4 面会制限 (1) 面会制限の概要 ・この制限は虐待を受け、保護措置を受けた高齢者の安全を図るため、認められる権限 です。 面会制限を実施するうえでのポイント ○特別養護老人ホームの措置及び養護委託を受けた高齢者を、市町村長又は特別養 護老人ホーム・養護老人ホームの施設長が虐待を行った養護者の面会を制限で きる。 ○契約による入所及び他のサービスによる分離保護は、虐待防止法において面会制 限の規定がないため、面会制限の必要がある場合は、市町村は保護の一環とし て、施設長及び管理者は施設管理権に基づき、面会を制限する。 ○面会制限を有効に活用するために、市町村と施設長・管理者等の連携が不可欠。 ○措置解除後も、面会制限が必要な場合は、施設だけに任せず、市町村の支援が必 要。 (2) 面会制限実施の法的根拠 ・高齢者虐待防止法第13 条では、特別養護老人ホームへの入所措置が採られた場合にお いては、市町村長又は養介護施設の長は虐待を行なった養護者について面会を制限で きると定めています。 高齢者虐待防止法 (面会の制限) 第十三条 養護者による高齢者虐待を受けた高齢者について老人福祉法第十一条第一 項第二号又は第三号の措置が採られた場合においては、市町村長又は当該措置に係 る養介護施設の長は、養護者による高齢者虐待の防止及び当該高齢者の保護の観点 から、当該養護者による高齢者虐待を行った養護者について当該高齢者との面会を 制限することができる。 老人福祉法 (老人ホームへの入所等) 第十一条 市町村は、必要に応じて、次の措置を採らなければならない。 一 六十五歳以上の者であつて、環境上の理由及び経済的理由(政令で定めるもの に限る。)により居宅において養護を受けることが困難なものを当該市町村の設 置する養護老人ホームに入所させ、又は当該市町村以外の者の設置する養護老人 ホームに入所を委託すること。 二 六十五歳以上の者であつて、身体上又は精神上著しい障害があるために常時の 介護を必要とし、かつ、居宅においてこれを受けることが困難なものが、やむを 得ない事由により介護保険法に規定する地域密着型介護老人福祉施設又は介護老 人福祉施設に入所することが著しく困難であると認めるときは、その者を当該市 町村の設置する特別養護老人ホームに入所させ、又は当該市町村以外の者の設置 する特別養護老人ホームに入所を委託すること。 三 六十五歳以上の者であつて、養護者がないか、又は養護者があつてもこれに養 護させることが不適当であると認められるものの養護を養護受託者(老人を自己 の下に預つて養護することを希望する者であつて、市町村長が適当と認めるもの をいう。以下同じ。)のうち政令で定めるものに委託すること。 ・このため、やむを得ない事由による措置で認められた他のサービスで分離保護を行う 場合(短期入所生活介護、小規模多機能型共同生活介護、認知症対応型共同生活介護) は、高齢者虐待防止法には面会制限は定められていません。 ・しかし、養護者と面会することによって生命・身体の安全や権利が脅かされる恐れが ある場合は、市町村が措置に付随することとして、養護者に対して面会できる状況で はないことを伝え、養護者を説得するなどで、面会を制限する方法があります。 ・また、施設長・管理者が、施設内の高齢者の安全を守るという施設管理権の一環とし て、面会制限を求める場合もあります。 ・なお、養護者以外の者であっても、養護者と協力関係にある者から面会希望があった 際も、状況により養護者に準ずる対応をとる場合もあります。 (3) 面会制限実施の判断 ・基本的には、面会制限の実施は、コアメンバー会議や個別ケース会議などで検討し、 市町村が、実施の判断をします。 ・特に、やむを得ない事由による措置を行った場合は、面会制限の実施を視野に入れて、 必要性が考えられる場合は、施設・事業所に措置を依頼する際に、面会制限をするこ ともあることを伝え、協力を依頼します。 ・面会制限を実施する具体的な事例は、虐待防止法や厚生労働省のマニュアルには具体 的に記載されていませんが、次のような内容を検討し、総合的に判断します。 例) ○養護者と面会することで高齢者の生命・身体に危害が及ぶ恐れがある。 ○養護者の現在の状況がわからず、養護者の面談等により状況の確認が終了するまでの 期間を面会制限する。 ○高齢者が養護者との面会を希望していない。 ○養護者が高齢者を施設・事業所から連れ出す恐れがある。 ○養護者が施設・事業所の他の利用者や職員に対して危害を加える恐れがある。等 ・面会制限の実施を判断する際は、判断に至った経緯を記録しておきます。 ・また、面会制限が必要と判断された場合、面会制限実施期間や養護者から面会希望が あった際の窓口や対応方法も検討します。 ・面会制限は、高齢者や養護者にとって必ずしも、有効な面ばかりではありません。そ のため、一定の期間の経過後、面会制限を継続するかどうかについて、再度検討する 必要があります。 ・養護者が突然、措置先である特別養護老人ホームに直接面会に来た場合等は、施設長 の権限で面会制限することも可能です。 (4) 面会・面会制限の手順 ・養護者から面会希望があった場合は状況により手順が変わりますが、一例として厚生 労働省のマニュアルの内容を参考に整理しました。 @養護者への告知 やむを得ない事由による措置の決定がされた場合、次のような内容を養護者に対し て告知します。 例) ○措置入所の実施の事実 ○不服申し立て権について ○高齢者への面会方法及び面会制限に関する注意 ○市町村の担当者名、連絡先 A基本的な面会手続き 基本的には、面会希望があった場合は、養護者の状況、高齢者の状況等をもとに、 個別ケース会議において、面会が可能かどうか判断し、市町村が面会の可否について決 定します。 ア 養護者から市町村等に面会の要望があった場合 高齢者、養護者、施設と面会の日程や面会を行う会場について、詳細に調整をし ます。 特に、措置を行っている施設内での面会を行うことで困難が予想される場合は、 市町村の役所内での面会を行うなど、他の場所で面会をすることを検討するなどの 必要があります。 イ 養護者が直接、施設に連絡をした場合 高齢者虐待防止法では、施設長には、面会を制限することができることとされて います。しかし、事前に対応を市町村と協議しておき、養護者から、直接施設に連 絡が会った場合は、施設が養護者と対応するのではなく、養護者に対して市町村等 の担当者に連絡し、判断を仰ぐように促します。 これは、高齢者の面会の判断は、措置を行った市町村が責任を負うと判断される ためです。 ウ 市町村等や施設に強引な面会要求があった場合 面会市町村の担当者や施設に直接、養護者から強引な面会の要望や、攻撃的な対 応があった場合は、市町村の担当課の管理者に情報を集約し、施設長や市町村が退 去を求めます。 退去を求めても養護者が応じなかったり、養護者が暴力をふるったりする場合は、 警察に通報し、対応を求めます。 (5) 面会制限実施中の養護者支援 ・高齢者虐待防止法の第14 条では、養護者の負担軽減のため、養護者に対する相談等を 行うこととされています。 ・このため、コアメンバー会議や個別ケース会議において、高齢者と養護者の支援を行 う担当機関を分けるなどして、養護者の支援を行うようにします。 ・面会制限により高齢者と養護者の関係が終了してしまうことではなく、関係を改善す るため、養護者への支援を継続する必要があります。 高齢者虐待防止法 (養護者の支援) 第十四条 市町村は、第6条に規定するもののほか、養護者の負担軽減のため、養護 者に対する相談、指導及び助言その他必要な措置を講ずるものとする。 2 市町村は、前項の措置として、養護者の心身の状態に照らしその養護の負担軽減 を図るため緊急の必要があると認める場合に高齢者が短期間養護を受けるために必 要となる居室を確保するための措置を講ずるものとする。