6 関係機関との連携 (1) 各機関の役割 ・市町村や地域包括支援センター等の関係機関は、それぞれ対応可能な範囲があります。 範囲を超えた対応は行うことができません。 ・また、事例によって関係機関の対応を依頼する場合があります。市町村が中心となる コアメンバー会議によって、大まかな方針を決定する際に、協力を依頼する関係機関 についても検討します。 (2) 虐待防止ネットワーク会議の開催 ・虐待防止ネットワークの位置づけや、参加者、協議事項などを明確にしておくことも 有効です。 ・13 ページの「川崎市高齢者虐待防止事業実施要綱」や「綾瀬市高齢者虐待防止ネット ワーク事業実施要綱」等、事前に要綱を制定し対応している市町村もあります。 綾瀬市高齢者虐待防止ネットワーク事業実施要綱 (趣旨) 第1条 この要綱は、高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律 (平成17年法律第124号。以下「法」という。)に基づき実施する高齢者虐待の 防止対策を推進するための連絡調整会議の設置等に関すること及び高齢者虐待の対応 について必要な事項を定めるものとする。 (連絡調整会議) 第2条 市長は、高齢者虐待の防止、早期発見並びに高齢者及び養護者への支援を行う ために必要な対策を推進するため、連絡調整会議を設置する。 (組織) 第3条 連絡調整会議は、地域包括支援センター運営協議会委員をもって組織する。 (協議事項) 第4条 連絡調整会議は、次に掲げる事項を協議する。 (1) 高齢者虐待防止対策の検討に関すること。 (2) 高齢者虐待の防止に関する啓発及び普及に関すること。 (3) 高齢者虐待に関する情報交換に関すること。 (4) その他高齢者虐待防止に関すること。 (会議) 第5条 会議は、原則として地域包括支援センター運営協議会会議に併せて開催するも のとする。 (通報等の窓口) 第6条 法第7条第1項若しくは第2項に規定する通報又は第9条第1項に規定する届 出の受理(以下「通報等」という。)並びに虐待を受けた高齢者の保護及び養護者の 支援等に関する事務を行う窓口は、地域包括支援センターとする。 (養護者の支援等) 第7条 地域包括支援センターは、日常の業務において高齢者虐待の防止を図るため、 介護保険サービスの利用の促進並びに保健福祉サービス及び地域資源に関する情報提 供を行うなどの養護者の支援を行うものとする。 2 地域包括支援センターは、高齢者虐待事例や虐待危惧事例の把握とその対応方法等 の検討を行う。 (安全確認及び保護) 第8条 地域包括支援センターは、法第9条第1項に規定する措置を講ずるものとす る。 2 法第9条第2項に規定する措置又は審判の請求は、地域包括支援センターと高齢者 福祉主管課が協力をして行うものとする。 (連携体制) 第9条 地域包括支援センターは、前2条に規定する支援等を行うため、別紙ネットワ ーク図を基本に関係機関相互の共通理解を図り、連携できる体制を整備するものとす る。 (チーム検討会) 第10条 地域包括支援センターは、個別の高齢者虐待事例に的確かつ迅速に対応する ため、個別のチ―ム検討会を設置するものとする。 2 チーム検討会の構成員は、介護保険事業者、医療機関、社会福祉協議会、民生委 員、警察署、弁護士及び消費生活相談員など(以下「関係機関」という。)とし、通 報等があった場合に、当該通報等に関連する関係機関を地域包括支援センターが招集 をし、チーム検討会を開催するものとする。ただし、関係機関が検討会等を開催する ときは、その検討会等をチーム検討会とすることができる。 3 チーム検討会を開催するときは、書面による通知等を省略することができる。 4 地域包括支援センターは、チーム検討会において法第9条第2項に規定する措置等 の必要性を判断したときは、速やかに高齢者福祉主管課に措置等の依頼をするものと する。 5 地域包括支援センターは、連絡調整会議にチーム検討会の実施状況を報告するもの とする。 (守秘義務) 第11条 連絡調整会議の委員及びチーム検討会の参加者は、職務上知り得た情報を漏 らしてはならない。 (庶務) 第12条 連絡調整会議の庶務は、地域包括支援センター主管課において処理する。 (委任) 第13条 この要綱に定めるもののほか、必要な事項は別に定める。 