暮らせる社会を目指しています。 対象となる「障がい者」は?  この法律に書いてある「障がい者」とは、障害者手帳をもっている方のことだけではありません。  身体障がいのある方、知的障がいのある方、精神障がいのある方(発達障がいのある方も含みます。)、その他の心や体のはたらきに障がいがある方で、障がいや社会の中にあるバリアによって、日常生活や社会生活に相当な制限を受けている方すべてが対象です。(障がい児も含まれます。) 対象となる「事業者」は?  この法律に書いてある「事業者」とは、会社やお店など、 同じサービスなどをくりかえし継続する意思をもって 行う方たちです。  ボランティア活動をするグループなども「事業者」に入ります。 (14ページ) 「不当な差別的取扱いの禁止」とは?  この法律では、国・都道府県・市町村などの役所や、会社やお店などの事業者が、障がいのある方に対して、正当な理由なく、障がいを理由として差別することを禁止しています。  これを「不当な差別的取扱いの禁止」といいます。 「合理的配慮の提供」とは?  障がいのある方は、社会の中にあるバリアによって生活しづらい場合があります。  この法律では、国・都道府県・市町村などの役所や、会社やお店などの事業者に対して、障がいのある方から、社会の中にあるバリアを取り除くために何らかの対応を必要としているとの意思が伝えられたとき(※2)に、負担が重すぎない範囲で対応すること(事業者に対しては、対応に努めること)を求めています。  これを「合理的配慮の提供」といいます。 ※2:言語(手話を含む。)、点字、拡大文字、筆談、実物を示すことや身振りなどのサインによる合図、触覚など様々な手段により意思が伝えられることをいいます。通訳や障がいのある方の家族、支援者、介助者、法定代理人など、障がいのある方のコミュニケーションを支援する方のサポートにより本人の意思が伝えられることも含まれます。  雇用に関する差別的取扱いと合理的配慮の提供は?  「障害者の雇用の促進等に関する法律」により、雇用の分野における障がいを理由とする差別的取扱いを禁止、事業主に対して過重な負担を及ぼすこととなる場合を除き、障がい者が職場で働くに当たっての支障を改善するための措置を講ずること(合理的配慮の提供)が義務付けられています。  雇用に関する相談については神奈川労働局にご相談ください。 神奈川労働局 電話番号 045-650-2801(代表) ファクシミリ番号 045-650-2805 (15ページ) 障がい者差別に関する相談について  本県では、障がいのある方やご家族から、民間事業者等による差別的取扱いについての相談は、障害福祉課で相談を受け付け、その民間事業者を指導する権限を持った担当部署に引き継ぎ、対応します。  また、差別的取扱いや合理的配慮の提供に関する民間事業者からの相談も、障害福祉課で受け付けます。 障害福祉課 電話番号  045-212-0304 ファクシミリ番号 045-212-0304  なお、民間事業者については、障がいのある方との関係が分野・業種・場面・状況によって様々であり、求められる配慮の内容・程度も多種多様です。  そのため、「障害者差別解消法」の規定に基づき、各省庁が所掌する分野ごとに「対応指針」を作成しています。  「対応指針」には、民間事業者が障がいのある方に対し不当な差別的取扱いをしないこと、また必要かつ合理的な配慮を行うために必要な考え方などを記載しています。  内閣府のホームページ「障害を理由とする差別の解消の推進」に、各省庁の対応指針が掲載されていますので、民間事業者の皆様の日々の業務の参考にしていただきますようお願いします。    内閣府のホームページ「障害を理由とする差別の解消の推進」  http://www8.cao.go.jp/shougai/suishin/sabekai.html (16ページ) 「ともに生きる社会かながわ憲章」 この悲しみを力に、ともに生きる社会を実現します 平成28年7月26日、障害者支援施設である県立「津久井やまゆり園」において19人が死亡し、27人が負傷するという、大変痛ましい事件が発生しました。 この事件は、障がい者に対する偏見や差別的思考から引き起こされたと伝えられ、障がい者やそのご家族のみならず、多くの方々に、言いようもない衝撃と不安を与えました。 私たちは、これまでも「ともに生きる社会かながわ」の実現をめざしてきました。 そうした中でこのような事件が発生したことは、大きな悲しみであり、強い怒りを感じています。 このような事件が二度と繰り返されないよう、私たちはこの悲しみを力に、断固とした決意をもって、ともに生きる社会の実現をめざし、ここに「ともに生きる社会かながわ憲章」を定めます。 一 私たちは、あたたかい心をもって、すべての人のいのちを大切にします 一 私たちは、誰もがその人らしく暮らすことのできる地域社会を実現します 一 私たちは、障がい者の社会への参加を妨げるあらゆる壁、いかなる偏見や差別も排除します 一 私たちは、この憲章の実現に向けて、県民総ぐるみで取り組みます 平成28年10月14日 神奈川県 (裏表紙) 金澤翔子氏の書「ともに生きる」 神奈川県保健福祉局福祉部障害福祉課 横浜市中区日本大通1 〒231-8588 電話(045)210-4703(直通)