かながわ文化芸術振興計画概要 1 経緯   神奈川県文化芸術振興条例に基づく「文化芸術の振興に関する基本的な計画」として、神奈川県文化芸術振興審議会の審議、県民意見募集などを経て、「かながわ文化芸術振興計画」を策定しました。 2 計画案の概要 (1) 計画の策定に当たって   ア 策定趣旨     神奈川県文化芸術振興条例に基づく「文化芸術の振興に関する基本的な計画」として策定   イ 計画期間     平成21年度から25年度までの5年間   ウ 県の役割    ・ 文化芸術の振興に関する総合的な施策の策定、実施    ・ 市町村との連携に努め、市町村が行う文化芸術の振興に関する施策に必要な支援を行うとともに、市町村相互の連携を確保    ・ 県民、芸術家、文化芸術を支える活動を行う者、文化芸術団体、学校、事業者、関係機関と連携・協働し、施策を効果的に推進   エ 神奈川力構想(総合計画)との関係 神奈川力構想を補完する文化芸術分野の振興に関する個別計画として策定   オ 進行管理 計画の進行管理は、審議会の意見をもとに実施 (2) 文化芸術をとりまく現状と課題   ア 現状 (ア) 心の豊かさやゆとりのある生活に関する意識 「国民生活に関する世論調査」によれば「心の豊かさ」を重視している人は、62.6%に達している。 (イ) 本県の人口構成に関する状況 「神奈川力構想・基本構想」では、平成37年に年少人口が94万人、生産年齢人口が572万人、老年人口が230万人となると推計している。 (ウ) 学校及び児童・生徒の状況 「学校基本調査」によれば、平成20年度の本県の児童・生徒数は、小学校約49万人、中学校約23万人、高等学校約20万人となっている。 (エ) 高齢者の状況 「国民生活に関する世論調査」によれば、50〜69歳の年齢層の65%以上が「心の豊かさ」を重視しており、生きがいの充足に関する施策が求められている。 (オ) 県民の生活と県政についての意識 「県民ニーズ調査」によれば「文化芸術を鑑賞したり、文化芸術活動を行うことは大切だと思うか」という問いに対して、81.7%が「大切」と回答している。 (カ) 県民の文化芸術活動の状況 「県民ニーズ調査」によれば、文化芸術活動について「現在、活動している」と答えた人は10.0%で「今後活動してみたい」と答えた人は26.9%となっている。 (キ) NPO法人の活動状況 県の認証を受けたNPO法人のうち、「学術・文化・芸術・スポーツ」の分野で活動を行っている団体は457団体で、NPO法人の17の活動分野の中で4番目に活動を行う団体が多い分野となっている。 (ク) 文化会館の状況 「社会教育調査」によれば、本県の公立文化施設における主催・共催事業の実施件数は、 1,271件、入館者数は約78万7千人となっている。 (ケ) 図書館の利用状況等 「社会教育調査」によれば、本県の図書館の帯出者総数は約1,085万人、貸出総冊数は約3,349万冊となっている。 (コ) 博物館の設置状況 「社会教育調査」によれば、本県の博物館数は49館で、内訳は登録博物館が34館、博物館相当施設が15館となっている。また、美術館は14館設置されている。 (サ) 県内市町村の取組状況 文化芸術振興条例の制定状況をみると、平成17年に川崎市が「川崎市文化芸術振興条例」を、19年に横須賀市が「横須賀市文化振興条例」を制定している。 (シ) メセナ活動の状況 「メセナ活動実態調査」によれば、メセナ活動を実施した企業が重視した点として「地域文化の振興」(61.3%)が最も多かった。   イ 課題 (ア) 次代を担う子どもたちの文化芸術体験活動の充実 子どもたちが文化芸術に触れることで、豊かな心や感性をはぐくみ、調和の取れた人格形成が行えるよう、子どもを対象とした文化芸術体験活動の推進が必要。 (イ) 高齢者等の生きがいの充足 高齢化が進む中、高齢者等が生き生きとした生活を送るための方策として、自主的・主体的に文化芸術活動を楽しむための環境整備が必要。 (ウ) 創造的活動の推進 優れた文化芸術は、潤いのある県民生活に欠かせないものであることから、芸術家等の創造的活動を推進していくことが必要。 (エ) 伝統芸能の保存・継承 地域ではぐくまれてきた伝統芸能は、担い手や発表機会が不足しており、伝統芸能を将来に引き継ぐための保存・継承の取組みが必要。 (オ) 文化資源を活用した地域づくりの推進 歴史的建造物、地域固有の伝統芸能や祭り、文化的な景観、文化芸術にかかわる施設、事業、作品などの文化資源を効果的に活用し、地域の活性化を促していく取組みが必要。 (3) 基本目標 ア 真にゆとりと潤いの実感できる心豊かな県民生活の実現 県民が身近なところで優れた文化芸術を鑑賞したり、自ら文化芸術活動を行うことができるとともに、芸術家等が芸術活動に専念できる条件や機会などが整った社会の実現をめざす。 イ 個性豊かで活力に満ちた地域社会の発展 地域の歴史や文化、現代アートなどがまちづくりに取り入れられ、周囲の景観とも調和した社会や文化芸術が様々な分野で活用された魅力ある地域社会をめざす。 (4) 基本的な施策 ア 県民の文化芸術活動の充実 (ア) 県民の文化芸術活動の充実 県民一人ひとりが等しく、文化芸術を鑑賞し、文化芸術活動に参加し、また自らが文化芸術に関する創造的活動を行うことのできる環境整備が必要。    【主な施策】     a 文化芸術に対する関心、理解を深めるための普及啓発      ・ 県立文化施設での文化芸術に関する講座、講演会等の開催       広報誌、ホームページによる普及啓発の実施     b 鑑賞機会の充実      ・ 神奈川芸術劇場の整備      ・ 県立文化施設での公演、展覧会の開催      ・ 文化芸術団体との連携による鑑賞機会の提供 ほか     c 県民の文化芸術活動や発表機会の支援      ・ 県立文化施設での練習・発表等の活動の場の提供      ・ 県美術展の開催      ・ 文化芸術団体の創作・発表等の活動への助成等による支援 ほか     d 文化芸術活動に関する情報の提供      ・ 文化芸術に関する広報誌の発行 ほか (イ) 地域の伝統的な文化芸術の保存、継承、活用      地域の自然、歴史、風土によりはぐくまれてきた伝統的な文化芸術は、かけがえのない県民共通の財産であり、地域社会全体が協力し合いながら、これを守り、継承していくことが必要。    【主な施策】     a 伝統芸能の普及啓発、鑑賞・発表機会の提供      ・ 伝統芸能にかかわるワークショップの実施      ・ 県立文化施設等での伝統芸能にかかわる公演の実施、発表機会の確保      ・ 文化芸術団体への支援や連携による発表機会の確保      ・ 子どもを対象とした民俗芸能フェスティバルの開催 ほか     b 文化財保護の充実等      ・ 文化財の指定及び指定文化財に対する助成等の実施      ・ 県ホームページ等による文化財に関する情報の提供 ほか (ウ) 芸術家等の育成等に関する支援等      芸術家本人の活動だけではなく、文化芸術に関する企画、制作、普及、研究、文化施設の管理運営などにかかわる活動を行う者の様々な活動が合わさって、様々な作品や表現を生み出す創造的活動が成り立っており、こうした芸術家等の活動への支援が必要。    【主な施策】     a 芸術家や文化芸術を支える活動を行う者の育成      ・ 神奈川文化賞・未来賞等による顕彰の実施      ・ 舞台技術者等の文化芸術を支える者の研修等による育成支援 ほか     b 創作のための環境の整備      ・ 県立文化施設の練習・稽古等での活用 ほか     c 創造的活動の成果を発表する機会の確保      ・ 文化芸術団体との連携による新進芸術家を起用した演奏会等の開催      ・ 県立文化施設主催事業における新進芸術家の積極的登用      ・ ストリート・ミュージシャン等アマチュア・ミュージシャンなどの発表機会の支援 ほか (エ) 文化芸術団体の育成等      NPO法人や公益法人など、様々な団体が文化芸術分野で多様な活動を展開しており、本県の文化芸術振興を進める上で、こうした文化芸術団体の多様な活動を推進していくことが必要。    