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食品の異常は、生産、加工、流通、保存のあらゆる過程で起こりえます。そのような状況の中で、あらゆる化学物質から原因物質を特定することは非常に困難です。そのため、我々は、“現場の状況から適切に検査項目をしぼり”、“「異常」を発見するために、対照品との比較”を行い、原因究明の一助を担うために原因物質の特定に向け検査を行っています。
理化学的な苦情検査は、 (1) 異味(味がおかしい)の検査 ( 2 ) 異臭(臭いがおかしい)の検査 (3) 異物の検査 の3分野にわけて検査します。 |
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異味、異臭の検査は、化学分析によって原因物質を特定していきます。
では、化学分析とはどのようなものか、神奈川県衛生研究所で行った研修の資料から説明します。
○異味、異臭の原因となる微量の物質を、食品の中から取り出す作業を抽出といいます。抽出によって取り出した物質を機器分析し、得られたクロマトグラフィーと対照品のクロマトグラフィーを比較し、原因物質を特定します。 |
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○クロマトグラフィーとは、物質によって検出される時間が異なることを利用して、混ざっている色々な物質を分けていく方法で、得られたものが目的物であるかを質量分析で確認して原因物質を特定する。 |
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苦味成分は多種多様である上、実際には味を確認することができません。
異臭の検査に比べて異味の特定は非常に難しいことです。
苦情品が製造、流通段階でどのように扱われているのか調べることにより、
検査項目を絞らなければ、原因物質の特定は中々無理なことです。
そのため生産工程の情報と、原因を特定するための対照品の入手が不可欠となります。
これらの情報を基に、分析対象を的確に絞り、対照品と比較しながら、原因物質の特定に向け機器分析を行います。 |
高速液体クロマトグラフ( HPLC )
(食品中に含まれる物質を調べる) |
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分析機器により、原因物質を特定する方法については、 異味事例と原因物質の特定 に示します。
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異臭の検査は、検体から揮発する成分を分析対象としています。
揮発する気体を採取し、ガスクロマトグラフ質量分析計により、測定します。
異臭の原因は、次のように分類できます。
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移行による異臭 |
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混入による異臭 |
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食品中で産生する物質の異臭 |
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その他の原因 |
異臭に対する対策として
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臭いが移らないように、調理器具等、食品を扱うものは十分に洗浄を行い、正しく使用すること |
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保存するときには、食品を適切に保管すること |
分析機器により、原因物質を特定する方法については、異臭事例と原因物質の特定に示します。
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ヘッドスペースガスクロマトグラフ質量分析計 ( HS/GC/MS )
(異臭成分(揮発性物質)を調べる) |
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混入の異物の形態をまず観察し、次にどんな材質であるかを分析機器によって分析します。
その際、金属類、プラスチック、紙などの容器や包装の材質などの混入も考慮しながら分析にあたります。また、食品の原材料(魚の骨、種子など)、糖分の塊などが異物と思われることもあります。
右の図に異物分析の検査手順を示しました。無機物というのは、金属類などです。有機物というのはゴム、プラスチック、動植物の由来物質などです。このように形態の観察後、色々な可能性を考え検査します。 |
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形態検査 |
材質検査 |
実体顕微鏡
| 生物顕微鏡
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赤外分光光度計 ( FT − IR ) 有機物の分子構造や状態を調べる
試料を破損せずに回収が容易である
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蛍光 X 線分析装置 含有する金属を測定する
試料を破損せずに回収が容易である
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分析機器から材質の特定を行っていく方法については、 異物事例と原因物質の特定 に示します。 |