附 則 この要綱は、平成21年4月1日から施行する。 ・高齢者虐待が発生してから関係機関と連携体制を構築するのではなく、事例が発生す る以前の、普段から連携体制を構築することで、事例発生時にスムーズに対応するこ とができます。 ・高齢者虐待防止ネットワークは、各市町村の体制に沿ったものを構築する必要があ ります。 (3) 市町村と地域包括支援センターとの連携 ・高齢者虐待防止法では、高齢者虐待の対応は、市町村が行うこととされています。 ・なお、次の一部の事務を委託することができるとされています。 ○高齢者及び養護者に対する相談、指導、助言 ○高齢者虐待の相談・通報の受理 ○高齢者の安全確認 ○事実確認のための措置 ・高齢者の安全確認や事実確認のための措置の業務を、地域包括支援センターに委託を 行っているとしても、市町村は、地域包括支援センターに任せきりにしてしまうので はなく、最終的な虐待の有無等について認定を行うなどの、虐待の対応の主体は、あ くまでも市町村ですので、連携を取りながら、対応を行う必要があります。 ・厚生労働省マニュアルでは、次のように地域包括支援センターに委託できる業務内容 の一覧を整理されています。なお、それぞれの市町村と地域包括支援センターとの契 約内容によって違いがあります。 (4) 市町村と保健福祉事務所との連携 ・ 高齢者虐待の対応において、本人、家族へのアプローチをするために、市町村は、 保健福祉事務所における精神科嘱託医等による認知症相談や精神保健福祉相談を活 用し、医師による訪問相談や助言を得ることができます。 ・ また、高齢者やその家族に精神疾患が疑われた場合は、市町村他部署との協力だ けでなく、保健福祉事務所に対し、相談、同行訪問や個別ケース会議への出席を依 頼することもできます。 ・ なお、保健福祉事務所は、介護保険法上の実地指導を実施することができ、日常 生活の中で、家族が介護上引き起こしている虐待につながるような不適切な状況を 発見し、防止するための支援を行います。 ・ その他、保健福祉事務所は、市町村が開催する虐待防止ネットワーク等へ構成員 として参加している場合も多く、虐待の原因になりがちな「認知症」に関する正し い知識や「成年後見制度」の普及といった虐待防止の視点で、市町村を支援します。 関係機関との連携に関するQ&A Q.《施設のような構造を持った“居宅”》無届の有料老人ホームの類に含まれる高 齢者専用住宅(サービス付き高齢者向け住宅)などの、提供サービスや介護保険による 居宅サービスなどの実態が確認し難い構造になっている住宅において、管理人等によ る身体拘束が日常的に行われている疑いがあるが、どのように対応すればよいか。 A.〜市町村として可能な対応〜 老人福祉法に定める有料老人ホームに該当しないサービス付き高齢者向け住宅などに ついては、日本社会福祉士会のマニュアルで「養護者による虐待」として対応するこ とになっているので、市町村がその権限に基づき、立ち入り調査をすることが可能で す。また、要介護性の高い居住者は、当該住宅のサービス以外に介護保険による居宅 サービスを利用している場合が多く、その居宅サービス計画そのものに問題が見られ ることがあります。例えば、介護支援専門員がサービスの実態を把握できない状況で あったり、介護保険サービスの不適正な利用など、サービスが複雑である場合です。 市町村は介護保険法第23 条により保険者として確認を求めることを併用して、指定居 宅介護支援事業所や指定訪問介護事業所に対し事実確認をすることができます。 〜保健福祉事務所と連携した対応が必要な場合〜 上記のような方法で市町村として調査を実施しても、複数の高齢者の住居であり、 被虐待高齢者が特定できず、その高齢者の保険者が必ずしも当該住宅所在地の保険者 でない場合も多く、単独の市町村の対応では困難な場合もあります。そこで、県保健 福祉事務所が行使による介護保険法第24 条により、関係市町村と協働で不適切なサー ビスや虐待の確認などができる場合があります。 虐待に該当すると認められる事象 が発見された場合、当該虐待の解決をはかるとともに、居宅サービス提供の事業所が 行った不適切なサービスの提供や虐待の事実について、指定介護保険事業所として必 要な指導を行うこととなります。