【主な施策】       文化芸術団体の育成・支援、連携・協働の推進      ・ 文化芸術団体への助成等による支援      ・ 県実施事業等における文化芸術団体との連携・協働の推進 ほか (オ) 子どもの文化芸術活動の充実      子どもたちが文化芸術の体験を通して、豊かな人間性や創造性をはぐくむことは、人間形成期に必要とされる貴重な経験であり、次代を担う子どもたちが現代の社会を「生きる力」を身に付けていく上で、文化芸術活動の充実を図っていくことが必要。    【主な施策】     a 文化芸術の鑑賞機会の提供      ・ 県立文化施設での子どもたちを対象とした鑑賞事業の実施      ・ 文化芸術団体との連携による子どもたちを対象とした音楽体験事業等の実施 ほか     b 文化芸術活動の体験機会の充実      ・ 文化芸術団体との連携・協働による子どもたちの文化芸術活動の推進      ・ 伝統芸能ワークショップの実施      ・ 県立近代文学館での子どもたちが読書に親しむための事業の実施 ほか (カ) 学校教育における文化芸術活動の充実      子どもたちが多くの時間を過ごす学校の役割は重要であり、授業やその他の活動の中で、文化芸術に触れる機会をつくり出していくことや、芸術家等や文化芸術団体が学校教育の中で行う文化芸術活動に対して、協力していくことが必要。 【主な施策】       文化芸術に関する体験学習等の充実      ・ 文化芸術団体との連携による音楽体験事業等の実施      ・ 本物の舞台芸術体験事業(文化庁事業)等の県内での展開      ・ 高校文化部活動の充実・支援の実施      ・ 伝統音楽に関する指導者ワークショップの実施 ほか (キ) 高齢者、障害者等の文化芸術活動の充実      高齢者、障害者などが文化芸術に親しみ、自主的に文化芸術活動を楽しむための環境の整備に取り組むことが必要。    【主な施策】       高齢者、障害者等の文化芸術活動の充実      ・ 高齢者を対象とした文化芸術事業の実施      ・ 県立施設における文化芸術活動の場の提供などによる自主的な活動の支援      ・ 特別支援学校、障害者施設、高齢者施設等での文化芸術団体による公演の実施      ・ 県立文化施設のバリアフリー化の推進 ほか   イ 文化資源を活用した地域づくりの推進 (ア) 文化芸術に関する交流の推進      文化芸術は、人と人、地域間、国内外の相互理解を深める上で重要な役割を果たすものであり、地理的・歴史的な背景を下に形成された文化芸術の多様性についての理解を深め、地域間、国際間の真の相互理解を推進していくことが必要。     【主な施策】     a 地域間交流の推進      ・ 他県との文化芸術を介した交流の推進      ・ 国民文化祭への県内文化芸術団体の参加促進 ほか     b 国際交流の推進      ・ 海外の友好交流都市等との文化芸術を介した交流事業の実施      ・ 海外の最高水準の舞台芸術作品の県立文化施設での公演や展覧会の実施 ほか     c 多文化理解の推進      ・ 多文化理解や交流を推進するための事業の実施      ・ 多文化理解を推進するための講座等の実施 ほか (イ) 創造的活動等の推進      文化芸術に関する創造的活動は、地域のにぎわいや経済活動などにも大きく寄与する可能性を持つものであり、地域の魅力を高め、県民生活に潤いをもたらす創造的活動を推進していくことが必要。    【主な施策】       創造的活動の推進と発信      ・ 県立文化施設における新たな舞台芸術作品等の創造・発信      ・ 文化芸術団体・大学等との連携による先駆的で発信性の高い文化芸術の創造 ほか (ウ) 文化資源の活用      県内には、歴史的な建造物やまちなみ、伝統的な行事や祭りなど様々な文化資源が存在しており、これらの価値を再評価し、観光振興と結び付けるなど、文化資源を活用した地域の活性化に取り組むことが必要。    【主な施策】       文化資源を活用した地域の活性化      ・ 邸宅・庭園を保全・活用した地域づくりの推進      ・ 歴史的・文化的遺産などを活用した交流圏づくりの推進 ほか (エ) 景観の形成      景観は、地域の自然、歴史、文化等と人々の生活、経済活動等との調和により形成されるものであり、こうした認識の下、良好な自然景観、歴史的景観、都市景観の形成に努めることが必要。    【主な施策】       良好な景観の形成      ・ 「神奈川景観づくり基本方針」に基づく魅力ある景観づくりの推進 ほか   ウ 文化芸術の振興を図るための環境整備 (ア) 学校施設、公共的施設の活用等      文化芸術活動の場の充実に関する県民のニーズに応えるため、既存の文化施設の利用におけるサービスの改善を図るとともに、地域の身近な拠点ともなっている学校や公共的施設の活用に取り組むことが必要。    【主な施策】       公共的施設等の活用      ・ 学校施設、公共的施設の文化芸術活動の練習、稽古、発表の場としての活用 (イ) 県立文化施設の充実      多様化・高度化する県民ニーズに対応できるよう、県立文化施設の充実を図るとともに、運営についての適切な検証に取り組むことが必要。    【主な施策】     a 県立文化施設の機能の充実      ・ 文化施設の特性に応じた人材育成、教育プログラム、アウトリーチ等の実施      ・ 文化施設における参加体験型事業の実施 ほか     b 運営方法の点検等      ・ 施設利用者を対象としたアンケート調査の実施      ・ 施設運営会議等による施設運営や実施事業の点検・検証 ほか (ウ) 情報通信技術の活用  すべての人が等しく文化芸術に関する情報の入手等が行えるよう配慮するとともに、利便性の向上等を図る観点などから、情報通信技術を活用していくことが必要。    【主な施策】     a 情報の発信      ・ ホームページや電子メールを活用した文化芸術情報の提供      ・ 保存資料等の検索・閲覧等に関する情報通信技術の活用     b 利便性の向上      ・ 施設利用予約システムの運用     c 文化芸術にかかわる資料、作品、情報等の保存      ・ 県立文化施設等における収蔵資料等のデジタル化、データベース化の推進 (エ) 文化芸術活動に対する支援の促進      文化芸術活動に対する個人や企業からの寄附や支援が活発に行われるよう、普及啓発や情報提供に取り組むことが必要。    【主な施策】       文化芸術活動に対する個人や企業等からの寄附や支援の促進      ・ 寄附税制等に関する周知      ・ 文化芸術団体への寄附の促進 ほか (オ) 顕彰の実施 文化芸術活動で顕著な成果を収めた人や団体の功績をたたえることは、文化芸術の振興を図る上で必要。    【主な施策】       顕彰の実施      ・ 神奈川文化賞・未来賞等による顕彰の実施 (5) 推進体制   ア 市町村     県及び市町村は、情報交換に努め、連携・協力関係を構築。また、県は、市町村の意向を踏まえ、必要な支援を行うとともに、県域の均衡ある文化芸術振興に留意。   イ 芸術家及び文化芸術を支える活動を行う者     県は、芸術家及び文化芸術を支える活動を行う者と協働し、県民に文化芸術に親しむ機会を提供。   ウ 文化芸術団体 県は、文化芸術団体と協働し、県民ニーズに応える事業の実施や子どもたちが文化芸術に親しむ機会等を提供。   エ 学校 県は、学校と連携し、子どもたちが本物の文化芸術を鑑賞し、体験できるよう取り組むとともに、大学等と協力し、文化芸術にかかわる人材の育成等について検討。   オ 事業者 県は、社会的責任から文化芸術活動への支援を行う企業等の活動を推進。   カ 国及び他都道府県     県は、国や関係機関が実施する事業等に協力し、特色ある文化芸術事業を推進。また、他県とは、施策にかかわる情報交換や文化芸術を介した地域間交流などを実施。